国会質問

質問日:2008年 12月 10日 第170国会 厚生労働委員会

障害者雇用促進法質疑・採決

 衆院厚生労働委員会は10日、障害者雇用促進法改正案を全会一致で可決しました。

 これに先立つ質疑で、日本共産党の高橋ちづ子議員は、来年の障害者自立支援法の見直しでは「障害者施設・事業所が維持できるよう報酬を引き上げることが必要だ」と迫りました。

 高橋氏は政府の経営実態調査結果が事業所の収支はプラスで、従事者の年収もある程度あるとしているが、「これで報酬を上げなくてもいいと結論が出ては困る」と強調。日本共産党の調査(1日発表)では障害者自立支援法で減収になった事業所が97%を占め、大阪のNPO法人の調査では報酬だけでは最低賃金でも一人しか雇用できない実態などを告発しました。

 厚労省の木倉敬之社会・援護局障害保健副支部長は「事業者の声を聞き、経営基盤の確保を図れるような報酬になるよう努力したい」と答弁。

 高橋氏は9日の参考人質疑で、自立支援法は働ける場合には訓練、困難な場合には介護という二者択一制だが、就労と福祉の両方の組み合わせがあっても良いとの指摘があったことを示し、見解をただしました。

 木倉部長は「(一般就労や福祉的な場での就労など)さまざまな形での社会参加、就労参加を可能にしていくような仕組みにしていきたい」とこたえました。

(2008年12月11日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 

 次に、障害者雇用促進法がきょうは議題でありますけれども、昨日の参考人質疑は、当事者の立場、企業側、支援する側、そして逆に法の枠に入らない方たち、さまざまな角度から深めていただいたと思います。

 まず伺いますが、今回、障害者自立支援法の三年後の見直しに向け、社会保障審議会障害者部会が精力的に開催され、今月中にも報告書が出されると聞いております。その中で、まず見直しに当たって、今回初めて障害福祉サービス等経営実態調査が行われました。それが資料の一につけてございます。一が事業所の収支の状況、二が従事者の状況であります。

 そうすると、これを見ますと、全体がプラス六・一%、収支でありますのでプラスであります。障害児施設等はマイナス四・二%なんですけれども、新体系も旧体系もプラスと出てしまったわけであります。二枚目をめくりますと、常勤率が総合すると八一・五%。一人当たりの年収は、介護よりは低いということは明確であります。

 しかし、言ってみれば一定度の年収はあるのかなというふうに読み取れてしまうのです。実は私は、ここに非常に違和感がある。収支がプラスだからうまくいっているよというふうで、介護報酬を上げなくていいよという結論が出ちゃうと困るなと率直に思います。どれほど事業所の血のにじむような合理化や自己犠牲があるのか、それがこのデータからは見えてこないのであります。例えば八割常勤だと言っている。でも、それで足りているのかということはこのデータからは見えません。働く人がだれもいなくなり、募集しても来なくなり、創設者だけでぎりぎり頑張っているという場合もこういうデータになるわけです。

 我が党が十二月一日に発表した影響調査では、事業所の減収は九七%、募集しても従事者が集まらないのが六割です。このままでは閉鎖やむなしという声がございます。

 あるいは、NPO法人大阪障害者センターの調査では、グループホーム、ケアホームの報酬は、大阪府の最賃に照らすと、報酬で一名分、最賃で一名分しか雇えないのだと。これはどういうことかというと、〇四年は七割、〇五年は九割、〇六年度は一〇〇%を超えた。つまり、国の報酬は一〇〇%人件費に消えてしまう、こういう状況だということが指摘をされているわけです。

 これらを踏まえて、プラスだから報酬は要らないよ、上げなくていいよということになっては困ります。いかがですか。

○木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の障害福祉サービス費の報酬につきましては、来年四月からの改定を前提に、今御議論をいただいております。そのためのものとして、先般、初めてのものでございますが、二十年の経営実態調査を行って公表したところでございます。

 その結果は、確かにおっしゃるようにプラスというものは見えますけれども、しかしながら、御指摘いただきましたように、さらに細かく見ていきますと、お一人当たりの給与の水準というものが低い、あるいは介護保険の方に比べても、やはり非常勤率も高いというふうな実態があろうかと思っております。

 その中で、私ども、この改定に当たりましては、この調査結果ももっとしっかり分析をしていかなければいけませんが、事業者団体の方々からも直接お声を聞かせていただいたり、さらには審議会の中でも、今の経営の努力というものについて、大変な努力をいただいていることを直接お伺いしながら検討を続けさせていただいております。

 御指摘を踏まえまして、この辺の総合的な、サービスの質をより向上していく、あるいは良質な人材をきちんと確保していただけるような、経営基盤の確保が図られるような報酬になりますように努力してまいりたいというふうに思っております。

○高橋委員 しっかりお願いしたいと思います。

 今紹介した調査の中には自由意見がございませんで、この数字の背景にどんなものがあるのかということを、私いろいろお話もしましたけれども、そういうものが出てきていないということもあるので、引き続いてしっかりと踏まえていただきたいと思います。

 次に、資料の三ですけれども、これは十二月三日の障害者部会に出された資料でございます。

 国保連データに基づきますと、平成二十年七月の利用者二十一万二千三百二十七人中、複数サービスの利用者数は二千二十二人、一%にすぎないというのが実態であります。

 これまで、さまざまな議論の場で、報酬を日払い方式にするのはうまくないという指摘に対して、利用者の自由な選択、組み合わせが可能になると述べてきたわけです。しかし、現実にはそういう実態ではない。たかが一%、そもそも選択するサービスそのものもないとか、そういう実態が浮かび上がったのだと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

○木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法以前のサービスの体系では、入所施設を御利用される方々を例にとりますと、日中と夜間を通じましてその施設において支援を受ける形ということでございまして、日によって御自身の御選択で、希望によってサービスを組み合わせて使うということはできなかったわけでございますが、新しい法律の体系のもとでは、この法律の目的でございます障害者の地域での自立した生活を目指して、利用者御自身の選択で活動を選択していけるような仕組みにされたところでございます。

 しかしながら、十八年十月から新しい事業体系に移行して一年半、二年はまだたっていないこの七月の調査でございますが、これを見てみますと、日中活動を御利用されているこの二十一万人という方の中で、複数のサービスを選択し、組み合わせて使われている方はまだ一%というような実態にとどまっているのも事実でございます。

 この背景といたしましては、まだ入所施設の方の移行が進んでいなくて、旧体系で、移行期間が二十四年三月までございますので、まだ検討を続けていらっしゃる。それから、利用に当たってのケアマネジメントを個々に行っていくということがまだ十分行われていないというふうなこと。それから、やはり身近なところにサービスの事業者がまだまだ十分ないというふうなことが指摘をされておるかというふうに思っております。

 こういう背景を踏まえながら、地域で生活する方、施設に入所される方にとりましても、日中活動のサービスを利用できるような仕組みというのはもっともっと充実していかなければいけないというふうに思っておりますので、引き続き、市町村、県にも計画をつくっていただいておりますが、しっかりとサービス基盤の整備を進めていくということで取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○高橋委員 今答弁の中にもございましたけれども、身近にサービスがない、そもそも選択できるような量の確保を図っていないということがまず指摘をされると思うのです。

 同時に、先ほど来お話をしているように、選択はいいけれども、そもそも事業者がもたないよでは意味がないわけです。私どもの調査でも、月払いに戻してほしい、七二・三%です。報酬が日払い制のため、利用者の顔がお金に見えてくることがある、こんな状況ではニーズに応じた支援も難しい、月額払いに戻してほしい、こういう声がございますが、見直しする考えはございますか。

○木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 日払いの制度というのは、繰り返しになりますけれども、御利用者の方々にとっては、夜間の入所の支援とともに日中の活動を御自身の選択で組み合わせて利用していける、その活動の場がより広がっていく可能性を持ったものであるというふうに思っております。

 しかしながら一方で、経営者の方々、事業者の方々にしますと、十分な利用者がまだまだ確保できていないという中で、経営基盤が非常に不安定であるというふうなこと、その中で、非常に合理化の努力もされながら、経営を何とか成り立たせていらっしゃるという実態があらわれているんだろうというふうに思います。

 やはり基本的には御利用者の方々の視点、なるべくいろいろなサービスを組み合わせて御自身の生活設計を成り立たせていっていただけるということを前提にしながらも、事業者の方々の安定が図られるようなサービス基盤の整備と報酬の確保ということに努めてまいりたいというふうに思っております。

○高橋委員 繰り返しますが、事業者がもたなければ利用者のせっかくの希望にこたえることができないわけで、これはもう一体となって支えていかなければならないと思うんですね。

 先ほど答弁の中にあったんですけれども、新事業体系への移行をまだ決めていないところがある。実際には二〇一二年、平成二十三年の三月までに新事業体系への移行が求められていると思うんですけれども、移行をためらう施設がまだ多いと思います。

 まず、決めていない施設がどのくらいあるのかと、その理由について伺います。

○木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法に基づきます新しい事業体系への移行、これは二十四年の三月、二十三年度いっぱいまでで移行をお願いしますという仕組みになってございます。

 その中で、移行状況、十八年の十月から移行が始まりましたけれども、一年半たった段階、二十年の四月段階で把握をいたしますと、全体平均、三障害を平均しますと、二八・二%の事業所の方々が新体系へ移行しておられるということでございます。身体障害で三一%程度、知的障害で二五%程度、精神で三六%程度、こういうふうな状況にございます。

 一年半とはいえども、まだまだ十分に進んでいない理由につきましては、アンケートをとらせていただきますと、やはり報酬がどういうことになっていくか、初めての報酬改定もこれからだということもありまして、その方針がよくわかってからにしたい、あるいは、移行に向かってさまざま努力をするべき点があるけれども、まだ中でいろいろ検討しているので、もうちょっとその様子を見てからにしたいというふうな御意見が指摘をされておるところでございます。

 このようなアンケートの結果、それから先ほど申しましたように、審議会の中にも各事業者の方々、団体の方々がおられますので、具体的な取り組みの状況等を踏まえまして、二十四年三月までの間で移行が安定して図られるようなサービス基盤の整備というふうなことについてさらに御指摘をいただき、努力してまいりたいというふうに思っております。

○高橋委員 まず、その理由の大きなところで、報酬がよくわかってからにしたいと。これは、先ほど来述べているように、報酬の引き上げがどうしても必要である、今のままではちょっと見えてこないというのが現実にあるのではないかと思うんですね。あとは、就労移行あるいは継続支援のあり方の問題ということも問われているのではないかと思います。

 資料の四にありますが、今、工賃倍増五カ年計画などということも打ち出されているわけですけれども、平均工賃が一万二千五百九十九円のところに線が引いてありますけれども、圧倒的に多くのところが一万未満であるという実態があるわけですね。例えば、このちょうど平均値のところに就労継続支援のB型などが位置しているのではないか。そうすると、こういう中でどこまで求められるのだという、非常にハードルが高いものがございます。

 昨日の天野参考人の指摘が非常に重要だと思うんですけれども、自立支援法では、働くことができる場合には訓練、それが困難な場合には介護をという二者択一であるということ、障害のある人は一般就労に向け、生涯にわたって訓練に追い立てられる、あるいは後者の場合には介護の対象なので働かなくてよいといったように、働くことを通じて主体的、能動的に社会参加するということが薄められるのではないか。就労か福祉かではなく、その両方の組み合わせがあってもよいのではないか、そういう指摘がされております。この考え方について一言お願いします。

○木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、障害者の方々が、働く社会参加をする、就労していくということにつきましても、さまざまなものがあろうかと思っております。

 それで、今の新しい法律体系のもとでは、就労移行のための支援をしていき、一般企業への就労、一般就労が可能な方々にはぜひそういうチャンスも与え、チャレンジしていただきたい。それから、福祉的な場での就労ということで社会参加を図っていきたいという方々については、A型とかB型と申しておりますけれども、そういう中での、御自身の可能なところで働く社会参加をするという形でぜひ頑張っていただきたい。

 そういう支援体系をやはり多様に設けることによって、さまざまな形での社会参加、就労参加ということを可能にするような仕組みにしていきたいというふうに思っております。

○高橋委員 以上です。引き続いてよろしくお願いいたします。

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