国会質問

質問日:2006年 3月 1日 第164国会 予算委員会

WTO問題、担い手問題 ―分科会

農家の声聞き交渉を

 日本共産党の高橋千鶴子議員は一日、衆院予算委員会の分科会でWTO(世界貿易機関)農業交渉について質問し、農家の声や国民の合意に基づき交渉するよう求めました。

 WTO交渉では現在、四月までの「各国共通ルール」確定に向け、協議が続いています。農業分野では、関税の削減割合を緩める重要品目の範囲をめぐり、日本、米国、欧州連合(EU)などの意見が対立しています。

 高橋氏は、重要品目のうち主要な品目を1%(13品目)に限定する米国提案は、コメ類だけでも17品目ある日本の現状にそぐわないと指摘。米国が、現行年間77万トンの低関税輸入枠の大幅拡大(推計600万トン)を求めているとの報道も示し、「この10年に輸入された量を一年で上回るもので、とうてい受け入れられない」と述べました。

 中川昭一農水相は「守るべきものを守るのが政府のスタンス」と答弁。高橋氏は、WTOの枠組みでも4兆円(02年)まで認められている国内助成を7300億円(18%)まで削減し、それを「攻め」の交渉の切り札としていると批判、国内の生産者への対策まで「削る必要はなかった」と指摘しました。

(2006年3月2日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

国内農業担い手特定 -農水相が遅れ認める

 高橋千鶴子議員は1日、予算委員会分科会で、政府が今国会に提案している国内農家への経営所得安定対策について、助成条件となる「担い手」の特定が遅れていると指摘、集落営農では経理の一元化、「主たる経営者」を決めることなどが「高いハードルになっている」と述べました。

 農水省の井出道雄経営局長は「西日本の場合は、ほとんどないのが実情だ」とのべ、遅れている状況を認めました。

(2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今、WTO交渉が四月までのモダリティーの確立に向け、山場を迎えていると思います。私も、我が党の紙智子参議院議員とともに、WTOに関する議員会議・香港会合のオブザーバーとしてではありますが、昨年十二月の香港行動に参加をさせていただきました。

 私たちが参加をした会議では、各国の国会議員が本当に熱心な討論をし、そして、その採択宣言の中に、農業は単に経済の一分野ではなく、数億人の人々の生存そのものの基盤でもある、このように明記をされました。私は、この視点が今交渉の場においても本当に大事ではないかと考えております。

 大臣は、これまで交渉に当たって、守るところは守り、譲るところは譲ると繰り返し述べておられます。私は、その真意が私たちと同じ気持ちと受けとめていいのかどうか、このことを伺いたいと思うんです。農業交渉における大臣のスタンスについて、まずは伺っておきたいと思います。

○中川国務大臣 日本は、世界と貿易をしたり投資をしたり、人の交流をしたりしながら発展をしてきたわけでありますし、これからもそうであろうと確信をしております。

 したがいまして、工業分野のみならず農業におきましても、自給率四〇%という議論が先ほど出ましたけれども、逆に言うと、少なくとも現時点では六〇%分は輸入に頼っているということでございます。したがって、貿易の基本ルールでありますWTOにおけるルールを今度次に向かってどういうふうに改定をしていくかということが今行われているわけであります。

 御承知のように、農業だけではなくて、非農産品あるいはサービス、ルール、開発、あるいはまた、その他いろいろな分野について今交渉をやっているわけでありますが、共通のルールのもとで、貿易等を通じて、それぞれの国、とりわけ今回の場合には発展途上国が発展できるようにしようというのが今の交渉の基本的な共通認識でございます。

 したがって、これは全体として、貿易等の壁を下げようというのが、これはどの分野でもそうであります、農業においてもそうであります。ただし、下げることによって、日本なら日本の根本的な国益が失われる、あるいは守るべきところが守れなくなってしまう、これは日本としては絶対に阻止をしなければなりません。交渉ですから、譲るところは譲っていきます。また攻めるところは攻めていきます。そして、守らなければいけないところは守っていきます。これが、日本のといいましょうか私の基本スタンスであり、農林水産大臣になる前の経済産業大臣のときから、そして農林水産大臣としても、こういうスタンスで交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。

○高橋分科員 そこで、守るべきところの話を少し具体的に伺っていきたいと思うんですが、多くの生産者が関心を持っているのは、関税の削減率あるいは重要品目がどうなるのかということかと思います。

 上限関税については、日本も当然受け入れられないと述べてきたところであります。ところが、米国が提案しているこの重要品目の一%の問題ですね。これが、言ってみれば、計算すると十三品目くらいにしかならないのではないか。そうすると、米だけでも十七品目もう既にあるわけですから、一体、そこだけになっちゃうのかという大変な不安がございます。

 重要品目の設定をどこに持っていくのか、この点でのお考えを伺いたいと思います。

○中川国務大臣 重要品目というのは、もう既に、WTOの現時点でも既に共通の項目として了解されているわけであります。ただし、御指摘のように、それをどのぐらいにするかということについては、各国あるいは各グループの間で大きな差がございます。

 御指摘のように、アメリカは一%、タリフライン、関税分類上の一%というふうに言っておりますし、EUはおおむね八%という言い方をしておりますし、また、日本を含めたグループ、いわゆるG10というグループは一〇%から一五%というふうに言っております。ちなみに、タリフラインという分母の数字そのものが各国によって違いますけれども、日本は一五%を目指して今交渉に臨んでいるわけでございます。

○高橋分科員 では、一五%を目指してということで決意を伺ったと思います。

 そこで次に、二月二十五日の日本農業新聞では、アメリカの提案が具体的に示されたとして、重要品目の関税引き下げ率を一般品目の六割とする一方、低関税輸入枠を国内消費量に基づき大幅に拡大するという内容でありました。この試算を見ますと、現行七十六万七千トンのミニマムアクセス、年間消費量は一千万トン弱でしょうか、総輸入量が六百万トンにもなると試算がありました。これではだれが見ても、国内市場を大きく圧迫するものであります。しかも、この十一年間で六百八十七万トンでしょうか、ミニマムアクセスの量、それに一年で届くような大変な量、到底受け入れられないと思います。

 いずれにしても、ミニマムアクセスの拡大を避けられないと思っているのか、その見通しと、こうした拡大を迫るアメリカの提案などに対しての考えを伺いたいと思います。

○中川国務大臣 まず、交渉ですから、先ほどから伺っておりますと、アメリカの提案を前提にして、日本はどう対応するんだというような御質問が多いように理解いたしますけれども、日本は提案をしております。

 日本提案をどうやって実現させるかということに私は今全力を挙げているわけでございまして、今お話がありましたように、確かに消費量ベースにしてTRQを拡大するという議論もありますけれども、日本は、あくまでも現行の関割枠をベースにして、それから、いわゆるスライディングスケールと呼んでおりますけれども、関税の削減との組み合わせによって柔軟に対応しようというのが日本の提案でございまして、それをどうやって実現をしていくかということが日本の国益としての交渉に臨む立場であって、アメリカが提案したことに対して日本はどうするんだというのは、私はそういう交渉はとりたくないというふうに理解しております。

○高橋分科員 よろしいと思うんです。もちろん交渉事ですので、具体的なことは言えないと当然おっしゃるだろうと思っておりました。

 それから、日本がG10グループと関係を密にして、共同提案を出して頑張っているということも十分承知をしております。その上で、あえて、なぜアメリカの話をというのは、アメリカの話が極端だからということと、大臣が平成十年、十一年、新食料・農業・農村基本法を制定されたときに大臣を務めておられまして、その議論の過程の中でも、アメリカを初めとした輸出大国の声がやはり大きくWTOに影響している、そういう認識を述べておられたから、やはり私はこういう点でも、きっぱりとした態度を、国民は注目しているわけですから、あえて述べていただきたい、そういう思いで伺わせていただきました。

 ついでに言いますと、そのときの九八年、平成十年の十二月の農林水産委員会で、米の関税化に移行する議論がされたときに、大臣はミニマムアクセスのことでこのようなことを発言されております。「九五年からスタートをして一年たち二年たちしていくうちに、ミニマムアクセスの存在というものが、国内生産に影響を与えないという政府決定をきちっとやってはおりますけれども、一方では、消費者の需要のほとんどないミニマムアクセス米がどんどんたまっていく、量がふえていく、こういう状況になってまいりました。」大変率直な答弁だったのかなと思うんです。

 やはり、最初はこんなにもミニマムアクセスがふえるとは思わなかった、しかし実際はどうなのかということで、率直な弁を述べられたのかなと思われるんですけれども、ここの政府決定、国内生産に影響を与えない、これはもちろん生きているわけですよね。このスタンスは当然守っていく、この確認をさせていただけますか。

○中川国務大臣 たしか九三年の年末にウルグアイ・ラウンドが合意したときに、日本が決して望んだわけではありませんけれども、ミニマムアクセス、つまり義務的輸入量というものを、四%から六年かけて八%にするということになったわけでございます。これは、義務的ですから、とにかく入れなければならない。ただし、政府といたしましては、それが国内生産に影響を与えないようにいたしますということも約束をしたわけでございます。

 しかし、毎年少しずつふえていって、六年後には四%が八%輸入しなければならなくなる。しかし、今御指摘のように、売れない。売れればいいんですけれども売れない。在庫になっていく。しかも義務的に入れなければいけないということで、私のときに、このままでは大きな問題になるので、これはもう関税化をしようということで、九八年のたしか年末だったと思いますけれども、そういう決定をしたわけでございます。

 ミニマムアクセスを今の交渉においてももちろん制度として守っていく、そしてまた、それが国内生産に対して影響を与えないようにするという基本的な考え方は、少なくとも現時点においては変わっておりません。

○高橋分科員 ありがとうございます。

 大臣が今、義務という言葉を何度もお使いになられましたので、きょうは私これ以上はこの問題を言うつもりはなかったんですけれども、その後の農林水産委員会の議論の中で、私の先輩である中林よし子議員やまた私自身も委員会で取り上げたことがございます。日本はミニマムアクセスは義務だと言ってきたけれども、必ずしもそうではない、そして、義務だとは言われていないし、また、諸外国の約束の達成状況を見ても、一〇〇%達成しているのは日本だけではないかということも指摘をしてきたつもりであります。

 ですから、そういう立場に立って、これは私、要望にとどめますので、国内の生産に影響は与えないという政府決定は生きているということでありましたので、その点でやはり今後も見きわめていく必要はあるだろうということを要望しておきたいと思います。

 それからもう一つ、WTOの関係で、いわゆる黄色の政策と言われている国内助成の基準を日本は七五%と提案をしていますけれども、その理由を伺いたいと思います。

○中川国務大臣 国内支持の削減のうち、いわゆる黄色の政策の七五%削減の根拠、これは、WTOにおいて約束された約束量、削減約束というものがあるわけでありますけれども、それに対して、日本は既に八二%削減をしております。ほかの国、アメリカ、EU等々は日本よりもはるかに低いわけでありますので、日本としては、攻めるべきところと冒頭申し上げたうちの一つとして、日本は思い切り下げますよ、ただし、現実には約束水準をもう達成していますよという観点を総合的に勘案して、七五という数字を申し上げているわけであります。

○高橋分科員 攻めるところの一つだというお話でありましたけれども、私も現地で約束水準の問題を切り札だというふうな説明を受けました。なるほどと思ったわけです。

 ウルグアイ・ラウンドの約束水準、大幅に上回って日本は削減をしてまいりました。四兆円の水準なのに対して七千三百億円だ。一八%しか達成をしてこなかったわけです。

 しかし私は、確かにそれが切り札となり、攻めの交渉の一つのカードになるかもしれない、でもそのことによって国内の生産者はどうなんだろうかと考えたときに、少なくとも八二%を削減してきたということは、局長でもよろしいです、逆に言うと、WTOの範囲内でも国内助成はまだ、例えば倍加もできる、これは理論的には成り立ちますね。

○中川国務大臣 先ほどの御質問が、私が間違っているのは御質問の趣旨がよくわからないということで、黄色が七五なのか全体の削減が七五なのか、たしか黄色とおっしゃったんですけれども、黄色だと七〇%削減が日本の提案でございます。

 それから、今回は国内支持全体を削減しようという新しい交渉が入っておりまして、それについては七五%削減しようということでございますから、いずれにしても訂正をさせていただきます。

 今御指摘のように、日本は総合AMSの約束水準の八二%まで既に実績を下げておりますので、七〇%でも七五%でもいいんですけれども、もう既にやっておりますから、そういう意味で、さらなる実害はないという理解で、攻めの部分であるというふうに申し上げたわけであります。

○高橋分科員 ですから、さっき局長に伺ったんですけれども、理論上は、枠内でも国内助成は、倍加でも、一定の伸ばす余地はある、いいですね。

○佐藤政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、先ほど大臣の方から御説明ありましたように、一定の、相当幅の削減を既にしておりますので、そこに交渉の余裕といいますか、EUあるいは米国に比べて余裕があるということでございます。

 委員からの御質問で、ふやせるのかということでございますけれども、基本的には、国際交渉の中で、それぞれの助成を見直していく、あるいは引き下げていくというような交渉になっておりますので、基本的にはそういう形の中での各国の対応になろうかというふうに存じております。

○中川国務大臣 アメリカ、EUとだけ交渉をやっているわけじゃないんですね。百五十カ国の加盟国のうちの百二十カ国ぐらいが途上国、それから、アフリカ等五十数カ国のLDCがあります。この国は、農業振興のために国内支持を出そうと思っても出せないんです。

 ですから、先進国同士のけんかなんというのは、多くの貧しい国々から見ると、金持ち同士のけんかである、国内支持を出す同士のけんかであるということも、この交渉上、先ほど冒頭申し上げたように、開発ラウンドである以上は、農業助成のためにお金を出したくても出せないという国がいっぱいあるんだということも、ぜひラウンドの交渉として御認識をいただければありがたいと思います。

○高橋分科員 それは当然でございます。国内助成を出せない途上国がいっぱいいる、そこをもっと発展させるためのラウンドである、それはもう十分承知をしております。

 しかし、だからといって約束水準を、だれにも言われていないのにWTOの合意である水準を大幅に削減してまでやってくる必要があったのかということが言われていると思うんです。

 確かに、日本は、指標上では大変豊かな国であります。日本の農業者の皆さん、今回、百人を超える自主的な団体の皆さん、私と一緒に香港に参りました。なぜ豊かな日本がこの場にいるんだというふうなことを、いろいろな方から取材を受けたそうです。

 本当に日本の農家の実態がどうなのかということ、それは途上国と比べれば違うとおっしゃるかもしれないけれども、では日本の農業がどうなってもいいのかということではないわけですから、そういう立場に立って、日本の生産者の立場に立って判断をする必要があるのではないか。これはもう次に進みますので答弁は必要ありませんけれども、大臣は、先ほどの国会のときに、次の交渉に臨むに当たってはやはり国民的なコンセンサスが絶対に必要だという認識をお示しになりました。私は、こういう点で本当に、では日本の農家の声は聞こえているんだろうかということを指摘して、そういう立場に立ってお話を進めていきたいなと思うんです。

 国内対策の話でありますけれども、経営所得安定対策等大綱が昨年の十月に発表されまして、関係法案が今国会に提出をされております。早いところでは、秋まき麦の播種までに加入を決めなければと、急ピッチで担い手の特定や集落ごとの話し合いが取り組まれていると思います。

 家族農業経営と法人経営、集落営農経営を合わせて四十万の担い手に集約するというのが政府の今の目標であるかと思いますけれども、まず、現状はどうでしょうか。担い手要件をクリアできる認定農業者あるいは集落営農が今どのくらいあるのか、伺いたいと思います。

○井出政府参考人 今回の品目横断的経営安定対策の対象者の要件といたしましては、認定農業者か、一定の要件を満たす集落営農組織であって経営規模等の要件を満たすものというのが原則でございますが、そのほか、生産調整組織や複合経営等についても特例基準を設けております。

 したがいまして、現時点で、この認定農業者あるいは集落営農組織でございますけれども、数としましては、認定農業者は昨年の十二月末現在で約十九万五千人、あるいは十九万五千経営体と言うべきかもしれませんが、あると言われておりますが、このうち、例えば四ヘクタールを満たしているかどうかということになりますと、そのデータは残念ながらございません。

 また、集落営農につきましても、昨年の五月現在で約一万、全国に存在すると言われておりますが、こちらの方も、今回要件にしております経理の一元化、あるいは法人となる計画を持っているかといったような要件を満たしているかどうかにつきましては、これは個々の組織の意向を確認する必要がございますので、現時点ではこれを示すことは困難でございます。

○高橋分科員 データがないというお話でしたけれども、例えば、私の地元の青森県では、現在四ヘクタール以上の面積を持つ農業者が一割程度だろう。集落営農が現在百十二ございますが、いまだ対象要件を満たしている集落営農は一つもありません。集落営農では先進的な取り組みをしている岩手でも、現在は六だと聞いております。また、麦や大豆の交付金を直接受け取っている農業者、これは青森の話ですが、千百八十三経営体ございますが、ほとんどが非認定農業者だ、九百九だということです。

 ですから、こういう大変な状態から出発をして、何とか担い手にするように、引き上げるようにと今非常に頑張っているわけなんですね。ただ、やはり期限を焦ると非常に無理が生じるのではないかと思うんですけれども、この担い手の特定、集落営農の対象条件をクリアする上でハードルとなっているのは何か、農水省の認識を伺いたいと思います。

○井出政府参考人 個別経営につきましては、認定農業者であって四ヘクタール以上というのが原則であるということになっております。ただ、現時点で四ヘクタール以上の経営規模をお持ちでも、認定農業者になっておられない方もかなりございますので、現在、そういう方を認定農業者に誘導するということをやっております。

 また、集落営農組織につきましても、経理の一元化なり五年以内の法人化をしていただきたいということを要件といたしております。経理の一元化と申しましても、私どもがお願いをいたしておりますのは、集落営農組織名義で口座を設けて、その口座に農産物の販売収入を入金していただく、そういうことを申し上げているわけでございまして、入り口としてはそんなに高いハードルを課しているわけではございません。

 現在、地域地域で説明会等を開催する中で、そういった経理の一元化なり法人化というのがかなり高いハードルなのではないかという誤解を解くべく、さまざまに努力をいたしているところでございます。

○高橋分科員 今、誤解と言い切りましたけれども、各地のいろいろな様子を聞きますと、説明を聞けば聞くほどわからなくなるだとか、説明を聞いているうちに生産者が席を立ってしまっただとか、そういう問題がいろいろあると思うんですね。ですから、高過ぎはないとおっしゃいましたけれども、やはりそこに非常に困難なものがある、では、それは何なのかということをもう少し見ていく必要があるのではないかと思うんです。

 例えば、主たる経営者を決めるとされていますけれども、平成十二年の農水省の調査でも、認定農業者のいる割合はまだ四割でありますから、そういう中で、集落営農で、主たる人を決めて、所得の目標を決めていく、そのこと自体が大変であるという声がまず一つあると思うんですね。逆に言うと、私自身が花巻に行ったときに聞いたんですが、認定農業者の方が、それだったら、別に自分がその集落営農の中心にならなくても、自分が一人でやった方がいいと言っていた。そうなったら、では、だれがその集落営農のリーダーになっていくんだろうか。そのリーダーがいなければ、やはりこれは成り立たないわけですよね。

 そういうところをどうするかといったときに、一人でやるよりも集落営農でやる方がメリットがあるというのがやはり必要なわけですよね。でも、ではどうするのかといったときに、やはり米の値段がどんどん下がっているじゃないか。かつて、五百三十万、他産業並みと言われた時代がありましたけれども、時代といったってついこの間ですが、一万六千四百円を基準にしていたと思います。それが一遍に、もうどんどん下がってきている、歯どめがありません。

 そういう中で本当にメリットを生み出すことができるのか、この点についてどのようにお考えになっているでしょうか。

○井出政府参考人 委員お尋ねの件は、集落営農に対して五つの要件をお願いしているわけですが、その集落営農の中のコアになる人、その人を決めてくださいと言っておりますけれども、それは候補者であっても構わないというふうに言っているわけでございます。

 それから、東北地方特有の問題でありますが、西日本と違いまして、認定農業者の方はまだかなりおられます。西日本の場合には、もうほとんどいないというのが実情でございます。ですから、私どもは、東北で集落営農組織として立ち上がっている例を見ますと、その集落内の認定農業者、少なくとも三、四人の方が、その集落営農組織のリーダーとなって、中核となって集落営農を起こしているという例が圧倒的に多いわけでございまして、いわば東北方式かなと思っておりますが、そういった先進的な事例も見まして、そういう取り組みをぜひお願いしたいということで、そういう例を御紹介し、また、そういう地域でリーダーとして活躍されている方に、方々に出向いていただいて、お話もしていただくというようなことをいたしておるわけでございます。

 集落営農組織で、完全に経理が一元化されたり、あるいは機械や施設、肥料、農薬等も共同で買ったりすれば、これは個人でやっている場合よりもかなりコストが削減されるというのは、集落営農組織をつくられた先駆事例で明らかになっておりますので、そういったことも、数字も添えて私たちも説明をしているということでございます。

○高橋分科員 きょうの日本農業新聞に大特集があって、集落営農の方が個別の経営よりもコストが非常に安くついて収益が上がっているという、わかりやすい図式ですとかがありましたので、多分そのことをおっしゃっているのだと思うんです。

 東北方式というお話もありました。例えば、秋田で農水省がモデルとするような集落営農を直接指導した方にもお話を聞いたことがあります。何度も何度も地域に足を向けて話し合いをして、そして本当に苦労をしてつくってきた。ただ、自分がやってきたことは国のやっていることとイコールと思われては困る、地域から自発的に育ってきた集落営農なんだというお話をされてきたことと、一律にそれが集落営農でなければならない、要件を満たさなければならないとなると、さっき言った米の値段が下がってくるというのでは、やはり簡単ではないのだと。

 ですから、そこを、ハードルを越えて集落営農として要件を満たすところもあれば、そうじゃないところもあるんだ、そうじゃないところも含めなければ、やはり日本の全体の農業としてはもっていかないんじゃないのかというのが私の言いたかったことなんですね。質問したかったんですが、時間が来ましたので、このことをぜひ含んでいただいて、進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

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