国会質問

質問日:2004年 5月 20日 第159国会 農林水産委員会

農協法改正案質疑・採決

高橋ちづ子議員は20日の衆議院農林水産委員会で、農協法「改正」案で共済事業における予定利率を引き下げる契約条件の変更を可能とする制度を導入する問題についてただしました。

高橋氏は、農協共済のソルベンシーマージン(支払い余力)比率が753%で、基礎利益が4640億円も確保されており、法改正の必要はないと追及。農林水産省の川村秀三郎経営局長は「十分な支払い余力があり、当面健全性に問題がない」と認めながら、亀井善之農林水産大臣は「他の保険と条件を一緒にする必要がある」とのべました。

高橋氏は、仮に予定利率の下限を保険業法と同じ3%にすれば、組合員に大きな被害を与えるとのべ、見通しを明らかにするよう求めました。川村局長は、「契約口数で65%、契約残高で約6割が予定利率の変更になる」ことを明らかにしました。高橋氏は、これでは組合員の生活設計が台無しになると批判、予定利率変更の制度導入の撤回を求めました。

(2004年5月28 日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 最初に、共済事業における契約条件の変更手続の導入問題について伺います。

 これまでの委員会質疑でも指摘されてきたことでありますし、また、一昨日の参考人質疑では、ソルベンシーマージンが七五三%ある、基本的に破綻のおそれはないし、現段階で予定利率の引き下げを行う意図はないと前田理事長も明言されました。農協共済の逆ざや額は、二〇〇二年度で五千九百三十億円、他の損益との差し引きでも基礎利益は四千六百四十億円も確保されています。

 先ほど来言われていることですが、改めて、こうした必要性がない中で、今改正をする必要はないと思いますけれども、重ねて伺います。

○川村政府参考人 農協の共済事業でございますが、将来の共済金の支払い財源となります準備金、これは適正に積み立てられております。また、通常の予測を超える共済金の支払いが生じた場合の十分な支払い余力、これはまさにソルベンシーマージン比率として示されるわけでございますが、これらの面から見ても、当面、健全性に問題のないのは御指摘のとおりでございます。

 ただ、共済事業を見た場合、これは保険も同じでございますけれども、超低金利の長期化ということで、逆ざやの拡大、また保険料の自由化によります業態間の競争、こういったものも激化をするという状況にございます。また、農協共済の事業規模が相当程度大きくなっているという状況を踏まえますと、農協の共済事業が万が一健全性を損なうような事態になりますれば、組合員のみならず農村社会に大きな影響を与えるおそれもあるわけでございます。

 こういった状況を踏まえまして、今回の農協法改正案におきまして、共済事業の一層の健全性を確保するといった措置、それから共済契約者の保護を充実するための措置とあわせまして、破綻を回避し、事業の継続を図る経営の選択肢、まさに選択肢として、保険業法に倣いまして、契約条件の変更を行う手続規定を整備するということをしたわけでございます。

○高橋委員 二〇〇三年の保険業法の改正でも、反対意見が金融審議会の中にも多数あったと聞いております。その前に一度出されたときは、パブリックコメントで反対が非常に多く、二度目の二〇〇三年の改正案提出のときには、パブリックコメントそのものを集約しなかった。これは、集約すれば反対意見が多数でどうするかという問題があったということまで指摘をされているわけです。

 例えば、二〇〇三年五月二十三日の日経金融では、使われ方によっては生保業界が信頼を失うことになるという前田一雄プルデンシャル生命保険社長の指摘。あるいは、マスコミ業界からは、金融審議会などでの議論が不十分なまま、契約者の財産にかかわる法案が提出されることには異論も多い、産経新聞の五月十三日付ですけれども。このように、業界やマスコミからも多数指摘があったと思っております。

 さらに、当面の金融危機の回避、あるいは株価の上昇などもあり、その後一年たちますが、契約条件の変更に至った保険会社はまだないと聞いております。横並びという理由だけで、将来のリスクに備えてこれを導入するということが成り立つのかどうか、大臣に伺います。――大臣に伺います。通告しておりますので。

○川村政府参考人 ちょっと事務的に申し上げます。

 まさに共済事業が発展をいたしまして、他の大手の生保、それから損保、こういったものとも比肩し得るような非常な規模になってきております。先ほども申し上げましたとおり、これが万が一破綻をした場合には、農村にも多大の影響を与えるということでございます。

 そういう意味では、やはり他の保険ともある意味では条件を同じくして臨むということが非常に必要なわけでございます。この予定利率の引き下げのみならず、契約者保護のいろいろな規定、それからまた財政の健全性のための規定、こういうものもあわせて今回法律できちんと整備をして、そして万全を期すという趣旨でございます。

○亀井国務大臣 今局長からも答弁いたしましたが、農協共済事業、これは、準備金が適正に積み立てられておりますこと、また十分支払い余力を有しておる、そういう面で当面健全性に問題はないわけであります。

 しかし、やはり農協共済事業は、地域に密着をした農協が、相互扶助、こういう理念のもとに総合的な事業の一つとして行われておるわけでありまして、全共連は保険会社のように他の保険会社と合併するという道もないことから、予定利率の引き下げができないともう破綻するということになってしまうわけであります。

 今後、このような経済変動により、仮に保険会社が一斉に予定利率の引き下げに踏み切った場合に、農協共済におきましても同様の対応を迫られる可能性が考えられるわけでありまして、今回の改正、これは、保険業法に倣いまして、経営の選択肢として、契約条件の変更を行う手続規定を整備する、こういうことにしたわけであります。

○高橋委員 この横並びの問題ということを先ほど来言っているわけですが、では、仮に、予定利率について下限を政令で定めるとしておりますが、どのようになりますか。

○川村政府参考人 予定利率の引き下げの下限の問題でございますが、これは、今言及されましたように政令委任ということになっております。

 そして、その具体的な率でございますが、これは、経済事情あるいは組合の資産運用の状況、それから必要な経営改善努力を行われることを前提として、契約条件変更後の事業を健全に継続し得る率であること、それから保険業法でもう既に定められている率、年三%というのがございますので、こういったものを踏まえまして、共済契約者等の保護に資する観点から適切に定めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

○高橋委員 先ほど来、横並びでなきゃいけないということが言われていますので、多分この三%がなるんではないのかなと思うわけですよ。そうなったときに、これまでの保険の状況を見てみますと、九〇年代の前後、五・五%から六%の利率で運用されていたと思いますが、ここのところが万が一の場合は打撃を受ける。

 そうすると、これに該当する契約口数、責任準備金残高、その割合はどうなるのか伺います。

○川村政府参考人 政令自体は下限ということでございますので、仮に三%と定めましても、全共連におきまして変更時の予定利率を何%にするか、これは、変更を行おうとする組合が財務状況等に応じまして定めるということでございますので、一概には申し上げられないわけでございますが、仮に三%を超える契約のすべてが機械的に三%まで引き下げられる、こういうふうに仮定をした場合の話でございまして、契約件数では約六五%、共済金額では約六割の契約が変更の対象になるということでございます。

○高橋委員 あくまでも仮にということではありますが、六五%の契約件数、六割の契約高ということでの該当になるんだというお話だったと思うんです。

 この割合、かなりの大きな割合で契約者が被害を受けるかもしれないということですよね。やはりそういうことに対して十分な説明がなければならないし、これまでも、財産権の侵害であり、契約違反でありということが繰り返し言われてきたわけですね。

 また同時に、今は心配はないけれども、万が一、万が一とおっしゃいますよね。そこは、どこからその基準が出てくるのか、どこから万が一になるかということなんですよね。

 例えば、さっき、ソルベンシーマージンの程度に応じて早期是正措置を発動するとおっしゃいましたけれども、金融庁が事前に、危ないということで早期是正措置を出したことはありませんよね。生保会社は二〇〇%を割るところはなかったわけですよ。どうしても対応が後手後手になっていた。

 だから、そういう意味で、よほど、今時点で、比率が二〇〇を割るほどではないけれども危ないかもしれないからということで発動するということは、まずあってはならないわけですよね。契約者の保護からいっても、当然、それはあってはならないわけですよね。

 そういう点で、そういうことを今やるということは、やはり、今農業所得が非常に落ち込んでいる中で、必死でこれを掛けてきた組合員にとって、生活設計が台なしになる重大な中身であるわけです。

 それから、既に農協共済の利用者の中では、ほかの生命保険などもあわせて利用している方が九七%も実際はいる。そういう中で、今、農協共済はもうだめかと不安感を持たせるよりも、堅持をすることがいいのではないか。

 全国一万三千店舗を誇る農協の窓口で身近に手続ができる、それがあってこそ発展してきた農協の共済。日々の暮らしと一体のものとして発展してきた、だからこそ安定した財源も持ってきたわけですよね。きょうは、そういう農協ならではの利点を今後も維持するべきではないかということを、強くこれは指摘したいと思うんですね。多分答弁は同じだと思うから、指摘をしておきたいと思います。もし何か言うことがあったら、あわせて次の答弁の中で言ってください。

 次に、合併の総会手続の省略の問題ですけれども、大規模組合の組合員数、資産額が二十分の一以下の組合を吸収する場合、吸収する側の組合の総会の議決を要しないという問題でありますが、既に平成十三年度の改正で、総代会の議決があれば組合員による投票がなくてもよいという手続の簡素化が図られました。これをさらにまた簡素化を図るものであって、民主的な手続をないがしろにするという点で、我々、容認できないものがあります。組合員の意思を尊重する仕組みを残すべきと思いますが、これについて伺います。

○亀井国務大臣 今回の措置、大規模農協が存続組合となり、人的、資産規模で二十分の一以下の小規模組合を吸収合併する場合に、存続組合の総会手続を省略することができる簡易合併手続を設けたところでもございます。今回の改正では、商法等の例に倣いまして、大規模組合が存続組合となり、人的規模、資産規模で二十分の一以下の小規模組合を吸収合併する場合にそのようなことになっておるわけであります。

 あるいはまた、やはり、存続組合の総会手続にかわる組合員の意思表示の機会といたしまして、存続組合の正組合員の六分の一以上の反対があった場合には、存続組合における総会議決を省略できないこととしているところでありまして、これら実情にマッチをしたような対応をしたということであります。

○高橋委員 実情が、いろいろ手続が大変だということがあるんだと思うんですけれども、だからといって、大事な組合員の意思をくみ上げるという手続をないがしろにしていいのかということが問われていると思うんです。

 私たちは、合併とにかく反対という立場ではないんです。組合員の総意で合併よしという場合もあるだろう、しかし、あくまでも合併ありきということで進めることがどうなのかということを問題にしているわけですね。

 先ほどちょっと局長が一部紹介していたのかなと思うんですけれども、広域合併を進めてきたことで何が起こっているかという点で、全中が行ったJAの活動に関する全国一斉調査では、広域合併のメリットとして、貯金残高や共済の契約高がふえて、信用、共済事業の範囲が拡大したとか、広域化によって農協の社会的地位が高まったとか、施設の拡充整備が進んだとか、そういうメリットを挙げる一方で、残された課題のトップに、組合の民主的運営にとって最も大事な組合員の意思が反映されない、総代方式など組合員の参加機会の減少、集落懇談会の未開催、参加者の減少などが指摘されているわけです。事業活動における機能発揮の充実強化がなされていない、組合員が期待する営農生活指導や各種相談機能の強化が実現されていない、こういうことが指摘をされています。

 また同時に、広域合併が進んで、経済的で、効果が上がっているかというと、むしろ広域であるがゆえの非効率の面があって、組合員一人当たりの実績で見ると、ちょっと時間がないので数字を紹介できませんけれども、平成十三年度の総合農協統計表で見ても、貯金高、信用事業利益、共済事業利益、こういうようなものを一つ一つ見ても、五百戸未満の農協と一万戸以上の農協とを比べると、大規模農協の方が半分にしかならない、つまり規模が大きくなるほど大変になっているということがまた数字でも出ているんですね。

 だから、そういうことも、合併でもいろいろな問題が出てくるんだということをしっかりと検討して、組合員の総意と納得で進めていくというふうにしなければならないと思うんです。重ねて伺います。

○川村政府参考人 まさに、組合というのは、組合員のための組合ということが基本でございます。その意味で、意思が運営に十分反映されるということが大事でございます。

 ただ、今の合併の手続につきましては、大臣がお答えいたしましたとおり、他の、商法でございますとか、あるいは金融再生の組織整備法でありますとか、そういうところでもとられている規定でございますし、また、これに反対する場合の意思表示の機会も確保されております。そういう意味では非常に民主的な手続の中で、また、一方の目的であります、合併を迅速に進めていく、円滑に進めていくという両方の意味で意義があると思っております。

○高橋委員 反対の意思表示をする機会はあるけれども、しかし、それを担保するための、例えば集落座談会とかそういうものがなくなっているという指摘があるわけですよね。だから、そういうこともしっかり担保をした上で、全体としては組合員の意思が反映されたよというふうにならなきゃいけないと思うんですね。このことは指摘をしておきたいと思います。

 最後になりますが、農協が今本当に改革を迫られているのも、もちろん農協独自の問題があると思いますけれども、やはり根本的に農政に問題点があると思うんですね。日本農業新聞の、昨年一月一日付で報じられた全国農協組合長アンケートでも、五六%の組合長が今の農政を信頼していないと答えております。こういう声にどうこたえるかではないかと思います。

 最後になりますが、さっきの、最初の質問で出されておったと思いますが、中山間地域等直接支払い制度の見直しが、平成十七年度予算編成の基本的考え方、財政審の建議の中で、廃止を含む抜本見直しを提起するということが言われましたけれども、大臣はこのことを前もって予測をされて、十四日の日に会見もされておりますよね。多面的機能などを大事にして、中山間の制度が非常に評価されているということでお話もされていますし、それはやはりいろいろコスト面でははかれないものがあるんだということで、継続していく決意のあらわれだなと思っているんですが、改めて確認をしたいと思います。

○亀井国務大臣 この中山間地直接支払い制度につきましては、来年度以降の問題につきましては、私ども農水省、中立的な学識経験者から成る検討会におきまして現行制度の検証も行っておるわけでありますし、さらに、この役割というものの果たしてきた面というのは、これは大変私も評価をしておりますし、また各都道府県の主務部長会議におきましても、この要請というのは大変強いわけであります。

 そういう面で、財政審であのようなことが建議をされておりますが、私どもとしては、重要な役割を果たしてきたことも十分考え、来年度以降につきましても、この検討会の検証等を踏まえまして、概算要求までに省としての考え方をまとめてまいりたい、こう思っております。

○高橋委員 よろしくお願いいたします。

 


農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案に対する反対討論

○高橋委員 私は、日本共産党を代表して、農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部改正案に反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、保険業法と同様に、組合、共済契約者間の自治的な手続により契約条件の変更を可能とする制度を導入することについてです。

 昨年、金融庁は、生保の予定利率の引き下げのために、契約条件の変更を可能にする保険業法の一部改正案を国会に提出し、多くの国民の反対の声を押し切って成立させました。今回の法改正は、この保険業法の改正に横並びで契約条件の変更を可能にするものであり、認めることはできません。

 農協共済は、逆ざや額は二〇〇二年度で五千九百三十億円としていますが、この逆ざや額を他の利益で穴埋めしてもなお約四千六百四十億円もの巨額な基礎利益を生み出しております。このような実態で、農協共済の契約不履行を担保し、個別契約者の保険金額を減額させる目的の本制度の導入は、とてもではないが契約者の納得を得られるものではありません。

 反対の第二の理由は、全国中央会による基本方針の策定についてです。

 これは、これまで都道府県中央会がそれぞれ農協に対する指導事業を行ってきたものを、全国中央会が指導事業に関する共通の目標として基本方針を決定、公表することにより、これまで以上に中央集権的に指導事業を組み立てようとするものであり、本来、農業、農協が地域に根差した性格がある中で、都道府県中央会の指導事業に対する自主性を損なうものであり、賛成することはできません。

 反対の第三の理由は、合併、事業譲渡における総会手続の省略についてです。

 大規模組合が大規模組合の組合員数、資産額が二十分の一以下の小規模組合を吸収合併する場合、総会の議決を要しないとするものは、農協合併推進のために民主的手続さえないがしろにしようとするものであり、賛成できません。

 なお、民主党の修正案については、一点のみ反対でありますが、それは、全国農業協同組合中央会と都道府県農業協同組合中央会との合併を可能とする規定を導入することであります。これは、各都道府県農業協同組合中央会を不要とすることに結びつかざるを得ず、このことは、これまでのそれぞれの地域農業の特色に合わせて地域農業発展のために取り組んできた都道府県農業協同組合中央会の役割を否定するものであり、賛成できるものではありません。

 以上をもって討論といたします。

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