国会質問

質問日:2007年 2月 28日 第166国会 予算委員会

日豪EPA問題 ―分科会

麻生太郎外相は二十八日の衆院予算委員会分科会で、経済連携協定(EPA)などの国際交渉での関税など国境措置の完全撤廃について「すべての国で農産物の関税を撤廃することはあり得ない」との考えを明らかにしました。

日本共産党の高橋千鶴子議員の質問に答えました。

農林水産省は、経済財政諮問会議に求められ二十六日、「EPAと農業に関する作業部会」に、国境措置が完全撤廃された場合の国内農業に与える試算を公表。食料自給率(カロリーベース)は12%にまで減少し、国内総生産(GDP)は約九兆円が喪失、375万人が失業するとしています。

高橋氏は「衝撃的な数字であり、一産業の問題ではない」と麻生外相の認識をただしました。

麻生外相は関税撤廃はあり得ないと言う考えを示すとともに、交渉については「国内の影響を十分踏まえるべき」と述べました。

高橋氏はすでにEPAの交渉入りが決まっているオーストラリアとの協定でどのように交渉していくのか質問。農林水産省の原口和夫大臣官房参事官は「コメ、小麦、乳製品、牛肉、砂糖などの重要品目への影響は大きい。オーストラリアとの共同研究の中で、段階的削減、除外、再協議もふまえた柔軟な対応を示すとの方向が得られている」と答えました。

(2007年3月1日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、主に日豪のFTA、EPA問題に関連してお伺いしたいと思います。

 初めに、農水省が、二十六日、日本がWTOやEPAなどの国際交渉で関税などの農産物の国境措置を全面撤廃した場合、国内の農業生産額が約四割に当たる三兆六千億円減るとの試算を経済財政諮問会議の作業部会に発表したと報道されました。二十七日の農業新聞の一面に、食料自給率は一二%になる、この見出しが躍り、大変衝撃を受けました。

 まず、農林水産省に伺いますが、今回の試算がどういう背景でされたのか、また、その数字の根拠について伺います。

○内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の試算は、昨年十一月の経済財政諮問会議におきまして、EPAの推進の是非についての議論に関連して、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響に関する試算を早急に公表すべきとの要請があったことから作成したものでございます。

 この試算は、一定の前提を置いて行ったものでございます。具体的には、すべての国に対し、すべての農産物、農産物加工品等についての国境措置を撤廃する、何らの追加的な対策を行わない、国内の農産物需要量は増加しない、我が国の輸入増大が世界の農産物需給、価格に影響を与えないなどの前提を置いて、我が国の農産物や農産物加工品等の品質、価格、輸出国の事情等を詳細に分析し、品目ごとに影響の程度を積み上げるという考え方で作成したものでございます。

○高橋分科員 そこで、その試算の中身を見ますと、例えば、対象品目の総合で七割の減だ、甘味資源作物などは一〇〇%の減、これは製糖工場など、生産と加工が一体となっている産業は壊滅であろうと思われます。北海道、沖縄はもちろんのこと、地域全体がもたないところも出てくるのではないかと思います。関連産業九兆円との試算もございますが、これは産業連関表に基づく単純計算にすぎないので、影響はもっとあるのではないか、大きさははかり知れないのではないかという印象があります。もちろん、農業一産業の問題ではないと考えます。

 そこで、麻生大臣に、こうした影響について率直に感想を伺いたいと思います。

○麻生国務大臣 まず最初に、御指摘のありました試算につきましては、今述べておられたとおり、すべての農産物の関税を全面的に撤廃した場合の数値というように承知をいたしております。全面的に撤廃したなんという例はありませんから、そういった話で、やはりこの種の話はある程度悲観的に立てないかぬということで全面撤廃というような例を引かれて、その前提として書かれたのだと思っております。

 EPAの交渉をいろいろこれまでやってきておりますけれども、日本の食料安全保障を確保して、また、日本の農林水産業が今構造改革などの努力をしておられますけれども、そういったものに悪影響を与えないように、幾ら農業改革をやったってこれじゃお話にならぬというような感じで農民の労働意欲が阻害される、減退するというようなことにはならないようにやらねばならぬところで、十分に留意をしてきたところでもあります。

 今後とも、このEPAの交渉に当たりまして、食料自給率への影響とか、また、国内の農業、日本の農業に与えます影響というものを十分踏まえて、今ある程度農産物の輸出もいろいろな形で始まっております、日本の農産物は高いけれども、うまい、安全、そしてきれい等々、いろいろな評価も出てきておりますので、そういった意味では、攻めるべきは攻め、守るべきは守るとの姿勢で、日本としての最大限の利益というものを確保できますよう、国益を確保できますよう、政府としては一体となって交渉を進めてまいる、これが基本的な姿勢であります。

○高橋分科員 今のお答えですけれども、全面撤廃した場合は非常に悲観的な想定になるだろうというふうな前提のもとにお話をされたと思うんですけれども、これは、経済財政諮問会議の中から、全面撤廃した場合の試算を出せと言われて農水省が示したわけですから、それが念頭にあるということはやはり否めないと思うんですね。

 ですから、国内の影響がないように、最大限国益を守りとおっしゃいましたけれども、逆に言うと、私が聞いたことは、もし仮に全面撤廃などということがあったら農業は守れないんだということになるかと思うんですが、その点をもう一度。

○麻生国務大臣 全面撤廃を仮にいたしました場合、これは世界じゅう皆するということになろうと思いますが、アメリカは、農業輸出補助金等々、膨大な金を投入しておりますので、そういったものも全部なくなるという前提になりますと、これはアメリカの農業も極めて難しいことになるというのははっきりいたしておると思っております。

 そういう意味では、日本だけが撤廃してほかの国が撤廃しないなんということは交渉じゃございませんので、ほかの国もみんなそこそこ農業問題というのは、豪州でもアメリカでも、もちろんヨーロッパの国々も皆抱えておりますので、自国のこの部分はいいけれどもこの部分は絶対だめというのはみんなありますので、そういったものは、いわゆる通称ガッチャマンと言うんですけれども、ガットにずっといるやつのことをガッチャマンと言うんですが、そればかりやっているのが外務省にも何十人もおりますけれども、そういうのが長い間積み上げてきた話でありますので、丸々なくなっちゃうということは、とてもじゃないけれどもということが現実かと存じます。

○高橋分科員 よろしいかと思います。

 それで、この試算はほとんどあり得ない試算だろう、諸外国との関係もこれありということだったと思うんですけれども、ただ、あえてこういう問題が提起をされているということに、非常に私は危機感を持っております。国会での論議や省庁の方針の枠を超えた、いわゆる経済界、学識経験者らのまとめた案が、経済財政諮問会議ですので、いずれ閣議決定となり、財政運営全般を縛り、この国のあり方を決めてしまう、そういう成り立ちはやはりおかしいのではないかと私は強く指摘をしたいと思っているんです。

 そこで、内閣府にも伺いたいと思うのですが、経済財政諮問会議は、EPA・農業問題を、金融問題と並んで二つワーキンググループを設置したわけですけれども、一体、諮問会議において農業問題がどういう位置づけなのか、また、ともかくスピードという議論が聞こえておりますが、いつまでに何を決めようとしているのか伺います。

○梅溪政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の潜在成長率を高めていくためには、グローバル化のメリットを最大限活用する国内体制づくりが必要であると考えております。このため、経済財政諮問会議令に基づき、平成十八年十一月二日の経済財政諮問会議において、グローバル化改革専門調査会が同会議のもとに設置されることが決定され、EPA、FTA、農業及び金融資本市場について、課題の整理と具体策の検討を行っていくこととされました。

 さらに、同専門調査会では、これらの専門的事項の効率的な調査に資するため、EPA・農業ワーキンググループを設置して調査を進めているところでございます。

 なお、グローバル化改革専門調査会は、ワーキンググループによる調査を踏まえつつ、本年春までに、経済財政諮問会議に対して中間的な報告を行うことといたしております。

○高橋分科員 本年春までに中間的な報告というお話でしたけれども、かなり踏み込んだ議論がされているのではないかということで、先ほど述べた危惧をしているというところに戻るんですけれども、そこで私は、農水省がどういうスタンスに立つのかが今問われているのではないかと思っています。

 内閣府が昨年十二月に発表した、食料の供給に関する特別世論調査、外国産より高くても、食料はコストを引き下げながらできるだけ国内でつくる方がよいとする人が四二・三%。六年前より三・九ポイントふえておりますが、外国産より高くても、少なくとも主食となる食糧は国内でとする人は四四・五%で、合わせると八六・八%に上っております。

 松岡大臣も、昨日の記者会見で、こうした世論調査を示しながら食料安保という観点を強調され、国境措置は日本だけではなくどこの国でもやられていると主張をされているところです。

 私は、この農水省の立場は基本的には後押ししたい、もっと頑張れと言いたいと思っております。しかし、問題は、交渉入りを既に決めているオーストラリアとの協定、これが今後の行方を占うかぎになるのではないかと思っているんです。オーストラリアは、比較にならない輸出大国であります。完全自由化へ大きな一歩を踏み出す局面となるのは間違いないと思いますが、外務省に、この日豪EPAに対しての考えを伺いたいと思います。

○麻生国務大臣 外務省としてどういう態度でこの日豪EPAに臨むかという御質問だと存じますけれども、基本的には、豪州というのは、日本と基本的な価値観、いわゆる法の支配とか人権とか、よく私どもが申し上げる共通の価値観を持っております国として戦略的な関係は強化をしていかねばならぬところだと思っております。そういった意味では、このEPAというのは、仮に何らかの形で双方妥協できるところで結果として一定の合意ができれば、それはそれなりのメリットがあろうと存じております。

 しかし、私どもも、いろいろ問題でありますというのは最初からはっきりわかっておりますので、この間予備交渉をするときも、我々は非常にセンシティブな問題を抱えておるということで、この交渉でセンシティブという単語を十六回使っておると思いますが、向こうはもうわかっておると言うぐらい、これが一番問題というのをやたら強調しておりますので、向こう側も十分にわかっておると思っております。

 ただ、向こう側も、例えば関税が仮に自由化されますと、あそこにあります自動車工場などというものは、日本から輸出した方が安いということになって閉鎖に追い込まれかねないというような問題を抱えておりますので、それは同時に大量の失業者を意味します。それは、豪州側としても攻めばかりではないということがはっきりしておりますので、そういったところは双方の利益、国益に沿わなければ意味がありませんので、そういった意味では、やれるところ、やれないところ、私どもははっきりしておりますので、そこらのところはきっちり申し上げてきた、今後ともその姿勢は変わらないところだと思っております。

○高橋分科員 私も、〇四年に農林水産委員会の視察でケアンズ・グループを訪問しようということになりまして、オーストラリアやニュージーランド、タイなどを訪問する機会を得ました。オーストラリアは、国土は日本の二十倍、人口は七分の一という状況で、まさにあり余る資源がある中で、食料自給率が二三〇%、だから、食料を輸出したい、どんどん拡大したいと思うのは当然のことなんだろうなと思ったわけです。

 そして同時に、では日本はどうかというと、自給率が四割、国民の食料を四割しか賄えないような状態で、また、資源を持たない、その国がやはり対等にテーブルに着くというのはかなり無謀なのではないか、こういう印象を持っているわけです。

 それで、日豪のEPAについては、衆参の農林水産委員会の決議もあり、松岡大臣が、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖など重要品目については除外または再協議の対象となるよう交渉すると主張されてきたと思います。ただ、これらの品目は、オーストラリアにとっても大変関心の高い品目として一致していると思うんですね。特に砂糖などはアメリカとのEPAでは除外された、そういうふうないろいろな問題があって、これらを抜きにした交渉は考えにくいとなってしまうのではないかなという危惧がございますけれども、その点、いかがでしょうか。農水省に。

○原口政府参考人 お答え申し上げます。

 豪州から輸入されます農産物の多くは、我が国農業にとって重要な品目であります。したがいまして、仮に日豪EPAによりこれらの品目が関税撤廃されるということになれば、我が国の農業に大きな影響が及ぶと認識してございます。

 日豪EPAにおきましては、政府間共同研究の報告書がまとめられております。その中で、EPA交渉が開始されれば、段階的削減のみならず、除外及び再協議を含むすべての柔軟性の選択肢を用いられ得るという枠組みが取りまとめられたところであります。

 豪州との交渉に当たりましては、これを土台として、国内農業への影響を十分踏まえ、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○高橋分科員 今の表現は、柔軟な対応ということがよく言われているんですけれども、いわゆる日本側が今言っている除外だとかそういうことも含めて、一定の合意が得られているという意味でしょうか。

○原口政府参考人 EPAの交渉においてどのような措置を講ずるかという選択肢の中に、段階的削減だけではなくて、まさにその除外なり再協議というものが選択肢としてあるというふうに理解しております。

○高橋分科員 ありがとうございます。これ以上は、交渉事だときっと言われるでしょうから。

 そこで、昨年十二月に出された日豪経済関係強化のための共同研究、この最終報告書がありますけれども、三十二パラグラフの中で、「EPA/FTAは、食料貿易の関係を強化することに寄与し、世界的に食料供給不足が生じた場合も含め、日本が食料安全保障の目的を実現することに資する。」と書き込まれております。

 これは、今後地球温暖化など、世界的な食料危機が叫ばれる中で、オーストラリアが日本の食料安定供給を保障するという意味だろうか。非常に考えにくい提案ですけれども、伺いたいと思います。

○原口政府参考人 国民に対する食料の安定的な供給、これにつきましては、国内生産の増大を図るということを基本にいたしまして、これに輸入と備蓄を適切に組み合わせるということが重要であるというふうに考えてございます。

 このような観点から、共同研究におきましては、食料供給に関する日豪間の関係を強化し、その安定性と信頼性を高める措置といたしまして、例えば我が国への農産物の輸出を禁止または制限するような措置をとらないとか、輸出税の禁止などを検討することが有益であるというふうにその報告書の中で結論づけられたところでございます。

 今後の交渉におきましては、こういう共同研究の成果というものを十分活用いたしまして、我が国の国内農業への影響なり食料供給への影響というものを十分踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

○高橋分科員 これはかなり思い切った表現だと思うんですね。過去にこういうことがあったのかということもあわせて聞きたいんですけれども、オーストラリアは国土の大部分が砂漠の国であり、干ばつに悩まされてきた国でもあります。年間降雨量六百ミリメートル以下の地域が国土面積の八割を占める、五割の地域が三百ミリ以下と聞いております。やはり安定的ではないということが特にあると思うんですね。

 そうすると、例えば二〇〇〇年以降で、米が最大とれた年は何年で、幾らだったか。それに対して、最少だった年は何年で、幾らか。これをちょっと示していただきたい。それで一体、水の問題とか、あるいは不作のときとか、それも含めて食料を確保する、そこまで踏み込んでいるんだろうか、伺いたいと思います。

○佐藤政府参考人 オーストラリアにおきます米の生産量のお問い合わせでございます。

 私どもの持っております統計データによれば、二〇〇〇年以降で一番米がとれた年、百二十六万トン、これは二〇〇〇年四月から二〇〇一年三月までの穀物年度でございます。それから、最も少なかった年、二十三万トン、これは二〇〇四年、二〇〇五年にまたがります穀物年度で二十三万トンという数字がございます。

 なお、今シーズンでございます。これはまだ収穫が始まった時期だというふうに承知しておりますけれども、現時点の見込みといたしまして九万トン、前年度比約九割減、深刻な干ばつの影響であるというふうに言われているところでございます。

○高橋分科員 今年度の見込みが九万トン、二〇〇〇年が百二十六万トンということで、大変に振り幅が大きいわけですよね。これは小麦についても同じようなデータがあるかと思います。そういう中で、安定供給を約束するというのはやはり言い過ぎだろうと思うんですね。

 では、それは供給できないときはよそから持ってきてでも供給すると言っているのか、そういうことになるかと思うんですよね。どうなんでしょうか。

○原口政府参考人 農産物の貿易につきましては、基本的には民間取引も多うございまして、食料の安定供給としてどのような措置がとれるかということは、まさに今後交渉の中で検討していくことだと思っております。

 ただ、報告書の中でありましたように、その措置としましては、先ほど申しましたように、例えば豪州側が輸出制限的な措置をとらないとか、あと、例えば供給不足時にあらかじめ連絡調整なり協議の仕組みを設けるとかいうようなことは考えられるのではないかということで、共同研究報告書の中でこの食料の安定供給について一項を設けて記載しているところでございます。

○高橋分科員 この点は、やはり納得のいく答えは得られないと思うんですね。

 いろいろなお話を伺う中で、例えば水を輸入するんじゃないかとか、海の水を使うんじゃないかとか、あるいはいざというときはよそから輸入するんじゃないかとか、いろいろなことが言われているわけですけれども、あるいはオーストラリアで足りない場合は、その後に控えている日中、日米、そういう関係もあるのかなと。いずれにしても、私は、こうした記述が盛り込まれたことは、やはり外国頼みの食料安保という新たな段階に日本が移行するのではないかと非常に強い危惧を持たざるを得ない。これは指摘にとどめたいと思います。

 そこで、農水省が二十六日に出した影響試算の資料の中に、こういう記述があります。「意欲ある農業者や優良な農地等の生産資源が現に存在し、国内で十分に農業生産を行えるにもかかわらず、それを放棄し、あえて特定の農産物輸出国に国民の食料の大半を委ねている国はない。」この認識は非常に重要であり、私も共感できます。あえてこうした書き込みをした農水省の決意を伺いたいと思います。

○内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、国民へ食料を安定的に供給するというのは、国の重要な責務と考えております。その場合は、当然国内の生産を基本とし、それに輸入と備蓄を組み合わせていくという基本的な考え方で行っているところから、今委員が言及されました記述については、その考え方から当然出てくることでございます。

○高橋分科員 ぜひその立場を堅持していただきたいと思うんですね。

 では、構造改革を進めて、農水省の言う意欲と能力のある担い手に七割から八割の土地を集中する、支援策も集中するということをやっていくとしたとして、農水省が描く農業構造というのが、いわゆる完全自由化と見合うのだろうか。関税撤廃されてもやっていける、国際競争力のある農家とは、一体どういう農家なんだろう。具体的に、米の値段がどこまで下がれば実際勝っていけるのか、あるいは農地がどのくらい集積すればできるのか。これは具体的に描くことができますか。

○内藤政府参考人 二十六日の資料でも私ども示しておりますけれども、私ども、現在、農業生産コストの大幅な低減を目指しまして、担い手の規模拡大などの施策を重点的に推進しているところでございます。こうした施策によりまして、経営展望で示されました経営規模を実現し、稲作の生産コストを低減していく、大体現在の約六割、六十キログラム当たり大体一万一千円という水準にまで引き下げたとしても、米国等諸外国の生産コストと比べれば、依然として大きな格差があるというふうに考えております。

    〔主査退席、倉田主査代理着席〕

○高橋分科員 依然として大きな格差があるので、国境措置がない中では、やはり国際競争力というのはあり得ないだろうということではないのかなと思いました。

 私は、やはり基本的に、世界の貿易が完全自由化という方向に進もうとするのであれば、幾ら構造改革を進めても、あるいはスピードアップしたとしても、やはり農業壊滅への通過点にすぎないのではないか、このように思っております。

 〇六年十一月二日の第二十四回経済財政諮問会議では、伊藤隆敏会長より、岩盤のように非常に改革がおくれている分野として、二年間でEPAの締約国を三倍にするべきだなどと強力に求められた経緯がございます。そして、この場で松岡大臣は、農水省としても、国境措置に頼らない、補助金に頼らない農業の確立を目指すことについては、基本的に全く同じ気持ちであると述べております。その中で、いろいろな議論がされるんですけれども、建設業者に入っていただいて、機械や組織を利用して農地を集約して農業をやってもらう、そして、どんどん推進役を果たして、画期的に変わった政策をやると述べていらっしゃいます。

 私は、この発言は、前段の発言とあわせて、オーストラリアのように農業が工業になる、アメリカのように家族経営が株式会社に変わる、そういう方向を農水省は目指しているのかなという印象を受けますが、いかがですか。

○内藤政府参考人 私ども、今、担い手を育てるということで、担い手への施策の集中、重点化という施策を推進しているところでございます。しかしながら、担い手がいない地域もあるわけでございまして、そういう地域では、やはり担い手にかわる者として、企業の方に、例えば建設業とかそういった方に頑張っていただくということも必要と思っております。

 そういう意味で、私ども、リース方式というのを、特区から全国展開を今しておりますけれども、そういったリース方式を活用いたしまして、そういう企業が地域の農地を有効活用し、そして地域の雇用あるいは地域の農業の活性化に役立てていただけるのではないかという趣旨から、そういう施策の方向をとっているところでございます。

○高橋分科員 今の御答弁は、ワーキンググループが進めている方向とはかなり遠慮がちな、それは既にリース方式に入っているわけですから、もうそういうレベルの話ではなくなっているわけです。これは、また別の機会に述べたいと思います。

 最後に、どうしても大臣に一言伺いたいと思っております。

 十一月のその会議で、御手洗経団連の会長がこういうふうに述べているんですね。本当の人、物、金がスムーズに動く状況をつくることは、理論的には国土面積がふえるのと同じ効果がある。まさに、目指しているグローバル経済というのはそういうことなのかなと思っておりますけれども、そういうときに、農業はかたい岩盤だと言われているわけで、本間副会長などは、食料の安全保障を確保するために国内生産に頼ることがベストではないというふうにまで述べております。つまり、外国に国民の食料をゆだねて、安定供給を図れればそれでもよしとする議論が一方ではある。

 私は、そこまでいってしまうとやはり主権の問題ではないかと思うんですね。最後に、食料主権をどう考えているのか、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

○麻生国務大臣 高橋先生は青森県なので、そういったことにお詳しいのだと存じますけれども、基本的には私はこんなぐあいに、農業にそんなに詳しいわけじゃないんですが、かたい岩盤というのは別に農業だけじゃないんですよ、はっきり言って。医療関係とか、いろいろやっていましたからわかりますけれども、かたい岩盤というのはほかにもある。

 そういう中にあって、農業の場合を例に引きますと、日本の米というのは実は、ちょっとつまらない例で恐縮ですけれども、今、すしがはやりましたでしょう。すしというのは、一回炊いた米を酢をかけて冷やすわけです。酢をかけて冷やした米を食べたこと、外米でやったことがあるかというと、多分おありにならぬと思うんですけれども、私、海外に住んでいましたのでやったことがありますが、とてもまずくて食えるものではない。したがって、今、海外で食べられているすしの米は、あれは全部日本から持っていっているお米ですから。これだけ海外ですしがはやり始めると、あのお米は間違いなく海外で売られております。しかも、キロ千円で売られたり、ラスベガスなんかに行くと、キロ千六百円だとか千七百円で売られております。これが現実としてあります。

 そういった意味では、日本の場合は、今六十キロ標準米で一万四、五千円。だから、キロに換算すれば六十分の一ですから、それは日本の場合よりはるかに高く向こうで売れている現実というのを見ますと、やはり日本のものでも、いいものは高くても売れる。安全だから、うまいから、きれいだからというような部分ができ上がりつつあるというのは事実だと思っております。

 したがって、米というものの、何となく今ディフェンスばかりで主にできてきておりますけれども、そういったところも含めた上で考えないかぬというのが一点。

 もう一つは、後継者の話ですけれども、私のところにも農家がないわけじゃありませんので聞いてみますけれども、農家で後継ぎのあるところの共通点は一つです。みんなもうかっている農家です。もうかっている農家は後継ぎがいる、もうかっていない農家が後継ぎがいないというのが現実のように思いますので、どのようにすればもうかる農業になるのかという観点からこの問題は国内的には考えなければいかぬのではないか。

 ただし、基本として、食料というものは最も大事な、いわゆる戦略産業とも言えるべきものですから、こういったものはきちんと、この核の部分だけは守らねばいかぬという部分が必ずどこの国でもあるものだと思っております。

○高橋分科員 残念ながら時間が参りました。いいものは高くても売れることにはもちろん賛成ですが、しかし、最後におっしゃった、守らなきゃならないものがあるんだということ、主権の問題なんだということをぜひ押さえていただきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

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