国会質問

質問日:2019年 5月 10日 第198国会 本会議

児童虐待防止法等改正案

政府・野党両案が審議入り/高橋議員・体罰禁止徹底を/畑野議員・子の権利尊重を/衆院本会議

 児童虐待防止法等の政府改正案と日本共産党など5野党・会派の改正案が、10日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の高橋千鶴子議員が質疑に立ち、野党案について畑野君枝議員が答弁しました。
 両案は、「しつけ」を口実とする虐待を防ぐため、体罰の禁止を明記。野党案は、現行の「監護・教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならない」(児童虐待防止法14条)との規定をなくし、禁止を徹底します。
 高橋氏は14条の規定を残した政府案について「禁止規定を設けても、監護・教育の範囲を超えない体罰は加えてもよいことになる」と指摘。安倍晋三首相と根本匠厚生労働相は、根拠を示さず「全ての体罰が禁止される」と述べました。
 高橋氏は、体罰容認の根拠とされてきた民法の「親権者による懲戒権」を早急に削除するべきだと主張。安倍首相は「2年をめどに在り方を検討する」と答え、畑野氏は、野党案では「児童の権利の擁護に関する国際的動向を勘案して検討することとしている。2年を待たず早急に削除を含めて検討する」と答弁しました。
 高橋氏は、子どもを「権利の主体」と位置づけた児童福祉法に照らし、「意見表明権」の尊重について質問。畑野氏は「十分尊重されるべきだ。意見聴取の際は、特別な心理状況に鑑み、寄り添いながら結論を急がず、専門家による相談や安心できる環境づくりなどに十分配慮することが必要だ」と述べました。
 高橋氏は、児童福祉司の増員を確実にするため、配置基準を法律で定めるべきだと主張しました。根本厚労相は「政令で規定した方が機動的に対応できる」と拒否。畑野氏は「政令に委ねる現行法では確実な増員が担保されない。(野党案では)基準を法定化する」と答えました。
( しんぶん赤旗 2019年05月11日付より) 

―議事録ー

○高橋千鶴子君 冒頭、五月八日に滋賀県大津市で、交通事故に巻き込まれた二人の保育園児が死亡する事故がありました。本当に言葉もありません。このようなことは二度とあってはならず、子供の命を守るため、社会を挙げて全力を尽くすときと考えます。
 私は、日本共産党を代表し、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部改正案並びに五野党共同提出法案について質問します。(拍手)
 幼い子供たちが、この世で最も自分を守ってくれるはずの親からの仕打ちに対し、どれほどの苦痛と絶望を味わいながらこの世を去っていったことでしょうか。ほとんどの事件は救える命だったはずです。
 虐待相談件数は、二〇一七年度、十三万三千七百七十八件と過去最多となり、深刻な事案も少なくありません。死亡に至った虐待事例はゼロ歳児が最も多く、中でも、生まれたその日という事例が一八・六%にもなります。まだ名前さえないという事実に打ちのめされる思いです。
 二〇一七年の児童福祉法改正では、七十年ぶりに理念規定を改定し、第一条に「児童の権利に関する条約の精神にのつとり、」と加え、児童が権利の主体であることを明らかにしました。改めて、この理念が空文句で終わることのないよう、社会全体で取り組むときではないでしょうか。
 まず必要なのは、体罰の禁止を明確に規定することです。
 二〇一七年改正では、しつけの名目で体罰や虐待を行う例が後を絶たないとして、第十四条に、しつけに際して、民法八百二十条の監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならないと規定されました。
 今回、この規定を残したのはなぜですか。せっかく体罰禁止を加えても、これでは、監護、教育の範囲を超えなければ体罰を加えてもよいということになりませんか。
 体罰の定義について、国連子どもの権利委員会は、暴言やおどしなども含めたあらゆる形態の品位を傷つける取扱いについて禁止するよう求めています。さらに、権利条約には懲戒権に関する規定はなく、いわゆる児童の親権者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で、適当な指示及び指導について、権利及び義務を尊重するとしています。
 正当な体罰があるといった余地を残さず、子どもの権利条約にのっとった規定にするべきです。
 また、民法第八百二十二条、懲戒権の規定については、二年を待たず、早急に削除するべきと考えますが、総理並びに提出者の見解を伺います。
 体罰を与えた親の中には、みずからも体罰や虐待を受けた経験がある方もいます。また、子供への接し方がわからず、小さな体罰の積み重ねから深刻な事態へ至っていることから、予防も含めた再発防止のための親に対する支援、教育は極めて重要です。
 第十四次死亡事例検証委員会の報告では、主たる加害者で最も多いのは実の母親です。その約九割が二十四歳未満であり、うち半分は十代です。経済状況も、四五・九%が非課税世帯であるなど、精神的にも経済的にも養育能力が不足していると指摘されています。
 困難を抱え、孤立を深める親への支援は欠かせないと考えますが、見解を伺います。
 子供が権利の主体であると位置づけたとはいえ、どこにそれが生かされているでしょうか。検討事項となってきたのが、子供の意見表明権の尊重についてです。
 例えば、親をかばう気持ちや親から見捨てられる不安から、家に帰りたいと言う場合もあること、性虐待など暴力を受けた恐怖のトラウマから自分の内面を見詰めることができないなどの複雑な心理状況があります。こうした子供の心理状態をよく理解した問いかけや、まずは安全であること、ほっとできる環境であることが必要と考えます。
 先日も、厚労省の初の調査で、児童養護施設や一時保護所などで、子供同士の性的トラブルが、回答した一千施設のうち七百三十二件もあったということが判明しました。施設職員による虐待なども少なくないと言われつつ、その実態はまだ十分な解明がされていません。どちらも絶対にあってはならないことであり、第三者調査の徹底を始め、人員配置のあり方など、どのように保護を必要とする子供たちが安心して過ごせる環境をつくっていくのか、厚労大臣に伺います。
 急がれるのは、関係機関の連携と児童相談所の体制強化です。
 政府も、昨年の緊急対策において、三年間で児童福祉司を二千二十人ふやすと決め、今回、更に前倒しで増員すると言います。しかし、児童福祉司の増員、児童相談所の増設については、法律事項ではありません。
 今回、児童福祉司や指導教育を担うスーパーバイザーの任用要件の見直し、児童心理司の配置基準を規定することは重要ですが、増員を確実にするためにも、法定するべきと考えますが、厚労大臣と提出者に伺います。
 また、市町村を経由する虐待相談も十万件を超え、市町村の体制と連携強化は不可欠です。児童福祉司を始め、虐待の対応に当たる自治体職員については、専任職員をふやすために地方財政措置を行うべきと考えますが、答弁を求めます。
 児童相談所の設置については、一九九〇年の運営指針から、人口五十万人に最低一カ所程度が必要とされていましたが、二〇〇九年三月、政令指定都市などの設置規定に伴い、削除されました。現状はどうなっているでしょうか。
 改めて基準を決め、児童相談所の増設をするべきと考えますが、見解を伺います。
 虐待相談で最も多いのはDVです。面前DVによる心理的虐待、今回の野田市の事案のように、DV被害者である母親が加害者になる、あるいは、夫の我が子に対する虐待をとめられないという事案は少なくありません。
 DV支援センターとの連携は必須ですが、現状のDV対策が適切に行われているのか、また、対応に必要な体制が整っているのかなど、早急な検証が必要です。
 婦人相談員や民間シェルターなど関係者からの意見も聞きながら、DV法の抜本的見直しを検討すべきと考えますが、認識を伺います。
 終わりに、壮絶な虐待事件に接して、世間は加害者である親への憎悪を募らせてきました。しかし、虐待を本当になくすためには、子供を見守る無数の目をつくること、孤立する親をどう救うのか、真剣な議論が必要です。そのために全力を尽くす決意を述べて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。
 子供の権利を守る取組への決意についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、児童は、適切な養育、健やかな成長、発達や自立等を保障される権利を有することを前回の児童福祉法改正において明確にし、児童の最善の利益が優先されるよう、児童虐待防止対策の総合的な推進を図ってまいりました。
 特に、ゼロ歳児における死亡事案などに対応するため、子育て世代包括支援センターの全国展開や、支援を必要とする妊産婦に対する支援などを講じてまいりました。
 今回の改正案を含め、何よりも子供の権利や命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
 体罰と懲戒権についてお尋ねがありました。
 体罰は、たとえしつけを目的とするものであっても許されないものです。
 体罰によらない子育てを推進するため、本法案では、児童虐待防止法の改正により体罰の禁止を法定化しています。
 改正後は、児童のしつけに際して、監護及び教育に必要な範囲を超える行為か否かにかかわらず、全ての体罰が禁止される規定となっており、監護、教育の範囲を超えない体罰を正当化する余地を残しているという御指摘は当たりません。
 また、御指摘の懲戒権については、家族のあり方にかかわり、国民の間でもさまざまな議論があると承知しています。このため、その規定のあり方の検討に当たっては、国会における議論等も踏まえながら、法務省を中心に徹底的な議論を行う必要があると考えており、二年を目途とする検討期間が必要であると考えています。
 何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
 児童虐待防止のための親への支援についてお尋ねがありました。
 児童虐待の発生予防や再発防止のため、保護者への支援を行うことは重要です。
 児童相談所においては、虐待を行った保護者へ指導、援助を行い、養育方法の指導や家庭訪問など、保護者の特性に合わせた支援を行っています。
 また、市町村においても、孤立しがちな子育て家庭を早期に発見し、必要な支援につなげるため、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの整備や、生後四カ月までの乳児のいる全家庭の訪問に加え、特に支援が必要な家庭に対する相談支援や育児、家事援助の実施などに取り組んでいるところです。
 市町村を含めた自治体職員の地方財政措置についてお尋ねがありました。
 児童虐待への対応に当たり、児童相談所に加え、特に、発生予防、早期発見や児童虐待発生時の迅速的確な対応において、市町村は重要な役割を担っています。
 このため、昨年十二月に新プランを策定し、児童福祉司等の増員に加え、市町村において、子供や家庭に対する相談支援を行う市区町村子ども家庭総合支援拠点を二〇二二年度末までに全市町村に整備することを決定しました。
 これに基づき、児童相談所職員の配置や、市町村における専任職員の配置ができるよう、今年度より地方交付税措置を講じており、引き続き必要な支援を行ってまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣根本匠君登壇〕

○国務大臣(根本匠君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。
 体罰禁止の規定についてお尋ねがありました。
 体罰によらない子育てを推進するため、本法案において、体罰禁止を法定化しています。
 改正後は、しつけに際して、体罰を加えることと監護及び教育に必要な範囲を超える行為のいずれによっても児童を懲戒してはならないものであり、御指摘は当たりません。
 また、監護及び教育に必要な範囲を超えて懲戒してはならない旨についても規定を残し、引き続きこの趣旨を周知啓発をしてまいります。
 子供の意見表明権の保障についてお尋ねがありました。
 一時保護や施設入所等の子供に対する支援方針を決める際には、子供の意向を尊重し、子供の最善の利益の確保に努めることとしています。
 加えて、本法案の附則において、施行後二年を目途として、子供の意見表明権の保障の仕組み等のあり方について検討することとしており、引き続き必要な検討を進めてまいります。
 施設における子供同士の性的な問題や職員による児童への虐待についてお尋ねがありました。
 子供同士の性的な問題については、調査結果を踏まえ、各自治体に対し、未然防止などの対応について通知しました。さらに、引き続き、調査結果を分析し、必要な対応を検討してまいります。
 また、職員による児童への虐待も未然防止と早期発見が重要であり、児童相談所を中心として、子供たちに対して、相談窓口の周知徹底を図るなど必要な対応を行います。
 児童相談所の職員の配置の法的根拠についてお尋ねがありました。
 昨年十二月に、児童相談所や市町村の体制強化を図るため、新プランを策定し、現在約三千人の児童福祉司を、二〇二二年度には約五千人体制とすることを決定しました。
 児童虐待相談対応件数の増加やケースの複雑化に応じた児童相談所の体制強化を行うためには、政令において規定した方が機動的な対応が可能となるものと考えています。
 児童相談所の設置基準の設定及び増設についてお尋ねがありました。
 現在の児童相談所の設置状況は人口六十万人に一カ所程度であり、管轄区域が大き過ぎるという指摘もありました。
 今回の改正では、管轄区域について、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする旨の規定を新設し、きめ細かな対応が可能となるよう取り組んでまいります。(拍手)
    〔国務大臣片山さつき君登壇〕

○国務大臣(片山さつき君) 高橋議員より、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の抜本的見直しについてお尋ねがありました。
 政府としては、これまで、この法律等に基づいて、DVの被害の防止や被害者の適切な保護を徹底するために、相談体制の整備や広報啓発、調査研究、そして民間団体に対する援助等の対策を講じてきているところです。
 御承知のように、この法律は、超党派の議員により議論が積み重ねられ、全会一致により制定、改正されてきたものと承知しており、その改正の要否を検討するに当たりましては、当時の御議論や経緯等についても十分に踏まえる必要があるとは考えております。
 内閣府といたしましては、御指摘のように、男女共同参画担当大臣としての私のもとに新たに設置いたしましたDV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会におきまして、民間シェルターやその関係者の御意見を随時伺うとともに、現場訪問も積み重ねながら、男女共同参画会議のもとにある女性に対する暴力に関する専門調査会等も活用して、DV対策の一層の充実に努めてまいる所存でございます。(拍手)
    〔畑野君枝君登壇〕

○畑野君枝君 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。
 体罰の禁止についてお尋ねがありました。
 教育やしつけと称して行われる体罰は、児童の心身に著しい悪影響を及ぼすものであり、断じて許されるものではありません。
 子どもの権利条約においては、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力から子供を保護するための措置をとることが求められています。また、本年二月に公表された、国連の子どもの権利委員会による第四回・第五回対日審査総括所見、最終見解においては、どんなに軽いものであっても全ての体罰を明示的かつ完全に禁止することが要請されています。
 今回の政府案では、しつけに際しての体罰の禁止について規定されていると承知していますが、本法案では、子どもの権利条約や子どもの権利委員会の所見、見解を踏まえて、正当な体罰が存在しないことを明確に示すため、およそ親権の行使に際して体罰を加えてはならない旨を規定しております。
 民法第八百二十二条の懲戒権の規定の検討についてお尋ねがありました。
 民法第八百二十二条の懲戒権の規定は、子どもの権利条約に反するものです。本法案の「児童の権利の擁護に関する国際的動向を勘案」というのは、そうした懲戒権の規定を削除すべしという趣旨を込めたものです。御指摘のとおり、二年を待つことなく、早急に削除の検討をするべきです。
 子供の意見表明権のあり方についてお尋ねがありました。
 子供の意見表明権については、子供の権利利益への配慮の観点から十分に尊重されるべきものであることから、本法案においては、施設入所等の措置や一時保護の実施又は解除に当たり、子供の意見を聞くこととしております。
 その際、施設入所等の措置や一時保護は、子供にとって肉体的にも精神的にも大きな負担を強いるものであることから、子供の意見の聴取に当たっては、その心身の状況や環境等に配慮しなければならないこととしております。
 高橋議員と同様、私どもも、子供の意見を聴取する場合には、子供の特別な心理状況に鑑み、寄り添いながら、結論を急がず、専門家による相談や安心できる環境づくりなどに十分に配慮することが必要であると認識しております。
 児童福祉司の増員に関する法定化についてお尋ねがありました。
 ふえ続ける児童虐待に迅速かつ適切に対応するためには、現場で対応する児童福祉司を十分に確保することが必要不可欠であるところ、現行法においては、「児童福祉司の数は、政令で定める基準を標準として都道府県が定める」と規定され、児童福祉司の数の基準は政令事項となっております。
 このような仕組みは、一見、弾力的な運用を可能にするとも思われますが、政府に児童福祉司の数の増減が委ねられ、確実な増員が担保されておりません。
 そこで、昨年提出した法律案に続き、本法案においても、児童福祉司の数の基準について法定化する措置を講じたものです。
 DV防止法の抜本的見直しについてお尋ねがありました。
 DVと児童虐待との相互の関連性が指摘されていることから、DV防止対策の強化により、DVの裏に隠れた児童虐待の防止を図るべく、高橋議員と同様、私どもも、DV法の抜本的な改正が必要であると認識しております。
 そこで、本法案では、早急に対応すべき課題として、DV防止関係機関と児童相談所との連携協力を明記するほか、DVを発見した場合の通報を義務化するとともに、その通報先を拡大することとしております。
 その上で、DV防止法の抜本的改正にもつながる今後の課題として、婦人相談員の待遇改善や専門性の確保、通報の対象となるDVの形態及び保護命令の申立てをすることができる被害者の範囲の拡大、DV加害者の更生のための指導及び支援の方法やその実施体制について検討を加え、必要な措置を講ずる旨の規定を設けております。
 なお、この検討を行うに際して、婦人相談員や民間の支援団体などの関係者から意見を聞くことは、当然必要であると考えています。(拍手)

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