国会質問

質問日:2019年 4月 10日 第198国会 厚生労働委員会

強制不妊/再発防止へ検証必要

 日本共産党の高橋千鶴子議員は10日の衆院厚生労働委員会で、旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者に対する一時金支給法案について「法案はスタートにすぎない」と強調し、「問題はいかに一人でも多くの被害者に(一時金を)届けるか。なぜこうしたことが起こったのかを検証することだ」と主張しました。
 高橋氏は、1948年に成立した旧優生保護法が96年に廃止されるまで国会がほとんど関与しなかった「立法不作為」が問われていると指摘。一時金支給法案をまとめた超党派議員連盟は設立趣意書で、強制不妊手術を「基本的人権である自己決定権や幸福追求権(憲法13条)に対する侵害」ととらえているとして、政府の認識をただしました。根本匠厚労相は「旧優生保護法は係争中のため、見解を述べることはさし控える」と答弁を拒否。高橋氏は重ねて政治決断を迫りました。
 高橋氏は、青森県が独自の調査で強制不妊手術に関するメモを生活保護・児童・障害などの相談台帳から見つけ出したと紹介。被害者への一時金支払いでは、自治体の協力が不可欠として自治体への財政支援も含め着実に進めるよう要求しました。また、再発防止のために旧優生保護法を生んだ時代背景や国会での発言を明らかにする検証作業を進める必要性を強調しました。根本厚労相は「法案成立後、一時金の着実な支給に全力で取り組む」と答えました。
(しんぶん赤旗  2019年04月11日付より)

―議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、優生保護法下の強制不妊手術についての委員長提案を想定とした一般質疑をされていると思います。私もそうしたいと思います。
 議員連盟を昨年三月に立ち上げ、法案作成PTの一員として私も参加をしてまいりました。最初は、正直、まとまるのかと不安なときもありました。ただ、先ほど西村座長からの報告もあったように、超党派の議連であり、参加をしているどの議員の方も、国会の責任、議員立法である、全会一致である、その責任を本当に重く受けとめて、責任を果たさなければならない、そういう立場で取り組んできたと思っています。
 決して満点ではありません。原告を始め当事者がいて、その方たちのために法案をつくってきたはずなのに、残念ながら、現時点では喜んでもらえるものとなっていません。
 では、どうするのか。法案はスタートにすぎません。議員立法として四八年に成立してから九六年の廃止まで、国会がほとんど関与しなかった立法不作為が問われているのです。一時金が極めて少ないとの指摘もあります。できればもっとふやしたいと、それは思います。
 ただ、対象をなるべく限定しない、一律支給というところにこだわった。認定制度によって厳しくはじかれることのないように考えたわけです。また、損害賠償を求めている訴訟とは別であること、つまり訴訟を縛るものではないということを明らかにすることも大事なことでありました。
 問題は、いかに一人でも多くの被害者に届けるか、そして、なぜこうしたことが起こったのか、再発防止のためにこれを真剣に検証することが求められている、このように思っております。
 資料の一枚目を見てください。これは、昨年の三月五日の超党派の議員連盟の設立趣意書です。全部読みたいですが、アンダーラインのところだけ読ませていただきます。「ナチスドイツの断種法を参考にしたという、優生思想に基づく旧優生保護法は一九九六年に優生思想に基づく条文を削除するなどの改正を行った上、母体保護法と改められました。しかし、優生手術を強制された被害者にとっては、結婚が破談となった方や、子どもを産み、育てるという夢を奪われた方、今でも健康被害を訴える方もいます。これらの行為は基本的人権である自己決定権や幸福追求権(憲法十三条)に対する侵害であることは明らかです。国からの正式な謝罪もなく、補償なども行われていません。」こうした認識のもとに、下の方に書いてありますが、「これ以上、被害者の方々を苦しめ続けてはなりません。人としての尊厳を守り、人権を回復していくためにも、支援を検討する必要があります。」と。
 まだここでは立法化ということは出ていないんですけれども、そのために必要ないろいろな調査や、それから当事者からいろいろなヒアリングをするんだ、こうしたことを決めての設立趣意書だったわけです。
 大臣に伺いますが、これまで厚労省は、当時は適法だった、合法だったからという答弁を繰り返してきました。今でもそうでしょうか。この議連の、これは超党派ですから歴代の厚労大臣も入っております、設立趣意書の趣旨に賛同いただけるでしょうか。

○根本国務大臣 旧優生保護法については、今委員から既にお話がありましたように、昭和二十三年に全会一致で議員立法により成立したものと承知をしております。
 今回、ワーキングチームあるいは超党派の議員連盟の皆様が本当に取り組んでいただいて、今まさにこれから法案が成立されることになるかと思いますが、その意味では、この設立趣意書は、私は今見させていただきましたけれども、議員立法で今回こういう対応をしていただいている。その意味で、私は、この今回の法律のもとで、しっかりとこの法律を施行していく、取り組んでいくということが大事だと思っております。
 そして、この旧優生保護法については、現在、国家賠償請求訴訟が提起され、係争中でありますので、私の方から政府としての見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

○高橋(千)委員 率直に言って、PTの議論の中で今の厚労省の答弁を何度も聞いてきたから、それが大きな壁になったんです。だから大臣に聞いています。政治家としての大臣に聞いています。
 当時、法律が確かにありました。でも、それで、今さまざま検証されてきて、だましてもいい、そういうことまで通知を出して、本来その法律に基づいても対象とならなかった人まで手術をされた、そうしたことはもう既にわかっているはずですよね。それでも、今でも、あのとき合法だったからいいんだという立場に立つのか。私たちは、それを乗り越えるために議論をしてきました。
 政治家である大臣にもう一度伺います。

○根本国務大臣 繰り返しになって大変恐縮ですが、旧優生保護法については、現在、国家賠償請求訴訟が提起され、係争中でありますので、今、大臣としてということもありましたが、政府として見解を申し上げることは差し控えたいと思います。

○高橋(千)委員 極めて残念な答弁であります。
 政治決断が、やはり法律というのは、議員立法というのは、どこかで政治決断が求められると思うんですね。
 結局、裁判というのは、一つ終われば、いや、別の地裁もあるからとか、最高裁まで行かなきゃとなったら、もう、絶対時間稼ぎになる、間に合わないんですよ。だからこそこういう議論をしてきたわけです。ですから、大臣自身がこの現実をきちんと受けとめていただきたい。このことを重ねて指摘したいと思います。
 昨年三月二十八日付で、政府は、各都道府県に資料の保全を求める通知を出して、四月十二日付で資料の確認及び保全について依頼する通知を発出しました。
 これについては、最初、与党PTの求めによるというもので説明をされたわけですけれども、調査をする時点で、議連としては、調査の費用をまず国が補助すること、あるいは、対象を広げて、医療機関だとか福祉施設だとか、後でわかる児童相談所とかいろいろあるわけですよね、調査の範囲をできるだけ広げることを求めてきたわけですが、その点でも、厚労省は極めて消極的な姿勢でありました。
 青森県の健康福祉部によると、国が所有する台帳では二百六件の優生手術がされたとしているものの、手元に残る資料は百四十八件だったんです。だけれども、その資料を調査するために、実際には、さっき言ったように国は消極的なんだけれども、県としては関係機関にさまざま依頼して調査をしてくれました。年度末の大変忙しい中でありました。国は一切お金を出さないわけですけれども。
 でも、その中で、とても大事な資料が出てきたんですね。生活保護の相談台帳から十件、児童相談から四件、障害福祉サービスの受給相談の台帳から五十件。つまり、聞き取りをしていく中で、かつてそういうことがあったということを打ち明けた。それは、多分相談を受けたときはまだこういう議論をしていなかったと思うんですが、そのメモを見つけ出した。これは本当に貴重な取組だと思うんです。
 厚労省がこうした事例を承知しているのかということと、今後、立法化し、一時金をお支払いすることになったとしても、自治体の協力なしには絶対進みません。財政支援も含め、どのように自治体の協力を仰いでいくのか、考えをお聞かせください。

○根本国務大臣 厚生労働省が昨年実施した調査において、今委員からお話がありましたが、青森県から、生活保護台帳、児童保護台帳、青森県障害者相談センター資料に優生手術に関する情報が含まれていたとの報告を受けております。御協力をいただきました。
 今回の法案では、都道府県が請求の受け付けや記録の調査、相談支援等の業務を担うこととされていると承知をしております。一時金の支給事務を円滑に実施するためには、委員御指摘のとおり、都道府県の協力は不可欠と考えています。
 また、そのような観点から、都道府県の行う事務処理に必要な費用については国が交付することとされていると承知をしております。
 厚生労働省としても、この法案が成立した後、速やかに都道府県との調整を開始するよう要請を受けたことも踏まえて、都道府県に対して事務説明会を、これを三月十八日に開催しましたが、行うなど、都道府県の協力のもとに円滑な法律の施行ができるよう準備を進めております。
 法案が成立した場合には、厚生労働大臣として、一時金の着実な支給に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 成立と同時に公布をし、施行していくということで準備を進めてくださっている、これはありがたく思っております。
 やはり、それぞれの県が頑張っていることをしっかりと評価していただいて、仕事がふえるわけですから、それにきちっと交付をしていく、そして相談がしっかりできるように対応していただきたい、このように思います。
 資料の2のところに改めて優生保護法の条文をつけておきました。この第一条が、「この法律の目的」とあるんですけれども、「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」と。
 この「不良な子孫の出生を防止する」という言葉、この条文を読んだときに、これをなぜ我が党も含め全会一致で議員立法で成立したのか、本当に驚いたし、悔しいし、明らかにしていく責任があると思っています、この経過について。
 そして、各報道機関も資料の掘り起こしに努力をされているわけですけれども、例えば毎日新聞が昨年の六月二十五日付で、強制不妊手術、三十四都道府県の情報公開による開示資料、これを細かく報道されております。
 その中には、やはり青森県の審査会の中での意見があったことですとか、あるいは、六九年発行の医学雑誌、日本医事新報の中で、県の現場では手術に対する疑問の声が表面化をしていた、ここの審査会の委員が、この資料の右側の方、四条のところが、要するに同意がなくてもいいということですとか、そうしたことに対して、憲法違反なのではないか、こうした意見を出しているということに対して厚生省が、当時は厚生省、回答をしなくてもよいというふうに答えたなどの記録があったと言われています。
 厚労省には、こうした疑義照会などの記録があると思うんですね。今回、こうしたものは全て公表すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○浜谷政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の件ですけれども、九〇年に精神科医らでつくる学会が青森県に出した質問書につきまして、「県は旧厚生省と打ち合わせたうえで、回答する必要はないとした文書を残している。」こういった報道がなされていることは承知をいたしております。
 厚生労働省におきましては、昨年、疑義照会への回答も含めまして、厚生労働省内において保有する旧優生保護法に関する資料を調査いたしまして、その結果、確認できたものにつきましては、個人情報等に該当する部分をマスキングした上で公表いたしました。
 御指摘の内容に係る記録につきましては、この調査におきまして確認できませんでしたので、公表資料には含まれておりませんけれども、別途、青森県におきまして保有していることは確認できております。
 今回の法案におきまして、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等について調査を行うこととされているというふうに承知をいたしております。
 今後は、厚生労働省が保有していない過去の通知等につきましては、保有が確認された都道府県から提供いただくなど、必要に応じてこういった調査に協力、対応してまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 資料の一番最後に、昨年七月十一日付の東奥日報、ちょっと字が、縮小したのでとてもちっちゃくなっておりますけれども、左側の下の方に「担当局長 七三年に疑問視」ということで、そもそも、精神疾患のことを遺伝性だ、精神薄弱などを遺伝性などという医学的な見解がないのだ、根拠がないのだということなどを議論しただとか、あるいは厚生省の中からも疑問の声が上がっていたというふうなことが記事になっているわけですけれども、そうした今の審査会の委員の質問も含めて立ちどまるチャンスが幾らもあったのに、どうして突き進んできちゃったのか、このこともやはり、国会がどうだったのかも含めて検証する必要があるというふうに考えているんです。
 それで、この記事のメーンは、提案した方、あるいは当時どんな議論をしたのかということを書いているんですけれども、提案者である谷口氏の当時書いたものは、ちょっと読みにくいんですが、資料の三番目につけておきました。
 アンダーラインを引いているんですけれども、これも議連で、PTで勉強会をしたときに、産児抑制が強化される中で、このままでは優良な子孫が減って不良の子孫がふえるという逆淘汰が起こるのではないか、そういうことを考えて人口増加の抑制、出生の制限を行う以外にないということで議論をしていたということがわかっているわけなんですね。本当に、そこまで主張していたのかということに改めて驚くわけであります。
 この議論を最初に始めたときは、やまゆり園の事件もありましたけれども、今現在だって優生思想はあるんじゃないか、そういう問題意識を私たちは持っているわけですよね。そのことも含めて、再発防止のためにはこうした時代背景や国会での発言も明らかにしていく必要があると思うんですけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

○根本国務大臣 旧優生保護法は昭和二十三年に全会一致で議員立法により成立をしたものと承知をしております。
 今委員が御紹介されたように、どうしてこういう法律が制定されたのか、その理由も今、資料でお配りされております。あるいは、当時の提案理由説明などにもその背景が書かれていると思いますが、この議員立法に至る背景、その意味ではさまざまなものがあったのではないかと考えられますが、いずれにしても、今のお尋ねについては政府としてお答えする立場にはないと考えております。

○高橋(千)委員 ちょっと今の答弁は驚いたんですが。さまざまな背景がある、しかもお答えする立場にない、それは違うでしょう。それは違うと思いますよ。
 残念ながら時間が来てしまったので終わりますけれども、結局、誰がこれを検証するのかということを議論したときに、では、最後は国会が国会の責任でやろうということを決めたわけです。そのときに、当然それは、政府がその当時どんなことを言ったのか、国会もどういうことを言ったのかも含めて明らかにしていかなければいけない。少なくとも、前の大臣などが述べた再発防止という立場などは共有していただけると思うんですが、そういう意味で、大臣の誠意ある回答が得られなかったなということは非常に残念に思っております。
 時間が来てしまったのでもう言いませんけれども、きょう、資料に、4、5、6ということで、河北新報の、当時、最初に訴えてくれた方たちがどんな思いでしてきたのかという記事も載せておきましたので、見ていただいて、最後に大臣の御発言がありますから、少しそこに心を込めていただきたいなと決意をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。

―資料ー

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