国会質問

質問日:2019年 4月 19日 第198国会 厚生労働委員会

女性活躍推進法等改定案他について

パワハラ定義「狭すぎ」/改定案の問題あらわ

 日本共産党の高橋千鶴子議員は19日の衆院厚生労働委員会で、女性活躍推進法等の改定案に記される「パワハラ」の定義について、パワハラと認められる範囲が狭すぎて被害を救済できないと警告しました。
 同法案は、企業にパワハラ防止措置を義務付けるのが柱の一つ。パワハラの内容を①優越的な関係を背景とした②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により③就業環境を害すること―としています。
 高橋氏は、「業務上必要かつ相当な範囲」について、厚労省の検討会報告書に「パワハラと言われる行為の中には、業務上合理的な理由のあるものがありうる」と記されていることに触れ、「許されるパワハラもあるという考えか」と迫りました。
 厚生労働省の坂口卓労働基準局長は、指摘を否定しつつ「業務上適正な範囲か、それを超えたパワハラかの判断は難しい。適正な範囲の業務指導は必要だ」と述べました。
 高橋氏は、岩手県出身の20代男性が長時間労働と上司のパワハラによって自殺したのに労災認定されなかった事例を紹介。「命を落としてさえ、『程度が大きくない』としてパワハラと認められていない。これではいくら防止措置を法律で義務づけても実効性がない」と批判しました。
( しんぶん赤旗 2019年04月20日付より)

使用者による年休時季の指定/厚労局長「できない」/5日以上取得の場合/高橋議員に答弁/衆院厚労委

 最低5日の年次有給休暇(年休)を、時季を指定して付与することを企業に義務付ける規定(計画付与)を悪用し、対象でない労働者の年休日まで指定する事例について、厚生労働省の坂口卓労働基準局長は19日の衆院厚労委員会で、「使用者による指定はできない」と明言しました。日本共産党の高橋千鶴子議員への答弁。
 計画付与は、年休取得率の向上をめざし、年10日以上の年休を付与される労働者について、最低5日の取得時季を使用者が指定するもの。自ら5日以上取っている労働者は対象外です。年休をいつ取るかは本来、労働者の自由であることから、指定の際は労働者の意見を尊重することとされています。
 高橋氏は「ある運輸会社で、すでに5日以上の年休を取得した労働者まで、一方的に時季を指定されている」と違法性を指摘。坂口氏は「すでに5日以上の年休を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定はできない」と述べました。
 高橋氏は、夏季休暇等を年休日として扱い、年休日数を減らす行為についても質問。坂口氏は「心身のリフレッシュを図るのが制度の趣旨であり、年休の取得促進につながっておらず、望ましくない」と答えました。
( しんぶん赤旗 2019年04月21日付より)

―議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 四月から施行された働き方改革法と女性活躍は大きな関連があります。
 その一つですが、資料の一枚目に、年休付与義務についてポンチ絵をつけておきました。
 日本の年休取得率は約五割で、先進国の中でも最下位であります。ですから、私は、この五日を確実にということを聞いたときに、たった五日かと思ったわけです。ところが、最近の報道では、その五日がもう大変だと。有給義務化、人手不足で困難とか、対応間に合わぬとか、悪い影響出るなどと、否定的な報道が続いているのは本当に残念に思います。
 ある運輸会社が、これは実例の話です、年休の計画付与を悪用し、既に五日以上の年休を取得している労働者に対して、一方的に、いついつと計画付与を適用しました。資料にあるように、これはできないと思いますが、確認させてください。
    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
 今、議員の方からも御紹介ございましたとおり、今般、労働基準法の改正をしまして、全ての企業において、年十日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しまして、年次有給休暇の日数のうち年五日につきましては、使用者が時季を指定し取得させることを義務づけたところでございます。
 個別の問題については言及は差し控えさせていただきますけれども、一般的に、この制度につきましては、既に五日以上の年次有給休暇を請求、取得している労働者に対しましては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできないということでございます。

○高橋(千)委員 できないということを確認いたしました。
 年次有給休暇制度は、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として労基法に定められているわけですけれども、実際は、女性にとっては子供の突発的な病気や家族の介護などで年休を消化してしまうという事情もあります。それを事業主にとって都合のよい日に、つまり本人が希望する日、本当は希望を聞かなきゃいけないことになっているんですけれども、もうこの日だと決めてしまう、こういうことはあってはならないと思います。
 一方、もともとの夏季休暇などを稼働日扱いにして年休取得とカウントすることもできないと思いますが、これも確認したいと思います。
 実際に、五日間の年休付与が難しくて、計画付与を悪用して、年休が結果としてふえていないあるいは減っている、こんな動きもあるわけですよね。厚労省としてこれを把握しているでしょうか。また、どう指導しますか。

○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
 今議員の方からもございましたとおり、年次有給休暇につきましては、働く方の心身のリフレッシュを図るということを目的としまして、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされているところでございます。ただ、取得率が低調にある現状ということで、その取得促進が課題ということで、先ほど申し上げましたような今次の改正に至ったということでございます。
 今御紹介がありましたような類例でございますが、夏季休暇等の特別休暇といったいわゆる法定休日ではない所定休日を労働日に変更して、その労働日につきまして使用者が年次有給休暇として時季指定をするということにつきましては、先ほど申し上げましたような趣旨からしても、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないものであると私どもは考えております。
 私どもとしましては、パンフレット等におきましてもこういった取扱いが望ましくないものであることを明らかにした上で周知を行っているところでございます。

○高橋(千)委員 明確だったと思います。
 昨年六月八日のこの委員会で、別の案件なんですけれども、いわゆる非弁行為で、全国社労士会会長声明によって厳しく批判された社労士の行為について紹介をしました。
 いわゆる団体交渉、労使の場に、弁護士のように、会社側の代理人として交渉を妨害する、そういうことが指摘をされて、建交労神奈川県本部が申入れをしました。これに対して、ことし、東京社労士会として、理事会において、この社労士を注意勧告すると会長名の回答をいただいたわけです。
 ところが、この同じ人の、T社労士と言っておきますけれども、ホームページを見ますと、今私が指摘をした、最初に言った年休の計画付与、持っているのにやれと言われた人がまさにこの立場にいる人なんですけれども、そういうことをホームページで一生懸命指南しているんですね。計画付与の制度を使えば労働組合対策にもなる、こういったことを言っている。少しも懲りていないわけです。
 国家資格ですから、厚労省が懲戒処分する権限を持っています。厳しい姿勢で臨んでいただきたい。こうしたのはホームページにいっぱい出ておりますので、きょうはそれを逐一やるつもりはありませんので指摘にとどめますから、しっかりと対応していただきたい、そう思います。
 次に、資料の二枚目を見ていただきたいんですが、女性活躍推進法における情報公開項目が、任意で一項目だったものが、二つの分野、つまり、職業生活に関する機会の提供、もう一つは、ワーク・ライフ・バランスにかかわる雇用環境から、一つずつ選ぶというふうに改正をすることになります。
 それぞれの項目についてどれだけ公表されているのかの率があるんですけれども、七割を超えているのは、採用した労働者に占める女性労働者の割合とかその程度でありまして、係長級にある者に占める女性労働者の割合となると三七・八%ですとか、雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間となると二四・二%ということで、極めて公表率が悪いわけですよね。
 厚労省は、この間の答弁で、私たちが、全て公表するべきじゃないかとか、任意なのでそれぞれの企業によって公表している項目がばらばらなので比較できないじゃないか、こういう問いに対して、そもそも、どれだけ公開しているか、その数が多いこと自体が評価の基準になる、こんな答え方をしてきたわけなんです。
 だけれども、公表の手段というのは、厚労省のデータベースか若しくは自社のホームページというのは選択できることになっております。ですから、データベースに集約されている数字がある程度ふえてはいるんですけれども、しかし、全体として、やはり本当に見たいところは自社だったりわざわざ探さなきゃいけない場合もあるわけですよね。
 そうすると、少なくとも、行動計画が義務づけられている企業は、比較できるようにデータベースに集約する、そして、基礎項目は公表すべきではないでしょうか。

○小林政府参考人 お答えいたします。
 まず、データベースの関係でございます。
 女性活躍推進法は、その企業の主体的、自主的な取組を事業主に促すという発想に立っております。そういうことで、情報公表につきましても、その内容、手法につきましては、事業主の自主性を尊重した仕組みというのをとっております。
 そういうこともございまして、今御指摘をいただいたデータベースでございますが、これの活用は非常に望ましいわけでありますが、公表を義務づけることまでは行っていないというのが今の状況です。
 ただ、御指摘のように、求職者の職業選択に資するということを考えますと、より多くの企業にデータベースを活用していただくことが重要、全ての企業がデータベースに載せたいと思うようなところまで持っていきたいというふうには思っております。
 これまで、えるぼし認定の要件にするとか、あるいは助成金の支給の要件にするなどを用いて、データベース上での情報公表に誘導してきたところでございますが、更にこのデータベースの利用を促す方策がとれないかどうかということは、これからよく検討してまいりたいというふうに思っております。
 また、情報公表の拡大でございますけれども、これも、企業の状況、課題というのはさまざまであるということがございますので、今般も、企業の自主性を尊重する中で、特に重要である女性の継続的活躍に資するようにという観点で、職業生活に関する機会の提供と職業生活、家庭生活の両立という双方から公表を求めることにしておるわけでございますが、両者バランスのとれた中で、できるだけ積極的な情報公表を促してまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 計画を義務づけているんだけれども、自主性に任せると。やはり、それでは絶対だめだと思うんですね。課題がいろいろある、あるいは企業によって特徴がある。それはオンすればいい話であって、それぞれがこんな取組をしていますよということをオンしていけばいいわけで、基礎項目は四つしかないわけですから、最低でもそれくらい義務づける、きちっと比較できるというふうにするべきではないでしょうか。
 それから、繰り返し議論されているんですが、男女の賃金格差についても一言聞いておきたいと思うんですよね。四年前に法改正されたときも私は何度も質問をいたしました。またきょうも、あるいは先日の参考人からも、繰り返し発言があったと思います。
 経団連から労政審に参加している布山参考人は、社内でも特段公表しておらない社員も知らないデータを外部に対して公表するということに非常に違和感があると述べて、これはとても不思議な発言なんですけれども、賃金格差には職階の違いや勤続年数など背景があるので数字がひとり歩きする危険があると述べ、公表すべきでないと述べられました。一方、長尾参考人は、国連の女性差別撤廃条約は結果の平等を求めている、アドバルーンだけじゃなくてこの法律ができ施策がどうなったのかその一番大きな指標が男女の賃金格差だと強調されました。
 そこで、厚労省の雇用環境・均等部の事業主の行動計画をつくりましょうというパンフレットによれば、ステップワンとして、状況把握、課題分析、四つの基礎項目、さっきから言っている必ず把握すべき項目、その後に、選択項目、任意の項目を七つ挙げておるんですけれども、その中に、任意ではあるけれども、たった一つ、男女の賃金の差異をつかむことは取組の結果を図るための指標。取組の結果を図るための指標というのは、賃金の差異、これ一つなんです。そういう重要な位置づけをされております。しかも、学歴別、コース別、勤続年数五年ごとに区切って比べるなど、そういう形での男女の比較ということで差異を把握することを推奨しています。
 そうすると、布山参考人がお話をされたように、いやいや、勤続年数だとかコースによって違うんだというのは、その違いによってちゃんと把握しなさいと厚労省は言っているわけです。そして、その意味は、結果の指標であると位置づけているんですから、もう一歩踏み込んでこれを公表するということがよろしいんじゃないでしょうか。

○小林政府参考人 男女の賃金格差自体につきましては、女性活躍の成果をあらわす指標として非常に重要だということは御指摘のとおりだと思います。そういうことを認識した上で、その改善を図っていくということが重要な課題というのは、おっしゃるとおりでございます。
 先ほど御指摘をいただきました選択項目のところの最後に、取組の結果を図るための指標としてこの賃金の差異があるということでございますけれども、まさに取組の結果指標ということでございまして、布山委員とかがおっしゃったのも、結果指標だけを見てそれで判断されるといろいろミスリードされる部分があるんじゃないかというお話だったと思うんです。
 それで、こういう結果を導いている最大の要因が管理職比率と勤続年数のところだということで、女性の登用を進めていくということと両立支援を図って長く働けるようにする、そこを重視して今度の公表基準などの見直しを図っておるところでございます。

○高橋(千)委員 だから、厚労省のパンフには、コース別だとか勤続年数ごとに比較しなさいとちゃんと書いているわけじゃないですか。たった一個の数字を出せと言っているんじゃないんですよ。結果が全体としてわかるように工夫すればいいじゃないですか。そうやって把握しろと言っておきながら公表しないのであれば、結局、進んだのかどうかわからないんですよ。それをみんなが言っているわけです。
 これを、始まったばかりだと思うかもしれませんけれども、だとすれば早く公表する方向に踏み込んでいただきたい、重ねて指摘をしておきたい、そう思います。
 さて、次に大臣に質問をいたしますけれども、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する初の国際労働基準の採択を目指すILO総会について、この間の答弁を聞いていますと、批准するかどうかは採択後の決議を見て検討しますと答弁をしています。
 参加はするんだけれども、批准するかどうかはできてから検討しますと言っているんですね。でも、参加をしているんだから、当然、どういうものができるかというのはわかっているわけだし、どういうスタンスで臨んでいるかということがあると思うんですね。
 そもそもこの法案は、ILO条約批准を目指して出したものではなかったということなんでしょうか。

○根本国務大臣 今回の政府提出法案は、労働政策審議会において取りまとめられた建議を踏まえたものであります。
 ILOの、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約案は、本年六月のILO総会において議論された上で採択されることが想定されております。条約案については、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができる基準の内容となるように、日本政府としても、ILO総会の議論に引き続き積極的に参加していきたいと考えております。
 条約の内容は、本年六月のILO総会において更に議論が行われた上で決定されるため、現時点で一概にお答えすることは困難だと考えています。
 いずれにしても、仮に条約がILO総会で採択された場合、その批准については、採択された条約の内容などを踏まえて検討してまいります。
    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

○高橋(千)委員 このタイミングで法案を出して、政府も労働者側も参加しているわけですね、総会に。それで批准するかどうかわからない、けれども法案を出しましたというのは、おかしいじゃないですか。絶対おかしいですよ。批准するつもりでそれにふさわしい法案を出すんですと言わなければおかしいじゃないですか。
 九月二十五日の労政審で、ILOのみならず、女子差別撤廃委員会の勧告や社会権規約委員会の最終見解、自由権規約委員会の最終見解、それぞれ資料を出されました。そして、委員会の委員からは、ILO総会にそれぞれ私も参加しましたという発言があって、各国が大変熱い期待を持って参加をしている。そして、日本だけがその準備がされていない、禁止規定もされていないし救済の仕組みもされていない国だと指摘をされているという指摘はありますよね。だけれども、この総会に向けて、やはり批准できる方向でやるんだろうという期待も述べられているわけなんですよ。
 ところが、それに対して政府は、小林局長はその労政審に参加しておりますけれども、何にもコメントしていないんですね。それどころか、配っている資料にわざわざ、この勧告には法的拘束力はないと米印を全部につけておりますね。これは、最初からやる気がないのかと。参加はしているけれども、そもそも批准は無理だなと思って参加しているんでしょうか。

○小林政府参考人 我々としては、条約案につきましては、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができるような基準の内容となるということがふさわしいというふうに思っておりまして、そういった立場で積極的に議論に参加をしているところでございますし、引き続き参加をしてまいります。

○高橋(千)委員 今のは、批准したい、するためにという趣旨でよろしかったでしょうか。

○小林政府参考人 これまで示されております条約案につきましては、我が国国内法制との関係からいたしますと非常に難しい課題も含まれておるということは率直に認めざるを得ないと思います。
 そうした上で、条約案のあるべき方向としては、世界各国がそれぞれの状況に応じて効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができるようなものであるべしというのが我々の思いでございまして、そうした中で議論に参画し、そして適切な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 もう一回だけ、今度は大臣に聞きますね。
 結局、批准さえして実態が伴わなければ、それは私たちの望むところではないわけです。例えば、子どもの権利条約のときは、ふさわしいのかなという疑問があるままに、とにかくこれで大丈夫と批准してしまいました、国内法、大丈夫と。障害者の権利条約のときは、むしろ、当事者団体がとてもまだ今国内法的には批准できる水準にないんだといって、時間をかけようということで待ちました。
 ですから、もし今回この法案がすぐには批准できる水準ではなくても、批准を目指して取り組んでいくんだ、当然、一回で終わらないで改正も含めてという意味ですけれども、そういう決意でよろしいでしょうか。これは大臣に伺います。

○根本国務大臣 まず、今回の提出法案というのは、労政審で、ここでしっかり議論してもらった建議を踏まえた、それで我々政府提案の法案として出しております。そして、やはり条約案については我々のスタンスは、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができる基準の内容となるように、議論に積極的に参加していくというのが我々の基本的なスタンスであります。

○高橋(千)委員 世界各国ができているところがまずできていない、スタートラインが違うわけですから、その認識は、だめだと言ったら失礼ですけれども、足りないんじゃないかなと思っております。
 引き続き、中身で議論していきたいと思います。
 パワハラは、労働局の相談件数の中でもトップだと言われておりながら、いまだにその定義がありません。資料の3は、二〇一一年の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループで整理された六つの類型、それに対して、昨年三月の職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告において、その六つの類型がその上の三つの全ての要素を満たすことをパワハラとして整理をしたものであります。
 その三つを足して一つの文章にしたのが、労働施策総合推進法案の第八章、「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」のところで、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、」という条文に一つにまとまったというふうに承知をしています。
 もちろん、この下の中身についてはガイドラインなどで具体化されていくと思うんですけれども、なぜ三つ全てでなければならないんでしょうか。例えば、優越的な関係だというのと身体的若しくは精神的な苦痛を与えたというこの三つ目、それだけでも成立すると思うんですが、なぜ三つ全てなんでしょうか。

○小林政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御紹介いただきました、職場における優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって、就業環境が害されるということでございます。
 これはまさに、パワーハラスメントという言葉があらわしておりますように、基本的には、上司、部下のような関係の中で起こっているハラスメントというのを厳しく規定した上で厳格に対応していこうということの中で、それを一体として捉える表現としてこの三要素が適切であるということで定義されたものでございます。

○高橋(千)委員 納得できないんですね。この間の答弁を聞いていると非常にひっかかるところなんですが、セクハラは職場に必要ないけれどもパワハラは必要な場合があると言っているように聞こえるんです。
 建議は、セクハラもパワハラもマタハラも、さまざまなハラスメントは、労働者の尊厳や人格を傷つけるなど、人権にかかわる許されない行為であり、あってはならないと書いてあるわけですよね。それが貫かれるべきだと思うんです。なのに、業務上合理的な理由のあるものがあり得ると検討会の報告書にも書いている。
 これは、許されるパワハラもあるという考えなんですか。

○小林政府参考人 まず、許されるパワハラがあるということではございませんで、ここで言うパワハラと言われる行為というのは、被害者がパワハラであると主張している行為のことをここでは表現しておるものでございまして、必ずしもパワハラに当たるものではないものがここでは言われているというふうに考えております。
 許されるパワハラがあるという趣旨ではございませんで、業務上適正な範囲の指導かそれを超えたパワハラかというのが非常に判断が難しい場合があるという趣旨の意味でここでは記載されたものであるというふうに承知をしております。
 それで、このパワハラの非常に難しい問題は、通常、職場の中において業務指導というのは行われるわけでございます、あるいは人材育成というのも行われるわけでございまして、ある適正な範囲までの業務指導であるとかあるいは人材育成というのはむしろ健全な職場においては必要とされる部分があって、しかし、そうではないものについてはなくしていくというのが今回のパワハラの考え方でございますので、許されるパワハラがあるということを私どもとしては申し上げているわけではございません。

○高橋(千)委員 言っていることは同じなんですよ、私が言った表現と。職場のパワハラは、時には心身の健康や命すら危険にさらされる場合があり、職場のパワハラはなくしていかなければならないと報告書には書いています。命の危険もある、そうですよね、過労死事案の中にもパワハラがあったという訴えは非常に多いです。だけれども、命を落としても、それを認めてもらえていない、そういう現状があるんです。
 時間の節約で、次の質問を続けて言います。
 資料の4を見ていただきたいんですけれども、平成二十九年度の過労死等の労災補償状況。上が脳・心臓疾患の補償状況で、請求件数が八百四十件、うち支給決定が二百五十三件、認定率三八・一%。それに対して、精神障害の労災補償状況、請求件数千七百三十二件、支給決定は五百六件、三二・八%ですが、自殺が二百二十一件ございます、請求が。そして、九十八件認められていて、どちらも非常にふえている、年々ふえているということなんです。パワハラだということがなかなか認められなくて精神障害を起こした場合に、その中の一部に認めている件数がある。
 資料の5を見ていただきたいんですが、精神障害の出来事別決定及び支給決定件数、すごく細かくありますよね。事故や災害とか仕事の失敗とか、仕事の量がふえた、減った、役割の変化、そして、その中の対人関係、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた。二十九年度が百八十六件の決定に対して、支給決定は八十八件。これだけがパワハラとして認めているというのが実態ではありませんか。
 そして、その上の方も、よくよく見ると、パワハラに当たるものが随分あるんじゃないでしょうか。違いますか。

○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
 まずもって、パワーハラスメントという問題について、先ほど議員の方からもございましたとおり、働く方の人格や尊厳を傷つける、あってはならないものということで、メンタルヘルスの不調にもつながるということでございますので、今御紹介ございましたような形で、労災の認定ということにもつながっておるというものでございます。
 パワーハラスメントによっての労災請求がなされた場合ということにつきましては、心理的負荷による精神障害の認定基準に基づいて、業務上か否かの判断をして認定をしているということでございます。
 具体的には、被災者に生じた業務による出来事を、当該認定基準に定める心理的負荷表の具体的出来事の嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたということに当てはめて、例えば、部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われたというときは、業務による強い心理的負荷があったと認めているわけでございます。
 今般のパワーハラスメントの定義との関係も含めまして、今、そのような行為があった場合に、この認定基準に基づいて私どもとしては認定の判断を行っているということでございます。

○高橋(千)委員 業務上の範囲を超えているかどうか判断が難しいよねと言い、では、事例を積み重ねていって、平均的な労働者の感覚とはどうだろう、そうやって調べていくんだと今まで説明をしてきましたね。だけれども、平均的な労働者なんですよ、みんな。その人たちが、上司から言われたこと、仕事の量を極端に過大なノルマを出されたこと、仕事を干されたこと、事故の責任を全部押しつけられたこと、そういうことが原因だったと申請しても認められていない。そのことが、結局、それが事例となって範囲を狭めているんですよ。そういう関係にあるから指摘をしています。
 岩手県の二十八歳の青年が研究職で自殺をいたしました。両親が労災申請をしましたが、群馬労働局です、政務官にぜひ、業務外としました。調査復命書を見ると、亡くなる二年前に心療内科を受診したんですけれども、八十時間から百時間の時間外労働を確認しています。ですが、連続していないからといってこれを評価していません。
 上司から、二〇一五年七月ごろ、腰や腹を拳で殴られ、胸ぐらをつかみ壁際に押しやられどなられたほか、常態的に暴行やどなられていたと申し立てているのに、平手打ち一回だった、治療に至っていないから大丈夫とか、言動は強かったかもしれないけれども、業務の指導、叱責の範囲内だ、こうして調査復命書に書いているんです。
 よほど追い詰められてから治療にかかるというのが一般的ですけれども、そうなると、精神障害で労災を認めるには、発症前半年間の間に大と評価される出来事が必要となるんです。これだけの事実をつかんでも、それは小だねとか中だねというふうに、認定に足らないとされます。治療が実際に始まると労働時間が少なくなってきます。ですから、亡くなる直前は長時間労働になっていないわけです。だから、どちらからも評価されない。これは本当に、これまで繰り返されてきたケースと同じだなと思いました。
 職場と寮の往復以外にほとんど生活ができなかった。飲み会に幾ら誘われても、毎日毎日断っているんですよ、そのメールが残っています。そういう青年がみずから命を絶ったのに、それを労災として認めないというのは、やはり基準がおかしいとしか言えません。
 パワハラの予防、防止と言いながら、そもそもパワハラとは何だというときに、ここまで狭く限定してしまえば意味がないのではないですか。

○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の案件につきましての言及は差し控えさせていただきたいと思いますが、今般の法案におきましても、パワーハラスメントの定義につきましては、先ほど御紹介があったような、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害することを満たすものとされておるということでございます。
 先ほど御紹介しましたように、労災の精神障害の認定基準につきましても、この定義にも当てはまるような形で現在の心理的負荷の評価表が定められており、この具体的な出来事ということの当てはめの判断を行っておるところでございまして、私どもとしましては、この認定基準に適切に対応し、適切な判断ということを行ってまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 大臣、どう思いますか。今の表を見てくださったと思うし、別に個別の話に答えてくれなくてもいいですよ。NOパワハラ、あかるい職場応援団、いろいろやっていますよ、防止と言っていますよ。だけれども、これをパワハラだと認めないで前に進むはずがないし、防止措置を幾ら設けたって意味がありません。
 もっと見直しをするべきじゃないですか、実態に沿った対応をすべきじゃありませんか。一言お願いします。

○根本国務大臣 パワーハラスメントは、働く人の人格や尊厳を傷つける、あってはないものであります。そして、メンタルヘルスの不調などにつながり、最悪の場合、人命にかかわることもある重大な問題であると認識しております。
 例えば、嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたこと、これを主な出来事とする精神障害の労災認定件数、これは八十八件でありますが、そのうち十二件が自殺に至った事例となっております。
 その意味で、昨年七月に、過労死等の防止のための対策に関する大綱、これを閣議決定いたしましたが、過労死等に結びつきかねない職場におけるハラスメント対策として、実効性ある職場のパワーハラスメント防止対策の必要な対応を検討していくということを踏まえて、今回、我々政府提出法案で、パワーハラスメント防止のための措置義務等を設けることにいたしました。
 今回、我々の提示した法案、そして指針を含めて、今、高橋委員がおっしゃられたような状況なども踏まえながら、しっかりと対応していきたいと思います。

○高橋(千)委員 到底終われませんが、きょうは終わります。

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