国会質問

質問日:2010年 1月 25日 第174国会 予算委員会

労働者派遣法の抜本改正

 日本共産党の高橋ちづ子議員は25日、衆院予算委員会で政府が提出予定の労働者派遣法改正案について、「よりよいものにする議論を始めるべきだ」と迫りました。

 高橋氏はまず、昨年12月の労働政策審議会の答申で、「原則禁止」とした製造業派遣のうち、常用型派遣を「雇用の安定性が比較的高い」と「例外」扱いにしている問題を追及。▽常用型といっても、短期契約を繰り返している人も含まれること▽厚労省のデータでも、派遣契約が中途解除されたときに87.2%が離職(うち87.9%が解雇)していることを明らかにし、「常用型を例外とするなら、『期間の定めのない(雇用とする)』と明記すべきだ」と迫りました。

 長妻昭厚労相は「平時なら、このような(解雇の)数字を繰り返すことにはならない。労働者の権利を保護する項目もある」などと答弁。高橋氏は「保護法になっていない」と厳しく批判しました。

 また高橋氏は、仕事があるときだけ雇用される登録型派遣の「原則禁止」について、約100万人もの派遣労働者が働く「専門26業務」を「例外」扱いにしている問題を追及。「名ばかり専門職」の実態を示し、“抜け穴”を許さない法改正を迫りました。

 鳩山由紀夫首相は、「公労使の精力的な議論でまとめた答申を大事にしながら、通常国会で法案を提出し、通過させたい」などと答弁。高橋氏は「政権が代わったことを実感できる法案を」と、抜本改正を求めました。

(2010年1月26日(火)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 新政権の目玉政策の一つが労働者派遣法の抜本改正だったと思います。

 昨年十二月二十八日、労政審から派遣制度のあり方について答申があり、二月の早々にも法案要綱が諮問をされる、そういう大事な場面を迎えております。

 先日、都内で派遣法改正を求めるシンポジウムがございました。日産を相手に闘っているある女性は、テンプスタッフから専門業務として派遣され、六年間、三カ月から二十五回の更新を繰り返した上に雇いどめに遭いました。仕事はデザイナーで、学生時代のデッサンも持ってくるようにと言われ、派遣なのに、本来禁止されている面接で選ばれたそうです。昨年の二月、会社から、痛みを分かち合いましょう、経済危機だから仕方がない、私の責任ではありませんと通告されたそうです。しかし、その半年後に会社は黒字転換だ。派遣法の問題点が本当に凝縮していると驚いてしまいました。

 総理に最初に伺いたいのですが、多くの労働者や、あるいは派遣を繰り返した末に首を切られ失業状態が続いている方たちも、今度こそ派遣法の改正に注目をしています。紙切れ一枚で首切り自由、間接雇用だから派遣先は責任を問われない、物のように扱われる働き方を変えてほしいのです。それが多くの声だと思いますが、今国会に提出される改正案はこの声にこたえてくれるでしょうか。何のための法改正か、お答えください。

○鳩山内閣総理大臣 高橋委員にお答えいたします。

 私ども、この通常国会に、労働者派遣法、ぜひしっかりした法案を提出したい、そのように思っております。

 今お話の中に出てきたような方が起きないようにしていかなきゃいけない、行き過ぎた規制緩和というものを雇用において適正化をするということが非常に重要だ、そのように思っておりまして、働いておられる方々のお暮らしをそのような形でいかにして安定を図るかということが極めて重要だと思っております。

 経済が大変厳しい状況になった中で、今お話があったようないわゆる派遣切りというものが盛んに行われてしまったということでございまして、特に製造業の中においてこういった派遣切りが行われて雇用が極めて不安定になった、そのように私も理解をしております。

 したがいまして、今、高橋委員からお話ありましたような状況に十分に対処できるような労働者派遣法をつくり上げていきたいと思っておりまして、また委員の御関心をぜひいただいて御協力を願えれば、そのように思います。

○高橋(千)委員 今総理が、今のような方が起きないようにとおっしゃってくださいました。残念ながら、今出されている答申案ではこれが繰り返されることになるわけです。そのことをしっかりと指摘したいし、見直しをしていただきたいと思います。

 世界に名立たる自動車産業や経団連代表のキヤノン、新会長になりますが、などが派遣切りの先頭に立ったこと、九九年、製造業を含め原則解禁以来、労災がふえたことなど、製造業派遣の禁止は最大の論点の一つでありました。

 資料の一に、連立三党の合意文書、そして労政審に出された十の論点をつけました。これが答申の土台になるわけですけれども、見ておわかりのように、例外のオンパレードなんですね。原則禁止すべきか、だけれども、では例外はどうする、あれもこれもと書いてあります。これがこのまま例外だらけになってしまったら意味がないわけです。

 年末に出された労政審答申では、製造業派遣などは常用型を除き禁止すべきとなりました。

 大臣に伺います。

 常用型とは、期間の定めのない労働ということですか。

○長妻国務大臣 今総理からも御答弁がありましたけれども、やはり自民党政権のもとで、やってはならない雇用の規制緩和というのが数々なされてしまったという問題意識のもと、派遣に関して基本的には一定の二十六専門業種を除いて禁止していこう、なぜならば、派遣というのは直接雇用していないので、いろいろな労務管理あるいは労災の問題等々がこれまでも言われております。あるいは、派遣切りはもとより、そういう問題もございますので、我々は今回答申をいただいたわけであります。

 その中で、基本的に労働者の製造業の派遣は禁止ということでございますけれども、常用雇用以外は禁止ということであります。

 その意味で、常用雇用の定義といたしましては、一年を超える雇用、こういうふうにさせていただいたところであります。

○高橋(千)委員 一年を超える雇用と今おっしゃいましたけれども、厳密に言うと有期雇用なわけですね。反復雇用も認めていらっしゃるわけです。常用と言えば大変聞こえがいいんですけれども、短期の契約を繰り返している人も入っています。

 昨年十二月の労働者派遣事業の二十年度事業報告で見ても、三百九十九万人のうち常用雇用が三割いらっしゃいますが、この方たちは、答申にあるように「雇用の安定性が比較的高い」という根拠は何ですか。

○長妻国務大臣 委員も御存じのとおり、これまで本当に、短期、何カ月で派遣切りというのが、リーマン・ショック以降、景気の低迷とはいえ、それが繰り返されて社会問題になったというような事情もあるわけであります。

 その意味で、今回は、ILO、国際機関も、労使の慣行あるいは労働規制の場合は、労働側、使用者側、これがきちっと合意をする、こういうルールが各国に課せられているわけでありまして、そのルールの中で、いろいろな意見はありましたけれども、合意がぎりぎりなされるということで、今回、常用型は可能とするということになったわけでございます。その意味では、従来の、数カ月でどんどんどんどん切られてしまう、こういうようなことがなくなるというふうに考えて、この答申を受けたわけであります。

○高橋(千)委員 全く答えになっていないんですね。雇用が安定していますかと言ったら、それは労政審の皆さんが決めたからだ、ILOのせいだと。こういう都合のいいときだけILOを持ち出さないでください、いつもはちっとも遵守をしていないのにもかかわらず。

 資料の三に、この実態を書いておきました。

 この間、五月ですけれども、厚労省が労働者派遣契約の中途解除の様子を調べたデータがありますけれども、状況がわかった三万五千八百八十六人のうち、常用型が何と二万五千二百八十五人です。六割以上が、常用型が既に中途解約ということをやられております。そして、下の方を見ていただければわかるように、離職、そのうち八七・二%、そのうち解雇が八七・九%。常用型だからといって雇用が安定しているということは一切言えない。これが厚労省のデータで明らかではありませんか。

 常用型を例外とするなら、期間の定めのないと明記すべきです。もう一度。

○長妻国務大臣 これは繰り返しになりますけれども、労使のぎりぎりの合意をいただいたその中身でございまして、前回は、非常に経済危機が起こって常用型についても雇用が切られるということもございましたけれども、基本的に、我々は、平時においては、今回、常用型以外は禁止をするという措置で、このような数字には、繰り返すことはならないというふうにも考えております。

 この一点だけで今御議論いただいておりますけれども、それ以外でも、いわゆるマージン率の公表とか、あるいはみなし雇用の規定を置くとか、そういう労働者の保護、これまで派遣の法律というのは、派遣をある意味では解禁する、促進するような、そういう趣旨でありましたけれども、派遣労働者の雇用を保護する、権利を保護する、こういう形にも変えているわけでありますので、これ以外の数々の項目もございますので、御理解をいただきたいと思います。

○高橋(千)委員 この期間の定めのないという問題については、労政審の答申よりもさらに細かく要綱を皆さんが決めることになるわけです。そのときにやはり政治主導でやるべきだ、このことを重ねて指摘しておきたいと思います。

 ついでに言えば、みなし雇用の問題ですとか保護規定については、名前を保護法にする予定らしいけれども、それにふさわしいものにはなっていないということを言っておきたいと思います。

 それからもう一つ、先ほど大臣がお話をされました専門業務の問題ですけれども、仕事のあるときだけ雇用される、派遣の最も多い形態が登録型派遣です。これについても同じように、原則禁止ではあるけれども、さまざま例外が設けられました。

 とりわけ、そのうち、雇用の安定などの観点から問題が少ないとして、専門二十六業務を例外として、審議会ではこの二十六業務の中身についてほとんど検討が加えられませんでした。

 資料がつけてありますけれども、そのうち、専門業務といいますけれども、約百万人いらっしゃるんですね。四人に一人が専門業務なんです。

 資料の五を見ていただきたいと思います。その百万人の半分くらいは、五号、事務用機器操作という方です。いわゆる女性に非常に多い分野でありますけれども、これがニーズだとかさまざまなことを言われながら、今、抜け穴になってきたわけです。今ならだれでもパソコンを打つはずです。それが五号になる。経理をやったら十号になる。

 高度な専門的業務は正社員代替を防ぐのが目的だったはずなんです。それが、多くの女性労働者が、専門業務という名のもとに、賃金も一般派遣とほとんど変わらず、短期の契約を繰り返し、あげく、平気で雇いどめに遭っています。答申のとおりでは、これらの専門業務は派遣期間制限を超えても雇用申し込み義務さえなくなります。まさに、企業にとって都合のいい抜け穴になっています。これでは名ばかり専門職ではありませんか。

 今やるべきは、こうした抜け穴づくりを許さない法改正ではありませんか、大臣。

○長妻国務大臣 この専門二十六業務というのは以前から議論されているものでございまして、例えば通訳、翻訳、速記関係とか、ソフトウエア開発関係とか、機械設計関係とか、放送機器操作関係とか、ある意味では、専門的な能力を必要とするということで、単純な製造業派遣とは一線を画して、労使ともにこれは必要である、こういうような例外規定を設けて、二十六専門業種というのを例外にしたわけでございます。

 いずれにしても、これまで、数カ月あるいは一カ月あるいは日雇い派遣というようなことで繰り返し問題になってきた部分については、常用型と一つの定義をつくってそれ以外は派遣は禁止をする、こういう哲学のもと、この法案を今作成しているところでございます。

○高橋(千)委員 その一線を画したことが口実になって、やっていることはお茶くみとコピーだ、何の変わりもないけれども、契約上は専門職だと、名ばかり専門職がやっているんですよ。

 そういうことで、今、裁判もいっぱい闘われているんです。郡山地裁でも、十八年間、本当は松下電工に正社員で雇用されたのに二カ月後に派遣社員とされて、専門業務と偽装されて、ことし職場復帰を果たした佐藤昌子さんという方がいらっしゃいます。こういうことが繰り返されるんだということを指摘したいんです。

 月刊人材ビジネスの編集主幹の三浦和夫氏は、インターネットで年頭のあいさつにこんなことを言っています。登録型派遣の原則禁止が暫定措置を含めて五年後になっている、そうすると五年後の環境変化によっては原則復活の可能性を否定していません、こう言っているんですよ。つまり、業界に、三年から五年を置いたうちに、もとに戻るんじゃないかと見透かされているではありませんか。

 最後に、総理に伺います。

 年末の答申では、結局、旧与党案がベースになりました。多くの皆さんの期待を、最初に言った期待を裏切ることになるんです。少なくとも、三党案からスタートをして、よりよいものにする議論を始めるべきだと思いますが、いかがですか。

○鹿野委員長 長妻厚生労働大臣。(高橋(千)委員「総理に聞いています。通告しています。総理に通告しています」と呼ぶ)はい。

 それでは、時間も参りましたので、簡潔にやってください。

○長妻国務大臣 基本的に、三党の野党で、私どもが野党時代に出した案、この理念に沿って今回法律をつくらせていただいているわけでありまして、これは繰り返しになりますけれども、二十六専門業務以外は常用型以外の派遣は禁止する、こういうことを我々は踏み出したわけです。

 これまでの、一日とか日雇い派遣あるいは一カ月、二カ月、労働者を何だと思っている、そういうような切り方で今まで進んでいた労働を変える、この第一歩だということを御理解いただきたいんです。

○鹿野委員長 簡潔にお願いします。

○鳩山内閣総理大臣 今、長妻大臣からもお話がありましたけれども、私から申し上げれば、公労使三者による精力的な御議論をいただいた観点からまとめた審議会の答申でありますけれども、これをベースにするというよりも、もともと今の与党三党が提出した案がかなりその中に盛り込まれておりますから、それを相当我々とすれば大事にしながら最終的に、共産党さんとは合わないところが、議論が細部においては必ずしも同じではないかと思っておりますが、我々としては、公労使が一致した結論を出したということでありますので、そのところを御理解いただいて、この通常国会において法案を提出して通過を申し上げたい、そのようにいたしたいと考えております。

○高橋(千)委員 政権がかわったということが本当に実感できるような法案を出して、それからよい議論をしたいと思います。

 終わります。

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