国会質問

質問日:2007年 6月 15日 第166国会 厚生労働委員会

ドクターヘリ法案質疑・採決

 災害時や離島・へき地の救急医療に不可欠の「ドクターヘリ」の整備をすすめる法案(参院先議)の審議で、日本共産党の高橋千鶴子議員は十五日、衆院厚生労働委員会で、既存の消防防災ヘリやドクターカーの整備・充実も大事だと指摘しました。松谷有希雄医政局長は、この事業の実績を認めて「拡充を図りたい」と答えました。

 さらに高橋氏は、阪神・淡路大震災の教訓から整備された五百七十三ヶ所の災害拠点病院のアンケート調査で、災害医療の研修が困難な理由として「忙しすぎる」69%、「専門家がいない」44%などスタッフや研修不足をあげていると紹介。医師が不足しているのに機能するのか不安があるとただしました。

 松谷局長は、病院間で格差があり、2007年度に「ハード・ソフト両面からの底上げをするための基準作りに着手している」と述べました。

 ドクターヘリにかかわる診療報酬などの財政措置の拡充について柳沢伯夫厚労相は、三年後の見直しの時期に「施策の効率化や中医協の議論をふまえ適切に対応する」と述べました。

(2007年6月19日(火)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 患者の搬送時間や的確な判断が生死を分ける救急医療や災害救助などにおいて、ドクターヘリの果たす役割は非常に大きいと思います。私は、そういう意味で、当然にこの法案には賛成するものでありますが、ただ、特段の予算措置をしているわけではないので、これが大変飛躍的にふえるだろうとかいうことはなかなか期待しがたいところがあるのではないかと思っております。

 きょうは提案者に質問はしませんが、基金の造成についても、非営利団体によって運営するということが本当に実効あるものにいくんだろうかという点では若干の不安を持っております。諸外国にも学びつつ、適正な運営、効果を上げていくことを期待すると同時に、国が果たすべき役割、財政的にも国が支援できるところはもっとやっていくべきじゃないかということは考えを述べておきたいと思っております。

 そこで、まず最初に、ドクターヘリ導入促進事業については、まだ現在十道県十一機にすぎないわけでありますが、先ほど園田委員の資料でも紹介されているように、消防防災ヘリが各県それから全国の消防局で七十機が配備をされている中、年間五千三百五十五件の出動の中で救急が二千四百九十二件と半分近くを占めているという、大きな役割を果たしているという実態がございます。

 そこで、消防防災ヘリにおけるドクターの添乗の状況と、また、そうでない場合どのように医療連携を行っているのか、伺います。

○寺村政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年中の消防防災ヘリコプターによります救急出動件数は、先ほど御指摘のとおり二千四百九十二件でございますが、このうち医師が同乗した件数は千四百九十二件でございます。

 それから、消防防災ヘリコプターが救急出動する場合に、医師の同乗にかかわらず、救急隊員の資格を有する者が同乗して出動することとしております。さらに、地上の救急隊と連携を図りまして、救急車の救急救命士などが消防防災ヘリコプターに搭乗するなど、二人以上の有資格者の体制により救急活動を実施するというふうにしております。

○高橋委員 ちょっと通告しておらないんですけれども、実はヘリコプター添乗医師確保事業というのが昭和六十二年度以来やられており、二百万円という小さな予算ではありますけれども、一千五件、うち七百八十四件、離島などで活用実績があると聞いています。私は、〇五年の四月に三宅島に視察に行ったときに、中央診療所でたくさんの高齢者の皆さんが集まっていて、三人の医師が確保されているという状況を見てきたわけですが、しかし、そうはいっても脳梗塞など緊急の事態にはヘリで対応している、都内の病院に運んでいるということが紹介をされまして、やはりヘリの役割というのはここでもなるほどと思ったわけです。

 今回、ドクターヘリ法案において僻地医療などでも活躍をするということが位置づけられたわけですが、そういう意味では、小さいけれども、これは海上保安庁ですとか自衛隊のヘリなども含めて、自治体が要請すれば医師の添乗を支援する、こういう小さな制度も、やはりしっかりと僻地医療に大きな貢献をしてきたという点でむしろ位置づける、拡充をしていくということも大事だと思いますが、見解を伺います。

○松谷政府参考人 委員御指摘のヘリコプター添乗医師確保事業でございますが、昭和六十二年度からこれを行っているものでございまして、今御指摘ございましたように、離島、山村等において発生をした重症救急患者をヘリコプター等により搬送する際に、地方公共団体等の要請によって、機内において必要な救急措置を行うために添乗するお医者さん等を確保するという観点から、万一の場合の保険料等を補助しているというものでございます。

 大変、予算額が二百万というところでございますけれども、実績としてはそれなりに活用されて喜ばれているものでございます。

○高橋委員 ですから、語尾があれだったんですが、きちんとこの点も拡充をしていくなり、そういうことは考えていらっしゃるということでよろしいですか。

○松谷政府参考人 引き続き、これについて拡充を図っていきたいと思っております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 同時に、やはりヘリには限界があって、先ほど指摘されているように、夜間の問題やあるいは天候不順によっては飛べないのだということ。地域医療に何とか貢献できないかということがあるわけですけれども、一方では、そういうところは豪雪地帯だったりとかさまざまなハンディがあるわけで、やはりドクターヘリと同時にドクターカーなどの拡充もあわせてやっていかなければならない。

 そこで、ドクターカーの拡充状況と今後の取り組みの決意といいますか、どういうふうに考えているのか、伺いたいと思います。

○松谷政府参考人 御指摘のとおり、ドクターヘリは悪天候や夜間においては運航できないといったような場合もございますので、ドクターヘリのみならず、救急車、消防防災ヘリ及びドクターカーといった、いろいろな搬送手段をあわせて整備していくということは大事なことだと考えております。

 ドクターカーにつきましては、厚生労働省としても財政支援を行っておりまして、その結果、平成十八年十二月時点で申しますと、救命救急センター二百一カ所のうち七十七カ所に九十台が配備されているという状況でございます。また、救急車や消防防災ヘリなどにつきましては、医師が同乗した場合には、消防機関にもよりますけれども、手当が支給されておりまして、さらに診療行為を行った場合には、診療報酬上、救急搬送診療料や往診料として評価がされているところでございます。

 厚生労働省としては、ドクターカーを含めまして、各種搬送手段の整備について必要な支援を引き続き行っていきたいと思っております。

○高橋委員 次に、阪神・淡路大震災の教訓から整備をされてきた災害拠点病院が今、全国五百七十三カ所になっている、また、災害時の緊急医療チームであるDMATが百六単位まで整備をされてきたということで、これらとの連携は非常に大事なことだと思っております。

 ただ、拠点病院が、指定は要求を満たして指定をされたのではあるんでしょうけれども、実際にそれが本当に動いていくのかという点ではどのような評価をするのか、つまり、目安はどのようになっているのかということと、また、拠点病院が行う災害医療にかかわる医療従事者の研修はどのように行われているのか、伺います。

○松谷政府参考人 災害拠点病院は、今委員御指摘のとおり、平成十九年五月現在で五百七十三病院が指定されております。指定開始から十年が経過をしたところでございまして、病院間で機能の充実度に格差が生じているということが考えられることから、全体の底上げを行いまして、一定基準以上の機能を確保していくということが災害医療活動を円滑に行う上で重要であると考えております。

 このため、平成十九年度厚生労働科学研究におきまして、災害拠点病院のハード面、ソフト面などあらゆる観点から評価するための手法についての研究を行っているところでございまして、省としては、この研究成果を踏まえて、災害拠点病院の適切な評価を行っていきたいと思っております。

 また、DMATにつきましても、これは、被災地に出動して災害急性期における医療活動を行う体制整備という観点から、災害拠点病院や救命救急センターの医療従事者を対象として専門的なトレーニングを受けた方々でございますけれども、このチームが、平成十七年三月から開始しましたが、十九年六月一日現在で計二百九十八チーム、千四百九十人を養成しておるところでございます。

 この研修につきましては、国立病院機構の災害医療センターを実施機関といたしまして、災害医療従事者研修会を毎年実施しているところでございます。この研修会では、災害発生時の多種多様なケースに対応できるためのトリアージなど災害医療に関する見識、知識、技術の向上を図るため、災害時に指導的役割を果たせる人材を育成することを目的として、災害の拠点病院また救命救急センターの医療従事者を対象に実施しているところでございます。

 今後も、全国いずれの地域においても災害医療が対応可能になるように、その育成、研修に努めていきたいと思っております。

○高橋委員 まだ、ことし、その適切な評価ということで、目安が今検討されるということでは、なかなか厳しいなと思うわけです。

 平成十一年当時は、災害拠点病院として準備すべき項目が不備だと過半数で回答された項目が何だったかというのを見るときに、ヘリポートはないよ、多数の患者さんが来るということで簡易ベッドがないよ、緊急搬送車両でさえ三一%しかないよ、そういう状況から始まったんだという点では非常に急速に求められてきたものが大きいわけで、一定設備はそろってきたかと思います。まだ五割台のものがございますね、それを一応確認させていただきます。

 それで、問題は、今は実際に一般の病院でも深刻な医師不足、スタッフ不足の中でどう対応するかということがやはり一番問われているんだと思うんですね。

 当時のアンケートでも、今研修のことを私は伺いましたけれども、研修をするにもスタッフが忙し過ぎると答えたのが六九%、専門家がいないと答えたのが四四%で、なかなか追いついていかない。今でさえ大変な中で特別な体制をとるということは非常に大変だということがあると思うんですけれども、このスタッフの問題についてどのように考えていますか。

○松谷政府参考人 災害医療は、個々の人を扱う救急医療とはまた違う大量の傷病者を扱うという面を持っておりまして、先ほど申し上げたように、それに必要な研修ということは充実していく必要があるというふうに考えております。先ほどのDMATの養成でも、二百九十八チームと申しましたが、合計一千四百九十名が養成されたところでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、救急あるいは災害医療と申しますのは、医療の中でいわば原点ともいうべきことでございまして、いろいろな専門の方がいらっしゃいますけれども、どの専門の方でも身につけるべき基本的なものもあろうかと思っておりまして、いろいろな機会を通じましてその確保に努めていきたいと思っております。

○高橋委員 この点については、やはり大臣にも伺いたいと思います。

 全体的に医師不足、スタッフ不足という中で、ここをどう確保していくのか。もちろん、今、研修の充実ということがありましたけれども、現実的に人の確保というのが大事だと思うのと、あと、ドクターヘリなどに従事する場合に極度の緊張そしてリスクを伴う、そういう点では、一般的に診療報酬で出ますよというだけではなくて、例えば加算をするとか、何らかの財政措置も含めて、もう少し検討される余地があると思うんですが、いかがでしょうか。

○柳澤国務大臣 現行制度を御説明しますと、現在は、ドクターヘリに搭乗する医師、看護師の確保の経費につきましては、積算の上、その二分の一を補助しているという制度がございます。

 それからまた、診療報酬上の評価につきましては、さらに、同乗した医師がヘリコプター内において診療を行った場合には、救急用車両の場合と同様に、その診療行為に対して診療報酬上の評価がなされているところでございます。

 ただ、今回法案が成立した場合には、その附則第二項の規定に基づきまして、法施行後三年をめどとして、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の提供の効果や費用等について、中医協の議論等を踏まえ、必要があると認められたときは適切に対応するということになっておりますので、そのような方向で今後進めてまいりたいと考えております。

○高橋委員 十分にお願いしたいと思います。

 さらに、もう一度消防庁に伺いたいと思うんですが、災害救助において被災地の情報がいかに迅速に伝わるかが大変重要であると思います。

 ヘリテレと言われているようでありますけれども、ヘリコプターから送られてくる映像をいかに都道府県が共有できるかという点での整備がどうなっているか。あるいは、夜間でも可能な赤外線カメラなどの情報の共有あるいは整備がどうなっているか。これを拡充するということも含めて、伺いたいと思います。

○櫻田委員長 高橋千鶴子君。質疑の持ち時間が経過しております。

○高橋委員 はい。時間が来ましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

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