国会質問

質問日:2007年 3月 23日 第166国会 厚生労働委員会

国民年金法改正案(社保・厚生年金病院問題)

日本共産党の高橋千鶴子議員は23日の衆院厚生労働委員会で、存続すべきとの声が全国から高まっている社会保険病院(全国53病院)と厚生年金病院の問題を取り上げました。

厚生労働省は、2002年に各社保病院に経営改善計画を策定するよう要求。その後の経営状況を反映した整理合理化計画を06年度中につくるとしています。

社会保険庁運営部の青柳親房部長は、同計画が06年度中には策定できないことを認め、「国会付帯決議をふまえ、地域の医療を損なうことがないように」すると答弁。高橋氏は、各地の社保病院が、「血のにじむ合理化をして経営改善した」と指摘し、同計画が示されないままでは医師や職員の確保ができないことを強調しました。

高橋氏は、両病院を「公的病院として存続を図るべきだ」と求めました。

(2007年3月25日(日)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 国民年金法の一部改正案は、基礎年金国庫負担の割合を今年度の三五・八%から三六・五%へと引き上げるものではありますが、十年をめどに二分の一まで引き上げるとした九四年の国会決議を既に裏切っていること、その財源も、老後の安全、安心を保障する年金でなければならないはずなのに、年金課税強化など高齢者に重い負担増を求めていることなどから、賛成できないものであります。社会保険庁の改革法案も今国会に再提出される予定でありますが、問われているのは、国民の年金に対する信頼をどうかち取るのかということだと思います。

 きょうは、そうしたことから、関連する社会保険病院と厚生年金病院について伺いたいと思います。

 今、全国の病院関係者、地域住民、議会、医師会などから存続への強い要望が上がっていることは御承知のことだと思います。社会保険病院は、健康保険法第百五十条を根拠法に、全国に五十三病院が設置されております。しかし、平成十四年七月の健保法改正に伴い、附則に病院のあり方の見直しが盛り込まれました。同年十二月には「社会保険病院の在り方の見直しについて」が発表され、各病院が三年間で経営改善計画を策定し、その後の経営状況を見ながら、今年度中に整理合理化計画をつくるとされてまいりました。平成十八年度中、すなわちあと一週間であります。整理合理化計画はできるのでしょうか。

○青柳政府参考人 社会保険病院についてお尋ねがございました。

 社会保険病院につきましては、ただいまも御紹介ございましたように、平成十四年に、私どもの厚生労働省の方針といたしまして「社会保険病院の在り方の見直しについて」というものを策定いたしましたが、これに基づきまして、平成十五年度から十七年度の三年間における経営実績などを勘案して、十八年度に整理合理化計画を策定することとしておりました。

 この計画の策定に当たりましては、こうしたこれまでの経緯とあわせまして、平成十七年に、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案を審議いただきました際に、本衆議院厚生労働委員会におきまして、附帯決議によりまして、地域の医療体制を損なうことのないよう、厚生年金病院の整理合理化を進めるというようなことが決められたわけでございまして、こういったことから、社会保険病院につきましても、これと平仄を合わせていく必要があるというふうに私ども考えている次第でございます。

 このため、これらの病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくかということを念頭に置きまして、各般の御意見を踏まえながら検討を進めているところでございますが、現在までのところ、整理合理化計画を策定するに至っておりません。

○高橋委員 つまり、今年度中には間に合わないということでありますね。これは、今、もう一度立っていただくまでもないかなと思っております。

 そこで、この間、与党議員も含めて、社会保険病院、厚生年金病院については、現在の公的病院の形、公的機能を維持しながら存続をという質問や要請が相次ぎ、そのたびに、青柳部長初め厚労省は、今答弁されたとおり、附帯決議を踏まえて、地域の医療体制を損なうことがないようにと答弁をされてきたことだと認識をしています。

 しかし、現実にあと一週間、今お答えがあったように今年度中は無理だということがはっきりしております。病院関係者は、現在、それでなくても深刻な医師不足、看護師不足、これは全国的に起こっている問題でありますけれども、自分たちの今後の見通しが決まらなければ、要するに人材募集をしても集まらない、見通しが全く持てないという、大変不安の声を上げているわけです。

 そういうことを踏まえて、一体いつまでにどのように示すのか、またこの地域の医療は守られるのか、重ねて伺いたいと思います。

○青柳政府参考人 重ねてのお尋ねをいただきました。

 御承知のように、先ほど経緯を述べさせていただきましたような状況の中で、これは、社会保険病院の平成十四年の当時におけるさまざまな事情の中で定まったスケジュールに加えまして、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案の際の国会における御議論というものを踏まえて、私ども、いわばそういった付加された条件の中での検討をさせていただいているわけでございますので、その意味では、いましばらく、これらの病院が現に地域において果たしている役割をどのように維持していくかという点が、さまざまな御議論とうまく整合性のとれるような形になるように検討させていただきたいということをお願いする次第でございます。

○高橋委員 社会保険病院は、この間、十五年から三年間の経営改善計画を見て、存続、売却、あるいは経営自立などの方針が決まるということで、どの病院も血のにじむような合理化を行ってきたと思います。結果、収支状況は改善されていると思いますが、確認をいたします。

○青柳政府参考人 社会保険病院の収支状況についてのお尋ねがございました。

 社会保険病院につきましては、先ほど来申し上げておりますように、平成十五年度を初年度とする三カ年の経営改善計画を策定いたしまして、その経営改善に取り組んできたところでございます。

 具体的に、経営改善前の平成十四年度の数字と比較をいたしますと、平成十四年度の単年度収支につきましては、社会保険病院全体では約十九億円の赤字でございました。一方、累積では三百八十八億円の黒字という状況でございました。経営改善計画を策定した平成十五年度以降につきまして、毎年、建物更新費用といたしまして約九十五億円を積み立てた上で、経営改善の最終年度である平成十七年度の数字を申し上げますと、単年度収支では約七十三億円の黒字、累積では約六百三十八億円の黒字ということになっておりますので、社会保険病院全体においては一定の経営改善が図られたものと認識をしております。

 しかしながら、平成十八年度に入りましてから収支が悪化している病院もございまして、その経営状況は必ずしも楽観できる状況にはなっていないというふうに私ども認識をしている次第でございます。

 いずれにいたしましても、社会保険病院の整理合理化に当たりましては、今後、各般の御意見を踏まえながら、できるだけ早く整理合理化計画を取りまとめてまいりたいと考えております。

○高橋委員 経営状況が改善しているというお話でありました。もちろん、楽観できないというお話は当然ありますよね。それは、今の診療報酬の引き下げだとかさまざまな状況があるのと、先ほど指摘をした、見通しが持てないということによるものが大きいのではないかと思っております。

 この経営改善をするに当たって、やはりリストラや賃下げなどの激しい合理化計画の結果であるということは当然のことだと思うんですね。それは、今年度のうちに方向が出るんだ、それまで何としても存続に必要な状況をクリアしよう、経営を改善しなくちゃいけない、そういう目標に向かって頑張ってきたことの結果ではないかと思うんです。

 どこでもそうなんですけれども、例えば福島県の社会保険二本松病院、十二の診療科を持ち、年間五百件の分娩を扱う地域の基幹病院であります。十五年度から経営改善に取り組み、十六年度末で三千三百万、十七年度末で四千五百万の当期剰余を出して経営改善が進んでおります。

 この額だけを見ると小さく見えますけれども、それプラス、今部長から報告があったように、建物更新費用一億五千万円を毎年積んでおるわけです。保険料財源は施設に入れない、こういう方針のもとで、現実に予算も変えている、それでも黒字に転化をしているわけですよね。このことは、手放しで喜べる実情ではありません。それだけの犠牲を払ったということであります。

 退職者不補充、労使協定で確認された諸手当もすべて打ち切り、増員のないまま二交代夜勤、土曜診療をふやすなど、労働条件悪化が進みました。これでは、安全、安心の医療が守られないというのは当然であります。皮膚科が二年以上休診、他の診療科も医大からの週二回派遣などでやっと切り抜けているということであります。

 重要なことは、これは全国の社会保険病院に共通した問題であります。地域の医療を守りたいから、三年頑張って存続の見通しが持てるから、そう思ってこれまで労働条件の悪化に耐えてきた、しかし、そこでゴールが見えなくなってきた、そうすると、これ以上どうするのかということが現実に突きつけられているわけですね。この点について、どう答えていくのでしょうか。

○青柳政府参考人 社会保険病院の今後のことを考えてまいります際には、これまで経営改善計画三年間を一生懸命やっていただいた、これはさまざまな要因がもちろんあろうかと思います。一番大きな問題は、従来、健康保険やあるいは年金、こういったものの保険料で病院の施設整備を行うということを前提に事業を行ってきたものから、それをいわば自前で更新費用という形で積み立てるというところに形を切りかえる、そのためには、例えば給与等についても、全社連系の病院で横並びというような形になっていたものを、それぞれの病院の実情に応じて適切に見直しをする、こういったことの結果として、先ほど申し上げたような十七年度末での数字が出てきたものと思います。

 しかしながら、この病院は、十八年度において、さまざまな環境の変化があったとはいうものの、再び収支の悪化を招いているところが一部あるということは、やはりその経営改善というものが他の民間病院等に比べれば、まだまだ必ずしも進んではいないということの一つの証左ではないかというふうに、私ども深刻にこの問題を受けとめております。

 したがいまして、もちろん、整理合理化計画を一日も早く明らかにして、その行く末というものをきちんと示すということは努力をさせていただきたいと思いますが、それと並行して、各現場の病院において一層の経営改善努力というものをお願いするということも、またお願いしていかなければならないというふうに考えております。

○高橋委員 ちょっと今の答弁は、かなり厳しいものではないのかなと。

 先ほど述べたように、三月で一定の方向が見られる、そのためにかなりの努力をしてきたと。ゴールは示さないけれども、努力は足りないと今おっしゃったわけです。それでどうやって頑張れるんですか。現実問題として、そうでしょう。見通しが持てないのに、お医者さん来てください、看護師さん来てくださいと言ったって、それは難しいですよ。退職者が出たって、どうして補充できるんですか。そういうことじゃないですか。もう一度。

○青柳政府参考人 将来、この社会保険病院がどのような形で事業を継続するにせよ、これまで続けてきた経営改善計画、合理化の進め方、これはやはり引き続き進めていただく必要があるわけでございますので、もちろん、私ども、先ほど来繰り返しておりますように、その整理合理化計画を一日も早く示すということについては努力を惜しまないつもりではございますが、しかし、その結果、新しい姿が示されたとしても、そこにおける経営合理化を推進していくということについて変わりはないということを申し上げさせていただいたつもりでございます。

○高橋委員 新しい姿が示される見通しがまだ見えないから、どこまで頑張ればいいのかということを指摘しているんです。

 厚生年金病院は、昨年の三月に計画を出すはずが、依然として宙に浮いております。まさにこちらの方は、もう一年以上見通しが持てないから、深刻な状態が続いております。先ほど述べたように、まさに医師、看護師、職員の確保、見通しが持てないと悲鳴が上がっております。

 一方、これらの病院は、テレビで紹介された湯布院を初め、リハビリ、小児救急、腎臓治療など、地域にとってなくてはならない医療を担っています。また、この間、委員会でも話題になってきたように、全国的にも要望が強いにもかかわらず、これがだんだん穴があいていく、そういう分野ではないでしょうか。お願いしてでもそうした病院には維持してもらいたい、それらの診療科をしっかりやってもらいたい、そういう状況ではないかと思うんです。

 社会保険庁の改革案が一たん廃案になり、今国会に再提出されておりますが、社会保険病院と同様、厚生年金病院を社会保険庁改革いかんとは切り離して公的病院として存続の道を探るべきと思いますが、いかがでしょうか。

○青柳政府参考人 社会保険庁の改革案との関係で、今、病院の姿をどうするかというお尋ねがございました。

 社会保険庁の改革案は、現在、国会に提出しておるわけでございますが、これは平成十六年度以降、私ども、法律に盛り込んだものも盛り込んでいないものも含めて逐次進めてきたものでありますし、その意味では、平成十七年に御審議をいただきました、いわゆる年金・健康保険福祉施設整理機構法案もまた社会保険庁改革の一環であったというふうに私ども受けとめておるわけでございます。

 したがいまして、社会保険病院、厚生年金病院のあるべき姿というのを整理合理化計画という形で一日も早くお示しするということは、繰り返し申し上げているように、私ども、引き続き一生懸命努力をしてまいりたいというふうに考えておりますが、そのことは、いずれにしても、社会保険庁という組織が新しい姿に変わっていくというものの重要な一環であるということをしっかり受けとめて取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋委員 自民党の厚生労働部会あるいは社会保険庁ワーキンググループの合同会議を受けての二月二十七日の尾辻座長の記者会見の中でも、これは法案とは切り離して検討したいということが表明をされておりますので、これは世論の反映なんだろうということは多分感じているんだと思うんですね。その点は強く指摘をしておきたいと思います。

 最後に大臣に伺いたかったんですが、残念ながら時間が参りましたので、次の機会にしたいと思います。

 全国の陳情書があります。百二十三ページ、これは全部つづったものですが、そのうち五十ページが、大臣のおひざ元である静岡県と関係自治体からのものであります。三つの社会保険病院があるということで、医師会が地域にとってなくてはならない病院だと強く要望していますし、議会からも繰り返し要望が出ている、地域にとってなくてはならない病院だとみんなが認めている病院は、やはりそういう形で維持するというのが望ましいだろうという点で、大臣にも強く英断を迫りたい、重ねて指摘をして、終わりたいと思います。

 

【反対討論】

○高橋委員 日本共産党を代表し、国民年金法等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。

 本法案は、基礎年金への国庫負担率を引き上げるために、二〇〇七年度の国庫負担積み増し分を千百二十四億円とし、国の負担割合を〇六年度の三五・八%から三六・五%へとわずかな引き上げにとどめるというものです。

 言うまでもなく、基礎年金国庫負担の拡大は当然のことであり、一九九四年の国会附帯決議では、国庫負担二分の一への引き上げを九九年を目途に実現することが全会一致で決まっておりました。ところが、この合意は先送りされ、前回の年金改正法附則では、二〇〇七年度を目途に所要の安定した財源を確保する税制の抜本改革を行い、二〇〇九年度までに引き上げることとされました。

 本法案では、この間の合意や附則を無視して、国庫負担の増額をごく少額にとどめ、国庫負担二分の一の実現をまたもや先延ばししていることは、国民への公約違反、怠慢と言わざるを得ないものです。

 そして、その財源については、与党税調の〇四年度税制改正大綱に盛り込まれた年金課税の適正化や定率減税の縮減、廃止を国庫負担割合の段階的な引き上げに必要な安定した財源とし、国庫負担を二分の一にするためだから、高齢者増税も定率減税の廃止などもやむを得ないとしてきました。

 ところが、実際には、高齢者増税と定率減税の廃止によって国税分だけで二兆七千億円も財源がふえたのに、年金への国庫負担は〇七年度までに約五千億円しかふえていないのです。これでは、国民をペテンにかけたことと同じではありませんか。

 しかも今度は、消費税増税の口実にこの基礎年金国庫負担引き上げを使おうとしています。この点は、安倍総理が総裁選さなかに、日本記者クラブの討論会で、二〇〇九年には基礎年金の国庫負担引き上げの財源が必要だから、〇七年秋から消費税増税の議論を始めると述べていることからも明らかです。

 国庫負担引き上げを高齢者増税、定率減税の廃止の口実に使うだけではなく、消費税増税の口実にも使うなどは、偽りの証文で庶民から税金を二度取り立てるようなものだと言わざるを得ません。

 以上指摘をして、反対討論といたします。

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