国会質問

質問日:2005年 4月 21日 第162国会 農林水産委員会

農業経営基盤強化法質疑/採決-株式会社の参入問題について

衆議院農林水産委員会は21日、株式会社の農業参入促進をはかる農業経営基盤強化促進法「改正」案を自民、公明両党の賛成多数で可決しました。日本共産党、民主党、社民党は反対しました。

この法案は、農地を特定の農業者に集中させたり、株式会社などの法人にもその利用を認めることなどを定めています。

日本共産党の高橋千鶴子議員は、株式会社の参入について、(1)資金や組織力を持った企業がいっそう競争力を強化し、中小の家族経営農家が結果として追いやられることになる、(2)農地法の根幹である耕作者主義(農地はその耕作者みずから所有することが最前だとする考え方)の否定につながる、(3)農地荒廃など地域農業への弊害も否定できない--などの問題を指摘しました。

質疑で農水省の須賀田菊仁経営局長は、参入する特定法人が「担い手」として位置付けられることを認めました。さらに「(法人参入で)農業がもうかるものとなるのか疑問なしとしない」とも述べました。

(2005年4月22日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、担い手問題を中心に質問をしたいと思います。

 経営基盤強化促進法改正における最初のポイントが、担い手に対する農地の利用集積の促進であります。この担い手の要件についてはこれまでも議論をされてきたところであります。

 「地域水田農業ビジョンの取組を集落レベルのものとして法制度化」する。これは、須賀田経営局長が二月十日の企画部会で説明をする際に使った「農地制度の改正について」、この資料の真っ先に出てくる部分であります。担い手への集積の割合が三六%にすぎない、水田の分野が著しく担い手の集積が低いということをお話しされていると思います。

 私は、今回、米改革を最初に始めた、つまり先行して始めたということは、やはり担い手の集積がおくれているこの分野から改革を進めていこう、そういう意図だったのかなというふうに思って受けとめました。

 ただ、この改革はまだ始まったばかりであり、地域水田農業ビジョンの策定はどの自治体も協議会も大変急いだ、期限に合わせて急いだという経過がございます。担い手をどう規定するか、交付金をどのように交付するかは地域の協議会に任されたので、かなりばらつきがあります。認定農業者を基本的に担い手と位置づけたところや、それだけではなく、さまざまな農家を担い手と位置づけたところ、さまざま相違があったかと思うんですね。

 ただ、その相違がどうなっていくのか。これらとの関係ですね。ビジョンでは担い手と位置づけられた農家が、例えばはじかれていくなど、現場での混乱が避けられないと思いますが、この点をどのようにされるのか、伺います。

○須賀田政府参考人 担い手論についてのお尋ねでございます。

 私ども、新たな基本計画においては、担い手というものを、農業でどのぐらいの所得を上げれば自立し得るかという観点から議論をいたしました。そして、他産業並みの所得を上げ得る経営を目指す農業経営を、認定農家制度というのがあるわけでございますけれども、これに、客観的な一定の要件を満たす者とそれから経営体の実体を持っている集落営農を担い手としよう、こういうふうに結論づけたわけでございます。

 先生お尋ねの地域水田農業ビジョン、これは昨年度、十六年度から実施しております米政策改革の一環として、その集落の水田営農をどのようにしていくか、どういう作物をだれがどのようにつくるかという観点から作成をされておりまして、そのだれがの部分、営農主体は、必ずしも所得との関連でございますとか、そういうものを考慮したものではございません。現実に、水田集落のうち、八万ありますけれども、四万には主業農家はいないというような状況もございます。

 したがいまして、この地域水田農業ビジョンでリストアップされている担い手、これは二十七万経営あるわけでございます。このうちの五割強は認定農家になっていないというふうな現実がございまして、必ずしも私どもが進めたい担い手とは一致しておりません。ただ、この水田農業ビジョンでリストアップされた方々というのは予備軍にはなり得るというふうに思っておりまして、こういう方に対して、行政と団体が一体となって働きかけまして、この発展可能性、認定農家になってください、あるいは集落営農の核になってください、こういう働きかけをして、できることなら認定の努力をされて認定農家まで昇華していただければなというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 その働きかけその他を三年で大体終わっちゃうという見通しを持っていらっしゃると思うんですね。

 ですから、私が聞いているのは、現場での混乱が避けられないと思っているんですけれども、ビジョンが有効に働いているのかどうかの検証がまず先ではないかと。局長も今お話しされたように、二十七万経営が、進めたい担い手と一致していないことや五割くらいしか認定農業者がいないとか、そういう問題がまずあるし、そもそも、農水省の十四年度の調査でも、今後の法人化に対する意向を調査したときの集落営農の人たちは、七割以上が法人化に対して否定的であるというようなこともあるわけですよね。こうしたことを考えて、期限を区切って法人化を義務づけるということが果たしていかがなものかということがあり、そして、必ずしも法人とならなくとも、地域で農業を担っている営農組織、これをきちんと位置づけることも考えるべきではないかと思いますが、いかがですか。

○須賀田政府参考人 私どもの目的は、やはり農業で食べていけるようなちゃんとした経営体をつくりたい、これが目的でございます。

 ただ、今、個別経営の大きな経営、あるいは法人経営の大きな経営を求めても、直ちにそれができるという状況にはないということで、その前段階でそういうちゃんとした経営体、法人経営体を目指すようなものも担い手としたい、これが集落営農なわけでございます。やはり、きちっとした組織下で、ちゃんと収入を管理をして、経営手腕のある人が経営をして、ちゃんと分配をしていく、こういう法人経営になりますと銀行もお金を貸してくれますし、信用力も上がるわけでございます。そういうことを目指していくという計画のある集落営農を私どもとしては担い手として認めていきたいということでございます。

 ただ、期限の点については、今全国運動をしておりますので、地域の実情というようなことも十分勘案しながら、何年後にというのは今後議論の余地がある問題であるというふうに思っております。

 確かに、現在農家、すぐ法人というと、自分らがちゃんと入れないんじゃないかということで拒否感があるわけでございますけれども、ちゃんと配当が受けられるんだとか、その中で一定の役割を果たすんだとかということに考えを変えていただければ、そう嫌悪感はなくなるんじゃないかというふうに思っている次第でございます。

○高橋委員 時間が短いですので、もう少し簡潔にお願いいたします。

 今お話しされた、経営体をつくりたいとおっしゃいましたけれども、それが食べていけるかどうかということがこの後に問われてくるだろうなと思います。

 ちょっとそれはおいておいて、次にかえますから、一言で答えていただきたいんですけれども、特定法人について。リース特区の全国展開により、今後参入されるであろう特定法人が担い手となり得るのか、直接支払い制度などの対象になるかどうか、お願いします。

○須賀田政府参考人 物によってはなり得ます。

 特区に入ってきた法人も認定農家として認定されているものがございます。それはやはり、農業者が社長であるとか、従業員が農業者であるとか、その地域で将来にわたって持続的に経営ができるというような実態を踏まえて市町村が認定しているようでございます。小豆島のオリーブの関係の農業をしている方とかが認定農家になってございます。

○高橋委員 今のは確認だけでよろしいです。

 物によってなりますということでしたので、株式会社が担い手になり、支援の対象になるということがあり得る、これがまた今後の全国展開、その後の要求されている農地法の見直しなどで、結局あそこがねらいだったのか、そうなっていくのかという議論がまたされてくるわけですから、ここはひとつ確認だけにしておきたいと思います。

 もう一度戻りますけれども、直接支払い制度ですね。これが、一方では株式会社もあり得るよと、お話が一つありましたけれども、財界などでは、経済同友会などでは、やはりこの制度は、つまり品目横断型直接支払い制度は、あくまでも激変緩和措置であって、せいぜい五年程度など期限を区切って終わるべきだ、そういうふうな意見がございますが、その点に関してはいかがですか。

○須賀田政府参考人 二〇〇四年の十二月二十二日に経済同友会が提言をしております。その中で、この直接支払いにつきまして、例えば十年を経過したとき、作付面積が相当程度の大規模に達したときには助成を終了することが望ましいという提言がございまして、その終了の基準は、農業の国際競争力の向上の程度、国境措置の水準などを考慮して決定すべき、こういう提言があるわけでございます。

 経済同友会のこの提言の趣旨ですけれども、経営規模が飛躍的に向上して、国際的に遜色のない水準まで生産性が向上して直接支払いの必要がなくなればこれを終了する、こういうことを言っているわけでございます。品目横断経営対策の目的も、構造改革を加速化して生産性を高めてコストダウンを図るわけでございますので、国際的に遜色のない水準まで生産性が向上して直接支払いの必要がなくなれば終了するというのは、理屈、考え方としては普通のことを提言されているんだと思うんです。

 ただ、実態はそのように理想的に進むかというと、なかなか難しい点もあるわけでございまして、こういう仮定の論議を進めるよりも、現実的にどうやって担い手を明確化してどうやって支援をしていくか、こういう現実論に立って政策を展開したいと私は思っております。

○高橋委員 直接支払いという所得政策は生産者の向上意欲にマイナス効果を与えると企画部会の生源寺部会長御自身がおっしゃっておられますし、今のお話からいっても、将来的には当然なくなるものだろう、経営のリスクを補う所得政策というのは国民の理解もなかなか得られないだろう、逆に言えば、生産者の意欲にも結びつかないだろうというふうに、わかっているけれどもそれをやる、今とにかくやるというその背景には、今るる局長お話しされました国際交渉の上での競争力ということがあるかと思うんですね。それは、既に二〇〇一年の八月に農水省が出した「農業構造改革推進のための経営政策」、この中でも、「経営リスクを軽減するセーフティネットを構築する必要がある。」とうたっているわけですけれども、それに対して、昨年の五月の経済調査協議会で、遅過ぎる、WTOやFTAにおいての難局をこんな言い方では打開できないということで、「国境措置の転換に伴って予想される国内農産物価格の低下への対処という目的を明瞭に打ち出すべきである。」こういうふうに指摘をしているわけですよね。

 そうすると、国境措置はもうなくなるんだと、極端な話ですけれどもね。そういう中で、競争力に打ちかって、ではだれが残っていくのかということが本当に問われてくると思うし、私はやはり、そうなっていったときに、工業製品も農産物も違いがなくなるだろう、同じものになるだろうというふうな気がします。農地法が、それは最後のとりでではないかと思いますけれども、その点について、最後に大臣に所感を伺って終わりたいと思います。

○須賀田政府参考人 先生まさに、担い手を明確化してそれを対象にして品目経営横断対策を講ずるというのは、もう厳しい国際規律が来ても大丈夫なように、担い手をしっかり位置づけて、その担い手が相当な構造を占めるようなものにしたいというねらい、先生の問題意識に対処するための答案なんです。そういうことをよく理解していただきたいというふうに思っております。

○高橋委員 次の機会に譲ります。

 終わります。

 

【反対討論】

○高橋委員 私は、日本共産党を代表して、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。

 反対の主な理由として、第一に、担い手として一般株式会社の農業参入を促進するということです。

 新たな食料・農業・農村基本計画は、一定の要件を満たした認定農業者等に担い手として施策を集中するとし、本法案では、これに基づき、担い手への農地の集積を位置づけました。株式会社も担い手だとなれば、品目横断型直接支払いなどの支援の対象となり、資金力や組織力を持った企業が一層競争力を強める一方で、中小の家族経営が結果として追いやられていくことになると思われます。

 第二に、農地法の根幹である耕作者主義の否定につながることです。

 特定法人貸付制度の導入により、市町村が指定すれば全国どこででも株式会社がリースにより農地の権利を取得することが可能となるからです。また、農地法のもう一つの柱である農地転用規制の根拠を失うことにもなり、農地法の全面見直しあるいは廃止へと道を開くものだと考えます。

 第三に、農外企業の参入による農地、地域農業への弊害を否定できないということです。

 そもそも、リース特区による影響、弊害などについて十分な検証がないまま全国展開に踏み切っていいのかということが問われています。現実に、特区以外でも、大企業が農業に参入したものの、短期間で撤退する事例は相次いで起こっております。収益が上がらず撤退となった場合、新たな自治体負担や農地荒廃の危険性を否定できないものです。

 以上のことから、本法案に反対であることを表明し、討論といたします。

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