国会質問

質問日:2006年 6月 2日 第164国会 厚生労働委員会

原爆症認定の抜本的改善を要求

原爆症認定制度の改善を求める「集団訴訟」の初判決が5月12日大阪地裁で出され、原告全員を原爆症と認定すべきだとし、現行の基準は認定の「考慮すべき要素の一つ、機械的な適用は慎重に」とする判決が出され、国の認定基準が真っ向から否定されました。

日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は、6月2日厚生労働委員会で、この問題を取り上げ、現行の原爆症認定の抜本的な改善を強く要求しました。

原爆症と認定されれば医療費などが支給されるが、認定者は27万人の健康手帳所持者のうち1%にも満たないのが現状。これは、現行の認定基準(「原因確率」:被ばく線量で疾病が生ずる確率)が直接被ばくに偏っていて、投下後の残留放射能による体外被ばくや放射能を含んだ水やチリなどによる内部被ばくを軽視しているためです。しかし、中島正治健康局長は、「放射能被害はまだ未解決な分野である」との高橋議員の指摘に「確かにそういう要素はある」と認めました。

高橋議員は、「原因確率が10%未満の場合は申請を却下」する機械的な適用をしていること、認定評価の時間が短く認定が十分できない懸念があることを示して、一人ひとりの具体的な被ばく実態などを十分考慮すべきと指摘、チェルノブイリ原発事故の例も引いて、「唯一の被爆国」として放射能被害を軽視すべきでないと追及しました。

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 まず、今回議題となっております二法案については、私たちもいずれも賛成であります。とりわけ、日加年金特例法については、海外で就労された方が加入期間の通算措置や年金保険料の二重払いとならないように二国間で調整するための協定でございますので、当然のことであろう、このように認識しております。

 そこで、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正についてでありますけれども、日本傷痍軍人会と傷痍軍人妻の会から、本年五月をもって最終償還を迎える戦傷病者の妻に対する特別給付金について、その継続と増額が要望された、そうしたことを受けたものと承知をしております。

 そこで、先ほど村井委員の質問に対しても、予算のことをお話しされておりました、現在百七十九億円でありますけれども、この間、四回額面を上げております。そういうことをまず踏まえて、制度発足時の昭和四十一年と比較して、対象となる方の人数と予算額がどのように変化をされているのか、まずそのことを伺いたいと思います。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律は、長年にわたり障害のある夫の日常生活上の介助、看護、家庭の維持等の大きな負担に耐えてきたことによる精神的痛苦におこたえするために給付するものでございまして、委員からお話ございましたように、昭和四十一年にスタートいたしております。

 昭和四十一年のスタート当時は、額面が十万円、対象件数は十一万二千件でございまして、予算の所要額は九十億円でございました。

 今回御提案申し上げておりますのは、額面百万円、対象件数は四万一千件と減少しておりますが、額面が上がっておりますことから、百七十九億円、こういうふうな所要額になっております。

○高橋委員 時代に応じて一定程度引き上げをされてきたということは、非常に大事なことかと思います。

 確かに、スタートされたときは九十億円だった、十万円の額面でありますので。ただ、前回の十年前のときは六十万円から九十万円に引き上げをされておるんですけれども、そのときで予算額が三百七十七億円だったと思います。

 要するに、何が言いたいかといいますと、額面をふやしても対象者がどんどん減っておられる、当然でございます、最初は十一万二千件だったのが、今四万一千件で、対象者がどんどんお亡くなりになられているということがございます。受給者の平均年齢が、戦傷病者本人で八十四・三歳、妻で七十八・四歳と聞いております。私は、大臣にこの後伺いますけれども、多分この事業に限らないと思うんですが、恩給の制度なども、対象者というのは少しずつ、やはりお亡くなりになっているということで縮小をされていくわけですね。

 私は改めてそのことを思うときに、戦争を直接体験し、あるいはこれを支えて苦労された方々が先細っていくことは避けられないわけです。しかし、先ほど紹介した要望書が、戦後六十年の節目の年に当たり、この半世紀を超える長い期間の戦傷病者及びその妻の労苦に思いをいたしと指摘をしているように、戦後の世代がしっかりとその意味を受けとめなければならないと思っております。

 そこで、大臣に改めて、今般、制度を延長並びに拡充された趣旨について、また、戦後六十年を過ぎたといっても、いろいろな意味で戦争の痛手をぬぐえずにいる方々はたくさんいらっしゃると思いますけれども、残された課題、日本の政府にとって今残された課題は何であるか、その点について率直な大臣の御意見を伺いたいと思います。

○川崎国務大臣 先ほども村井委員に御質問いただきましたけれども、私も昭和二十二年生まれで、国会議員の中では随分年寄りの部類に入ってきたのかもしれませんけれども、戦後生まれでございます。そういった意味では、戦争を知らない世代が、過去の我々の、戦前行ったものをしっかり受けとめながら、反省すべきものは反省をしながら、しっかりとした日本づくりに励んでいかなきゃならない。これが第一の御遺族の皆さん方や傷痍軍人の皆さん方におこたえする道であろう、第一にこう思っております。

 一方で、御遺族の皆さん方や傷痍軍人の皆さん方、またその家族の皆さん方に対して、国としてできるだけの援助また慰藉の念をささげていくということも大事だろう。また、その歴史的なものをしっかり残したいということで、資料館等をつくらせていただいているところでございます。

 また一方、今一番御下問をいただいておりますのは、遺骨の収集問題について、もう六十年たった、参議院の委員会でも御質問を賜りました、しっかり遺骨の収集をしていくようにと。このことにつきましては、少し今資料が少なくなってきておりますので、資料をしっかり調べながら、遺骨収集に全力を挙げていかなければならない、このように今考えているところでございます。

 一方、韓国からも、当時の歴史を振り返りながら、そうした資料提供をしっかりしてほしい、こういう御要請がございますので、過日、政務官会議の中でうちの岡田政務官から御提案をさせていただいて、外務省初め各省力を合わせながら、総理もたしか韓国の大統領に会われたときに、しっかりやりますとお答えもさせていただいたところでございますので、この問題についてもしっかり取り組んでいかなければならない、このように今考えております。

 また、シベリア抑留者の問題等さまざまな問題がありますけれども、政府としてできる限りのことは努力をしてまいりたい、このように思っております。

○高橋委員 今、大臣が遺骨の収集のお話を真っ先にされるとは思ってもいませんでして、週刊誌に書かれたということもこれはあったのかなと。全力で取り組みたいとおっしゃっていましたので、きょうはこのことは触れるつもりはありませんでしたので、ぜひ、今お話しされた遺骨の収集やあるいはシベリア抑留者のその後の問題などについても、本当に残された時間が少ないですので、取り組んでいただきたいと思っております。

 同時に、今の、いわゆる軍人や軍属あるいは準軍属と言われる方たちにかかわるさまざまな課題が、今お話あったようにございます。また、それだけではなくて、例えば、今問題となっております中国残留孤児の問題、あるいは従軍慰安婦の問題など、いわゆる戦争の被害者という点では、まだまだ解決をしていない課題、取り組まなければならない課題というものがたくさんあるだろうということを考えているんです。

 そのことを一つ一つ取り上げると幾ら時間があっても足りないなと思っていたわけですけれども、きょうは、私はそういうふうに思っているということをまずお伝えして、そういう中で、早急に解決すべき大きな課題の一つとして、原爆症認定の問題について伺いたいと思います。

 まず、五月十二日に大阪地裁は、被爆による病気を原爆症として認めないのは不当として、国に原爆症認定却下処分の取り消しと損害賠償を求め、全国十三カ所で争われている集団訴訟の最初の判決として、原告九人全員に勝訴という結果をもたらしました。

 この裁判では、原爆投下後に被爆地に入った、いわゆる入市被爆と言われる方々、爆心地から三・三キロ離れたところで被爆した遠距離被爆の方々も含めて認められたという点で特筆すべき判決であり、また現行の原爆症認定制度の抜本的見直しを迫る内容だったと思っております。しかしながら、原告たちの、またそれを支援されてきた多くの方たちの喜びもつかの間、厚労省はその十日後に控訴をいたしました。

 このことについて改めて抗議をするものでありますが、そもそも、その控訴理由書なるものが出されておりません。文書で私たちは見ておりません。国はなぜ控訴をしたのか、それをまずお聞かせ願いたいと思います。

○川崎国務大臣 まず、原爆症の認定は被爆者援護法に基づいて行うものであり、同法では、申請のあった疾病が原爆放射線に起因するものであるかどうかを審査会の意見を聞いた上で判断するものでございます。

 厚生労働省では、医学、放射線学の専門家から構成される審査会において個別の申請ごとに適正に審査をしていただき、その結果をもとに原爆症の認定を行ってまいりました。

 今回、大阪地裁の判決は、こうした国の審査結果と異なる判断をしたことについては意外であり、国の主張が認められなかったことはまことに残念だと考えております。

 原爆症の認定は、申請のあった疾病が起因するかどうかの判断は科学的知見に基づき行うものである、また、最高裁判決によって、起因することが高度の蓋然性をもって証明される必要があるとされております。

 しかしながら、今回の判決においては、医学や放射線学上の一般的な理解と大きく異なる内容となっております。また、高度の蓋然性が証明されているとは考えられない事例を今回は原爆症と認めるべきという判決であったと思っております。

 こうしたことから、今回の判決は受け入れることはできず、控訴が必要と判断いたしたものでございます。

○高橋委員 大臣は、第一報を受けての会見では、判決について、これから精査をするということを発言されております。時間も一定程度たちましたので、その判決要旨をお読みになられたのかどうか、これをまず一つ。

 それから、高齢でもある原告の皆さんが、やはり直接大臣に会って実情を聞いてもらいたいということを言っておられたわけですが、残念ながら達せることができておりません。これからでも会っていただくお考えがあるのかどうか、伺いたいと思います。

○川崎国務大臣 判決内容については、今申し上げたような見地から十分精査した上で、もちろん、私だけではなく、関係省庁とも協議をしながら今回の結論を出したということで御理解を賜りたいと思います。そういった意味では、高裁の判断をいただくということになるだろうと思います。

 一方で、そういう意味では、私と、多分、今回の判決について訴えられている方々も控訴されたと聞いておりますので、両方ともが控訴したという結果になっておりますから、裁判所で争う当事者同士になっておりますので、お会いをして話をするというよりは、裁判所でしっかりとした議論展開をしていくことが大事だろう、このように考えております。

○高橋委員 まず一点目ですが、調整をされたとおっしゃいましたけれども、判決要旨そのものはお読みになられておりますか。

○川崎国務大臣 概要について読ませていただいております。

○高橋委員 次に、控訴されて、当事者同士であるので会えないというお答えだったかなと思うんですけれども、これについては、原告の皆さんたちが、法務省の見解だとおっしゃって、裁判で今やっている最中なのでそれはうまくないんだよという話を聞いたとおっしゃっておりましたから、そういうことなのかなと思いました。

 しかし、大臣は十六日の記者会見で、同じことを記者の方に質問されていますね。そのときに、このようにお話をされております。例えば、ハンセン病の問題については、トップダウンでやったけれども、基本的には、やはり仕事というのは下から積み上げ方式でしょうから、担当局長なり、場合によっては、副大臣、政務官によく話を聞いてもらって調整をしなければならない、時期が来れば、私自身が直接話をするタイミングもあるだろうとおっしゃっております。また、ちょうどきのうは、HIV訴訟の原告団とゆっくり話し合う機会ができたものですから、いい会談がきのうはできたと思っております、そのように述べております。

 大臣は、タイミングというものはあるかもしれないけれども、当然、そういう原告の方たちとも会ったこともあるし、必要だとお認めになっているという発言に私は思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

○川崎国務大臣 もちろん、どういう時点でどういう政治判断をするか、まさに我々に課せられた一番大きな仕事であろうと思っております。

 今回の判決理由を聞かせていただいて、また、今日まで国が科学的知見によって積み上げてきたものとこの判決の理由というものがかなり乖離するねという中で、控訴をさせていただいて高裁の御判断をいただくべきだろう、このような判断をいたしました。また一方で、原告側も控訴という手続をとられましたので、それでは、高裁においてしっかりとした議論をしてもらった中で、また判断すべきことが出てくれば判断をしなきゃならぬという立場に立っております。

○高橋委員 現瞬間では、控訴した直後であるということもありますから、なかなか言いがたいことがあるのかなと。しかし、それは、今私が紹介したように、タイミングということを大臣自身がおっしゃっております。また、非常に残された時間が短いという思いがございます。それは本当に受けとめていただきたいということを重ねてお話をしたいと思うんです。

 私は、判決要旨を読みましたかということを大臣に伺ったのは、私自身も裁判については素人でありますので、いわゆる裁判所の文書というのはなかなか難しいものがございます。ただ、やはり判決が、原告の方が九人いらっしゃって、被爆当時八歳から二十までの方がいらっしゃって、学徒動員や学生さんや当時小学生あるいは当時妊娠されていた、そういうさまざまな方がいらっしゃって、それぞれに置かれた状況、また被爆した状況が違うんですね。それを、お一人お一人丹念に調べていって、また長崎の現地での検証などもやって、いわゆる爆心地からの距離感ですとか、そうしたことなども非常に丹念に調べた上での判決であるということで、非常に私は心を動かされたものであります。

 例えば、深谷日出子さんのところでは、白内障が直接の原因になっているものであるという判決要旨なんですね。もっとたくさんの疾病をされているけれども、この点はもう当然原因だろうとお話をしているわけですけれども、一・五キロの地点にあった広島赤十字病院寄宿舎内で被爆したものであると。ガラス越しに、目に原爆により初期放射線の直爆を受けているとか、被爆後、体にガラスが刺さったまま負傷者の看護活動に従事したものである。土壌による残留放射線の被曝に加えて、飲食物の摂取、または負傷した部位から誘導放射化した物質を体内に取り込んだ可能性も十分に考えられ、脱毛、下痢など放射線被曝による急性症状として説明可能な複数の症状が生じている。

 そうしたことを細かく分析をしまして、この方は、被爆をされる前はそうしたいわゆる健康状態でも特になかったんだ、そうしたことと比較して、原因はそれ以外には考えられないということを指摘されているわけです。

 あるいは、被爆前は健康体で勤労奉仕として男性にまじっての肉体労働にも従事していたのに、体が疲れやすく体調がすぐれない、これは葛野さんという方ですけれども、こうした一人一人の状況について見ております。

 ですから、国が、では、これまでも原爆の裁判はたくさんありましたけれども、それを踏まえて、そういういわゆる機械的ではなく、一人一人の実情に応じてしっかりと認定をするべきだということが指摘をされてきているわけですけれども、それに対して、しっかり受けとめているのかということが問われると思うんです。その点について、もう一度伺いたいと思います。

○中島政府参考人 ただいまの点でございますが、私どもの主宰させていただいております原爆症認定審査会におきましても、複数の専門家によりまして、個々のケースについて、現場の状況等も丹念に調べ、また総合的な判断をいただいているというところでございますが、また個々の具体的な問題点につきましては、今後控訴審の場で明らかにしていきたいというふうに考えてございます。

○高橋委員 今、個々の方について丹念に調べているという局長のお答えでありましたが、では、今大体二十六万人が被爆者健康手帳を持っているのに、原爆症の認定はまだ二千人足らずと言われております。全体でいうと千人に八人の割合にすぎません。なぜこんなにも少ないのだろうかということを改めて問わなければならないと思うんです。

 まず、整理のために伺いますが、現在の認定状況はどのようになっているでしょうか。具体的な数字でお願いいたします。

○中島政府参考人 原爆症の認定についての状況でございますが、平成十六年度について申し上げますと、認定患者数が二千二百五十一人ということになってございます。

○高橋委員 非常に少ないと思いますけれども、いかがでしょうか。もう一度。

○中島政府参考人 原爆症の認定につきましては、申請のありました疾病が原爆の放射線に起因するものであるかどうかということ、これが起因性が認められる場合に行うものでございます。

 起因するかどうかの判断につきましては、科学的な知見に基づいて行うべきものでありまして、また、最高裁判決によりましても、起因することが高度の蓋然性をもって証明される必要があるとされているところでございます。

 現在、原爆症の認定を受けている被爆者の数は先ほど申しましたようなことでございますが、これは、こうした考え方に基づきまして、専門家で構成される審査会で審査が行われた結果でございまして、これを全被爆者に占める割合で見て数値の大小を議論するということは、必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えてございます。

 被爆者の方々に対しましては、従来から、国として幅広い援護施策を講じてきておりまして、原爆症の認定を受けていない方々でありましても、健康診断あるいは医療費の支給、これは自己負担がなくなるということでございます、また、健康管理手当の支給、これは原爆放射線と疾病との因果関係を立証する必要が必ずしもないものでございまして、月額三万三千八百円が支給されておりますが、こういった援護の対策を行っているところでございます。

○高橋委員 もちろん、従来から、健康診断を行っているという自治体での取り組みは当然ありますよという今の御報告だったと思いますけれども、それは当然承知をしております。

 しかし、そういう中で、現場から申請が毎年毎年上がってくるということは、やはりそれは原爆症という特殊な病気をあらわしているんだと思うんですね。すぐに出るものではない、十年たって、二十年たって初めてがんという形で出てくる、そうしたことがあるからこそ、現場の医療機関からこうした申請が上がってくるのではないか。そこを、皆さん方は科学的知見とおっしゃいますけれども、本当にそうだろうか。放射線による人体への影響というのはまだまだ未知の分野、全面的に解明されている分野ではないと思いますが、まずその点を伺います。

○中島政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、原爆症につきましては、毎年申請が数百件、時には千件を超えるというようなこともございますが、申請が上げられてきているところでございまして、これは、原爆症として認定される疾患の性質にもよるというところは、確かにそういった要素はあるのだろうというふうに考えております。

 しかしながら、個々の疾病が原爆の放射線によるものかどうかということにつきましては、放射線医学というものがかなりの長い歴史の中でかなり確実なデータも積み上がってきているというところで専門家の先生方に御判断をいただいているものでございまして、この点については、私ども科学的な信頼性、根拠があるものというふうに考えてございます。

○高橋委員 原爆症というその性質にもよるものであるということをまず一つお認めになったと思います。

 それで、国が控訴をした五月二十二日の審査会ですか分科会でしょうかで、この控訴理由についての報告がされていると思います。それで、るる先ほど来大臣や局長がお話をされたように、科学的根拠に基づくものであるとか、あるいは被爆者健康手帳によって独自の取り組みは一定カバーされておりますよとか、そういう報告がされております。その中で、では、一人一人についてよく実情を踏まえて認定手続をされているんですかという質問に対して、こういうやりとりがあったと思います。いわゆる原因確率の問題ですよね、一〇%未満については実際は却下をしておりますと。つまり、これは判決が指摘をしたところの機械的に適用するということをこの分科会の中でも認めていたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○中島政府参考人 ただいま御指摘の、審査における考え方でございますけれども、原因確率につきましては、これまでのデータから、いろいろな状況での原因確率、放射線によってその疾病が起こる確率というものが計算をされておりまして、それの一〇%というものを目安として使っている、考え方の基本としているということは御指摘のとおりでございます。

 しかしながら、これは先ほども申し上げましたような、最高裁判決におきます高度の蓋然性、つまり、それによって起こった可能性が相当程度にあるということから申し上げますと、その疾病が起こった可能性が一〇%、つまり、九割は違う可能性が高いというような状況まで、ある意味ではその許容範囲としているということから妥当なものではないかということで、先生方の間でも了解が得られているということでございます。

 また、その最終的な判断につきましては、先ほども申し上げましたように、個々のケースごとにいろいろな状況も勘案した上で判断をいただいているということでございます。

○高橋委員 高度な蓋然性、これは当然今回の大阪地裁でも踏襲をされております。踏襲をされた上で、あえてやはり機械的に適用するものではないこと、残留放射線による影響や内部被曝の可能性も検討すること、被爆前の生活、健康、行動状態、症状の有無、要するに、前は健康体だったのに、その後に起こったじゃないか、そうしたことを総合的に勘案するべきだということを指摘しているのであります。

 それで、先ほど来、根拠があるんだとか、それから、ちゃんと実情に基づいて調べていると言いますけれども、実際には、まず一つは、一〇%未満は機械的に切っている。それから、行政評価の中で、認定の日数が毎年毎年短縮をしているということで評価をされていると思います。私は、認定自体が時間をかける必要はないというか、長く待たせる必要はないけれども、基準を機械的に適用することによって次から次と決まっていくということであってはならないと思うわけで、本当にそれが正しく認定をされて、そして、被爆者の訴えに真摯にこたえるものになっているのか、そのことも含めて評価をされなければならないと思っているわけなんですね。

 そういう点でも、今指摘をされた残留放射線の問題、内部被曝の問題などについても考慮をされているのか、それを含めて、認定基準についてはもっと見直しをするべきではないかと思いますが、もう一度伺います。

○中島政府参考人 先ほどの答弁のやや繰り返しになって恐縮でございますけれども、この審査の方針と申しますか、審査の過程におきましては、その当該申請者の既往歴でありますとか環境因子、生活歴等も総合的に勘案した上で、経験則にも照らして判断をするということで判断をしておるわけでございまして、このような基本的な考え方につきましては先般の認定審査会におきましても御議論がありまして、その方針については変わりがないということで、要しますと、総合的な観点から最終的には審査を行ってきているということでございます。

○高橋委員 日本のこの原爆症に対する認定の姿勢というのが、やはり本当に世界的にも大きな影響を与えているのではないか、日本は唯一の被爆国でありますから、本当にこの点を実証できるといいましょうか、被爆の体験を実証できる国はほかにはないわけであります。だからこそ非常に日本には大きな責務があるのではないかと思うんですね。

 昨年の九月にチェルノブイリ・フォーラム国際会議というのが行われて、国際原子力機関、IAEA、それから世界保健機関、WHOが共催で、チェルノブイリ事故が周辺諸国に与えた環境汚染や健康影響など、さまざまな分野で専門家が検討される、そういう場があったわけですが、私は、この会議の中で日本の戦後六十年の被爆者のいわゆるデータがこの研究の中に反映をしている、そのことによって報告も大きく影響しているということを改めて考えさせられました。

 会議の中で報告をされたのは、原子炉周辺三十キロメートル以内の高レベル汚染地帯を除いた地域の汚染は、現在では健康影響が無視できるレベルまで回復した。事故に起因した小児甲状腺がんは、三共和国で約四千例発症したが、発症のピークは越えており、死亡例は九例であった。また、甲状腺がんを除いた事故に起因した固形がんによる死亡リスクは四千人と推定された。

 私は、この数字に本当に愕然としまして、本当にこんな数字をまともに信じているのかと思いましたが、私だけではなく諸外国から、マスコミなどもこれに大変注目をして、余りにも過小評価でないかということが指摘をされておるし、またそうしたことも踏まえて最終報告も延期をされているということがあると思います。

 私は改めて、本当にこの原爆というものは二度とあってはならないし、ですから、客観的に評価をするといっても、もう一度原爆を落として実験するわけにはいきません。そういう中で今できることは、原爆による被害を、正しくデータを見て、それをどうこれからのやり方に生かしていくのかということが本当に問われるのではないかと思うんです。

 このWHOとIAEAの会議には、いわゆる放影研の研究が反映をされております。日本で原爆症を小さく見るということが世界でも大きな影響を与えます。私はそういう意味でも、日本が持っている責務というのはほかにはないものだということをまずしっかり認識する必要があると思います。そのことを踏まえて、原子力安全委員会などでもいわゆる放射線の低線量被害について分科会もあり、ずっと審議をされております。

 私は、青森県の出身でありますので、いわゆる原子力半島になりつつあるそういうところにいて、被曝という言葉がこれからの課題として実感を持っている県民の一人であります。もちろん原爆の被害と原発がもたらす被害とは全く質の異なるものではありますけれども、しかし、ここに携わる方たちが常に起こり得る問題だとして十分な研究をされていることは、承知のことだと思うんです。

 そして、原子力安全委員会の中でも、いまだに放射線の影響というのはまだまだよくわからないということを踏まえた上で研究をされていると思うのですけれども、そうした点で、まず、まだよくわからないということでどうか、そして、日本が唯一の被爆国であるということでの世界に与える影響を踏まえて、責務をどう思うか、この点を大臣に伺いたいと思います。

○川崎国務大臣 それだけに、やはり科学的知見というものをしっかりしなければならない、また医学者の皆さん方の意見というものをしっかり幅広く聞きながら国の考え方というのをまとめていかなければならない、私どもも今までさまざま議論を積み上げながら一つのものをつくり上げてきた、今回つくり上げてきたものと裁判所の考え方が違った、したがって高裁の判断を仰ごうということでございますので、そういう意味では、私どもが今日まで積み上げてきた医学的また放射線学的な考え方の一つの議論が展開をされると思いますし、また、まさに唯一の被爆国としてしっかりとしたデータに基づいた議論をしていかなければならないだろう、このように思っております。

○高橋委員 それだけのお言葉の中には、まさに私がお話ししたように、唯一の被爆国という言葉を踏まえて大臣はお話をされたということだったと思います。

 その上で、当たり前のことですが、今お話をしてきたように、二度と実験はできないのだと。実は、さっき紹介した原子力安全委員会の中ででも、こういうことは二度とあってはならないのだ、だからもうそういうことを実験することはできないんだということもやはり改めて述べられているわけなんです。

 でも、そういうことであれば、逆に言うと、政治ができることは何だろうか。少なくとも、被爆者自身が、原爆がもたらす影響が、何・何キロのところにいてこれこれこれだけの影響があるんだということを科学的に証明することはそれは不可能であります。しかし、これまで積み上げてきたデータを本当に生かすということ、また、どうしてもデータでは埋め尽くせない部分は、それは、裁判が指摘をしたように、それまでは健康体であったけれども、被爆の直後、それは当日の夜だったり次の日だったりします、全く上半身裸で被爆者の看護に当たった、そういう状況から見てほかに考えられない原因ではないか、そうした指摘などに対しても、真摯に受けとめて状況的な判断を加えるべきだ、それを政治としてやるべきではないかと思いますけれども、まず局長に伺います。

○中島政府参考人 先ほども御説明させていただきましたように、私どもの主宰させていただいております原爆症の認定審査会におきましては、個々のケースについて具体的な状況をお聞きし、そしてそれに基づいてそれぞれの判断をさせていただいているということで、決して機械的に一定の枠組みで裁いているわけではないということをまず御理解いただきたいと思います。

 また、その上に、そういった判断をするに当たりましては、個々の事例については、やはり原爆放射線によって起因するというところが基本でございますので、ここの部分については科学的なデータをベースにそういったものを積み上げていくということが審査会としての責務であろう、この原爆援護法の趣旨であろうというふうに解しているわけでございます。

○高橋委員 六十年以上という年月を費やして、そのこと自体が大変な苦痛でありながら、さらに命をかけて長い間裁判に立ち上がってこられた方たちが、本当にもう死ぬのを待っているんだろうか、そういう怒りの声を上げています。

 私は、厚労省がこの間、今回が初めてではなく繰り返し裁判で敗訴をしていながら、それを真摯に受けとめてこなかった、そのことは、指摘をされているように、やはり本当に時間を稼いでいるだけなのかというふうにしか思えない。その指摘に対して、大臣、一言お願いいたします。

○川崎国務大臣 先ほどから局長から答弁がございましたけれども、被爆者の方々に対しては従来から国として幅広い援護施策を講じてきております。

 原爆症の認定を受けていない方でも、健康診断、医療費の支給、健康管理手当の支給等の措置をさせていただいてきている。一方で、この原爆症の認定というものについては、やはり医学的な、科学的な知見に基づいてしっかりやっていかなきゃならない。そこについては、今回の裁判が下されたものと私どもが今日まで積み上げてきたものの間に乖離がございますので、そこは高裁の判断を仰ぎたい、またその場でしっかりとした議論をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしく御理解のほどをお願い申し上げます。

○高橋委員 この点は要望にしておきます。

 今、高裁の場でしっかりとした判断を仰ぎたいというお話をされました。繰り返しますが、本当に原告たちには時間がございません。そういうことで、時間稼ぎではないと。そして、もししっかりとした判断を仰ぎたいというのであれば、だからこそ本当にこの一人一人の原告の実態を踏まえて書かれた判決要旨をお読みになられて、そして、単なる感情論ではなく、まさに科学的根拠を踏まえつつも一人一人の実情に合わせた判決文であるということ、それをどう受けとめるかという立場に立っていただきたいということを改めて要請しておきたいと思います。

 そして、やはり最後のネックになるのは、被爆者援護法の中に、国家的補償という制定当時から争点となった問題、このことがあいまいにされてきたことが最大の原因ではないかと思っております。私は、このことにやはり本気で取り組むべきではないのかなと思っております。

 いわゆる一般戦災者、戦災の犠牲者という方たちも、自分たちには何の補償もないのかということに非常に怒りの声を上げている、そうしたことも今全国で起こっております。東京空襲の被災者の皆さんが、ことしの六月ごろでしょうか、今月でしょうか、裁判を用意されているということも聞いております。このように、確かに空襲や原爆はアメリカが行った国際法違反の犯罪である、しかしそのことを引き起こした原因は国家にある、その立場に立って、本当に被災者の皆さん、戦争被害者の皆さんの苦しみを受けとめた行政となり得るのかどうか、このことが問われているのではないかと思います。

 こうした問題はまだたくさん伺いたいことがございます。また次の機会にしたいということで指摘をして、終わりたいと思います。ありがとうございました。


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