国会質問

質問日:2018年 11月 21日 第197国会 厚生労働委員会

障害者雇用水増し問題について参考人質疑

障害者雇用水増し/参考人憤り/再検証求める声も/衆院厚労委

 衆院厚生労働委員会は21日、中央省庁の障害者雇用率水増し問題について、障害者団体の関係者らを招いた参考人質疑を行いました。参考人からは強い憤りとともに、政府の検証委員会の報告書への不満や再検証を求める声もあがりました。
 日本身体障害者団体連合会の阿部一彦会長は「障害者雇用に真摯(しんし)に取り組んできた関係者の信頼を揺るがす極めて深刻な事態と認識する必要がある」と指摘。日本障害者協議会の藤井克徳代表は、「(障害者雇用への)意識や関心がなぜ低かったのかが検証のポイントだったのに、言及されていない。もう一度、再検証すべきだ」と述べ、全国肢体障害者団体連絡協議会の三橋恒夫会長は「検証委員会の報告では、問題がなぜ発生したのか原因が明らかになっていない。検証の不十分さを感じざるをえない。いまだに責任の所在が明らかになっていない」と訴えました。
 日本共産党の高橋千鶴子議員は「この際、障害者雇用がどうあるべきかをきちんと議論すべきではないか」と質問。藤井氏は「私たちは(水増し問題の)再検証を求めているが、問題の奥には『障害者排除』が色濃く見えてくる」として、議論を深めるべきだと強調。三橋氏は、合理的配慮の一つとして「障害特有の事情を斟酌(しんしゃく)した特別の休暇があってもいいのでは」と提案しました。
( しんぶん赤旗 2018年11月23日付より) 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、五人の参考人の皆さん、貴重な御意見を伺うことができました。本当にありがとうございました。ぜひ生かしていきたいと思っております。
 順次質問をしていきたいと思うんですが、初めに阿部参考人に伺います。
 この問題が大きく報道されて、厚労委員会でも議論を始めたときに、八月の三十一日付で日本身体障害者団体連合会として発表されたコメント、非常に私も胸をつかれるような思いがいたしました。「障害者施策の基本理念である共生社会の実現のため、職業を通じた社会参加が重要であり、この考えの下に障害者雇用施策の推進を図ってきたと理解していましたが、その考え方の根底が覆されたばかりか、障害者雇用の促進に真摯に向き合ってきた関係者の信頼をも揺らぐような極めて深刻な事態であることを認識すべきでしょう。」この指摘は本当に重いものではないかと思っております。
 そこで伺いたいのは、今回設置された検証委員会は、どのような形で水増しをやったのか、つまり、裸眼ではかったとか、そういうことはよくわかったんだけれども、じゃ一体いつから、どうしてここがこんなふうになったのかということは、意図的でないの一言で終わっちゃっているわけなんですね。声明の中にも、やはり、一日も早く、こうした水増しの行為が起こった原因究明と、それから実態の把握、必要だと指摘をされておりますので、私はもっと掘り下げて究明するべきだと思いますけれども、御意見を伺いたいと思います。

○阿部参考人 ただいま高橋先生御指摘のとおり、とても大きな問題だと思っております。
 それで、検証委員会につきましては、いろいろ議論になっていますけれども、時間の短い間に出てきたことであり、それで終わるものであるのかどうかということもまた大事なことだと思います。
 このようなことが起きた背景というのは、今回も議論されていますけれども、障害に対するさまざまな考え方というのがこれまで望ましいものでなかった部分も十分にあるのではないかと思います。そして、これは国もでございますけれども、地方自治体においても、もっと以前からあったはずではないかというのが私たちの、日身連の会議の中でも出てまいったところです。
 そのような背景についてしっかりと、まあ、障害理解は、きょうのお話にもありますけれども、障害にあって困った部分、不便なことを改善することは、超高齢化社会、とても大事なことであり、互いに支え合うという合理的配慮の精神を伝えるためにもとても大事なことだと思いますので、そのようなこと、どういうふうにして行われたかについて本当に猛省していただき、これからのしっかりした、誰もが暮らしやすい社会をつくっていくことをともに学び合う必要があると思います。
 そのようなことで、私たち日身連も、各地方公共団体や、加盟団体は都道府県、政令市の団体なので、それぞれの地域でも発言させていただいているところでございます。
 そのようなことから、当事者の力といいますか、当事者が地域を変えていくということも、これも藤井参考人がおっしゃいました、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことは私たち抜きに決めないでというこの考え方をしっかり押し出しながら、このような場でも発言させていただきましたけれども、これからも団体として努力してまいりたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 先ほど藤井参考人が、障害者を締め出す社会は弱くもろいとおっしゃいました。まさに障害者権利条約の国連での採択にもかかわった藤井参考人が、今回の問題の持つ意味、原因、そしてどうすべきかということを端的にお話をいただいたと思います。
 それで、やはり私は、この問題、どなたもおっしゃったことなんですけれども、数合わせではなく、しっかりとやる、対応すべきだということだと思うんですが、この際、本当に障害者雇用はどうあるべきかというのをちゃんと議論するべきじゃないか。権利条約が規定する障害というのはすごい広くとっているわけですけれども、ここでは手帳だけが厳格に運用されている。それすらだめだったということはまずただす必要があるわけですけれども、本当にこれを機会に見直していく必要があるかなと思うんですが、その点で藤井参考人の御意見を伺いたいと思います。

○藤井参考人 先ほどからも他の先生方からもありましたように、今度のは、ある面で事件ですよね、これをやはり好転していく大きな転機にしようと。これはもう全くそのとおりだと思います。
 したがって、私たちは、この問題というのは再検証を求めているんですが、同時に、きょうも資料に加えておきましたけれども、今後のありよう、先ほど言いましたけれども、もう国際規範では幾つか方向性が出ています。
 そして、私は、何よりも言いたいことは、雇用問題ではあったんですが、どうもその奥には、雇用問題を超えた、やはり障害者排除ということが色濃く見えてくる、この部分をどんなふうにしてみんなで考えていくのかということだと思います。
 そういう点でいうならば、今回、きのうの参議院の参考人にもありましたけれども、四千人を人事院がということは確かにわかります、でも、ここは思い切って、足を一旦とめて、そして本当に離職者を出さないということをもっときちんと考えていくという点で、少し、ある面でいうと、進め方自体もやはり立法府として提言すべきじゃないか、こんなことを思っております。
 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 次に、有村参考人に伺いたいと思うんですけれども、障害者を雇用する企業を本当に長年にわたって支援をされてきた、努力をされてきたという一端を御紹介いただいたと思います。特に、知的障害や精神障害の方たちを雇用してきたんだということでは、義務化を進めてきたんだけれども、やはりまだまだ企業の中でもためらいがあるということがある中で貴重な経験をされているかなと思って伺いました。
 そこで、今後、雇用率のあり方、あるいはカウントも含めてなんですけれども、それから納付金の制度などについてどのようにしていきたいと思っていらっしゃるのか、もし御意見があれば伺いたいと思います。

○有村参考人 先ほど私も申し上げましたように、身体障害者の高齢化に伴いまして、これからは、知的と精神の障害者を雇用の対象として戦力化することが求められております。
 その中で、一番難しく、ここは、できれば検討いただきたい点は、精神障害者四百万人いる中の手帳保持者が五分の一しかいないということです。いわゆる障害者雇用のカウントには手帳保持が厳格に求められます。ここの、手帳の取得を進めるか、若しくは手帳保持というところの規格を緩めるのかというところを検討していただきたいということが重要かと思います。
 特に手帳の保持を進めるということは、なぜ手帳を保持しないのかというところの原因を追求いただいて、これはもうほとんどおわかりと思うんですが、社会的偏見があるがために皆さん取りたがらないというところです。ですから、そこを取り除くことによって手帳保持を進めていただくこと、これが一番有効かと思いますが、ぜひともそういう方向に進めていただきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 精神障害者を義務づける法案の審議のときに、やはり、職場の理解がなかなか進まない、だから隠して就職する、でもそのことによって結局続かないということが、どうするんだという議論をしたことがありました。ぜひ進めていきたいなと思っております。ありがとうございます。
 それでは、栗原参考人と三橋参考人に同じ質問をしたいと思うんですけれども、先ほど栗原参考人が、障害者はうまく雇用すれば必ず戦力になるとおっしゃいました。そういう言葉を、生活支援をされている、障害者のセンターで支援をされている方からも同じような趣旨のことを伺いました。例えば、重度の障害のある方とともに働くことで返ってくるものが大きな財産でもある、そういう気持ちでぜひ雇用を進めてもらいたいなということをおっしゃっていたわけですね。
 そういう意味で、重度の方への合理的配慮をどうやっていくか、どうやって職場の、気持ちの負担というんですかね、軽くしていくか、それは間に立つ人がもう少しいればいいんだろうなと思うんですけれども、そこでのヒントがあれば伺いたいというのと、三橋参考人は、そもそも、三十五年間、千葉県の職員で採用されて、多分いろんな、みずから改善してきたことがあると思うんですね。そういう経験の一端をぜひ御紹介いただければと思います。お願いします。

○栗原参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。
 私どもの会社では、知的障害を持たれた方、重度の方、かなり多く働いております。
 一つは、やはり、方法としては、単純作業のパターン化した作業をやっていただく。
 それと、指導ですね。ここが問題なんですが、健常者でなくて、障害者が障害者を指導していく、教えていく。それが一番、本人が問題なく作業に入っていけるということだと私は思っております。やはり、健常者に言われると何となく身構える。それが、同じような仲間に指導されるとそれが全然ないというような、そういうことで私どもの会社は五十八年間雇用を進めてきております。
 今、蛇足になりますが、平均勤続年数が約十五年弱です。十八の子から五十六の子までおります。ですから、そういう子でも問題なく働けるというのは、やはりそういう環境だと思うんですね。ですから、一人、二人じゃなくて、ある程度、やはり五人ぐらいの障害を持たれた方が一緒になってやっていくような職場づくりが一番向いているのではないかなというふうに思っております。
 以上でございます。

○三橋参考人 今御質問がありましたので、お答えします。
 私が入ったのは、昭和四十七年に県庁に入ったんですけれども、その当時はバリアフリーという言葉も全然なかったですね。私が就職したときに、障害者用トイレというのは県庁になかったんです。それで、道路を隔てた別の建物、教育会館なんですけれども、そこに用を足しに行ったという状況です。それで、もう一つは、車の通勤しかできなかったんですけれども、駐車場がないというか、職員は車で通勤してはいけないことになっていましたので、その車をどこにとめるかというのが非常に大変で、場合によっては相当遠くにとめて出勤しなきゃいけなかったということもありました。
 そういう問題については、いろいろ運動したんですけれども、トイレの問題については、なかなか私が声を出しにくかったということもあって、障害者の団体から陳情してもらったんです。障害者が県庁を訪れることもあるだろうし、職員も要るんじゃないかみたいなことをあえて陳情してもらって、その陳情が通ってトイレができたんですけれども、最初にできたトイレが、女性用トイレの中に車椅子のトイレができたんですね。だから、それはもう非常に、お互いに、職員の方も入りにくいし、私だってそれは使いにくかったんです。ただ、そういう時代だったということですね。
 それで、もう一つ、駐車場の問題については、これは労働組合の要求に入れてもらって、勤めている障害者のためには通勤を車で認めろ、そして駐車スペースをつくってほしいということを要求しまして、それが実現しました。
 私のケースで実現したときに、実は、隠れ障害者じゃないですけれども、いろいろ、人工透析なんかをやっている職員が何人かいまして、そういう人たちが、実は私も、病院に夕方行くのに、車を置く場所に困っていたんだという人がたくさん出てきて、すごく助かったというような声もいただきました。
 それと、出張なんかすると、出張先がバリアフリーとは限らないんですね。ですから、そういうことも困りましたし、泊まり込みの研修もあったんですけれども、所属長からは、障害者は差別しないよと、ありがたいことを言われたんですけれども、それに続いて、残業も一緒にほかの職員と同じようにやってもらう、出張も同じようにやるんだというようなことを言われて、結構大変だったことも思い出します。
 それともう一つ、これも参考になると思うんですが、障害特有の休暇の必要性というのがあるんですね。
 例えば、私は今、電動車椅子を使っていますけれども、電動車椅子が壊れたら修理に行かなきゃいけない。そうすると、それはもう確実に一日休まざるを得ないんですね。それから、私は前に補装具をつけて、つえをついて歩いていましたけれども、もう年じゅう壊れるんですね。公務員は二十日間有休がありましたけれども、その大半はもう、そういう車椅子の修理だとか、つけている補装具の修理なんかに使われてしまいました。ですから、合理的配慮の一つとして、障害特有の事情をしんしゃくした、年次有給休暇以外の特別の休暇があってもいいんじゃないかと私は思います。それが長く勤められる一つのあれじゃないかと思います。
 そのほか、いろいろなことを体験しました。
 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 本当に、貴重な意見をいただきました。検証においても、あるいはこれからどうするかということにおいても、当事者の意見をしっかり入れながら、あるいは一緒に考えながらやっていきたいなと思います。
 ありがとうございました。

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