国会質問

質問日:2007年 5月 16日 第166国会 厚生労働委員会

社保庁法案質疑 保険料徴収問題

 国民健康保険の保険料を満額納めているにもかかわらず、年金保険料滞納を理由に、約二百万人から国民健康保険証をとりあげようとしている問題が十六日の衆院厚生労働委員会で明らかになりました。日本共産党の高橋千鶴子議員がとりあげたものです。

政府は、社会保険庁を解体・民営化するとともに、保険料の徴収強化のため、滞納者に対して自治体の判断で、有効期間が短い(一カ月など)国民健康保険証を出せる法案を提出しています。

 高橋氏の質問に厚労省は、国保料を満額納めていて年金保険料未納の人が二百万人にのぼることを明らかにしました。

 高橋氏は、現在出されている短期保険証(百二十二万世帯)の倍近くの人が新たな対象者になると指摘。「違う制度をリンクさせて年金未納者に国保で制裁すべきではない。国保証取り上げは命に直結する重大問題だ。市役所から足が遠のき、収納率向上にもつながらない」とのべました。

 高橋氏は、国保でも徴収強化が強まっているとして福島県会津若松市が出した黄色や真っ赤な督促状、山梨県韮崎市の真っ黒の督促状封筒の実物を示し、「市民を震え上がらせる手法は許されない」と批判。柳沢伯夫厚労相は「きつすぎる。納付は別途の方法で確保すべきだ」と答えました。

 高橋氏は、兵庫の旅行業者が年金保険料を三カ月滞納しただけでいきなり預金口座を差し押さえられた事例を紹介。年金でも人権無視の取りたてが横行するもとで国税庁に委託するなど徴収をさらに強化することについて、「年金未納者には国保で制裁。かたや国税庁をバックになりふり構わぬ取り立てで生存権・財産権を脅かす。これでは年金不信を増長するだけだ」とのべました。

(2007年5月17日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 昨年のねんきん機構法案のときにも指摘をしたわけですけれども、私は、年金未納者に対して国保の短期保険証を発行するという制裁は絶対にやるべきではないと思っております。そもそも年金と国保は制度が違うものであり、リンクさせること自体がおかしいということです。同時に、国保の保険証取り上げは、命に直結する重大な問題であると思うからです。

 平成十八年六月一日の速報値で、国保の滞納世帯数は四百八十万五千五百八十二世帯、資格証明書が三十五万千二百七十、短期保険証が百二十二万四千八百四十九世帯に発行されています。これは、まだ青森県を初め八県で資格証明書を発行していなかった十年前と比較して、資格証明書で六倍、短期保険証が八倍にもふえております。

 まず最初に伺いますが、私は、昨年、この国保証の取り上げ問題について、その前から、尾辻元厚労大臣、川崎元大臣、そして小泉元総理にも繰り返し質問をし、特別な事情があって払えない人に機械的な保険証の取り上げはしないということを確認してまいりました。この点について大臣に伺いたいのですが、市町村の窓口で機械的な対応がやられていないだろうか、厚労省としてはこのことを徹底しているのかどうか、伺いたいと思います。

○柳澤国務大臣 国民健康保険の資格証明書の発給というものについては、これは、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない方の未納分につきましては、他の被保険者の負担となりますので、被保険者間の公平性を確保する見地からしっかりとした収納対策を講じていく必要がありまして、資格証明書もそうした方策の一つであるということで御理解を賜りたいと思います。

 資格証明書を機械的に発給する等のことが現場で行われてはいないかということでございますけれども、これは法律の上におきましても、保険料を納付することができない特別な事情がある、災害であったり、あるいは親族の病気であったり、あるいは事業の廃止であるとか、そういう場合にはこれは交付をしないということになっておりまして、きめ細かな納付相談を行う中でこうした事情の把握に努めるとともに、生活にさらに困るというようなことであれば、最終的なセーフティーネットである生活保護にもつなげていくというようなことで、窓口の対応についてはこうしたことをしっかりとやるように周知徹底を図っているところでございます。

○高橋委員 きょうは資料をつけておきましたけれども、平成十九年三月二十九日付の事務連絡で、「平成十九年度における国民健康保険の事務打合せ(指導監督)の留意事項について」打ち合わせという名の指導監督となっておりますが、その中で、三枚目をめくっていただきますと下線が引いてあります。これは私じゃなくて担当者に引いていただいたんですが、下の段のところに、「交付基準を定めることは必要ですが、滞納者に一律に交付するのではなく、個別事情を勘案しつつ、交付するよう助言して下さい。」というふうに書かれてございます。今大臣がおっしゃったことも、まさにここに尽きるのではないかなと思うんです。

 でも、実際は、現場ではなかなかそうはなっていないんです。きょうはその中身について触れることはしませんが、大臣も何度か委員会などで指摘をされていたとおり、保険証がないために病院にかかれなくなり命を落とした方が、わかっただけで今二十九名にまでなりました。そういう実態があるということで、引き続いてこの徹底を指摘しておきたいと思います。

 そうはいっても、今回の法改正によって、国保税を満額納めているにもかかわらず短期保険証を出すということになるんですね。これは局長、端的に答えてください。

○青柳政府参考人 ただいまのお尋ねは、まず、国民健康保険の保険料を全額納付しているにもかかわらず国民年金保険料を納めていない数、つまり対象となり得る数はどのくらいかというふうにお尋ねかと存じます。

 これは、平成十四年の国民年金の被保険者実態調査結果によりますと、その一年前の平成十三年度の市町村国民健康保険の保険料をすべて納めている方のうち、平成十二年度及び十三年度における国民年金の一号被保険者期間の保険料を全く納めていない方の割合が一二・三%という数字を把握しております。

○高橋委員 部長、私の質問は、そういう人にも短期保険証を出すということですねという質問であります。

○青柳政府参考人 大変失礼いたしました。

 そのような方の場合には、今回の法案の改正によりまして短期被保険者証の対象者となりますが、最終的にその方にお出しをするかどうかは市町村が御判断をする問題というふうに承知をしております。

○高橋委員 それで、今ちょっと先取りをして答弁をしていただいた、国保税を全月、満額納めている方のうち国民年金未納者が一二・三%である、これは十四年の実態調査によるわけですね。同じ調査で、角度を変えて、年金未納者だけれども国保税を全月納めている人は五八・三%、六割近くは国保税を満額納めているんだ、こういうふうなことを書いてあります。これはどちらも同じことだと思うんですね。つまり、数字を当てはめていくと、二百万人は下らないのではないかということなんです。

 つまり、さっき私がお話ししたように、現在百二十二万人に短期保険証が出されております。その倍近くの人が新たなターゲットになる、イコールではないけれども、短期保険証を出す対象者に、可能性がある人になるということでよろしいでしょうか。

○青柳政府参考人 今回お出ししております法案の対象者という意味ではおっしゃるとおりでございますが、繰り返しになりますが、その方々に実際に短期被保険者証をお出しするかどうかは各市町村の判断ということでございます。

○高橋委員 余り先取りをしてお話をしないようにしていただきたいんですが、まず、何度も市町村の判断とおっしゃるので、市町村は、この人は満額納めているんだから短期保険証を出す必要はないといったときには拒否できるということをおっしゃっているんですね。では、これを先に確認します。

○青柳政府参考人 繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、最終的には市町村の御判断ということでございますが、この制度の趣旨は、国民健康保険の保険料を満額納めていたとしても国民年金の保険料を滞納しているという方に、現在、例えば、今後、国民健康保険の前期の高齢者の方の保険料についても年金から源泉徴収をすることになるということや、あるいは後期の高齢者の方についての保険料も年金からの源泉徴収になる、あるいは、介護保険の保険料、一号被保険者分は既に源泉徴収をさせていただいているということがございますので、年金の受給権に結びつくようなアプローチを市町村においても国民健康保険と連携させてやっていただくことによって、最終的にそうした市町村が徴収しなければいけない医療保険制度、介護保険制度の円滑な運営も図れるといったことが背景にございます。

 最終的には市町村の判断でございますが、市町村においては、適宜この制度の趣旨を御理解いただいて適切な運用を願いたいというふうに考える次第でございます。

○高橋委員 結局は、まず、拒否はできると、今の脈絡からいってそうだと思うんです。ただ、御理解願いたいということで、市町村にはやはり納付督促などをお願いすることになるわけですよ。保険証がなければ病院にかかれません。年金も大事だけれどもそこまで手が回らない、そこまで大変なんです。多くの人の事情がそうです。だからこそ必死で納めているのに、満額納めているのに短期保険証が来た、なぜだ、そう思いますよ。それで市役所に相談に行くと、さあ来たぞとばかりに年金も納めなさいと言われるわけです。これでは、短期保険証を発行してきめ細かい納付相談に乗ると言ってきたのに、市役所からも足が遠のくのではありませんか。

○青柳政府参考人 今回の国民年金の改正法案の趣旨は先ほど申し上げたとおりでございますが、例えば、国民年金の保険料を払えない何らかの経済的な事情がおありになる方の場合には、この方々を例えば免除制度にうまく結びつける、また、現在、国民年金では、段階的な免除という形で四分の一、二分の一、四分の三という形の免除もございます。

 その方のいわば所得の要件に合わせてそういった納付の方法をお勧めするということもこの制度の重要な趣旨でございますので、払えないから何か懲罰的に短期被保険者証を交付するというところに着目をされて先ほど来高橋委員からは御質問いただいているわけでございますが、そういった年金受給権の確保という点を我々としても十分にねらっていきたいというのがこの制度の趣旨であることを御理解賜りたいと存じます。

○高橋委員 年金受給権の確保の問題に対して、国が責任を持たずに、市町村の窓口を活用して、受給権の確保のために大事なんだから市町村も協力しろということになるのは、それはまた別の問題ではないのかと言っているんです。

 それから、短期保険証は懲罰的なものではないとおっしゃいますけれども、今現実に何が行われているかといえば、三カ月ではないんです、一カ月、あるいはもっとひどい十日というのも実は青森県内でありましたけれども、そうやって、一回病院に行くたびに、保険料を払いに行かなければ保険証は切れてしまう、そういう形で実際の制裁につながるようなことがやられているんです。そこにやはり結びつけてはいけないのだということを重ねて指摘をしておきたいと思います。

 国保の収納対策については、平成十七年二月十五日付の収納対策緊急プランを発して、一層の締めつけを行ってきました。この中には、「特別調整交付金の算定に当たっては、資格証明書未発行の保険者を対象から除外していることに留意されたい。」というふうにただし書きがあるんですね。つまり、これは実質ペナルティーに当たると私は思うんです。国保の調整交付金を引き合いに出されると、財政難の自治体は非常に弱い立場にあるわけです。

 今回は、年金の督促に協力する自治体には交付金で何らかの援助をするというふうに書かれておりますね。そうすると、まさにあめとむちの仕組みなのではないかという形で、だんだんだんだん市町村も一緒になってやらなければならなくなるだろうということを言わなければならないと思うんです。

 資料の七枚目にあるんですけれども、今現在、国保の滞納者は全部のうち一八・九%、このうち強制処分は既に一・六四%、七万七千二百六十二世帯に滞納処分がされております。国税よりも既に多くのところで国保の分野だけでもされているのです。

 私は、国保法に短期保険証を出せるということを、省令に書いていたものを法定に格上げするという今回の措置によって、結果として国保そのものの収納対策も強まるのではないかと懸念を持っていますが、いかがですか。これは保険局長に答えていただきたい。

○水田政府参考人 ちょっと今の質問の御趣旨がよくわからない面があったわけでありますけれども、短期保険証にいたしましても資格証明書にいたしましても、これは繰り返し御説明しておりますとおり、納付相談の機会をふやすということでございますので、そういう意味では、これは収納対策の一環としてとった手段でございますが、それ自体妥当なものだと考えております。

○高橋委員 今回の措置によって、これまでは省令に落とされていたわけですけれども、法定される、短期保険証も出す、それに対して交付金も出すという形で、国保の世界でも強まるのではないのかということを指摘させていただきました。

 これは、皆さんはそれを当然のものだと思っているからなかなか、話がすれ違うわけですね。それが制裁だとも思っていないということをおっしゃっているんだと思うんです。私は、現場では実際に制裁になっている、行き過ぎになっているんだということにちゃんと目を向けてほしいということを指摘したいと思うんです。

 続けます。ここで、大臣に見てもらいたいものがございます。黄色い封筒、赤い封筒、黒い封筒がございますが、まず、こちらの黄色い封筒、これは福島県の会津若松市、今ちょっと、昨日のショッキングな事件で世間を騒がせていますが、国保の督促状の入っていた封筒であります。

 こちらは同じく会津若松市ですが、これは市税の滞納者に送った差し押さえ予告であります。これを受け取った六十三歳の女性は、この色を見ただけで動悸が激しくなったと言います。脅迫状のように思えた、いつも滞納を気にしており、年末までには何とか工面して納めたいと思っていたのに、心ない赤封筒にショックと怒りを覚えたと。住民団体からも強い抗議があり、地元紙にも紹介され、市議会でも取り上げられました。

 こちらの真っ黒な封筒、これは山梨県の韮崎市です。市民税や国保税滞納者に送った封筒であります。四十九歳の男性、こんな気持ち悪いもの、だれが送ってきたのかと見たら市役所でした、信じられません、さまざまな事情で税金を納められない人もいる、悪者扱いはおかしいと。これも市議会で我が党の議員が取り上げて、次回からは使用しないということを市の当局は述べています。ところが、この当局がこんなことを言っているんですね。通常の封筒では開いてもくれないので、目立つように赤や黄色など、ずっと色つきの封筒を使ってきた、くしくもことしは黒になったと述べ、インパクトが強過ぎた、行政が使う色ではなかったと認めているそうであります。

 大臣に率直な感想を伺いたいと思います。このような、市民を震え上がらせて納付を迫る方法は行き過ぎであり、あってはならないと思うが、いかがでしょうか。

○柳澤国務大臣 どこの自治体におきましても、現在、特に住民税等は、国から税源移譲を受けるというような形で税源としては地方に渡るわけですけれども、これは実は非常に厳しい状況になるわけでございまして、税源が渡っても本当にそれが税として具体的なものになるかというのは、これは徴収というか納付をしっかり確保しなければ、税源があるというだけで実際の税収には何もならない、こういうことでございます。

 そういうようなことで、各市町村ともに本気になって納付対策というものをいろいろと講じておられるということを私も見聞きしているわけでございます。そういう中で、今の封筒の色でございますけれども、これはちょっと、私としてもショッキングな色使いかなというふうに思います。

 いずれにいたしましても、地方公共団体といたしましては、これから住民税、これはいわゆる固有名詞の住民税じゃなくて、住民からいただく税の納付を確保しなければならないという努力はさらに強めなきゃいけないという立場に立っておりますので、住民の皆さんにしっかりサービスをして、その応益負担としての地方税というものがしっかり納付されるように、そういうことはいろいろな工夫でもって、別途の工夫でもって確保していくべきであると、私は、今その封筒を見まして率直に、ちょっとそれはきつ過ぎるんじゃないかというふうな感じがいたしました。

○高橋委員 ありがとうございます。

 さすがに市役所の方だって認めているわけなんですから、こういうやり方ではなく、きちんと市民の理解を得、市民の相談に乗るという形でやっていただきたい。それは国保の世界においても年金の世界においても、あるいは国税の世界においても貫徹していただきたいな、このように期待をして質問させていただきました。

 そこで、きょうは国税庁の関係でもちょっとお伺いをしたいと思うんですけれども、実は、先ほど紹介したこの赤い封筒の中にはピンクの紙が入っておりまして、「差押予告」という強烈な文字で、これを見てどぎもを抜かれるわけですけれども、その後ろに書いてある言葉です。「このまま納付もしくは相談がない場合は、財産(給料、売掛金、預貯金、電話加入権、動産、不動産等)の差押えなどの滞納処分を行うことになります。滞納処分を受けることは、あなたの信用を失ってしまう事態にもなりかねませんので、速やかに納付してください。」ということが書かれていて、もう相当人格を傷つけられたという思いがしているわけです。

 その後に、「同封の催告書は地方税法に基づくものではありませんので、指定納付日前でも財産調査や差押処分に入る場合があります。」、ここまで書いているんですね。つまり、法律に基づくものではないと断りを入れた上で、期日前の差し押さえを示唆したりということが、市町村の裁量でここまでできるんだろうかなと。

 それで、ちょっと考え方を整理したいんですね。差し押さえとした場合に、今、電話も売り掛けも給料も全部入っておりますけれども、生業と生活に必要な最低限の資産については、当然これは守られるべきだと思いますけれども、国税庁の考えを伺いたいと思います。

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 強制徴収ということでございますが、私ども、国税徴収法の規定に基づいて強制徴収の事務を行っておるわけですが、この場合、まず、個別の滞納の状況を踏まえまして、必要に応じてやるわけですが、法律上、滞納者の最低生活の保障の観点から、一定の財産は差し押さえが禁止されているという部分がございます。また、実際に差し押さえを行った場合でも、事業の継続を困難にするおそれがあるなどの場合において、滞納者が納付について誠実な意思を示すと認められるときには、その財産の換価を猶予することができるという規定もございます。

 したがいまして、それぞれ個々の滞納者の実情に応じまして、法令の規定に基づきまして適切な執行を行っておるところでございます。

○高橋委員 その中身についてはわかったんですけれども、実際には税務署の取り立てについて私自身も大変相談を受けておりますし、実際にいろいろなことが起こっていますよ。消費税の免税点の引き下げのことがあって、多くの中小業者の皆さんが新たに対象になったということで、国税庁としても滞納残額の圧縮ということの徹底もしている。

 例えば、売り掛け債権を差し押さえられる、これは営業がストップしてしまうわけですから、もうにっちもさっちもいかなくなるわけですね。納付計画も出して解除の申し入れをしても、だったら担保を差し入れろという形で強い指導をされる。それから、強制捜査の権限がございますね。そのために、その権限を振りかざして自宅に乗り込み、財布の中までこじあける、そういうことまでやられている。

 ですから、私は、あくまでも権限はわかる、しかし、少なくとも人権無視の問答無用の取り立て、あるいは、これを押さえられたら商売が続けられない、生業にかかわる資産まで取り上げる、こういうやり方はやめるべきだ、これを徹底するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○加藤政府参考人 先ほど御説明申し上げましたが、私ども、国税徴収法の規定に基づいて適切な執行をする職責を担っておるわけでございますので、その法律の範囲において適切に執行しているということを申し上げたいと思います。

○高橋委員 事例があると言っているのに、適切に執行しているというふうなお答えでした。

 では、逆に言うと、現場でそういう問題があれば適切に対応していただける、例えば、調査をしていただいて指導のやり方がちょっと行き過ぎだよとか、そういうことを約束していただけますか。

○加藤政府参考人 国税庁といたしましては、適正な事務執行ということは私どもの必要なことでございます。

 ただ、個別のいろいろな事実認定の問題等で見解の相違等もございますので、そういうことも含めまして、個々のケースに応じて適切に対応するということでございます。

○高橋委員 しっかりとお願いいたします。具体例があればまたお願いをいたします。

 そこで、厚労省にも確認したいんですけれども、社会保険庁も国税徴収法あるいは国税通則法に準じて強制徴収を行うことになっており、年金機構法案にも同様に書かれておりますけれども、同じことが厚労省もできるということでよろしいですね。

○清水政府参考人 現在は社会保険庁において保険料の徴収を行ってございます。これにつきましては、厚生年金保険法それから国民年金法におきまして、国税徴収の例それから国税滞納処分の例によって行うということになっておるところでございます。

 それで、日本年金機構が今回の法案によって設立されたときはどうなるかということでございますが、日本年金機構と国、すなわち厚生労働大臣との間でのいろいろと権限、事務の配分がございます。

 具体的に申し上げますと、まず保険料の徴収についてでございますが、保険料の調査決定、納入告知書の送付それから滞納保険料の督促は厚生労働大臣の権限ということになるわけでございます。ただ、そのほとんどの事務処理は委託された機構が行う、そういう関係になるわけでございます。

 また、滞納処分について申し上げますと、これは機構に権限が委任されて新法人が行うということでございますけれども、それに当たりまして、厚生労働大臣は、三つの事前チェック、三つの事後チェックを行う。そういうもとで、機構が委任された権限に基づいて滞納処分を行う、そういうことになるわけでございます。

○高橋委員 大臣は税務の方でございましたので、先ほどの国税庁とのやりとりは、何を言いたいのか理解をしていただいたと思うんですね。生業や生活にかかわる最小限のものに対して差し押さえするのではないのだということを確認させていただいたと思うんですが、今、社会保険事務所も、やはり同様のこと、あるいは下手すれば国税よりも厳しいぞということがやられております。

 兵庫県のある社会保険事務所の事案ですけれども、夫婦二人でやってきた旅行会社の預金口座が差し押さえられて、百十五万何がしが引き落とされました。わずか三カ月未納したことで、いきなり、通知もなしの差し押さえでありました。このお金はお客様から預かった旅行代金ですので、切符も買えないで、もう即重大な支障になりますし、もちろん生活費にもなります。

 土下座をして解除を申し入れたこの方に対して、社会保険事務所の徴収課長は、あなたが払ってくれなかったら私が首になるんだ、私の家族を路頭に迷わせるのか、どうしてくれる、こういうふうにどなりつけて、自殺しようが倒産しようがいいということかと聞くと、そうだ、知ったことじゃない、ここまで言い放ったそうであります。この方は、私にも生きる権利がある、こう主張して、一緒に交渉してくれた団体がいたので差し押さえの解除ができました。国税よりひどい社会保険庁だとこの方たちは言っています。

 大臣、先ほど強制徴収について、同じように権限があるということが確認されておりますが、こうしたことは許されないということで確認をしてよろしいでしょうか。

○柳澤国務大臣 いつもそうですけれども、高橋委員は比較的そういうことが少ないかと思いますけれども、御党のお話というのは極めて具体的でございまして、これはどうかと言って尋ねられることが間々あるわけでございますけれども、それについて我々がコメントをするというのはなかなか難しい問題だなと私は常に思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、この保険料の徴収というのも、いつも、納付率について目標が達せられるかと厳しく迫られるわけでございますので、社会保険庁としては一生懸命保険料の徴収に当たっているということでございまして、それはそれとしてぜひ御理解をいただきたいわけでございます。

 保険料の滞納処分につきましては、今、国税の滞納処分に準じてという法律の文言になるわけでございますけれども、これに当たりましては、やはりいろいろな、法律上決められた枠内で、いたずらに苛斂誅求ということのそしりを受けることのないように、しかし、納付率は上げなければいけないということでございますので、そのあたりをしっかりと踏まえて対処させていただく、そういう所存でございます。

○高橋委員 時間が来たのできょうは終わりますが、今回の改正で、年金未納者に対して、片や命にかかわる国保で制裁、片や泣く子も黙る国税庁をバックにと、なりふり構わぬ取り立てが、国民の財産権、生存権をも脅かし、国民の年金不信を増長することになるのではないか、このことを強く抗議して、終わりたいと思います。

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