国会質問

質問日:2006年 6月 1日 第164国会 災害対策特別委員会

首都直下型地震対策 ―参考人質疑

 一日の災害対策特別委員会で参考人質疑が行われ、島田健一・東京都危機管理官は、「地域防災計画を現実的なものに見直し、その内容を住民に浸透させていくことが大切だ」と述べました。重川希志依・富士常葉大学教授は、行政の防災対策が施設整備や備蓄に偏る傾向を指摘し、「住民に対する防災教育や防災訓練にもっと予算を使うべきだ」と述べました。被災者支援のあり方を質問した高橋千鶴子議員に対し、重川氏は「現行の被災者生活再建支援法では、復興の支え手となる働き盛りのサラリーマン世帯などが支援されない。首都直下地震を考えれば、こうした層を支援する仕組みが大切になる」と強調しました。

(2006年6月3日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、貴重なお時間を割いて御出席いただいて御意見をいただきましたこと、ありがとうございます、感謝を申し上げます。本当に限られた時間ですので、質問をしていきたいと思うんですが、最初に阿部先生にお伺いをしたいと思います。

 先生は最後に、地震の予知は大変困難であるということを強調されました。どこで起きてもおかしくない、これがまさに今科学者の間でも共通の認識にされているのかと思います。ただ、そういう認識に至るまでに、さまざまな震災があり、かつ犠牲があったわけであります。

 先生は、研究者の持っている地震学上の常識と一般の国民との間にギャップがある、こういう言い方をされております。〇三年十二月の日本災害情報学会での講演の中でも、例えば阪神・淡路大震災、関西には大地震は起きない、国民の中にはそういう思いがあって、研究者はそうは思っていないんだけれどもギャップがあった、そういうことをおっしゃっています。

 ただ、では、その後の新潟はどうだったのか、福岡はどうだったのか。福岡に関しては、先生自身が被害を受けにくい地域であるということを述べられていたということもあったかと思うんですね。

 私が伺いたいのは、やはり国民や行政に対する心構えとしては、どこでも起こり得るんだ、そのための対策が必要だというのは当然のことだと思います。ただ、では研究者は、言ってしまえば予知は要らないのか、突き詰めていくとそうなってしまうわけですよね。

 では、どういう情報を本来発信すべきだろうか。宮城県沖地震が九九%、東海地震は八六%という、発生確率は今数字として細かく挙げられております。私たちはそういう中でそれをどう受けとめ、対策に生かすべきなのか、そして科学者がどういう情報を出していくべきなのか、こうしたことについて先生の考えをお伺いしたいと思います。

○阿部参考人 ただいまの御指摘、よくお調べになったと思います。

 阪神・淡路大震災のときに私どもが耳にしたのは、関西には大地震は起こらないという、関西の人がお持ちになっていた誤解と、私どもは関西でも大地震は起こると思っていた知識とのギャップに大変驚いたわけであります。国会でも、その点、議員の方々も驚かれ、国が持っている地震の正しい情報が国民に伝わっていないという反省から、地震調査研究推進本部というのができたわけであります。そこを通しまして地震の正しい知識を一般の国民に広報して、その正しい知識を持って地震に備えていただきたいと願っているわけであります。

 その情報の一つとして、揺れやすさを確率であらわして地図にしたものをただいまお配りしている最中でございます。そのような情報をもとに、自分の住んでいる場所の地震の危険性をよく知っていただきたい。新潟県中越地震も福岡県西方沖地震も最近起きましたが、ここは決して地震の発生確率の高いところではありませんでした。発生確率というのは、数字の大小によって地震が早く起こる、遅く起こるというのを示すものではありません。起きやすいか起きにくいかを示しているだけで、日本は至るところ地震が起き、どこで起きてもおかしくないという発想から防災に努めていくべきではないかと考えております。

 以上です。

○高橋委員 その上で、この間の予知の研究をどう防災対策に生かしていくべきなのかということを、もう一言お願いいたします。

○阿部参考人 地震予知というのは、現在は困難であるという状況ですが、やはり私はロマンのある研究分野だと思います。わからないことにチャレンジするというのは科学者の使命であります。それを通して、いろんな地震の知識を得ます。その地震の知識をやはり国民に伝えるという努力も阪神・淡路大震災は教えてくれたのではないかと思います。地震の知識は学者だけのものではなく、国民も共有すべきであると考え、私ども研究者もそのように努力する必要があると考えております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 予知の問題を何か費用対効果で単純に割り切って話す議論もよくありますけれども、先生がおっしゃられたように、やはり国民に共有していただくという形で生かしていくことが大事だと思いますし、今後の研究をぜひ国民に生かされるような形で続けていただきたいと思っております。

 次に、被害想定の問題なのでありますけれども、私は、首都直下の被害想定が中央防災会議により発表されたときに、やはり皆さんも大変ショックを受けたかと思うんですが、非常に大きなショックを受けました。死者一万一千人という数字が、実はそれで済むだろうかというのを率直に思いましたし、やはり、帰宅難民が非常に多いということですとか都市の構造ということから見ても、これは確かにあるだろうなと思いました。

 問題は、その被害の大きさに、国民がどう思うかということを非常に考えさせられたんです。つまり、これほど被害が大きいんだったら何をやっても意味がないんじゃないかというふうに国民が思いかねないということなんですね。自分だけ頑張っても隣の家が耐震じゃなかったらどうしようとか、うちでなくて地下鉄の中にいたらどうしようとか、いろんな不安が広がってくるわけです。ですから、想定は細かくできた、ではそれをどう国民が生かすかということが次の課題になると思うんですね。

 それで、島田さんにお伺いしますけれども、東京都が、中央防災会議が発表した被害想定に加えて、独自に修正をしたり、都としての被害想定を策定しておりますけれども、その特徴について、まず簡単に教えていただけますか。

○島田参考人 今回の国の中央防災会議を受けまして、先ほど申しましたが、一つは、マグニチュード六クラスをやりました。このマグニチュード六クラスが過去三十年間で十六回発生している。東京は、企業人口の集積で、中規模地震でも大きな被害が出ると予測されています。かつ、六・九と七・三を比較すると、先にやる優先順位がつけられるといったことがあるかと思います。いろんな対策がありますが、財源の問題もありますし、いろんな状況もございますから、順番をつけてやれるといったことで六・九をやった。

 二つ目が、国のは一キロメッシュでやっておりますが、細かい二百五十メートルメッシュで、その地域がどうなるのか、これは区市町村並びに都民にもどんどん公開していきたいと思っております。

 大体そんなところが特徴でございます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 非常に大きな地震の前に、一定、中規模などの地震も想定されるわけですから、そうやって順位をつけて想定されたりメッシュを細かくされたということは、非常に大事なことかなと思って伺いました。

 そこで、その想定をどう生かすかという話なんです。

 私、昨年、宮崎に、これは地震ではないんですが、水害の調査で行ったときに、避難所である集会所にハザードマップが展示してありまして、そのとき被害を受けた地域とハザードマップの浸水想定地域がぴったり重なっていたんです。まさにぴたり賞だというのはいいんですが、何の役にも立たなかったということなんですね。当たっていても、それが住民に周知をされていなければ意味がないわけですし、使いこなさなければいけないということで、それを本当にどう生かすのか。逆に言うと、それが先行すると恐怖心だけをあおっていく、そういうこともあるわけですよね。

 そういう点で、まず何をすべきかということ。これは島田さんと重川さんにそれぞれ伺いたいと思うんです。島田さんには、都民に対して被害の想定をどう浸透させていくのか、あるいは都民はどう受けとめたのかということも含めてお話しいただきたいと思います。重川さんには、やはり住民の立場として何が必要なのかということをぜひ伺いたいと思います。

○島田参考人 私ども、被害想定をつくりました。先ほど申し上げましたが、これをベースにいたしまして、地域防災計画をきちんともっと現実的なものにしていこうというふうに考えております。

 さらに、区市町村それから住民にどうやって浸透させていくか、そういったことが次の課題かと思っております。

○重川参考人 今の御質問、都民として何をすべきかというのは非常に重要なことだと思います。

 それで、実際に、防災対策というのは三つ種類があります。

 一つ目は、被害を出さないための対策です。地震はとめられませんが、被害を出さないために、例えば建物の耐震性を図るとか、河川の堤防を強くするとかという事前の備えです。それから二つ目が、被害が出るのはしようがないんだけれどもそれをいかに軽くするかという対策です。例えば拠点病院を整備するとか、防災訓練をするとか、防災無線を整備するといったようなことです。そして三つ目が、実際に災害が起きたとき我々都民は一体何をすればいいんだろうか。

 この三つなんですけれども、実は最初の二つは事前対策です。地震が起きた後に訓練しても間に合いませんし、地震が起きた後に家具の固定をしても何の役にも立ちません。

 三つ目の、実際に災害が起きたときに我々何ができるかというのは、最初の二つをどれだけしっかりやっているかで決まります。つまり、防災というのは日ごろの備えが重要だとよく言われるんですけれども、災害が起きたとき我々都民がどう動けるか、そのためには、まさにふだん何をやっているかということが非常に重要です。

 今、東京都や区が進めていらっしゃることを中心に、いろいろな場所でいろいろなスタイルの訓練や研修が広がりつつあります。学校、企業、地域、あるいは趣味のサークル、そういったところを通じながら、あらゆる場所で、行政はどんどん情報を出していただきたいと思います。

 今までは物をつくる、備蓄をするということにお金を使うのが行政の防災対策の中心のように思われてきましたけれども、これからは都民の訓練とか教育とか今まで余り予算を使ってこなかった分野にこそむしろ集中的に予算を使う、それが非常に重要だと思います。

 ただ、残念ながら、今、行政の、区役所とか東京都で何が起こっているかというと、そういう教育訓練用のパンフレットや何かに使える予算はどんどん削減されています。そして、むしろ、拠点をつくるとか毛布を何枚備蓄したのかとか、そういうところにお金が費やされていて、肝心の子供向けの防災教材であったり、地域コミュニティーで教育、訓練をやりたいというときに講師に払うお金がないとか。そういうのは実は知れているんです、非常に少ない予算で済むんですけれども、そちらはどんどん削減されている。

 私は、むしろ逆で、限られた予算であるのであれば、今おっしゃったように、都民を教育するとか子供にいろいろなことを伝えるといったようなことに予算を優先的に割いていただきたいと切に思っております。

 以上でございます。

○高橋委員 予算のお話がありました。これは、行政、自治体においても、本当は余り目立たない、お金をかけない分野にこそお金をかけてほしいというお話だったと思いますし、国としてもやはりそういうところにこそ自治体を支援していくということをぜひ求めていきたいなというふうに思って聞いておりました。

 さて、重川先生は、先ほど神戸の十年たってのアンケートなども紹介をされておりましたけれども、阪神・淡路大震災四年半後の神戸新聞で、先生は、被害認定のあり方について、被害認定とはだれが被災者かという問題を解くこと、だれが被災者かは時間とともに変わる、どの時期にどの物差しを使うかを考え直さなければ、少なくとも建物の被害を示す罹災証明だけで五年間も通してしまうのはおかしい、こういうことをおっしゃっていますね。

 このことは、この間もいろいろなところでお話をされておりますけれども、やはり私も被災者支援のあり方として、時間の経過とともに変化する支援というのを本当に大事にしていかなければならないし、それを自治体の判断で支援できるようにバックアップする体制も大事ではないかというふうに思っております。

 被災者生活支援法も、四年後の見直しといって、今ちょうど折り返し地点に参りましたけれども、その点で一言お伺いしたいと思います。

○重川参考人 被災者支援の問題というのは、実は御質問のとおり非常に重要なことです。

 御承知のとおり、支援金の額を上げることが被災者のためになるという御努力のもとに、まあそれだけではなく、いろいろな条件によって被災者に使いやすい制度になってきております。

 ただ一方、三百万円をもらった被災者の方たちが一体どうしているか。どうやってこのお金を使えばいいんだろうと皆さん大変苦労されています。本当にそのお金が被災者の暮らしの再建にとってプラスになっているのか。だれでもお金を上げましょうと言われればうれしいです。私だって、いただければありがたいと思うと思います。ただ、それが、さっき申し上げましたように、いろいろなものを失いながらみんなでやっていかなきゃいけない被災者の自立再建にプラスになっているかというと、実は、プラスになっている反面、逆のものもたくさんあります。

 具体的に言いますと、全壊、半壊、一部損壊というたったの三つの分け方によって、三百万円もらえる人と全くもらえない人の区別が出てきます。

 声の大きい被災者ではなく、サイレントマジョリティーと言いますけれども、何も言わないけれども黙って頑張っているといういわゆる中間層、我々のような普通のサラリーマンです。一番子供にお金がかかり、一番大変な世代の人たちが何も公的な支援がもらえずに、でも自助努力で頑張り、そして経済や産業の復興を支えています。

 もちろん、社会的な弱者への支援というのも非常に重要なんですが、私は、日本という国が首都直下によって沈没しないためには、本当にそれを支えてくれている、原動力となっている働き盛りの階層の人たちの住まいの再建、あるいは子供たちの教育の継続、そういうものを公的に支えていくようなシステムがもっと重要になってくると思います。

 今まではたまたま、失礼な言い方ですが、地方の都市で、まあ神戸の場合はそうではないですけれども、首都直下に比べれば限られた被害の大きさであったために、今の支援システムで何とかいった。でも、首都直下の問題を考えたときに、それとは違う階層の人たちを公的に支援しない限り、経済産業復興というのは非常に難しいと思っております。

 新たな、そういうサイレントマジョリティーの方たちの支援策のあり方というのを早急に、先生方のお知恵を拝借しながら、整えていっていただければ大変ありがたいと思っております。

 以上でございます。

○高橋委員 ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。

 きょうは、三人の先生方、本当にどうもありがとうございました。

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