国会質問

質問日:2005年 4月 6日 第162国会 農林水産委員会

水産資源確保法案-水産動物輸入の検疫の強化について

高橋千鶴子議員は6日、農林水産委員会の水産資源保護法改正案の質疑で、コイヘルペス病の大量発生などをあげ水産動物輸入の検疫は、もっと踏み込んだ水際での対策が求められると質問。農林水産省の中川坦消費安全局長は「輸入防疫についてこれまでの法律での規定の仕方あるいは実際の対応という点では必ずしも十分でなかった」とし、「全般的な水産防疫に必要な施策をきちんと講ずる」と法改正以上の対応をすることを明らかにしました。

(2005年4月8日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 平成十五年十月の霞ヶ浦、北浦でのコイヘルペス病大量発生を受けて、水産動物輸入の検疫強化と蔓延防止のための国内措置を強化する二つの法律改正は、基本的には賛成できるものだと考えております。

 ただ、水産資源保護法が平成八年、持続的養殖生産確保法が十一年、また、コイヘルペスがその中で特定疾病に指定されたのは平成十五年六月であります。その後の大量発生を防ぐことができなかったことは、この分野での対策が、どうしても発生してから対策を強めるという後追いになっていたことがまず反省点としてあるのではないかという点について、まず所見を伺いたいと思っております。

 とりわけ、書面による検査証明の審査のみでは、輸出国の検査をうのみにする以外にありません。この点では、今回の改正で、書面検査であることは変わりがないわけですね。輸出国の事情があって必要だとなった場合は隔離をするというようなことが措置されたわけですけれども、これは業者の方に、別個に隔離施設を設けなければならない、その他という新たな負担を求めるという点でもありますので、もっと踏み込んだ水際での対策がやはり求められるのではないかと思っております。

 この点で、大臣の所見を伺いたいと思います。

○中川政府参考人 今回御審議をお願いしておりますこの水産資源保護法等の改正案につきましては、平成十五年秋のコイヘルペスウイルス病の発生、それからその後の対応等を踏まえまして、専門家の方々にも半年間にわたりまして御検討いただいて、そういった検討の結果も踏まえて提案をさせていただいているところでございます。

 輸入防疫につきましては、やはりこれまでの法律での規定の仕方あるいは実際の対応という点では必ずしも十分ではなかった、そういう反省点も踏まえまして、一つは、用途なり成長段階を問わずにきちっと指定ができるように、指定の範囲を拡充をいたしましたし、また、検査証明書を補完する措置としまして、現に、その輸入先国の疾病の発生状況等の情報をきちっと踏まえて、必要があれば一定の隔離措置を命ずることができる、そういう措置を今回導入することとしたところでございます。ふだんから海外でどういう疾病が発生しているかといった点も踏まえまして、情報をきちっと把握をし、そして必要な対策をとっていくというのが大事だというのは先生のおっしゃったとおりだというふうに思っております。

 私どもといたしましては、今回の法改正案による対策に加えまして、全般的な水産防疫に必要な施策をきちっと講ずることによりまして、対策に抜かりがないようにしていきたいというふうに思っております。

○高橋委員 抜かりがないようにしていきたいというお言葉をいただきました。

 それに加えてですけれども、今回、新潟で非常に震災があったということで私も養鯉業者の方に施設を見せていただいた経緯がございましたけれども、天水を使っての大規模な養鯉施設で、その中でも、やはり水が絶対にまじってはいけないんだと、コイヘルペスを警戒して徹底した水管理がやられているという、そういうプロ意識というんですか、そういうものに対して非常に敬服をいたしました。

 同時に、ニシキゴイが世界を相手にしている商売であるという点で、日本は輸入よりも輸出の方が大きく上回っているという点でも、これは輸出においても、検査の徹底ということが当然ブランドを高めるという点でも求められているけれども、それがどうかということが一つと、それから、さっき天然水域の問題が出されましたけれども、やはり、こうした養殖施設というのはコイヘルペスが発見された中の六・五%にすぎないわけですよね。圧倒的に天然水域であると。だとすれば、やはりこの分野でのルートの解明、封じ込めというのが今後の対策においては決定的な意味を持つと。当然、それがあって、なければ一方的に河川管理者にだけ責任が負わされるというのは非常に大変なことであります。そういう点でのこの二点の責任、いかがでしょうか。

○中川政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、やはりコイヘルペスウイルス病、まず発生を早くキャッチをして、そして移動制限等の適切な措置をとるというのが、その基本をきちっとやるということに尽きるかというふうに思います。

 もちろん、ワクチンの開発とかそういった対処措置についての研究開発もいたしておりますけれども、今申し上げましたような基本のところが、現場、それから都道府県、そしてまた国民、国の段階におきましてきちっとできますように、改めて注意をしていきたいというふうに思います。

○高橋委員 やはり、それだけ被害が甚大だったという、起こってわかる被害の甚大さということをあわせて言わなければならないと。霞ヶ浦、北浦の業者の多くが全量処分に二千四百六十七トンを余儀なくされ、また十三業者が廃業という非常に甚大な被害になったこと、また三十九都道府県に影響を及ぼしました。山形県などでは、養殖業は百四十七トンなんですけれども、加工においては九百四十トン、十四億一千万の売り上げがございまして、この分野がやはり大きなウエートを占めているわけです。

 ただ、例えば、では、霞ヶ浦に大きく依存していたと。新たな養殖施設を自前で模索をするということもされたわけですけれども、実際には、やはり気候的なハンデが大きい、コスト面のハンデも大きいということで、これをやろうとしているのは今二つの経営体にすぎないということを伺っております。また同時に、コイのうま煮を出しているわけですけれども、それによって料亭が選ばれるという、そういう食文化ということが根づいてきた上での被害なんだということもあるわけですね。

 ですから、単純に魚種の転換や、あるいは施設を別個に移しかえるということが容易ではないという事情が非常に多く横たわっているんだと。そういうことをしっかり踏まえて、養殖業の被害の対策と同時に、関連する加工業者などに対する対策についても十分な措置を求めたいと思いますけれども、この点で大臣の所見を伺いたいと思います。

○田原政府参考人 お答えいたします。

 まず、養殖業者の方々の経営対策ということでございますが、コイ養殖業者の方が養殖を実際に再開するという場合でございますと、例えば、取水施設など防疫に配慮した共同利用施設の整備ですとか、出荷する際の検査や安全性に対する普及啓発の取り組みに対する支援ですとか、さらには長期低利の資金の融通、こういったこと等によりまして、養殖経営の再開といいますか、そういったことの支援等を行っておりますし、また、コイ養殖を廃業する場合に、漁場環境の保全、改善を図るための網生けすの撤去ということでの支援、こういったこと等も行っておりまして、こういったことを各地域の実態に合わせながら、御相談申し上げていきたいと思います。

 また、先生の方から、加工の方あるいは流通の方といふうな御指摘がございましたけれども、これにつきましても、現在、加工資金でございますとか、いろいろな施設助成という仕組みがございまして、これは各県とも実態をよくお聞きしながら、どういう御支援ができるかという点についてはよく協議をさせていただきたい、かように考えている次第でございます。

○高橋委員 これから気温が上がるにつれて再発に対する不安が非常に大きくなっておりますので、十分な対策をお願いしておきたいと思います。

 次に、ノロウイルス対策について伺いたいと思うんです。発生においてサルモネラに次いで多く、患者数では第一位と言われているわけです。高齢者の施設で発生が起き、また死亡者があったということで非常に注目をされたわけですけれども、そういう施設で生ガキを食べたというものではないだろう、単純なものではないと思うんですけれども、カキが非常に悪者にされて、それによる風評被害などということもまた聞こえてきているわけです。

 そうした点で対策を求めたいと思いますが、まず一点目に、厚生労働省に対して、輸入魚介類が非常にふえている中で、その検疫におけるノロウイルス基準を明確にして水際対策を強めるべきだと考えますが、その点で伺いたいと思います。

○外口政府参考人 厚生労働省では、これまでノロウイルス食中毒対策に資するために、ノロウイルスによる食中毒の発生状況を適切に把握するため、平成九年から食中毒統計の対象に追加し、食中毒が発生した際に被害の拡大を防止するため、輸入食品を含め、生食用カキに採取海域の表示を平成十年から義務づけ、研究費補助金により食品等からの高感度検出法の開発、食品やカキの養殖海域等における汚染実態調査等を行い、さらにノロウイルスによる食中毒や感染症の予防に資するため、最新の知見を踏まえたQアンドAを作成し、厚生労働省のホームページや都道府県等を通じた国民への情報提供を行ってきたところであります。

 現在の課題は、ノロウイルスについては、どの程度ウイルスを摂取すると発症するのかについての知見が限られており、カキに含まれるウイルスの効果的な不活化方法やウイルス培養系も確立していないこと等から、食品衛生法における規格基準を作成するために必要なデータ等が不足しており、また、国際的な基準等も存在しない状況であることであります。

 厚生労働省としては、今後とも、ノロウイルスに関する調査研究を重ねて、リスク管理方法等について検討するとともに、食中毒発生状況も踏まえながら、国産及び輸入魚介類の食品安全対策に努めてまいりたいと考えております。

○高橋委員 この点は強く要望しておきたいと思います。

 せんだって、三陸の広田湾の方にカキの問題でいろいろなお話を伺ってきたわけです。築地から個別の料亭で特別に選ばれるようなブランドとして発送されていると。非常にそのための努力、また同時に、ノロウイルス対策としては、自主検査を行い、出荷前の検査や、徹底してそれを侵入を防ぐ問題や、あるいは沖合漁業での浄化試験などを県として取り組んでいるなど、そうした努力がされているということがよくわかりました。

 また同時に、漁業者の皆さんから出された要望として、下水処理とカキの汚染の関係なんですね。カキを汚染させる経路として、下水処理場や個別浄化槽などで処理し切れず残存したまま河川に流入し、養殖海域でカキに取り込まれることが原因の一つという指摘もされ、それに対するいろいろな研究なども現在されているところだと思いますが、そこで、養殖海域に直結する河川の集落排水等の検査や、あるいは処理水の浄化を高める対策について当然とるべきと思いますが、その点の見解を伺いたいと思います。

○田原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、特に漁業集落排水施設ということになりますと、養殖漁場に近いということでございまして、ノロウイルス対策上、そうした問題も非常に喫緊の課題であると私どもも認識いたしております。

 ただ、このノロウイルスの問題は、先ほどの厚生労働省からのお答えにもありましたけれども、活性ウイルスと不活化したウイルスの区別の測定、こういったことの技術が確立されていないというような問題ですとか、実験室での培養ができないとか、いろいろな、なかなかわかっていないような点も多いということでございまして、いまだ有効な処理方法は確立されていないという状況であるというふうに伺っております。

 水産庁では、平成十四年度から学識経験者を交えまして、漁業集落排水施設におきます紫外線を利用したノロウイルスの不活化に関する調査検討、こういったことも行っておりまして、こうした調査結果を踏まえながら、私どもが行います集落排水施設に対する対策、こういったことを講じていけるように努力していきたい、かように考えている次第でございます。

○高橋委員 時間が来ましたので、よろしくお願いいたします。

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