国会質問

質問日:2007年 3月 3日 第166国会 本会議

予算案に対する反対討論

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、二〇〇七年度政府予算三案に反対の討論を行います。(拍手)

 初めに、与野党の合意がないのに、委員長職権で委員会の開会を強行し、法案の強行採決を行った伊藤達也財務金融委員長の解任決議案を民主党はなぜ取り下げたのか、全く理解できません。厳しく抗議します。

 また、政府・与党が、十分な審議を尽くすことなく、〇七年度政府予算案及び歳入関連税法案の採決をごり押ししたことに対し、断固抗議するものです。

 予算案に関する審議時間は六十時間余にすぎません。昨年の八十五時間近い審議時間と比べても、異常きわまりないものです。税法など歳入関連法案の審議に至ってはわずか五時間、予算審議でこれほどの審議軽視はほとんど例を見ません。

 時間が短いというだけではありません。貧困と格差の問題でも、政治と金の問題でも、解明すべき論点は山積しています。私たちは、問題解明のために、御手洗日本経団連会長の参考人招致、佐田前行革担当大臣の証人喚問も求めました。これを一切拒否し、政府・与党が勝手に出口を決めて押し切るという態度は、議会制民主主義を踏みにじる暴挙であり、決して容認できるものではありません。

 反対する第一の理由は、貧困と格差拡大予算であるということです。

 必死に働いても生活保護水準以下の収入しか得られないワーキングプアと称される貧困層が少なくとも四百万世帯に上るなど、貧困と格差の拡大は深刻です。その打開を図ることは政治に課せられた重大な課題になっています。政府予算案はこれにこたえるどころか、全く反するものになっています。

 定率減税廃止で庶民に一・七兆円、昨年と合わせると三・三兆円もの増税になります。生活保護の母子加算を段階的に廃止、母子家庭の命綱である児童扶養手当も最大で半額にまで減らそうとする、雇用対策費は半分に削減。一方では、史上空前の利益を謳歌する大企業や大金持ちに対しては減税の大盤振る舞いをする。庶民に背を向け、財界、大金持ちの肩を持つ安倍内閣の正体見たりと言わなければなりません。

 第二の理由は、アメリカとともに海外で戦争をする国づくりを進める予算であるということです。

 政府は、米軍基地の再編、自衛隊との一体化を進めるための予算を本格的に組みました。〇六年度補正予算と〇七年度予算案を合わせて四百億円を上回る額になっています。その促進のための特別措置法案まで提出しました。にもかかわらず、米海兵隊のグアム移転を含め米軍再編で我が国が負担する総額がどれくらいに上るのか、その概要さえ明らかにしようとしません。アメリカ言いなりに米軍再編、基地強化を進め、そのために数兆円とも言われる巨額の経費負担を背負い込むなど、許されるはずがありません。

 安倍首相が、米国内でさえ厳しい批判にさらされているブッシュ政権のイラク増派計画に対しいち早く支持を表明し、イラクへの自衛隊派兵継続をチェイニー副大統領に言明したことも重大であります。この道は、アメリカとともに海外で戦争をする国づくり、憲法九条改悪への道にほかなりません。改憲手続法案は、憲法改悪と地続きのものであり、その成立阻止へ全力を挙げることを表明するものです。

 第三の理由は、国民の立場に立った財政再建とは無縁の、逆立ち予算、浪費予算だということです。

 空前の利益を謳歌する大企業、大資産家に応分の負担を求め、歳出の無駄を徹底して削る、財政健全化を言うならこれが常道であるはずです。ところが予算案は、この方向に全く逆行しています。減価償却制度の見直し、証券優遇税制の延長などで、大企業、大資産家への減税を一層拡大しようとしています。その減税効果は一・七兆円以上、定率減税廃止による庶民への増税分がそのままつぎ込まれることになってしまいます。庶民から吸い上げて大企業と大金持ちにばらまく、この逆立ち税制の転換こそ今切実に求められているのではないでしょうか。

 無駄と浪費も目に余るものがあります。安倍首相が改革ポーズの一つに掲げた道路特定財源改革も頓挫する結果となりました。五兆円に上る軍事費や大型公共事業など大幅に削減すべきであり、ましてや国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は直ちに廃止すべきものです。

 さて、柳澤厚生労働大臣の産む機械発言が、国内外に波紋を広げました。何よりも残念だったのは、大臣が、謝罪はするものの、何が不適切だったのか、この問いに最後まで答えなかったということです。これでは、おわびの意味がありません。女性を産む性として機械的に見て、少子化対策の要因をひとり女性の責任に負わせる、事の本質をとうとう大臣も安倍総理も認めませんでした。子供を産むか産まないかは女性とカップルが自己決定できるという権利は、国際人口開発会議で確認された、これはわずか十三年前のことであります。柳澤大臣の発言は、歴史を後戻りさせる重大な認識であり、重ねて、厚生労働行政を担う資格がないことを指摘するものです。

 今、私どものところにも、若い皆さんが物のように扱われ、尊厳も希望も奪われている実態が多数寄せられています。長時間労働、派遣、請負などの不安定雇用という二極化が進み、若い皆さんが結婚して家庭を持ちたいという希望が出てくるはずもありません。予算委員会公聴会でのキヤノンユニオン宇都宮支部長の大野公述人の発言は、まさにそうした実態を浮き彫りにしたと思います。私たち請負、派遣労働者は生身の人間です、正社員と同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金をもらいたい、この声にこたえるべきです。

 安倍内閣が少子化対策で結果を出し、格差を解決したいと思うのなら、こうした大もとにある働き方の問題と真剣に向き合い、人間らしい雇用と働き方を実現するためにこそ、知恵も財政も使うべきだということを強く指摘して、私の反対討論といたします。(拍手)

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