国会質問

質問日:2007年 5月 30日 第166国会 厚生労働委員会

年金時効特例法案 質疑 強行採決

 自民、公明の与党は三十日、衆院厚生労働委員会で、年金支給漏れが見つかった場合、五年間しかさかのぼって受給できないとする時効を撤廃する「年金時効特例法案」を強行採決しました。同法案は、自民、公明両党が二十九日に衆院に提出したばかり。わずか四時間余の審議で、野党議員が抗議するなかの強行採決です。「特例法案」は被害者である国民に責任をおしつけるもの。しかし与党側は三十一日の本会議で、社会保険庁解体・民営化法案と抱き合わせで「特例法案」の採決を図る構えです。

 野党側は三十日の衆院厚生労働委員会で、桜田義孝委員長(自民)が開会を強行したことに抗議し、委員長不信任動議を提出。日本共産党の高橋千鶴子議員は賛成討論で、「法案の提出にあたっては、与野党が十分に協議し、審議をつくすべきだ。法案を一方的に短時間で強行することは言語道断だ」と批判しました。同動議は、与党側が反対にまわり、賛成少数で否決されました。

 安倍晋三首相は同日の「党首討論」で、「消えた年金」問題について、「政府の責任者として、大きな責任を感じている」とのべる一方、社保庁解体法案を委員会に差し戻すよう指導力を発揮せよとの質問には、「委員会で決めることだ」と拒否しました。

 安倍政権は、相次ぐ「政治とカネ」のスキャンダルや松岡利勝前農水相の自殺などにみまわれ、支持率は下がり、首相の求心力の低下も指摘されています。

 社保庁解体法案を強行しようにも、「消えた年金」問題で国民の批判が噴出したため、「特例法案」を突貫工事で作成。慌てて採決する強行策に出たものです。

(2007年5月31日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、きょうの委員会の持ち方に強く怒りを感じています。先ほど、委員長の不信任動議は否決されましたが、動議に示された野党全体の意思は国民の意思であることを重く受けとめるべきです。しかも、その後の運営、一切改善されておりません。反省が全く見られません。

 二十五日の強行採決された委員会で、午前中は、大臣は野党の質問に対し、救済法案の中身について全く知らないと述べました。そして午後になったら、与党の質問に対して、その中身を説明いたしました。びっくりしました。これは委員の質問権に対する侵害ではありませんか。与党の皆さんは、政府の解決策について十分な説明と審議をと求める声を封殺し、強行採決を行いました。しかも、その後、一方的に労働三法の趣旨説明を行いました。それがきょうは、きのうの夕方突然出された法案を採決してくれと言うのですか。

 提出者に伺います。法案の中身云々の前に、このような議会運営こそが国民の不信感を増長するものだと考えませんか。

○谷畑議員 本日の特例等に対する議員立法、非常に急を要しますし、国民の皆さんの期待にこたえるためにも、一日も早く審議をしていただいて採決をしていただきたい、このように思っております。

 しかも、日本年金機構法案につきましては、三十三時間以上にわたって審議をしてまいりましたし、また、参考人をお呼びいたしましての議論もしてまいりましたし、非常に丁寧な審議をしてきたと思います。

 しかも、そういう状況の中で安倍総理に三時間委員会に入っていただきまして、しかもその中で、五千万人、年金記録の宙に浮いた問題につきましても、早急にこの問題を突合させてやっていくんだ、もっとはっきり申すならば、新対応策パッケージということで、一番から六番まで非常に丁寧に答えております。

 どうぞ、これは、皆さんも、まさしく、この問題に対して一切対応をしていないんじゃなくて、しっかりとした対応を出して、そういう中で二十五日は採決をさせていただいて、しかも、時効にかかわるということで、きょう、これはもう緊急に私ども議員立法として出させてもらったわけでありますから、一刻も早く採決をしていただいて、いわゆる年金機構法案と、そして時効に対する特例法案と結合して本会議に提出をしていただくことを願うものであります。

 以上。

○高橋委員 国民の不信感を増長させませんか。

○谷畑議員 全く不信感を増長させるものではないと思います。

 しかし、説明不足の点もあろうかと思いますから、ここはやはり新対応策等を含めて、しっかりと広報を通じて明らかにしていくことが大事だ、このように思っています。

○高橋委員 今の驚く答弁を多くの皆さんが今お聞きになったと思います。不信感を増長させるものではないと断言をされました。本当にそのことが国民に試されなければなりません。

 そして、法案が本当に急ぐものであるのであれば、社保庁の解体、分割法案の採決を急ぐべきではなかったのです。十分な審議をしてこのことをやるべきだったのです。私は、与党の案なら一気に通していいというのは、与党の数の力によるおごりそのものであると断じます。断じて許せるものではありません。このことを強く指摘し、絶対にきょうは採決をしない、そして、今後も十分な審議をするべきだということを重ねて述べたいと思います。

 提出者に次に質問する前に、大臣に質問いたします。

 私は、この間ずっと問題が指摘されてきましたけれども、本当にできるだけの努力をしてきたと言えるのか、このことからまず出発しなければならないと思うんです。

 四月三日の有識者会議で、五千万件の未統合の記録の問題、これが質問されているんですね。そのとき、先日参考人でおいでになった佐藤座長から、このデータ管理については手を打つべきことはほぼ打ったとお考えですか、どこまでやったらパーフェクトかという問題はございますので、ほぼ手を打つことになっている、そう理解してよろしいかと聞かれて、今考えられることは、従来からの政策も含めて尽くしていると考えております、こういう認識で答えているんですね。ここから出発しているんだということなんです。

 私は、本当であれば、先ほど来、山井委員を初め多くの方々が指摘をされている、例えば、領収書がないといって却下をされた二万人の方たちに対して、まず社保庁としてあらゆるデータの調査、照会、市町村ですとか会社ですとか、そういう努力をして、本当にやり尽くして打つ手がないと言っているのかどうか、そのことをまずたださなければならない。二万人の再調査から始めるべきと思いますが、やりますか。

○柳澤国務大臣 私どもはそういう手だてを講じているわけでございます。

 まず、いらっしゃって、ウィンドウマシンというものですぐチェックをする、それで、ないという方には、照会申し出書というものを出していただいて、そしてその後、今高橋委員が言われるように、社会保険庁内部の資料、それから市町村における資料も徹底的に当たる、そういうプロセスを必ず経ることになっているんです。それでもなおまだ納得されないという方については、これを本庁に上げてもらって、本庁の方は、今度は逆に、その今まで調べをしたことが妥当であったかどうかということを調べる、こういうことを三段構えでやらせていただいているわけでございます。

○高橋委員 一般論ではなく、二万人に対して再調査をするのかと聞いています。

 ここで、結局は、いろいろ法案を与党も出されたけれども全然変わらなかったというのではだめなんです。はっきりとしている、みずからが鮮明な記憶を持って訴えている人たちが救済されるんだ、その道筋が見えてこそ、初めてその先の五千万件や、それが現実のものになっていくんです。二万人に対して再調査をすると約束してください。

○柳澤国務大臣 二万人につきましてもしっかりと対応をさせていただいておりまして、それでまた、なおまだ自分が社会保険庁のそういう調査に納得しがたいという人は、その中から、本庁の年金記録審査チームを編成しておりまして、そこに上げていただく、そういうプロセスをとっていただくということになるわけです。

○高橋委員 同じ答弁を繰り返して時間がもったいないので、今の御答弁で、二万人の再調査をやるということで確認をさせていただきたいと思います。よろしいですね。(発言する者あり)だめだという声がありますので、一般論ではなく、きちんと二万人の調査をすると約束してください。(発言する者あり)

○櫻田委員長 御静粛にお願いします。

○柳澤国務大臣 ですから、この二万人の方々については、とにかくいろいろな調査の結果をしっかりと伝達しているだろうと思います。そういったことで、なおまだいろいろ納得がいかないという方には、必ずさらに年金記録審査チームに上げていただくということも申し上げているわけでございますので、そちらの手続を踏んでいただくということが必要であります。

○高橋委員 私がこのことを述べたのは、個々の証拠がどうかということを今具体で話すつもりはないんです。

 ただ、総理も、そういう方々も踏まえて救済する手だてを考えるとおっしゃいました。そうすると、まず、みずからの記憶をしっかり持っていて訴えている人、これから訴えるであろう人よりも、まずその人が道筋がつくということによって初めてその先が見えてくるんです。その真剣な取り組みがまず国に見えなければ、その先の議論はできないということなんです。その意味がわかりますか。

○柳澤国務大臣 ですから、総理が言ったのは、その照会の申し出者の人も、もう疑いの余地のない証拠は示し得ない。社会保険庁の方は、社会保険庁本庁の正式の記録にもないし、またいろいろ庁内の記録、それから場合によっては市町村の記録までチェックして、ないということになったときに、さあ、これをどうするかということについて、きょう総理は、第三者機関ということの設立を申し上げて、そしてその方々にも十分両者の言い分というものを申し立ててもらって、その上で加入者の立場に立って裁定というか判断をしていただいて、その意見に基づいて最終の決定をしていく、こういうプロセスを新たにつくりたいということを申し上げたということであります。

○高橋委員 なぜ、そこで、すると言えないんでしょうか。本当に、それではもう最初の一歩も出せませんよ。与党が先ほど、谷畑提出者が説明をされました、救済のために急ぐんだと。急いだって意味ないですよ、これじゃ。なぜ政府の決意が示されないのか。本当に残念だ。このことをしっかりと示していただきたい、再調査をやると言っていただきたい。これは、同じ答弁をされて、それで時間が終わるのは悔しいので、そのことを重ねて確認しておきたいと思います。

 時間がどんどんなくなってしまいましたので、これに関連して、経過措置として、附則第二条において、施行日前に年金記録の訂正がなされた場合における当該訂正に係る年金について準用するとある。私、これはとても大事なことだと思うんです。

 ただ、既に時効扱いとなり、あきらめていた方たちに、どう権利の回復を図っていくのか。よっぽどの調査、要するに、これこそまさに社保庁として責任を持って調査をして、特定した方に、あなたに申しわけなかったけれども、時効ではなく、ちゃんと回復しますよということをしなければなりません。具体的な手だてを説明してください。提出者。

○福島議員 ただいま委員御指摘ありましたように、今回のこの特例法によりまして、今まで時効によってあきらめておりました年金の給付を回復する、これは非常に大事なことだと思っております。

 そして、そのことについては、受給権のある人に周知をするということがまずもって大切なことであります。具体的に、例えば、新聞や新聞折り込み等を活用した広報であるとか、社会保険庁ホームページによる広報等の手段はあろうかというふうに思います。

 さらに、提出者として、私どもは、社会保険庁が具体的にどのようにするかということは御検討いただく必要がありますけれども、個々のそういう権利のある方にきちっとお知らせをする、そのことを検討していただきたい、このように要望いたしております。

○高橋委員 特定の個人をわかっていて、お知らせするということですね。

○福島議員 現に、先ほど政府から御説明がありましたデータについては概数でございます。そのデータがどのような形で情報として格納されているか、こういった側面もあると思います。そうした点については、政府が詳細に検討を行いまして、具体的に、一人一人に御通知できる、そのような情報であるのであれば、それはしっかりとやってもらわなければならない、そのように考えております。

○高橋委員 時効で既にあきらめた人たちが本当に回復されるということが担保されるのかということを指摘しておきたいと思います。

 それから、多くは記憶が定かでないことが想像されます、救済されるということを言ったとしても。それで、記憶を、統合されるべき受給権者に対して、どうやってそれを呼び起こすことをするのか。これは人が必要なわけですね。また、社会保険庁にただ来いと言うだけではだめなんです。電話をかければアルバイト、行くと領収書を持ってこいと怒られる、そういうのではなくて、特別な、あるいは身近な場所に相談体制がとられるべきです。そのことをどう思うかということと、そのための人材の確保をどうするかということです。

 平成九年の基礎年金番号の統合のときは、臨時雇用だけではなく、社会保険庁の定員増も行って調査をやったと聞いております。そのくらいの覚悟が必要と思いますが、いかがですか。

○柳澤国務大臣 これは、いわゆる二千八百八十万件の未統合の記録を三千万件に突合して、そして、可能性として、ダブルの口座を持っている、番号を持っている、その可能性が明らかになる、この場合には、二千八百八十万件のうち、その可能性のある人たちには特別な御注意を申し上げながら、それで、御自身の年金履歴もあわせてお送りするということをやるということでございます。

○村瀬政府参考人 実務でございますので、私の方からお話を申し上げたいと思います。

 先ほど、三千万と二千八百八十万の突合をして、個々人に対してお送りを申し上げるという形をさせていただこうとしております。その中で、明らかに当人が記録がある、可能性が極めて高い方につきましては……(発言する者あり)まあ、ちょっと聞いてください。その方々については、当然のことながら、御本人の御自宅にお邪魔して手続をとるということも私は可能だろうというふうに思っております。

 また一方、突合をした場合に、わからないけれども、あいているものがひょっとしたら一緒になる可能性があるかもわからない、これも出てくるかもわかりません。この方々については、記録をお送りすると同時に、やはりお電話で話をする、そして場合によったら、その可能性が出てくればお邪魔して対応する。できるだけ親切な対応を考えていきたい、このように考えております。

 人につきましては、どれぐらいの数の方々が出てくるかというのが明確に出てきませんとはっきりしたことは申し上げられませんが、現在、強制徴収を含めて、職員というものを事務所に配置してございます。場合によりましたら、強制徴収を職員がやるのであれば、シフトしてでもやらなきゃいかぬ、このような形で考えたいと思っております。

○櫻田委員長 高橋千鶴子君に申し上げます。

 既に持ち時間が優に過ぎておりますので、質疑を終了してください。

○高橋委員 一言言わせてください。

 先ほど来、何度聞いてもきちんとした答弁が返ってこないんです。だから、長官、私は時間を守って聞いているのに、聞いたことに答えていないということが、そこが問題なんですね。これでは全くスタートラインにも立てませんよ。人の再配置も全く見通しが立たないです。まして、わずか二万件の、みずから申し立てている人の再調査さえも約束すると言えませんでした。

 これでは全くこの法案は賛成できないばかりか、社保庁の解体分割法案も、採決を差し戻すべきだ、そういうことを強く指摘して、終わりたいと思います。

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