国会質問

質問日:2010年 3月 5日 第174国会 厚生労働委員会

子ども手当法案

 日本共産党の高ちづ子議員は五日の衆院厚生労働委員会で、子ども手当法案について、子ども手当法案について、子育て支援の全般的な前進につながるものにするべきだと政府に求めました。

 高橋氏は「法案の目的が社会全体で子育てを応援するというなら、その思想が財源や施策全般に貫かれているかどうか大切だ」と強調し、恒久財源や地方負担などの課題を先送りして一年限りの法案にしたことを批判。「今国会は児童手当法の改正で対応し、制度設計をしっかりしてから提案すべきだった」とただしました。
 長妻昭厚労相は子ども手当は「所得制限を設けないなど(児童手当と)趣旨が違う」と答弁しました。

 高橋氏は、政府が子ども手当と一体にすすめるといいながら、結局保育所への補助金を減らすのでは趣旨に反すると指摘。地方にこれ以上負担を求めないように求めました。

 また、民主党の子ども手当の満額支給とセットで児童手当勘定(事業主負担0.13%)を廃止する方針について、諸外国に比べて家族関係支出に対する日本の企業負担は極めて低いので、企業に子育て事業への社会的責任を果たさせるよう求めました。

(2010年3月7日(日)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本会議から、また先般、そしてきょうの委員会において、子ども手当に対する政府の考え方を聞かせていただきました。ただ、どういう聞き方をしても、大臣は控除から手当へという言葉を繰り返すのみで、一体子ども手当の目的が何なのかがやはり見えてまいりません。

 そこで、改めて伺いますが、子ども手当法案の目的は何か、児童手当と明確に違う部分は何かをあわせて簡潔にお答えください。

○長妻国務大臣 子ども手当の目的というのは、社会全体で子供の育ち、子育てを支えていく、応援をしていくということであります。

 児童手当は、経済的な支援ということで、所得制限が入っております。その点が一つ違うところではないかというふうに考えております。

○高橋(千)委員 子供は未来の主役であり、一人一人の育ちを社会が応援するというのは当然のことだと思います。

 日本は、そもそも、諸外国に比べて子供と家族を応援する支出が少なく、子育てしにくい国であること、また、子供の貧困率が一四・二%にもなり、所得再分配後に逆に貧困率が上がるのは先進国の中で日本だけ、このことが指摘をされてきました。こうした状況を解決するためには、子ども手当をインパクトのある額で投入するというのは基本的には賛成できるものであります。

 しかし、その思想が財源と施策の全体に貫かれているのか、ここが問題であります。未来への投資といいながら、実は未来への借金や増税であってはならないし、手当を支給するだけで息切れをしてしまって、保育所や教育、育児休暇など、子育てしやすい環境整備に手が回らなくなるのでは本末転倒であります。

 今度の法案も、課題はすべて次年度以降に先送りし、一年限りの法案にしてしまいました。子ども手当の創設に伴って児童手当は廃止すると言っていたのに、結局、児童手当のスキームを残すことで決着しました。それなら、今国会は児童手当法の一部改正でよかったのではないでしょうか。

○長妻国務大臣 確かに、支払いのスキームについては児童手当と同じ、年に三回、四カ月ずつお支払いする、第一回目は六月ということで、これについては、やはり地方自治体の事務負担というような問題もありますので、事務のスキームは残させていただきました。ただ、所得制限をかけないなどなど、趣旨が児童手当と違うということで、法案はこのような形でお願いをしたということであります。

 そして、二十三年度について、我々は子ども手当の制度設計をさらに恒久的に実行しようというふうに考えておりますが、それだけではなくて、現物支給である幼稚園、保育所の一体化ということについても法案も含めた議論をしていくということで、トータルで子供政策を考えていくところであります。

○高橋(千)委員 私は、ある意味でこれは政府に助け舟を出すつもりで言っていることなんですよね。

 つまり、皆さんが政権をとってから、さまざまな形で揺れているわけです。所得制限をするべきではないかとか、そもそも二万六千円満額支給できるかどうかすらわからない。だから全部先送りにして、今回は二十二年度におけるという形で出したわけです。

 だったら、児童手当のスキームそのままだったら、児童手当の一部改正であればそういうことが全く問題にならないわけなんですよ。だから、そういうことは全部制度設計ができてから子ども手当法案として出すべきなんだ、そこに無責任さがあるんだということを重ねて指摘したいと思うんですね。

 そもそも、先ほど古屋委員も御指摘がありましたけれども、これまで民主党さんが児童手当の拡充に反対する際に、ばらまきである、不十分だ、ビジョンが見えない、このように言ってきたわけです。これ、全く皆さんにお返ししなければならない。今の一年限りの法案というのはまさにそのものずばりではないか、このことを重ねて指摘しなければならないと思うんです。

 しかし、税制改正はもう始まっているわけですよね。その影響が及ぶのが一年先だというだけであって、控除の廃止は決まっている。そうすると、一万三千円のまま仮に次年度以降も続けてしまうと、ほとんどの人が負担増になってしまうんです。そうすると、つじつまを合わせるために、何が何でも二万六千円に引き上げなければならなくなる。つまり、何も決まっていないにもかかわらず、この法案を通せば後には引けなくなるんです。これがこの制度の、この法案をこういう出し方をしたことの最大の問題だ、このことを大臣は自覚していますか。

○長妻国務大臣 財政が苦しい中で新しい政策を打ち出すということは、いろいろな御意見があるということだと思います。

 先ほども申し上げましたけれども、政権が交代をしたということで、お金の使い方を変えようと。人生前半の社会保障、特に子育てにかける予算が、これまでいろいろな議論で、効果が見えない、あるいは緊急性がないということでずっと先送りされてきた結果が、GDPの比率でも先進国の中で最も低いというところであらわれ、結果として、少子化、出生率が先進七カ国で最低、こういうことになってしまったのではないのかという強い問題意識がありますので、先送りというのは今回はもうしないという気持ちでこの法案の審議をお願いさせていただいているところです。

○高橋(千)委員 ですから、制度設計、財源の確保、順々にやっていくということが大事なんだと。趣旨は全くわかっているんです。だからこそ、それが責任を持てる形で出せるようにするべきだ。六月支給にこだわって、だから選挙対策以外の何物でもないと言わなければならないわけです。

 きょうは、総務省にぜひ伺いたいと思います。

 個人住民税も横並びで扶養控除を廃止することになりました。廃止することになって増額となる部分、これは資料の一枚目につけておきましたが、足していきますと四千四百億円くらいになるかと思います。この中身について、下段の方に、総務省の地方財政計画の概要というところから抜粋しました。読み上げます。一番下の段です。「所得税・住民税の扶養控除の廃止等国民の負担増に伴う地方財政の増収分等については、平成二十二年度の検討を通じて、サービス給付等に係る国と地方の役割分担、経費負担のあり方の見直しにより国と地方の負担調整等を行い、最終的には子ども手当の財源に活用されるよう制度設計」とあります。

 平たく言うと、地方増収分は、国庫補助金を減らすなどして、子ども手当の財源に回すという意味ですね。

○小川大臣政務官 昨年の暮れに、子ども手当を全額国費で賄っていただきたいということを地方の側から申し上げました。しかし、結果的に、御指摘のとおり、従来の児童手当分は地方負担で残ったわけであります。

 今回、児童手当の地方負担分をどうするか、そして、御指摘の扶養控除の見直しによる増収額四千億円余りをどうするか、改めて議論をさせていただきたいと思っております。

 今読み上げていただいた文章は、私どもの思いとしては、この児童手当の地方負担分を廃止することによる五千億弱と扶養控除の見直しで出てくる五千億弱、これを合わせれば、今、国と地方が折半して負担しています保育所の運営を初めとした現物給付に係るもの、これを地方自治体で行うことができる。そういうことで、回り回って子ども手当の財源にする、一方で、現物給付は地方が責任を持ってということで議論をさせていただいております。

○高橋(千)委員 国が制度を決め、一方的に地方に負担を押しつけてきたという問題がこれまで多々あったと思います。また、三位一体は、財源の移譲とスリム化がセットだったために、結果として地方の財政を深刻にしてきた。このうち、三位一体の問題については、原口総務大臣も委員会の場で明確に、問題であったと述べていらっしゃると思います。

 そこで、今回の扶養控除廃止に伴い、課税所得が上がり、保育料などさまざまな利用料に連動するということが指摘をされ、現在、各省政務官らによるPTが設置されたのは承知をしております。そのことはお答えにならなくて結構です。

 しかし、地方が独自に設定している利用料あるいは助成制度、例えば一人親家庭の医療費ですとか重度心身障害者、難病支援など、地域によって本当にさまざまな制度があります。それこそ地域主権の立場に立てば、こうした制度を手当が出るから廃止するともし自治体が言った場合に、何の口出しもできないことになりませんか。自治体の住民サービスの後退になったら、元も子もないと思うのです。

 あるいは、地方税の増収分を、いやいや、そうではなくて、自治体の子育て支援拡充のために独自に使いたいんだということがあっていいのではないか、自治体が本来ならばみずから使うべきではないか。どうですか。

○小川大臣政務官 基本的には、この増収分については、自治体がいろいろな知恵と工夫で使えるような環境をというふうに思っております。

 その上で、来年度の子ども手当の満額支給とか、いろいろな難しい議論がことしもまた時期が来れば一生懸命取り組まなければなりませんので、御指摘を踏まえた上で、いずれにしても限りある財源ですから、地方の自由度を高めながら、今御指摘のような方向でしっかりと努めてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 先ほど、一問目に政務官がお答えになった、例えば保育などの現物給付、この問題はちょっと時間の関係で来週に回したいと思いますけれども、先ほど来大臣が、セットでやるんだ、現物給付と現金給付とセットでやるんだと言っているけれども、これは結局、自治体に補助金を回しますよ、自治体でやってくださいということになったら、トータルとして拡充になるかどうかはわからないわけです。私たちは、むしろ後退であると思っています。

 そのことを強く指摘して、そして、地方自治体に関しては、この間、本当に知事会などからも繰り返し強い抗議声明などが出ておるわけであります。地方負担に対して、これ以上求めないということを約束いただけるでしょうか。

○長妻国務大臣 これについては、四大臣合意でも、平成二十三年度においては予算編成の中で議論、検討をしていくということになっておりますし、今御指摘いただいた幼保一体化の中でも、そういう保育所運営等に係る財源をどうしていくのかということが、議論が本格化してまいりますので、その中で適切な結論を見出していきたいと考えております。

○高橋(千)委員 今、非常にいろいろな問題を含んだ答弁だったかと思います。

 負担は求めないとは答えていないということ。それから、幼保一体化の中で見直していきたいとおっしゃいましたので、結局、保育所の拡充という問題や、いわゆる最低基準の問題がこの間指摘をされてきたわけですけれども、それが後退につながるのではないか、そういう懸念を一言表明させていただきたい。これは次に譲りたいと思います。

 もう一つきょう指摘をしたいのは、児童手当は、事業主拠出金千分の一・三による年金特会児童手当勘定から交付金という形で財源を充ててきました。資料の二にその五年間の収支を出しておきましたけれども、拠出金は、平成十九年度から乳幼児加算を手当に導入したこともあって二千億円台に上って、差し引きで積立金が現在八百八十八億円になっております。子ども手当が満額支給されると、この児童手当勘定がなくなるのか。私はなくすべきではないと思っておりますが、そのことを伺いたい。

 そして、児童育成事業、二十二年度でいうと七百六十四億円に増額されておりますが、学童保育の増設などが含まれるこれらの予算の確保がどうなるのか、伺います。

○藤村委員長 山井政務官、答弁は簡潔に願います。

○山井大臣政務官 国、地方、事業主が費用負担をして、それ以外の費用に関しては、来年度は全額国庫が負担するということになっておりますが、再来年度に関しては、財源のあり方を含め、予算編成過程において改めて検討することになっております。

 高橋委員お尋ねの費用負担の問題は、児童育成事業とも関係する問題であり、関係者の御意見もよくお伺いしながら結論を得ていきたいと考えておりますが、とにかくこの育成事業というのは非常に重要な事業でありますので、予算をしっかり確保してまいりたいと考えております。

○藤村委員長 高橋君、時間が過ぎております。

○高橋(千)委員 いや、まだ来ていません。

○藤村委員長 ああ、まだですね。

○高橋(千)委員 十一月十六日の事業仕分けの場で、財務省から、日本は諸外国に比べて家族政策に対する事業主負担の割合が低いという指摘があったのに対して、厚労省は、民主党が目指す子ども手当の創設は児童手当勘定の廃止が前提だ、このようにお答えをしています。

 私は、これは本当に、財務省の肩を持つ気は全然ありませんが、この点においては正しいと思っています。資料の三番目につけておきましたけれども、もうおわかりのように、諸外国に比べて、日本の家族関係社会支出、それ自体がトータルで低いんですけれども、事業主負担がわずか〇・一と極端に低いわけです。

 ですから、最初に言った目的、子供を社会で育てるという観点に立てば、企業だって、それは結果としてメリットになるわけですから、社会的責任を負うべきだと思いますが、大臣、最後に一言お願いいたします。

○長妻国務大臣 今御指摘のような、学童、放課後児童クラブなどなどについて、いろいろ御協力いただいているところで、この放課後児童クラブについても、五年後に百十一万人整備目標ということで、これをやらなきゃいけないわけでありまして、その中で財源をどうするかというのは、先ほど来申し上げておりますように、幼保一体化や子育てビジョンの議論の中、あるいは二十三年度の本格施行の過程で内閣全体で議論して、適切に決定をするということであります。

○高橋(千)委員 時間が来ましたので、次にまた続けたいと思います。

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