国会質問

質問日:2006年 11月 8日 第165国会 厚生労働委員会

感染症予防法 ―参考人質疑

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、五人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。貴重な御意見をいただき、私自身は大変勉強になりました。たくさん伺いたいことがあるなと思っているんですが、時間の関係で本当にわずかしか聞けないなと思って、残念に思っておりますが、本当にありがとうございました。

 最初に、岡部参考人にぜひ伺いたいと思うんですが、岡部参考人は感染症に関するエキスパートとして、さまざまな分野で発言をされておりますし、本日の意見においても総合的な問題について提言をされているかと思うんです。

 ただ、きょうは、ぜひ新型インフルエンザについて質問させていただきたいと思います。

 二〇〇四年に、日本で七十九年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生、山口、大分、京都と広がって、大変な混乱があったわけですけれども、その年、私自身も鳥インフルエンザの問題を取り上げ、パンデミックの問題なども取り上げた経緯がございましたが、ただ、その時点ではまだ農業分野の関心事として、家畜伝染病予防法の改正などがあったり、被害の救済対策などが話題となって、まだまだ新型インフルエンザに関しての議論というのは余りなかったという実態でございました。

 ただ、当時、既に三月にはWHOの専門家会議が行われ、新型インフルエンザの出現を阻止することは不可能だ、近い将来に起こる新型インフルエンザは世界を席巻する大流行となるという指摘があり、いかにその被害を最小限にとどめるか、そしてそれは少しでも開始をおくらせることだというふうな確認がされて、国際的な監視体制ですとか新型インフルエンザ流行地における公衆衛生上の介入措置、新型ワクチンの緊急開発、製造、供給あるいは抗インフルエンザ薬の備蓄と使用などを進めることが確認されて、各国の対策も進められてきたかと思います。

 もちろん日本も、その当時、新型インフルエンザ行動対策を持っていましたけれども、やはり飛躍的にそれを高める必要性に迫られたと思うんですね。同対策はことしの五月に改定もされ、九月には机上訓練なるものも実施をされております。

 そこで、まず、世界の流れから見て、また求められる水準から見て、日本の新型インフルエンザ対策の到達をどう評価されますか。また、急がれる課題は何でしょうかということを伺いたいと思います。

○岡部参考人 お答え申し上げます。

 新型インフルエンザというのは、先ほども申し上げましたように、世界のどこにもまだあらわれてはいないんですけれども、その前ぶれとしての状況が動きつつあるというのが鳥のインフルエンザであると思います。

 しかし、鳥のインフルエンザから直接新型に来るだけではなくて、地味なところでは、鳥が死なないようなインフルエンザウイルス、あるいは豚を経由してくるというこれまでの考え方がなくなってこっちに来たわけではないので、きちんと従来どおりのことも含めての調査研究が必要であるということがまず前提になると思います。

 それで、先ほど、五月に改定とおっしゃったような気がしたんですけれども、それは鳥インフルエンザH5N1が人に来たときのガイドラインであって、まだ、新型インフルエンザのフェーズでいうと4、5、6というのがあるんですけれども、そこにまではまだ至っていないんですね。ですから、そういう意味では、ステップアップはしているけれどもスピードアップはしていないという残念な状況にあります。

 それで、各国の状況はどうかということですけれども、世界各国といっても本当にさまざまでありまして、やっていない国から見れば日本ははるかに進んでおりますし、例えば薬の備蓄の問題とかインフルエンザワクチンの開発や何かをやっておりますけれども、しかし、例えば欧米というようなところでの関心のある国々に比べると、実際の社会の問題に対してどういうふうに取り組んでいったらいいのか、非常に複雑で連係のあるところですから、これまた私たち保健あるいは医療関係だけで考えられない問題が多数山積しているので、そういったような諸国に比べると進みは遅いと言わざるを得ないと思います。

 その基本的な問題には、例えば、私たちそれに数人で取り組んでいたり、厚生労働省にエールを送るわけじゃないんですけれども、わずか数人の担当者が一生懸命考えているだけではなかなか進まないというような状況、極めて歯がゆく思っている状況で、例えばアメリカはそこに一気に百人投入しているとか、そこまではいかなくても、もうちょっと豊かな発想で、広い意味でいろいろな応用問題をやるという取り組みができるような体制を私たちは望んでおります。

 ただ、それで何にもやらないわけにはいかないので、極めて限られた人数ですけれども、できるだけのことは現在進行中ではあります。

 完成しているかというと、残念ながらそれはできていない状況で、先生の御質問の進捗状況はどうかということとその評価としては、申し上げましたように、残念ながら、進んではいるけれどもスピードアップはされていない状況と言わざるを得ないと思います。

○高橋委員 御指摘をいただきましたスピードアップが必要だということと、多彩な研究が必要で、いろいろな分野の知恵が投入されるべきである、スタッフがそのためにも十分必要であるという御指摘だったと思います。その点は、ぜひ私たちも強く求めていきたいなと思っております。

 先生、最初に、鳥だけではないよという話をされまして、それも十分承知をしているところなのでありますけれども、高病原性鳥インフルエンザとヒト・ヒト感染の関係でありますが、近年、タイやベトナムあるいはインドネシアなどにおいて家族内での感染が見られ、家族などの濃厚な接触がある場合には限定的にヒト・ヒト感染が起こり得るということが認識されたのかと思っております。

 この問題をどのように見るべきか。つまり、新型インフルエンザ発生の芽がもう既に出ているというふうなことが言えるのか。あるいは、封じ込め、予防という点では、十分な対策というものも可能なんだよということを教訓として示してくれたと見ればいいのか、若干お願いしたいと思うんです。

○岡部参考人 お答えいたします。

 鳥のインフルエンザウイルスが大流行しているのがなかなかコントロールできないというのが根本にあるんですが、先ほどの御質問にあったように、京都あるいは山口、大分というふうに出ましたけれども、幸いに、我が国は、少なくとも鳥のインフルエンザウイルスについては封じ込めることができて、数年間ここでそれができているのは韓国と日本だけという点は誇っていいのではないかというふうに思います。

 ただ、世界的に見た場合、これがなかなかコントロールできない中で人の患者さんが出てくるわけですけれども、御質問にあったインドネシア、インドネシアは私たちも調査チームとして出すことができましたけれども、それで実情がよくわかってきたというのがあります。確かに限定的な家族、極めて限られたところで、患者さんとの濃厚な接触、もう本当にそばにくっついての感染であって、少なくともお隣とか近くの人といったような形での人から人への感染はない。

 それから、分離されたウイルスは、これはインドネシア側の発表ですけれども、危惧されているような、人に流行しやすいような、いわゆるヒト型への遺伝子変異はないということで、WHOも現在のとおりフェーズ3というふうにしているわけです。

 ただ、その遺伝子変化と人から人への感染は、今はないということであって、これはいつ、生物として動き出してくる可能性があるわけですから、そういう意味でのフォローはきちっとやっていく必要がある。その一つのあらわれが、我が国では鳥のインフルエンザウイルスH5N1に感染した人は、少なくとも現在はほかの人に感染などはしないけれども、各国の状況を見ると、それが人から人にうつりやすいというのは、いつ起きるかわからないわけなので、現在の封じ込めとして、その方に入院をしていただき、隔離をしていただき、ヒト・ヒト感染が起こってはいけないという形での、これは早目の対策だというふうに思っております。

 したがって、ウオッチングという意味では、インドネシア、タイの状況については十分に警戒をして、また調査も続けていく必要があるというふうに思います。それはインドネシアだけの問題ではないので、そこが国際間の協調、それから、我々の方もアンテナを高くする、アンテナが高くできるようにできるだけしていただきたいというあわせてのお願いになります。

○高橋委員 どうもありがとうございました。

 次に、賀来参考人に伺いたいんですけれども、先ほどの御意見、きっと、時間がとてもなくて、もっとお話ししたいことがあったんだろうなと思っているんですけれども、さっき少しだけ紹介があった宮城県内における感染対策地域ネットワークの構築の問題で、先生が取り組みをされているということをこの間幾つかの論文などで拝見して、大変興味を持って伺いました。

 先生が指摘されていることの中に、やはり欧米では感染症や薬剤耐性菌の増加の問題が、一医療施設だけの問題ではない、広く社会全体にかかわってくる重大なリスクであるという危機意識から、感染管理システムの構築やサーベイランスシステムの積極的な取り組みがあるということを述べられて、そういう点では危機意識が我が国では乏しいという指摘をされているかなと思うんですね。

 その上で、まず、いわゆる院内の感染のチームが必要だと。医師が足りない、薬剤師も看護師も足りないという問題は全くそのとおりだなと思うし、それと同時に、院内と地域とのネットワークという、段階的な論を述べられていると思うんですね。

 それで、それを構築する上でたくさん課題がありまして、直ちに取り組むことができるもの、つまり、予算がつかなくても啓蒙とかそんな形でできるものがあるでしょうということと、すぐにはできないけれども予算をつけてでもやらなければいけないもの、あと長期的にやるものと、ちょっとステップを踏んで説明していただければありがたいと思います。

○賀来参考人 お答えいたします。

 私たちは、手弁当でといいますか、集まりまして、みんなで草の根的な地域ネットワークをつくってきたんですけれども、やはり、一つは、いろいろな方が情報を持ち合って一つのものをつくっていく、例えばガイドラインにしても、ガイドラインという呼び方をしますけれども、抗生物質の使い方について、その地域の中で十人集まってみんなでそれをつくり上げていくということはすぐにでもできます。

 また、今ビデオがすごく普及しておりますので、ビデオを使って、今までは読んでいくものだったんですけれども、そうではなくて、手袋をどうつけるのか、どう外すのかということをホームビデオでそういうものをつくって、お金は全くかかりませんで、それをDVDにしてお配りすることもできます。そのような、本当に自分たちでできることというのは考えてみるとたくさんありまして、そういうことを一つ一つやっております。

 また、例えば、私どもが病院に出向きまして、もちろん病院長の許可をいただきまして私どもが自分の足で出向いて、その病院で、ラウンドというんですけれども回診を、一階から十階までの全病棟を見させていただく、それは私たちが時間をつくればやることができます。あるいは、先ほど申し上げました子供さんへのセミナーも、自分たちのできる範囲でやることができます。

 ただ、やはり人を育てるというのが、なかなかこれは難しいといいますか、文部科学省から予算をいただきまして、感染症クライシスマネジメント人材育成プログラムということで、三カ年でお金をいただいたんですけれども、これはやはり、先ほども申し上げました人を育てるという意味での教育ということでは、継続的な予算が必要になってまいります。

 また、ITを使って、私たちは、例えばこれは東北地区で、大きな遠隔の、離れていても携帯端末で病棟を見せていただいて、ああ、そのベッドはもう少し離した方がいいんじゃないですかというような、そういうITを使った器具、ハード面、そういったものの充実につきましては、これはやはり予算化していくというようなことが必要になってくると思います。

 幾つか私のこの資料の中にも書かせていただきましたけれども、やはりできることは本当にたくさんあって、それを一つ一つ、先ほど申し上げました三つのアクションプランに基づいてやっていくと、これは草の根的にといいますか、別に何も宣伝しなくてもどんどんどんどん来られまして、そういう成功体験といいますか、自分たちがこういうふうにして成功しましたということを病院の壁を越えて情報を共有化できるということは、やはりそれも、お金がなくてもできることであります。

 端的ではございますけれども、今申し上げたそういったことで、お金がかからないことからまずやっていく、かかることについては、ぜひ先生方の御知恵をいただいて、予算をちょうだいいたしまして、継続的なものをつくっていくということについては、そういう段階はあると思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○高橋委員 大変ありがとうございました。委員各位にもぜひ御協力をお願いしたいと思います。

 最後に、齋藤参考人に伺いたいと思います。

 結核予防法が廃止をされ、感染症予防法に結合されるに当たっては、いわゆる三十五条による命令入所と公費負担の仕組みがどうなるのかというのが関心事であったわけですが、感染症予防法においても、結核で入院した場合、医師が保健所に連絡して、認知をされれば公費負担の対象となるわけですが、直ちに保健所の認知が条件となり、結核予防法においてはそれが二週間前までさかのぼることができたのに、感染症予防法では七十二時間、つまり三日間までしか遡及できないことになります。こうした変更が現場での混乱にならないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○齋藤参考人 お答えいたします。

 今御指摘があった点は、現場では非常にやはり心配をしているところでございます。七十二時間、この間に、どういうふうに診査会を開いて、どういうふうに認定がされるのか、これは、各先生方からの御意見にもございましたとおり、どのくらい結核患者がいるかというのが一番の問題なんですね。

 例えば、診査会というのは各地域ごとに行われると思うんですが、その地域でどのくらい発生するかによってこの診査会がどういうふうに対応できるかということになります。先ほど御質問の中にもありました、大阪それから東京などは非常に結核の患者さんが多うございます。この多い患者さんにどう対応できるかというのがはっきり申し上げて心配なところではございます。

 ですから、実態に合わせたような、多少緩やかな部分も含めた対応をしていただく、そういうことを御検討いただくというのが一番よろしいのではないかと思います。

○高橋委員 ありがとうございました。

 この点では、審議会の中でも随分具体的に、本当に毎日やるんだろうかとか、いろいろな意見が出されていましたので、引き続いて政府に対しても確認をしていきたいと思っております。

 今回の法案では、結核予防法になかった、人権を尊重するということが入ったわけであります。それは、人権はもちろん当然のことだと思いますが、それゆえの課題というのがあるのではないか。いわゆる長期入院との兼ね合いが一つ課題かなと思っていますが、御意見を伺いたいと思います。

○齋藤参考人 お答えいたします。

 人権の問題が入りました点は非常によかったと思っています。これはやはり今まで欠けていた点ということで、いろいろな問題も出ていたと思います。ただ、人権を重視する余りに対策がおくれてしまうということは、やはりどうしても心配が残ります。

 今の御指摘のとおり、実際にこの法案が成立をして運用されていく中で、一般的に言うセーフティーネットのようなものをどういった形でつくっていくのか、そういったこともぜひ御議論をしていただきたいことと、各先生方から御意見がございましたとおり、結核は慢性的な疾患というところと、感染症法ではやはり急性期的なことに対する強制力のようなものがありますので、そこを、感染症法の中で結核をどう扱っていくのかというところは、今後のぜひ御議論をいただいて、こちらも現場に合ったものに、現状に合ったものにしていただければと思います。

 ぜひ治療をしっかりするという観点にも目を向けていただきまして、今後の対応を決めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○高橋委員 ありがとうございました。

 時間が来てしまいまして、まだまだほかの参考人の方にも質問したいことがあったのですけれども、おわびをいたします。

 これで終わります。ありがとうございました。

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