国会質問

質問日:2007年 11月 2日 第168国会 厚生労働委員会

労働三法案(労働契約法案、労基法改定案、最賃法改定案)――労働契約法案について

 労働三法の審議が始まった二日の衆院厚生労働委員会で、日本共産党の高橋千鶴子議員は、雇用のルールを定める労働契約法案をとりあげ、労働者保護を基本におくべきだとただしました。
 高橋氏は「労働者は使用者に比べてもともと立場が弱い。労働契約のルールを定める場合は、労働者保護法でなければならない」と指摘。経済財政諮問会議で柳沢伯夫前厚労相が「(労使自治は)実際の力関係ではできない。最低限の労働者保護法を設けることが一番」と発言していることをあげて、舛添要一厚労相の認識をただしました。
 舛添厚労相は「労働者保護をきちんと行うのが労働法制の基本だ。認識を共有している。そういう観点から労働契約法案がある」とのべました。
 政府案では、労働者の合意がなくても、労働条件の変更が合理的と判断できる場合は、就業規則で変更できると定め、必要性や代償措置など四要素を掲げています。高橋氏は、労働条件の変更が就業規則で行われている企業が七割にのぼることを指摘。第四銀行最高裁判決では合理性の判断要素を七つあげていることを示して、政府案では不当な変更を認めかねず、防止効果も小さくなるとただしました。青木豊労働基準局長は「判例の積み重ねをないがしろにするものではなく、関連したものを整理した」と答えました。
 また、判断要素の一つである「労働組合等との協議」について高橋氏は「一人でも加盟できるローカルユニオンなども含まれるのか」と質問。青木氏は「広く労働者の意思を代表するものが含まれる」と認めました。
 一方、民主党の労働契約法案では、合理的な場合は「使用者と労働者が合意したと推定する」と定めています。提出者の細川律夫議員が「労働者が異議を唱えれば変更されない」と答えたのに対して高橋氏は、使用者側によって変更がやりやすくなるのではないかと指摘しました。

(2007年11月3日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 国会に労働契約法が初めて提出をされましたので、その出発点となる大臣の認識を最初に伺いたいと思います。

 昨年の十一月三十日、経済財政諮問会議で、いわゆる労働ビッグバンの集中審議が行われました。民間議員からは、一層の規制緩和や労使自治でよいではないか、そういった趣旨の発言がされたのを受けて、柳澤前厚生労働大臣は、「労使自治で労使が対等の交渉ができるかというと、実際の力関係から言ってできない」と労働法制の考え方を示し、「最低限の労働者保護規定を設けることは」「一番の基本なので、そこはしっかり考えていただけたら」と発言をしております。

 私は、ここは非常に重要な認識だと思うんです。労使対等といいましても、本来労働者の立場の方が弱いんだ、やはりそこの出発点に立って、労働契約のルールを決めるに当たっては、労働者保護法、こうした性格であるべきだと考えております。大臣の基本的認識を伺います。

○舛添国務大臣 労使の間には、交渉力の格差を含め、力の差があることは歴然としております。したがって、近代産業国家において、十九世紀以来、そういうことをどうして是正していくか、そしてこの二十一世紀に至り、現代民主主義国家においては、今委員がおっしゃいましたように、労働者保護、これをきちんと行うというのは労働法制の基本でありますし、まさに労働省というのはなぜあるのかというと、そういうことでございます。

 したがって、私は、その認識を共有しておりますし、そういう観点から、細かい点は省略しますけれども、今回の労働契約法案がある、そういうふうに明言をいたしたいと思います。

○高橋委員 ありがとうございます。

 労働省とはなぜあるのかとおっしゃいましたが、厚生労働省になってしまったことで若干弱まったのかなということを考えております。

 ワーキングプアや日雇い派遣、偽装請負など、不安定雇用が社会問題となり、個別労働紛争が平成十七年度で十七万六千件以上、総合労働相談が九十万件以上と年々増加するもとで、労働契約法がこのような現状を改善させ得るのかが問われていると思います。

 労働政策研究・研修機構の労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査によれば、ここ五年間で、労働条件変更があったのは四二・六%ですが、これは、五十人以上規模の事業所は既に五割以上、規模が大きくなるに従って当然変更の割合がふえ、千人以上規模の事業所では八六・一%となっております。そして、その手続は、就業規則の変更によるものが六九・八%となっております。

 今回、法案の第八条では、労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件が変更できるとし、就業規則による労働契約変更を明文化いたしました。この考慮要素として、平成九年二月二十八日の第四銀行事件最高裁判決に示された判例法理に沿って明確化したものと説明をされております。これは先ほども議論がされておりましたけれども、ことし六月六日の本委員会においても、青木局長は、七つの考慮要素があるんだけれども、内容的にお互いに関連し合うものであるので、統合して列挙したと答弁をされております。

 私は、これは関連し合うものだろうか、むしろきちんと書いた方がいいのではないかと思います。七つを四つにする必要が本当にあったのか、重ねて伺います。

○青木政府参考人 御指摘になりました第四銀行事件は、確かに、労働条件の変更についての合理性について七つの考慮要素を挙げているわけでございます。それについては、この労働契約法の十条で、考慮要素を四つに整理いたしまして、統合いたしまして規定をいたしたわけでございます。

 私どもとしては、申し上げますと、変更後の就業規則の内容自体の相当性でありますとか、あるいは代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況とか、あるいは同種事項に関する我が国社会における一般的状況というのはそれぞれ、いわば変更後の就業規則の内容が相当であるかどうかということに集約されるというふうに考えまして、統合して一つの規定にいたしたということでございますし、第四銀行事件で言っています七つの考慮要素のうちの、労働組合等との交渉の経緯でありますとか、他の労働組合または他の従業員の対応というのも、私どもとしては労働組合等との交渉の状況ということに集約されるということで、今回、先ほど申し上げましたような第十条において整理をして規定して、お願いをしているということでございます。

○高橋委員 今、基本的には合理的であるということに集約されるというお話をされて、一定個々の問題について説明をされたと思うんですけれども、確かに、裁判で争う場合には、当然、判例法理というものを十分参考にするわけですので、個々の問題に照らして、判例法理に照らしてどうかということが議論されると思うんです。

 ただ、ここは、使用者の側が契約法の中身を十分承知しているわけではない、まして判例法理を熟知しているわけもないし、まして労働者においてはそもそも法律そのものについてもわからないという中で、ここにあえて判例法理を法文に落とし込むことによって、やはり予防効果をねらったということがあるんだと思うんですね。それがやはりそがれるのではないかと思うんです。

 私は、この契約法の調査の資料にも出ておりますけれども、労働裁判の中でも非常に重要な位置を占めているみちのく銀行の裁判、これは私、地元ですので、原告の顔も一人一人浮かぶわけですけれども、五十五歳で専任職とされて昇給がストップ、減額されたという方たちが裁判で最終的には勝訴いたしました。このときに、第一組合は七割以上で合意をしているわけですね。わずかな少数派の組合ではあるけれども、著しく不利益をこうむる、本来であれば順々に昇給していく労働者の状態と比べても著しく不利益をこうむるのではないかということが考慮されてやられた。そういう判例を積み重ねた上で今日があると思うんですね。

 だけれども、これでは、これから先も、毎度毎度裁判に訴えなければならない、長い年月、いろいろなものを犠牲にして裁判に訴えなければならないということになるわけです。そういうことから、やはり一定の効果を持たせようということで盛り込んだと思うんですけれども、もっと厳格にするべきではないか、いかがですか。

○青木政府参考人 確かに、現在の判例法理というのは、長い年月、有名な四十三年の秋北バス事件から六十三年の大曲市農協事件を経て、先ほど来出てまいります第四銀行事件、そして今お挙げになりましたみちのく銀行事件、平成十二年というようなことで積み重ねられてきたというふうに私も承知をいたしておりますが、そういう中で一定のルールというのがきちんとできてきたというふうに思っております。

 そういったものを、まさに、委員がおっしゃったような、法律にきちんと規定をしていくということによって、使用者に対しましても、あるいは労働者に対しましても、十分なる事前の知識といいますか、事前の行動を適切なものにしていただくということが可能になるだろうというふうに思っております。そういう意味で、まさにこの労働契約法案をお願いしているわけでございます。

 先ほどの考慮要素につきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれ関連するものにつきましては集約をして、整理をして四つの考慮要素にしたということでございますので、これらの積み重ねをないがしろにするものというふうには思っておりません。こういったものを踏まえて法律にしたというふうに考えておるところでございます。

○高橋委員 そこは周知についてもしっかりとやっていただきたいと思います。

 納得したわけではありませんけれども、重ねて、次に行きたいと思います。

 それで、「労働組合等」については、少数労働組合、あるいは親睦団体なども含むという答弁が以前の国会でございました。今回は、労働者性について、個人請負事業主や派遣労働者など、今日の労働実態の多様化も踏まえた解釈がされております。そうであればこそ、労働者が一人でも加盟できるローカルユニオンなども当然これに含まれると解釈してよろしいですね。

○青木政府参考人 十条に「労働組合等」ということで規定をしているわけですけれども、これらについては、お話ありましたように、これは、多数労働組合あるいは過半数代表者というものは当然でございますけれども、それだけではなくて、お触れになりましたような少数労働組合、あるいは労働者で構成される親睦団体なども含めて、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるというふうに考えております。

○高橋委員 よかったんですか、それで。私の問いは、一人でも加盟できるローカルユニオンということを伺いました。

○青木政府参考人 今申し上げましたように、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるということでございます。

○高橋委員 ここまでの議論との関連で、民主党さんに伺いたいと思います。

 民主案については、今の部分について、「労働者代表」という表現にされております。これは、要綱によれば、過半数で組織される労働組合または労働者の過半数を代表する者とあり、極めて限定的なものと受けとめますけれども、いかがでしょうか。

○細川議員 民主党案の二十五条に言う労働者代表につきましては、五条二項に定義をしております。それには、「当該事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」、こういうことになっております。

○高橋委員 そうすると要綱のとおりだということなので、やはり今指摘をしたとおり、非常に限定的なものになるのではないかと思っております。

 それで、二十五条ですけれども、「就業規則の作成又は変更と労働契約との関係」について、「次のいずれにも該当するときは、当該作成され、又は変更された就業規則に基づいて」「使用者と労働者が合意したものと推定する。」として二点。一つは、今言った労働者代表、二つは、作成または変更された労働条件の内容が合理的なものであることとされている、この二点だけを挙げております。これは十分なものでしょうか。また、「使用者と労働者が合意したものと推定する。」の「推定する。」の意味するところは何でしょうか。

○細川議員 まず、「推定する。」ということについて御説明をいたします。

 民主党案では、就業規則の変更が労働基準法八十九条及び九十条に規定をする手続によって行われ、あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行い、変更の必要性があり、かつ変更された労働条件が合理性を有する場合には、当事者間の合意を推定するということにしております。

 「推定する。」とは、それではどういうことかということになりますけれども、当事者間に合意があったかどうかが不明の場合に意味を持ってくるものでございます。当事者が異議を述べない限りは当事者間の合意があるという取り扱いをするという意味でございます。当事者が異議を述べなければ合意があったという取り扱いをする、こういうことでございますから、それでは、当事者間の合意が実際には存在しないということを労働者が異議を述べれば推定が覆される、こういうことになります。そうしますと、その場合には、使用者と労働者との間で労働条件の変更についての合意がないこととなりまして、労働者の労働条件は変更されないというのがこの「推定」でございます。

 それから、何と……

○茂木委員長 合理性について、二点に限っていることについてどうですかという質問だったと思います。

○細川議員 これは、ただ二点だけではなくて、あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行い、変更の必要性があり、かつ変更された労働条件の内容が合理性がある、ただ合理性だけではないということでございます。

○高橋委員 今の説明は、異議を述べれば変更されないということですよね。二十四条に、裁判所に請求することができるということが書かれておりますので、労働者の側に立ったと思っておっしゃっているのかなと思いますが、なかなかそうは読めないなと率直に言って思います。

 ことし六月六日の本委員会で、民主党の西村委員は政府案に対し、九条のただし書き以降、つまり、先ほどの考慮要素の部分はもう不要である、削除せよと述べておられます。私は、そういう立場と今の民主案と同じなのかな、むしろ使用者側で変更がやりやすくなるのではないかという危惧を持っておりますが、いかがでしょうか。

○細川議員 これは政府案とは非常に違うところでありまして、民主党の場合は「推定する。」推定をするということは、反証を挙げて覆すことができる、そして労働条件は変更されない、こういうことになりますから、それは労働者にとっては非常に有利だというふうに私どもは考えております。

○高橋委員 ここばかりやっていられないので、危惧がまだ残っているということを指摘して、期間の定めのある労働について伺いたいと思います。政府に伺います。

 パート労働法が通常国会で改正をされました。私たちは、パート労働者の七割が有期契約労働者であり、差別禁止措置をとられる労働者の中に含めるべきだという主張をしてまいりました。今回、民主案においては三十九条、「差別的取扱いの禁止」ということで、この精神が明確に盛り込まれ、重視をされたと思っております。

 そこで、政府は十七条に、民法のできる規定ではなく、「やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」こういう言いぶりになっておりますけれども、その理由と考え方を伺います。

○青木政府参考人 今お触れになりましたのは、法案の十七条一項の趣旨、内容ということだと思いますが、これは、有期労働契約につきましては、解雇や雇いどめといった契約の終了場面における紛争が多く発生しております。労働契約の終了というのは、これは当然のことながら、労働者に及ぼす影響が大きいわけでございます。その契約の終了場面についてのルールを明確化することによりまして、紛争の未然防止と労働者の保護を図る、こういうことでございます。

 有期労働契約は、労働者と使用者が一定の期間について合意した上で労働契約を締結するものでございます。したがって、その労使当事者が合意した契約期間というものがあるわけでございますので、そのような契約内容というのは、それは遵守されてしかるべきであります。契約期間中に使用者が一方的に行う解雇は、原則として差し控えられるべきと考えております。

 そういうことで、十七条一項において、有期労働契約の契約期間途中に、やむを得ない事由がない場合には解雇することができない旨を規定したということで、やむを得ない事由がないときの法律上の取り扱いを明確にするということとともに、労働者の雇用継続への期待を保護しようというものでございます。

○高橋委員 これを担保する基準局の役割はという問いを用意しておりましたが、残念ながら時間が来ましたので、要望にして、終わります。

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