国会質問

質問日:2007年 4月 13日 第166国会 厚生労働委員会

パート労働法改定案(疑似パート問題)

 パート労働法改定案を審議中の厚生労働委員会13日開かれました。与党は当初、質疑終了後の採決を主張していましたが、「合意が整わない」として見送りました。18日の委員会で採決をねらっています。
 日本共産党の高橋千鶴子議員は、正社員と労働時間や就業実態が同じにもかかわらずパートとして雇用される「疑似パート」の問題をとりあげ、均等待遇を図り、通常の労働者として雇用されるべきだと迫りました。
 政府案ではパートについて、通常労働者と比べ一週間の労働時間が短い労働者と定義しているため、フルタイムパートや「疑似パート」は法律の対象外となっています。「なぜこんなに疑似パートが増えたのか」との質問に、大谷泰夫厚労省雇用均等児童家庭局長は「人件費の安いフルタイムの非正規労働者を雇い入れ、単に正規と区別してパートと呼んでいる面もある」と答えました。
 高橋氏は「国際的にも日本だけが(通常の労働者を)都合の良いようにパートと呼んで差別が横行している」と指摘。契約上は7時間労働なのに始業前や退社前にただ働きさせている実例もあると告発し、「実態調査を行い、歯止めをかけるべきだ」と求めました。
 「適正に処遇されるよう努め、実態把握に努めたい」と答えた大谷局長に、高橋氏は、パートタイム労働指針に当事者の意見を反映させ、実効あるものにするよう求めました。
 大谷局長は「いろんな考え方が反映されるよう努力したい」と、柳沢伯夫厚労相は「公労使(公益・労働・使用者代表)の責任で取りまとめられていく」と答えました。

(2007年4月14日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 差別をなくしてほしいという多くのパート労働者が見守る中、この審議が進められてまいりました。私は、まだ審議が十分とは思っておりません。大臣は一歩前進という言葉を繰り返しましたが、果たしてそうでしょうか。

 四月十日の参考人質疑において、佐藤参考人は、基準が適切ならば、同視すべきパート労働者は少ない方が望ましい、対象者が少なければ差別がないということと述べられました。

 本当に驚く意見でありました。対象を絞り込むだけの基準ではないのかという危惧がまずあるということ、そして、パートというだけで最賃すれすれの低賃金、忌引もない、休憩室なども与えられない、そうしたさまざまな実態が今あり、その中でパート労働法の改正が求められているというのに、これらもみんな合理的な理由になってしまうのかということを考えております。

 大臣は、同視すべきパート労働者が少ない方が好ましいと思っているのですか、またそれが少なければ差別はないと考えているのか、伺います。

○柳澤国務大臣 私も、率直に言って佐藤参考人のこの部分を読んだときは一体どういうことかとちょっと戸惑いました。戸惑いましたが、よく考えてみると、なるほどと思って、この限りでは得心したんです。

 それはどうしてかというと、佐藤先生が言われていることは、基準が大事なんだ、当てはめるべき基準がどこから見ても均衡待遇というものを実現するような基準になっていれば、そこをまず一義的に考えるべきだ、その結果、その適用対象になる人がなかった、あるいは少なかったということだったら、論理の世界の話なんですけれども、それは、全く差別というか、そういったことがなかったということになりますよねというふうに考えると、なるほどというふうにわかるわけです。

 しかし、今我々が直面している、今度この基準をパート労働法を改正して実行するというのは、やはり不均衡があるという前提で、実態にもうそういったことがあるという前提で、この実態との関係では、改正が行われるわけでございますから、それは、今度は、我々実際界に対処しなきゃならない人間としてはそういうことはないわけで、基準が公正に定められるということは大事なんだ、それはわかる。しかし、適用したときもやはりそれにさわる人たちがいましたから今度は改善されましたということが期待されているんだと私は考えておりまして、佐藤参考人の御意見というのは、論理的に言えばそのとおりだけれども、我々が法の改正に取り組んでいる、我々実際界に対処しなければならない者としてはやはりそうではないのではないか、もう一つこの話が必要なんじゃないか、こういうように考えておる次第でございます。

 しかし、佐藤先生の言うことは、この改正法ができ上がった後、運用された後、もう使用者、労働者の間でそういう不均衡な取り扱いということがなくなる世界というものを想定するとすれば、それはそれでまた佐藤理論が成り立つ世界が現出される、それは非常に大事なことだと私は思います。

○高橋委員 また今の発言は大問題だと思いますよ。

 基準が適切であればとお話ししましたけれども、佐藤参考人は、既にその三つの基準に納得したということを前段で述べておられて、その上で少なければ差別はないとおっしゃっているんですから、もうそれは全然前提が違うわけです。対象をうんと絞り込んでいて、今だってどのくらいいるかわからないと答えているのに、それがわからない、ちょっとしかいなかったら、大臣が言うように五%でもいいですよ、五%しかいなかったら、ああ五%しか差別はないんだと言っていることなんです。それを大臣が認めちゃった、とんでもない、これはもう強く抗議をしたいと思っております。

 それだけで時間がなくなると大変でございますので、パート労働法の二条に照らして、通常の労働者に比べて所定内労働時間が短いだけがパートであるなら、本来疑似パートというものは存在しないはずです。十分短くてもパート労働法の対象になる、それ以上は通常の労働者とみなすということを確認してよろしいでしょうか。

 もしそうであるならば、なぜこんなにも疑似パートという言葉が問題になるのか、なぜ疑似パートは生まれるのか、それを伺います。

○大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる疑似パートにつきましては、法律上定義がないわけでありますけれども、この法案における差別的取り扱いの禁止の対象者を疑似パートというふうに呼ぶ方もあれば、フルタイムで働いて、呼称としてパートと呼ばれている方を疑似パートというふうにとらえている方もいるというふうに考えております。

 この疑似パートにつきまして直接示すデータは存在しないわけでありますけれども、フルタイムのいわゆる呼称パートについては、より近い数値として、一定の数がおられるということも承知しているわけであります。

 企業がこの疑似パートを雇用する理由を明らかにした調査等を把握しておりませんので正確に回答することはできませんが、今、企業がパートを雇用する理由で一番多いのが、人件費が割安、六六・五%というふうに承知しておりますが、こういったことを考えますと、人件費の安いフルタイムの非正規労働者を雇い入れて、その者に対して、単に正規労働者と区別してパートというふうに呼んでいる面もあるのではないかというふうに推察しております。

○高橋委員 企業の都合のいいように雇われているということを認めたと思います。

 九三年のILOの報告書を見ても、日本語で言うパートタイムという言葉は、ILOが定義するパートタイムとは異なる意味を含んでいると指摘をしております。日本だけが都合のいいようにパートタイムといって、その言葉によって差別が非常に横行しているということなんだと思っております。

 そこで、今問題になっているフルタイムパートなどが、実際は、本当ならば通常の労働者として扱われるべきなのにパート扱いをされている、不当に安きにおとしめられている、そういうことがないように。あるいは、実質、契約は七時間というようにパート扱いなんだけれども、始業開始前あるいは退社前など、三十分、四十分というように実質ただ働きをさせられている、企業が恣意的にパート労働者を安く働かせている、そういうこともたくさんあるわけです。

 こうした問題を、実態調査を行うことや指針に書くなどしてきちんと歯どめをつくるべきと思いますが、いかがでしょうか。

○大谷政府参考人 今回の法案に定めております短時間労働者、それに当たる方々について、適正に処遇されるように今後とも努め、また必要に応じてその実態の把握には努めてまいりたいと思います。

○高橋委員 多分、今の段階で指針に書くというのを断定的には言えないから、適正に処遇ということを言ったのかなと思うんですが、そのことを踏まえながら、指針は労政審に再度諮ることになりますよね。その際、パート当事者の意見を反映させて実効あるものにすべきと思いますが、どうでしょうか。

○大谷政府参考人 指針につきましては、この法律が成立いたしますれば、今後、労働政策審議会にお諮りすることになると思いますが、その中でいろいろな方々の考え方が反映されるように努力してまいりたいと思います。

○高橋委員 同じことを大臣にもう一度伺いたいと思います。指針をつくる上で、当事者の意見を大いに反映させて、不当な扱いがされないようにきちっとしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。最後に決意を伺います。

○柳澤国務大臣 労政審も、この問題については、先ほども答弁いたしましたように、引き続いて検討ということになっております。

 したがいまして、その検討の具体的な進め方というものをどうされるかというのは、やはりこれは労政審の先生方がお決めになるという部分も多いんだろうと思いますけれども、いずれにしても、今の労政審における公労使のそれぞれの方々の責任ある発言のもとでこの取りまとめ、検討が進められていくというように私は考えております。

○高橋委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ちょっと今、大臣の答弁と局長の答弁が微妙に違うかなと思っておりましたけれども、当事者の意見を踏まえてということを確認しておきたいと思います。

 終わります。以上です。

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI