国会質問

質問日:2008年 4月 16日 第169国会 厚生労働委員会

介護保険法 ―参考人質疑

 不正を行う介護事業者への規制を強化する介護保険法改定案などについて専門家から意見を聞く参考人質疑が十六日、衆院厚生労働委員会で行われました。参考人からは、介護労働者の劣悪な労働環境の改善を求める指摘があがりました。

 全国福祉保育労働組合の清水俊朗書記次長は、介護を含む福祉労働者の約35%が月額十五万―二十万円、常勤パート労働者のほぼ全員が月額十万―二十万円という賃金水準にあり、「介護職場の人材確保問題は、利用者の生活や人権を守るうえでも、大変な状況にある」と強調しました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は質疑で、介護報酬の引き上げについて、介護の公的役割に照らして、保険料の値上げではなく、国の責任で支出すべきではないかと質問しました。清水氏は「これ以上、利用者の負担が増えることには反対。別の財源を含めて検討すべきだ」と答えました。学習院大学経済学部の遠藤久夫教授も、医療や介護への公的支出は「増やすべきだ」と述べました。

 高橋氏は、今日の介護の状況を生み出した要因について質問。評論家の樋口恵子氏は「二度の介護報酬引き下げや、民より金優先の改革がもたらした」と指摘しました。

 このほか、日本社会事業大学の村川浩一教授が参考人として意見を述べました。

(2008年4月17日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に御出席いただき、貴重な御意見を伺うことができました。ありがとうございました。

 限られた時間ですので、早速質問をさせていただきます。

 初めに、遠藤参考人に伺いたいと思います。

 先生は、介護事業運営の適正化に関する有識者会議の座長として昨年の報告をまとめられました。報告書の内容と今法案は、コムスンが監査中に廃止届を出すなど巧妙に処分逃れをしようとしたこと、あるいは〇五年改正時に連座制として規制を強めたことを逆に見直すという、コムスン対応法と言えるような中身になっていると思います。

 先生は、個別企業の問題ととらえるべきだという考えをお持ちのようですが、そのこと自体はやはり、個別の企業が四百以上も指定取り消し処分を受けている現在の背景に何があるのか、これは単に、営利か非営利かというだけではなく、措置制度から契約へという流れの中でさまざま構造的な問題があったのではないか、これは私は深める必要があるというふうに考えております。きょうはちょっと時間がないので、そこは意見を述べるだけにさせていただきます。

 そこで、心配されているのは、全国展開をしているような大手ではなく、零細な事業所に過度の負担にならないかということであります。今でさえ、膨大な報告書の整理、チェックに追われ、利用者と向き合うよりパソコンと向き合っている時間の方が長い。ヘルパーや指導も事務も、一人で何役もこなさなければならない管理者など、悲鳴が上がっております。業務管理体制の具体的中身や、対象となる事業所の規模についてどのように想定されているのか、伺いたいと思います。

○遠藤参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、介護事業におきまして、直接的な介護サービスの提供ではなくて、間接部門といいましょうか、ペーパーワークと申しましょうか、それがふえている。これは、介護だけではなくて病院などでもふえておるわけでありまして、診療報酬の方ではそういうメディカルクラークということに報酬をつけようということが診療報酬二十年改定で行われたということもあるように、実際にそのような仕事がふえてきて、これが本業に影響を及ぼすのではないかという御懸念、全くそのとおりだというふうに思います。

 今回、改定の中でいろいろとやったわけでありますけれども、小規模の事業者に対して直接関係するというものは、基本的には、先ほど御指摘ありましたように、業務管理の体制整備というところが該当するだろうということであります。これにつきましては、確かに法令遵守ということが言われているのであるし、普通の企業にもそれがあるわけですから、そういうことは徹底しなければいけないということが有識者会議の中で出たわけです。

 しかし、小規模と大規模ではやはり対応の仕方が違って当然であろうということが出てまいりました。特に小規模の場合にはなかなか人手がない、お金がないという状況があるわけですし、しかも人数が少ないわけですから、そんなに大規模な組織をつくる必要もないということもあるので、そこは規模に応じた形の対応をするべきだというような提言がありました。そのように報告書はまとめてあります。

 法案につきましても、ちょっと内容を見た限りでは、小規模、中規模、大規模で体制の違いがある、例えば小規模であれば担当者を選任するというレベルにとどめておるというような形で、言ってみれば、管理制度の規模の経済性がありますから、小規模のところにはできるだけ負担が少ないようにというような配慮はされているというふうに私は理解しておるわけであります。

 以上でございます。

○高橋委員 ありがとうございました。

 頑張っている小規模の事業所が規制につぶされるということがないように、ぜひ政府にも求めていきたいと思います。

 樋口参考人に伺いたいと思うんですが、高齢社会をよくする女性の会の提言、私たち日本共産党としても三万円の賃上げを求める提言を出しておりますし、中身はそれだけではないんですけれども、一致するものがあり、大いに賛同したいと思っております。

 また、昨晩の集会にも私、参加させていただきまして、本当に熱気あふれる内容だったと思っております。その席上、先生は何度も、宝の介護保険、そういうお話をされました。私は、樋口先生が、家族だけの介護から社会の介護という形で発展してきたことに対して歓迎をされておった、だけれども、この八年間、その理想と現実のギャップが余りにも大きくて、そこに心を痛め、さまざまな角度から発言をされてきたのだと思っております。

 私は、今や介護を必要とする人がどんどんふえているけれども受け皿がないとか、希望に燃えて介護の仕事につく青年たちの五人に一人がやめていくとか、利用者も介護事業所も、そして労働者も悲鳴を上げているこの今日の状況を生み出した要因について、先生のお考えを一言伺いたいと思います。

○樋口参考人 先ほど申し上げましたように、介護保険は本当に国民の希望を乗せて出発いたしましたし、当初うまくいっていたと思います。やはり介護保険があったからこそ地域の風景もこれだけ変わりました。かつて幼稚園バスはあったけれども、デイサービスのバスなんて地域で見かけることはありませんでした。利用する人はこそこそと利用しておりました。今は堂々と利用いたしております。

 本当に人口構成が、それだけ高齢者が多くなったのですから当たり前のことと思っておりますし、何よりも、外部サービスをすると、当時の嫁は、あそこのうちはヘルパーなんぞ入れているといって、隣近所の非難を受けたものでございます。このごろは、そういうことがなくなりました。介護保険、私は五つ星ぐらい効果があったと思っておりますが、一つは、何よりも、外部サービスを利用するのに利用家族の心のバリアフリーが行われた、そして、介護サービスが身近になったことだと思っております。

 しかし、二度にわたる介護報酬の引き下げの中で、私はやはり本当に、せっかく国民の方を向いて出発してくれた厚生労働行政の中の介護保険行政というものが、やはり財政難とか、何とかかんとか改革、改革と言われるとみんなその気になって、痛みがこんな形で来るとはまた国民みんなも思わずにいたというところもあるかもしれませんけれども、二度にわたる介護報酬引き下げの中で、やはり民の方より金の方を向いちゃった。民よりマネー、それから民より紙ですね。本当に紙が多くなった。だからお上と言うんだという説もありますけれども。

 本当に方法は煩雑になり、そして、だから私たちは自立して生きていかれる。家族がどうとかこうとかというよりは、一人一人の要介護度の状況によってサービスが給付されるというのは何というすっきりしたいい制度だろうと思いましたけれども、たび重なる改定、特に〇六年改定におきましては、家族がいる人には生活援助のサービスは出さないなどということになって、本当にこれからの日本の家族構成で、私自身決して望むところではございませんけれども、今一番大きく変わっていくのはひとり暮らしの激増でございます。しかも、高齢ひとり暮らしの激増の中でどのようにこの介護サービスをしていくかということをぜひ視野に入れてしなければならないのに、家族がいることが前提、家族がいれば削りますということに来てしまって、やはり何よりも、高齢者の実態よりもお金の削減のことが前に来たのが裏目に出たんだと思っております。

 以上です。

○高橋委員 ありがとうございました。非常に同感できるお答えだったと思います。

 先般の委員会でも、二度にわたる介護報酬の引き下げが要因だったのではないかという私の質問に対して、舛添大臣も、影響があるということをお認めになりました。それと同時に、今改革が次々とやられておって、民より金だと。生活援助の話などもまさにその象徴的な問題で、福祉も自己責任におとしめられてきて、介護の社会化と言いながら、その社会が果たす役割の部分がどんどん小さくされてきたということに大きな要因があるのではないかというふうに私自身も思っております。

 そこで次に、清水参考人に伺いたいと思います。

 介護の現場のリアルな告発と改革のための具体的な提言もいただきました。そこで、私も十一日の委員会で取り上げたことでありますけれども、やはり直行直帰の登録型ヘルパーが圧倒的に多く、無権利の状態であるということが非常に大きな問題だということが指摘をされております。こうしたホームヘルパーさんの実態について、詳しく伺いたいと思います。

○清水参考人 ホームヘルパーの問題ですけれども、全体的な調査はいろいろなところで出ているかもしれません。私の方は、直接私どもが把握している、具体的にどういうことなのかという例をちょっと御紹介したいと思っております。

 ヘルパーといいましても、ほとんどはいわゆる登録型のヘルパー、これの割合が非常に高いというのが実態だと思います。

 例えば、ここに資料があるわけですけれども、男性の五十代のAさんというヘルパーさん、月収でいえば四万四千二百二十円ということなんですね。時給単価で千百八十円をもらっているわけです。ところが、登録ヘルパーというのは、御存じのように、一日決まった時間に、朝八時から夕方五時までとか、そういうことで仕事があるわけではないわけです。必要な時間に、ケアプランに基づいて、そこの家庭を訪問して、さまざま援助をする。その時間に関しては、報酬単価で見られていますので、当然時給の対象にはなりますが、基本的にそれ以外の時間というのは、いわゆる給料をもらえる時間にはならないわけですね。自宅で待機するなり、いろいろ方法はある。要は、仕事をしていないわけですから給料には換算されないということになります。

 例えば、同じ男性の方で、月収十五万から十八万ぐらいはありますよという方もおられるわけですが、それでも安い水準ですけれども、では、そういう方がどういう仕事をしてそのくらいを維持しているのかといえば、例えば、曜日でいえば月曜から土曜までホームヘルプの仕事があるわけです。これは主には、例えば二時から二時半とか、六時から六時半、大体お昼、夕方、これが非常に多いわけですけれども、この時間はヘルプをする。それ以外に、同じ法人がしているデイサービスの送迎の仕事、もしくは同じ法人が持っている老人ホームの夜勤、これに月何回も入る。デイサービスの送迎もほぼ毎日のように入る。幾つもの仕事をしながら、それでもやっと十五万から十八万ぐらいの賃金を得られるというような実態です。つまり、ホームヘルプだけでは到底自立した職業として成り立っていないという状況があります。

 最初に紹介した方に関して言えば、社会保険にも当然入っていません。次に紹介された方は保険にも入っていますから、当然、手取りでいえば十二万から十五万ぐらいの水準になってしまうということがあります。恐らく、こういった形での仕事をしている、そういう実態の方が非常に多いのではないかと思います。

 以上です。

○高橋委員 ありがとうございました。

 あわせて清水参考人に、配置基準の問題ですけれども、夜勤が月十回とか一人で四十人も見ているとか、長時間労働等、精神的にも物理的にも過重負担であるということが指摘をされております。

 福祉人材確保指針では検討するとされた配置基準をやはり抜本的に見直すべきと考えておりますけれども、その点での御意見を伺います。

○清水参考人 基本的に、おっしゃるとおりだと思っております。

 最初の話の中でも若干老人ホームの例を出してお話ししましたけれども、とにかく配置基準の問題でいえば、全く実態には合っていないという状況があると思います。

 例えば、先ほどの老人ホームでも、夜間は八十人に対して四人であると。当然、個々の対応もあるわけですね。そうなると、例えば一人、二人が個々の対応をすれば、施設の中で残っている職員というのは二人ぐらいなわけですね。それで八十人の全体、いつどういうふうに状況が変わるかもしれぬお年寄りを見なきゃいけない。これは夜間の時間帯じゃなくて、日常的にも基本的にそうなわけです。

 例えば、三対一という配置基準がありますが、これは介護職員が三対一なわけですけれども、これは何も日常的に、常に入居者三人に対して一人の職員がいるという数字じゃないわけです。当然、夜勤もありますし、休む職員もいます。そういうことも含めて、全体では三対一だけれども、実態としては二十対一であるとか三十対一であるとか、そういう配置で見ざるを得ないことです。

 それに加えて、今、さまざまな事務の仕事もふえていますし、家庭との連絡、さまざまな公的機関との連絡調整、こういったことも仕事としては増加しています。

 基本指針の中で、実態に合わせて見直しをする必要があるということが明記されたことは大変大事なことだと思っています。一番最初の人材確保指針、十三年前にできた指針には、このことは触れられていなかったわけですね。この十三年間の実態の変化と推移というものが当然あるかと思いますが、今回の指針の中でこのことが触れられたことの意味は大変あると思います。

 ただ、これがやはり絵にかいたもちに終わってほしくないというのが現場の労働者の率直な意見だと思います。いわゆる議論の俎上にこの問題がのっかったということは、私たちも本当にうれしく思っています。ぜひ実態の正確な把握もしていただいて、実態に合うような改善をよろしくお願いしたいと思います。

○高橋委員 そこで、介護報酬を上げようというお話になるわけですけれども、先ほど来、介護報酬を上げれば保険料を上げなければならないという議論がされていると思います。

 私たちは、民主党案でもそうでありますけれども、やはり介護の公共的な役割からいっても、これは別枠で国の責任で出すべきではないかというふうに考えております。

 清水参考人に、この介護報酬と国民負担との関係で一言だけお願いしたいと思います。

○清水参考人 私どもの基本的な考え方としては、これ以上利用者の方もしくは特に家族の方に負担がふえるということに関しては反対です。

 例えば、保険料を負担していますね。それで、サービスを利用すれば利用料の負担がかかるわけです。介護報酬が上がれば当然ここに反映してくるというのが今の仕組みです。

 ところが、施設を利用している方は、これだけで負担は済まないわけですね。例えば、食費の問題、それから水光熱費やさまざま施設でかかる実費も今利用者の負担ということに基本的にはなっていますし、そればかりか、例えば医療費の問題、後期高齢者医療制度というのができましたけれども、あれも負担がふえる方もおられるという話も聞いています。さまざまなことで、特にやはり高齢者の方の負担というのはじわりじわりとふえているというのが率直なところじゃないかなと思うわけです。

 当然、それを払える方もおられますし、制度上、低所得者に対する配慮というのはされておる、このことはよくわかるんですが、これに加えてさらに負担がふえていくということは耐えられない、そういう実態も出てくるんじゃないかなと思っています。

 ただ一方で、先ほど来言っていますように、労働者の労働条件等を改善する、これも喫緊の課題だということになります。目の前の課題をどうするかということに関して言えば、別財源というのも一つの方法だと思いますし、こういったことも含めて御検討願いたいと思います。

 ただ、長期的には、私どもが思うのは、例えば、今の介護保険制度に対する公費投入の割合の問題でありますとか、もしくは介護保険制度そのものの仕組みの問題ですね。財源をふやそうと思えば、どうしてもやはり、そこに利用者の負担に直接結びついていくような仕組み、このことに対する見直しもぜひ先生方の専門的な見識等を生かしていただいて、議論していただけたらと思います。

 現場の労働者の中には、本当に利用者の負担がふえてしまうということをすごく気にして、そのことで、自分たち、もう少し労働条件を上げてほしいし給料を上げてほしいけれども、利用者に負担がかかってしまうなら、やはりそれは我慢しなきゃいけないというような気持ちのある人もいるわけです。本来、こういう気持ちを抱かなければいけない仕組みというのは、私どもとしては、やはり見直す必要があるのじゃないかというような問題意識も持っています。

 ぜひそういったことも含めて御議論をよろしくお願いしたいと思います。

○高橋委員 ありがとうございました。

 そこで、もう一度遠藤参考人に伺いたいと思います。

 先生は、社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会の委員も務めていらっしゃいました。世界一の高齢化率という日本で、いかに高齢者の医療費増加を抑えるか、その決め手が後期高齢者医療制度だったとおっしゃっております。後期高齢者医療制度の診療報酬体系は、脱病院化を推進するための仕組みであると、先生が「世界の労働」一月号「高齢化時代の医療と介護」という論文の中で述べられておりますが、同時に、この間、話し合われてきたような介護の現状のもとで、受け皿がないということを指摘されていらっしゃるし、公的な医療費支出も、世界的に見ても非常に低いので、これをふやすべきではないかという御指摘をされていると思います。

 病院から在宅へ、医療から介護へという流れで一路進んでよいのか、この点について意見を伺いたいと思います。

○茂木委員長 遠藤参考人、既に持ち時間が経過しておりますので、手短にお願いいたします。

○遠藤参考人 では、手短に。

 私の論文をお読みいただきまして、ありがとうございます。

 基本的にはそこに書いたとおりなわけでありますけれども、日本は、病院の病床数が人口当たりかなり多いということもありますし、確かに長期療養する人たちにとって必ずしも病院が適切な環境かどうかという問題もありますので、そこを、療養環境を変えると同時に医療費を削減していく、コミュニティーケアに移行していこうという流れは、基本的に私は間違っているとは思いません。

 ただ、それぞれがうまくシンクロしないとまずいということはやはりあるわけです。例えば、病床を削減するのであるならば、受け皿はそれに応じて整えていくということが必要であろうし、それともう一つは、書きましたように、やはり財源はふやすべきであるということを私は思っております。

 簡潔ですが、以上であります。

○高橋委員 どうもありがとうございました。

 時間の関係で村川参考人に伺うことができませんでした。御了承ください。

 ありがとうございました。

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