国会質問

質問日:2009年 4月 10日 第171国会 厚生労働委員会

国民年金法改正案

 日本共産党の高橋ちづ子議員は十日の衆院厚生労働委員会で、公的年金だけでは生活できない高齢者の実態を示し、最低生活を支える緊急の対策を求めました。

 高橋氏は、生活保護基準の全国平均は、単独世帯で年収百十五万円(夫婦で百九十二万円)で、高齢者世帯に当てはめた場合、女性単独世帯で42%、世帯計で26・9%にのぼる試算などを示し、厚労省が高齢者世帯のうち生活保護は「5%程度」と説明していることを批判。「保護率が低いという数字だけを紹介する一方、生活保護水準以下で生活保護を受けていない捕捉率は明確でない。調査すべきだ」と強調。

 高橋氏は、生活保護を受けずにわずかな年金で暮らす高齢者世帯について、「現在は、高齢者の持ち家率が高いが、将来世代は持ち家率も低く、住居がなければ暮らせないことは明らか」だと指摘。生活保護の住宅扶助だけでも支給すべきではないかとの提案に、舛添要一厚労相は、「簡単に答えは出ない」としつつも、「各自治体の現場の意見を聞きたい」と述べました。

 高橋氏は、政府が十日に決めた「追加経済対策」で十五兆円もの国費を投じることに「これまで財源がないと社会保障費を削ってきたことは何だったのか」と指摘。総額一兆六千二百億円も削減した施策を「元に戻すことこそ真の経済対策ではないか」と迫ると、舛添氏は、「社会保障は(国にとって)負担だとする議論から脱却すべきだ」と述べました。

(2009年4月11日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 最初に大臣に伺います。簡潔にお答えいただきたいと思います。

 この間、年金制度そのものをどうするのかというさまざまな議論がされてきたわけですけれども、水準、制度設計、財源などは今後総合的に検討する必要があると思いますので、それは抜きにして、やはり最低保障年金制度このものが必要であるという点では認識を共有できるでしょうか。

○舛添国務大臣 ちょっと前提を抜きにはなかなかできないんですが、それはもう理想としてはそういうことで、あるにこしたことはありません。

 ただ、逆になぜ生活保護という制度があるのかというと、これは、ラストリゾートというか、最後のとりで、最後のセーフティーネットであるわけなので、そうすると、やはり最低保障というのをどれぐらいの水準にするのか。そうすると、これはやはりどうしても、今は抜きにしてとおっしゃった財源の問題も出てこざるを得ない。

 それは、財源が潤沢にあり、国民がオーケーであるというなら、理想は理想として、それはあるにこしたことはないということは申し上げておきたいと思います。

○高橋委員 私は、例えば財源一つとってももう既に意見が分かれるわけですから、ただ、やはり生活保護水準よりも一定の保障年金が必要だよねということはほぼ認識が一致されてきていると思うんです、この間の議論。それに向かってやはりきちんと制度設計をしていく必要があると思う。

 ただ、その前提がなかなか整わない。つまり、先ほど来お話しされている所得代替率の問題ですとか、一つ一つがなかなか整わない中で、そう簡単ではないだろう。そうなったときに、では、今の受給者の皆さん、間もなく受給者になる方たちは、制度設計がまだまだ無理だから我慢するしかないのかということなんですね。今できることもやっていく必要があるのではないか、そのことを少し御提案してみたいと思います。

 まず、財団法人生命保険文化センター、平成十九年度生活保障に関する調査によれば、老後、夫婦二人で暮らすために必要な最低日常生活費は、月二十三万二千円と言っております。実際には、ゆとりある老後ということでは、プラス十五万円ということがあるそうです。しかし、とりあえず最低の日常生活費を公的年金で賄えるかというと、賄えるとは思わないと答えている方が八二・三%に上っています。一方、無職の高齢夫婦世帯の貯蓄率は〇六年度でマイナス二三%、年々貯蓄を取り崩す割合が高まっております。

 資料の一枚目を見ていただきたいと思うんです。これはニッセイ基礎研究所のレポートですけれども、〇四年度の年金制度改正でマクロ経済スライドが導入された、ここにおける影響を見ているわけです。

 年金受給世帯の年金額が、消費者物価上昇率マイナス〇・九%で二〇二三年まで続き、その後、消費者物価上昇率と同率で受給額がふえると仮定した場合、消費額の方が大きいために、年々貯蓄の取り崩しがふえていく。純金融資産、貯蓄が三十年でこのようにゼロになるという表であります。

 これは、スタートが当時の平均二千四百二十三万なわけです。ですから、このレポートの大前提は、現在の高齢者世帯に限れば、いろいろあっても大多数は貧しくない、無理のない形で暮らしているという、当時政府がよく言っていた議論に立っているわけなんです。ですが、おわかりのように、それでも将来の高齢者は状況が変わる、年金制度改正の影響は大きい。そういう前提に立っても。指摘せざるを得ない。なぜなら、資産がゼロになるから。二千四百でスタートしていますが、これがもしその半分であれば、あるいはゼロであればというと、もう一気に下降がどうなるかというのは想像にかたくないと思うんです。

 申しわけありません。局長に通告しておりませんが、一点答えていただきたい。

 貯蓄のない高齢者世帯は今一一・九%、うち男性単独世帯は一七・六%にも上っています。貯蓄ゼロからスタートした高齢者世帯の生活費に及ぼす影響、いわゆるマクロ経済スライドによってですよ、どのようなものになるでしょうか。

○渡辺政府参考人 突然の御質問でしたので上手にお答えできますかどうかでございますが、やはり、社会保険制度と生活保護、それから社会保障の政策の中には社会手当とでもいうべき、大きく三つに分かれる政策だと思います。

 年金制度は、その中の社会保険制度として、やはり標準的なと申しますか、外形的に一定の基準に沿ったものを普遍的に当てはめることによって、結果として防貧の機能を果たそうというものが年金保険制度であるというふうに思っております。

 したがいまして、今設題でいただきましたようなケースの中で、その方が受給される年金額が名目額下限があり、一般には基礎的生活経費を賄えるはずの基礎年金であっても、マクロ経済スライドで、その範囲内であっても若干実質的に目減りしていく、こういうような状況が続いた場合どうなるかというお尋ねだと思います。

 全く貯蓄のない人生経路をたどってこられた方の場合、特に単身の場合は生活扶助に頼らざるを得なくなるだろう、とりわけ都市部においてはということは言われておりますし、数字的に言えば、確かにそういう面はあると思います。

 しかし、御夫婦でこつこつ納めてこられていて、満額十三万円台を年金収入として確保されている方がマクロ経済スライドで調整されても、名目額下限のルールのもとでいけば、お二人の基礎的消費支出の範囲は十分賄える程度のところにおさまってマクロ経済スライドが終了するのではないかというのが、現在までのところの財政検証の内容でございます。

○高橋委員 十数万の年金をもらっている単身世帯で貯蓄がなければ生活保護だろうとおっしゃったのは、非常に重要な問題かと思うんですね。

 本来は、その程度では当然暮らしていけるという前提のもとに議論が始まったはずなんですよ。その程度の年金をもらっていて、かつ資産があってもこんなに貯蓄の取り崩しをしなければやっていけないというのが今の現状なんだということを指摘しているわけですから、ちょっと私、一つ提案がございます。少なくとも、国会に諮らず物価自動スライドだ、こういう仕組みをやはり見直して、一定程度給付を見直す必要があるときはきちんと国会に諮るというふうにするべきではないでしょうか。

○渡辺政府参考人 先ほど答弁の中で申し上げたマクロ経済スライドは、十六年改正法において法律制度として導入され、その間、活発な国会での御議論をいただいた上での御可決をいただいて、制度としてスタートしているというふうに理解をしております。

 また、その制度を変更する場合には、当然のことながら、政省令以下にゆだねられていることでない限りは立法府の御審議を賜らなければいけない、かように存じております。

○高橋委員 物価スライドを自動的にしないということを訴えているわけです。これをもう一度大臣に伺いたいと思うんですね。

 先ほど来、経済前提が崩れているじゃないかという議論がされておりました。例えば、来年から急に納付率が八〇%になるというのもおかしい、あるいは、ずっとマイナスで実質賃金が来たのに、来年突然三・四%というのはおかしいと議論をしているわけですよね。大臣は、あるいは私のところに来た原課もそうですけれども、それはずっと先の目標なんだから、それはいいのだ、目標に向かっていくのだみたいな話をしているわけです。

 大臣がそうやって必死に答弁しているにもかかわらず、二月二十三日の社保審の年金部会では、〇九年の内閣府の見通し〇%だけれども、民間のコンセンサスはマイナス五%と言い切り、所得代替率五〇%を切るという見込みはもう随分前からわかるだろう、今六〇%なので、二十年後、三十年後には当然切るだろうという議論、だったら年金課税の強化や支給年齢の引き上げというのも必要なんじゃないか、こういう議論が出ていることを、大臣、御存じでしょうか。

○舛添国務大臣 それも含めてさまざまな意見は出ていますけれども、何度も申し上げますように、財政検証を五年ごとに、基本的に同じフレームでやっていって検証していくということなので、所得代替率を五〇以下にしないために、あえてそういう数字のみをまとめてつくったというものではないと思っております。

○高橋委員 初めから無理な計画をつくって、後で破綻するということがわかっているのに、とりあえず百年安心なんだから、今この給付水準で我慢をしろということが成り立つのかということが言いたいわけです。

 局長に聞きますけれども、四月三日の委員会で、高齢者世帯のうち、生保世帯の占める割合は、皆年金が始まった当初は二三%だったものが、現在は五%程度ですよという答弁をされました。では、現在、年金世帯のうち生活保護基準以下の世帯はどのくらいでしょうか。

○阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 六十五歳以上の老齢年金の受給者の方で、生活保護の基準以下で生活している方の数についてのお尋ねでございますけれども、生活保護の基準は、委員御案内のとおり、世帯の人数とか地域に応じて異なっております。それからまた、世帯単位でやっておりますので、世帯の方の全員の資産を確認する必要もございます。それからまた、申請することによって実施をされているということでございますので、申請されていない方の所得、資産などに関する情報を残念ながら持ち合わせておりません。そういうようなことで、私どもの方では、年金受給者の方で、生活保護の基準以下で生活している人の数というのを把握していないという現状にございます。

 ただ、六十五歳以上の老齢年金の受給者のうちで実際に生活保護を受けていらっしゃる方の数は、平成十八年度で申し上げますと、二十七万五千百四十人という数字でございます。

○高橋委員 ですから、言っているのは、五%程度という話を年金局長がされたことに対して、だったら本来はもらえる基準なのにもらっていない人はどのくらいですかと聞いたのに、今その数字を言っても余り意味がないわけなんですね。

 例えば、こういう試算がございます。〇二年の生活保護基準の全国平均は、単独世帯で年収百十五万円、夫婦世帯で百九十二万円。これを高齢世帯の収入で比較すると、女性単独世帯の四二%、世帯計で二六・九%が生活保護基準以下だという試算ができるわけです。国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏は、貧困高齢者の四分の三が生活保護を受給していない、このような指摘をしています。

 保護率が低いという数字だけを紹介し、一方で捕捉率が明確でない。制度設計のためには、高齢者の捕捉率についてもきちんとした調査をするべきではありませんか。

○阿曽沼政府参考人 生活保護のサイドで申し上げますと、確かに捕捉率の問題がございます。

 これについては、いろいろな学者の先生方の間にいろいろな意見がございまして、先ほど来申し上げておりますように、生活保護というのは申請でやられているということ、それから、世帯によって、人数でありますとか地域でありますとか、それによって生活保護の基準が変わってまいります。それから、世帯の方の全員の資産を調べなければいけないという問題もございます。

 したがいまして、そういう意味で、捕捉率がどうなっているかを推計するのは大変難しい問題があるということを申し上げておきたいと思います。

○高橋委員 大臣にもう一度伺いますけれども、百年安心の制度設計を言いながら、たった今生活保護基準以下で暮らしている高齢者が一体どのくらいいるのかもわからないということ、これを何らかの、学者はいろいろなことを言っているわけです。今の私がお話しした数字も、一定の根拠をもとに試算をしています。そういうことを厚労省として示すべきではないでしょうか。

○舛添国務大臣 どういう基準で生活保護以下というのか。それは、資産から何から総ざらえして生活保護の認定をする。片一方では、持ち家を含めて資産がある、現金の蓄えもあるかもしれない、そういう中で一定程度の年金をもらっている。そうすると、それぞれの人の生活ぶりを細かくチェックしないと、ただ単に以下とか以上とかいうことは言えないと思います。

 私は、むしろ、自助、共助、公助というこの社会保障制度の原則をどう組み合わせていくかというときに、年金というのはやはり生活保護と性質が違うんだろうというふうに思っていますので、そのことを念頭に置いて最低保障機能というものを考えないと、いたずらに負担が大きくなるし、そしてまたモラルハザードというか、やはりこれは、勤労する、働くことは権利である、義務であるということを憲法にも書いてあるので、働くことのインセンティブがなくなるような制度はやはりいかがなものかなということも考えないといけないと思っています。

○高橋委員 今、生保とは性質が違うとおっしゃいました。当然だと思うんです。そう言いながら、生活保護基準の引き下げを、一たんは凍結しましたけれども、検討した検討会においては、一般の消費者との生活実態を比較して、保護の方が高いじゃないか、そういった保護基準を下げろということをやったわけですよね。性質が違うものを比べて、保護を下げろ、こういうことを言っておきながら、保護基準以下で暮らしている人たちの実態は全く関与をしない。これではだめなんだということを指摘したいと思うんです。

 今、働く権利、義務ということをおっしゃいました。本来もらえる保護をあえてもらわずに頑張っている高齢者は大変多いと思います。

 一月二十七日の日経新聞で紹介された東京都北区の七十九歳の女性は、六万六千円の年金とシルバーセンターから紹介された清掃業で得る二万円が月収のすべて。ここからアパート代四万三千円を払う。父が戦死、家族を助け、独身のまま七十三歳まで働いて、生活保護ではなく自力で暮らしたいとおっしゃっています。七十五歳の女性も、公園清掃の仕事を続けて、六万円の年金と五万円の給料でひとり暮らし。倒れるまで働くと言っている。

 高齢者がふえて財政を圧迫するという議論ばかりが大きいけれども、実際には、ずっと働いて社会に十分貢献し、社会保険料も納め、今も頑張っているということを認めるべきではないでしょうか。

 そこで、提案をしたいと思うんですけれども、資料の二にありますように、高齢者の持ち家率というのは非常に高いわけですね。八割であります。若い層になると、どんどんこれが下がっていきます。そうすると、今は、持ち家があるからまだわずかな年金でもやってこられたというのが実情ではないかと思うんです。今紹介した女性だって、もしシルバーの仕事がなくなれば、あるいはアパート代がちょっとでも上がれば、もう暮らせなくなるのではないか。そういうことを考えれば、年金で暮らす、そのかわり住居扶助だけは出すとか、そういうことも考えたらいかがでしょうか。

○舛添国務大臣 これはそう簡単に答えが出る問題ではなくて、ある部分だけを扶助するということはどうなのかなというふうに思います。

 それは、さまざまな福祉政策の中で、例えば、今、派遣切りなんかのときに住宅支援ということを行っていますから、生活保護的な部分の住宅支援だけをそこに持ってきてやるのがいいかどうか。今言ったような例の方々はどういうふうにして救うか。これは、各自治体が現場の最前線にいますから、そういう方の意見を聞いて、ちょっと私は別の制度設計をした方がいいような感じがします。今、初めてお伺いしましたので。

○高橋委員 初めて言いましたので、ぜひ検討していただきたいと思います。

 時間になりましたので、最後に一言、資料の五枚目を見ていただきたい。

 私は、きょう新しい経済対策が発表され、十五兆円規模だということを言われるわけですけれども、そうすると、今まであんなに財源がない、財源がないと言って、社会保障費を毎年二千二百億円、これはトータルすると一兆六千二百億円なんですね、削ってきたのは何だったんだろうということを本当に思わざるを得ないんです。

 医療が八千九百六十億円、雇用が二千四百十億円、このようにそれぞれ分けましたけれども、本当に、今、いろいろな形でこの制度を今までやってきた、例えば診療報酬改定で医師不足の原因にもなった、こういうのを少しずつやはり見直さなきゃいけない。矛盾が噴き出している。そういう状況にあるというのは、もう十分わかっているんですよね。だったら、本当は、こうして改悪、私たちにとっては改悪してきた制度を思い切って検証し、見直すということが何よりの経済対策ではないか。

 一言お願いします。

○舛添国務大臣 セーフティーネットをきちんと多層的、重層的かつ幅広く、そして意味のあるものとして張りめぐらすということは、日本人の活力を生み、安心を持てる社会を生むということで大きな経済的効果があると思いますから、これまでの、ただ単に、負担だ、負担だ、社会保障は負担だ、そういう議論から脱却すべきであって、そのためには大きな哲学の変更が必要であって、その哲学の変更ということについて、国民の皆さんの納得を得ることができれば、それはもう二千二百億円の話も当然になくなると思っております。

○高橋委員 お願いします。

 終わります。

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