国会質問

質問日:2010年 4月 9日 第174国会 厚生労働委員会

年金と児童扶養手当の併給問題

 長妻昭厚生労働相は9日の衆院厚生労働委員会で、遺族年金と児童扶養手当の併給が認められていないことについて「見直す場合、どういう論点、影響があるのか検討したい」との考えを示しました。日本共産党の高橋ちづ子議員への答弁。

 児童扶養手当法は、父親または母親の死亡で支給される公的年金(遺族年金)の給付を受けることができるときは支給しない(4条2項2)としています。

 高橋議員は8000円の遺族年金支給を受けているために4万2000円の児童扶養手当が受けられていない実例を示し、「せめて選択できるようにするか、一定額以下なら併給できるように見直すべきだ」と迫りました。

 また、戦争で夫を失ったことによる妻の「精神的苦痛」に対し国が支給する「戦没者の妻特別給付金」で、3年の時効で失権した人たちの救済も求めました。同問題では2人が大阪地裁で国を相手取り係争中です。

(2010年4月10日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、ミスター年金、長妻大臣に二つの御英断を求めたいと思います。

 一つは、時効に関する問題です。

 年金時効特例法が二年前、議員立法で成立し、ことし一月までに百三十八万七千三百三十一件、八千三百二十四億七千三百三十五万円が支給決定になったと聞いております。大臣の野党時代の追及には大いに敬意を表します。最高百五歳、最高額で三千五十四万円ということですから、本当に人生を狂わす大事件であったと思います。そしてまた、いまだにもらえる年金を取り戻せていない方への解決を急いでいただきたいとも思います。

 同時に、年金は時効の壁を突破したのに、一方では時効の壁に泣いている方たちがいらっしゃいます。戦没者等の妻に対する特別給付金は、一九六三年以降、十年ごとに国債で支給され、五回目、〇三年からの支給二百万円、これは現在、十五万九千人の方が受給をされていらっしゃいます。

 しかし、請求案内がなかったために、時効は三年、これで失権をした、受給できなかったということで、昨年、大阪地裁に二人の方が提訴いたしました。

 終戦直前に夫をビルマで亡くしたという野村香苗さん。この方は、赤紙はどんなことをしても届けたのに、戦没者の妻へ慰藉のためにと決めた特別給付金の通知を届けないのは国の怠慢ですと訴えています。本当にそうだと思います。

 また、もう一人の関百合子さんは、終戦の年に夫が中国湖南省で戦死をしました。近視で、徴兵検査にも合格できないような体でした、敗戦間際の弾よけのため戦地に送られた、このようにおっしゃっています。つらい思いをさらに踏みつけにしている事態ではないでしょうか。

 平和遺族会の調べでは、戦没者の妻への特別給付金、全五回をトータルすると、約十万人が受給権をなくしたのではないかとしております。

 まず、特別給付金関係の制度は戦没者、戦傷病者など四つございますが、これらの時効失権者がどのくらいいるのでしょうか。

○長妻国務大臣 今のは年金ではなく、弔慰金、特別給付金のお尋ねでございますけれども、平成五年の法改正による特別給付金では、三年で時効ということでございまして、それにかかってしまった方が約一万二千件、金額にすると二百二十億円、平成十五年の法改正による特別給付金では約五千件、約百億円と推計されます。

○高橋(千)委員 この時効の問題については、〇八年の四月、戦没者の父母等の特別給付金制度の改正質疑が本委員会でありました。私も、これもやはり年金のときにも議論されたように、申請主義である、これをまず改めるべきではないかということ、それから、時効をやめるべきだと求めました。同じ日に長妻大臣も、同様の趣旨で、夫を亡くされ、さらにお子さんまでも亡くされて本当につらい思いをしている方たち、この方たちに時効というのはやめるべきではないか、そういう趣旨の質問をされていたと思います。

 また、その前年には、当時民主党参議院議員だった浅尾慶一郎現衆議院議員が中心となり、時効の撤廃を求める議員立法も提出されましたが、廃案になってしまいました。

 当時の参議院の質疑を見ますと、昭和六十年、一九八五年に受給権者のデータベース化を行ったときに、実務をする人手が足りないからと、申請があった人だけを登録したために、そのとき漏れた人はずっと漏れている。あるいは手書き名簿、要するに、データベースをつくったときの前の名簿、そういう手書きの名簿に載っていた人も漏れていたということがわかっています。柳沢当時の大臣は、恩給受給者のデータを活用して受給者の方々への個別案内が行き渡るようにできないか、総務省や都道府県と相談しながら検討したいと答えております。

 それが今でもうまく機能していないのではないか。そのことを考えると、データベースの共有ですとか、手書き名簿との突合が必要ですとか、まさに消えた年金問題と性格は同じなんです、起こっている問題の質が同じなんです。これはやはり、長妻大臣のときにぜひ解決をするべきではないか。

 大臣の決意を伺いたいと思います。

○長妻国務大臣 当時、高橋委員を初め野党がこの問題を強く申し上げ、そして政府も動いて、平成二十一年度法改正による特別弔慰金においてこういう措置をとったわけですね。

 まず、厚生労働省が保管している援護年金受給者リストに加えて、総務省の協力を得て恩給受給者リストも活用して、対象となる人に、まず国から直接お手紙を出すということ、これまでしていなかったものを実施する。そして第二に、送っても申請がない場合、都道府県にもお願いして、そういう方々にフォローをしてください、こういうようなお願いをするということで、その措置が続いているところであります。

 これがきちっと機能をしているのか、さらに、不十分な点はないのか、これも実態把握をして、早速、事務方に、この実施状況や、これでも漏れてしまった方がどの程度おられるのか等々、調査をしてまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 私の御近所の方で、「援護年金受給者のしおり」、これを持っていて、お子さんもいない、全く身寄りのない方が、ああ、自分はもしや特別給付金をもらえるのではないかと気がついて、ここの後ろに書いてあるわけですね、それでこれを問い合わせたら、確かに該当いたします、しかし、もう時効を過ぎて二年もたっていてどうにもならないということで、本当に悔しい思いをされているとお話がありました。

 今、大臣は、恩給リストとの突合など、あるいはお手紙もやってきたし、その不十分さがないかということをお話しされました。これは本当に徹底してやっていただきたいんですけれども、しかし、今時効で泣いている方たちは救えないわけなんです。

 ただ、今お話しされたように、本当に名簿がきちっとこれから先整理をされていけば、これから先、そういう請求漏れということはなくなるはずなわけです。これは戦没者関係の給付金でございますから、これから先、ふえていくということはないわけですよ。支給金額はこの間拡充をしていますけれども、対象者が少しずつ少なくなっておりますので、当然、予算は減っているわけです。

 そういうことを考えれば、先ほど二百二十億、百億くらいであろうとおっしゃった、その時効の部分を救済するということは、まさに人道的に言っても筋が通っているのではないか。大臣がこれまでおっしゃってきたことからも納得がいくことではないか。年金の壁を乗り越えた以上は、この本当にわずかな方たちを救うべきだということを重ねてお願いしたいと思います。

 もし一言あれば、どうぞ。

○長妻国務大臣 先ほど申し上げましたような体制をきちっととっていくということと、それが本当に有効なのかどうか、漏れがないのかチェックをするという、この実態把握はしてまいります。

 その中で、時効でありますけれども、記録問題については、これは時効撤廃ということが起こりましたのは、一義的には、社会保険庁当時の非常にずさんな年金記録の管理というような、大きな当局の不祥事があったということにかんがみた措置でもあると思います。

 例えば、この問題の時効が完全に直ちに消滅をしたときに、そうであれば、これも一部言われていることでありますけれども、年金の受給権が発生して、裁定の申請ということでありますけれども、これについて、記録問題とは別の話ですが、申請を忘れたという場合、これは時効がかかってしまうというようなこともございますし、ほかの省庁、厚生労働省の中でも、別の件でも請求についての時効というのは数々あるわけで、ではほかもすべてどうするのかという論点も出てくるわけでありますので、まずは、先ほど申し上げましたフォローアップをきちっとしていくということに取り組んでいきたいと思います。

○高橋(千)委員 非常に残念ですね。朝からずっと、大臣が野党時代に言ってきたことが何か覆されているような答弁ばかりが続いておりますけれども、これはまさに議員立法ということも含めて、ぜひ委員の皆さんにも再度お願いをしたい、これは乗り越えていきたいということをお話ししたいと思います。

 もう一つの問題は、遺族年金と児童扶養手当の問題であります。

 宮城県の四十三歳の女性ですけれども、〇八年二月に離婚をして、その四カ月後に夫が四十歳で死亡いたしました。児童扶養手当約四万二千円は受給できましたけれども、遺族年金が出るのではとアドバイスをされて、申請すると、さかのぼって死亡の翌月から支給をされました。この方は、まだ若く、離婚されて基礎年金は停止をしているために、わずか月八千円の年金でありました。

 問題は、一年たって、児童扶養手当の現況届を提出したら、あなたは遺族年金をもらっているので児童扶養手当は併給できない、さかのぼって返還をしなさいと言われたわけであります。

 児童扶養手当の法律の抜粋を皆さんのところにお配りしていますが、第四条の二項のところで、「当該児童については、支給しない。」「父又は母の死亡について支給される公的年金給付を受けることができるとき。ただし、その全額につきその支給が停止されているときを除く。」とあり、これによって、年金が手当より優先されるのだ、そして年金を放棄することもできないのだということが説明されているわけです。

 そうすると、月八千円の年金をもらうために月四万二千円をあきらめなければならない。これはだれが考えても不合理ではないか。わずかなパート収入から四万二千円、これは一年分返せと言われているわけです。併給できないことを全然知らなかったわけです。教えてもらえなかった、さっきの話と似ていますけれども。

 せめて選択できるようにすべきではないか。この四条の二項、選択できる、もしくは、この年金が余りにも少ないとか一定額以下だったら併給もできるとか、何らかの見直しが必要だとは思いませんか。

○長妻国務大臣 今、併給調整のお話でございますけれども、児童扶養手当を受給されておられるときに、御家族等々に不幸があって、遺族年金の受給権が発生をする、そういうふうにしたときに、現行のルールだと、金額がどっちが多いかは別にして、児童扶養手当は支給しないということで、遺族年金が支給される、こういうふうな現状になっております。

 これを見直すということになりますと、どういう論点があるのか、どういう影響があるのか、今直ちにこの場では即答できませんけれども、これは役所に持ち帰って検討してみたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 よろしくお願いしたいと思います。

 児童扶養手当法の改正案がこの後上がってくるわけでありますので、やはり当事者に不利にならないような改正はぜひやるべきではないか。私は、シングルマザーの子供の貧困率が五割にも上っているという今の現状から見ると、併給そのものを認めてよいと思うんです。ただ、今のような経済状況ですとか労働状況なんかもあると、若くして亡くなって標準報酬が少ないなど、今回のような月八千円しかもらえないというケースがレアケースではなくなるだろうということもありますので、これは本当に何らかの手だてが必要だと思います。

 時間が来てしまいましたので質問できませんけれども、実は、先ほど来ちょっと話題に上っております、この後議員立法でぜひと言われている、障害年金を受給した時点で配偶者と子供がいるときにだけつけられる加算を、受給した後結婚した方たち、子供をもうけた方たちにつけるべきではないかという法案が用意されております。

 これも実は、障害を持っているだんなさんが一定の要件を満たす場合には児童扶養手当が出ているんですね。これは五千数百人、そういう方がいらっしゃいます。この方たちが、もし今のように併給できると思って、事情を知らずに、加算をもらえると思ったら、一万八千九百円の加算をもらって四万数千円の手当をあきらめるということになりかねないわけであります。

 このことが起こっては、せっかく要望も強く、実現をしようとしている法律が残念なことになってしまいますので、このことも踏まえて、今の児童扶養手当法の見直し、ぜひやっていきたいと思いますので、皆さんにお願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

 

 

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 子供の無保険について、高校生までその対策を広めることが本法案に盛り込まれました。もちろん、最初から十八歳未満まではすぐやってほしいと要求をしてきたところですので、歓迎したいと思います。

 ただ、短期被保険者証を市役所などが窓口にとめ置いて、未達が三・二%に上りました。そのために、政府は、資料の一にあるように、昨年末に通達を出して趣旨の徹底を求めました。正直、市町村の事務というものは本当に煩雑で大変であろうと思います。

 もう後期高齢者には資格証明書の発行がゼロになっております。国保法第九条の「被保険者証の返還を求めるものとする。」というこの規定そのものを削除すべきではないでしょうか。

○山井大臣政務官 高橋委員、御質問ありがとうございます。

 国民皆保険の日本でありますから、だれもが必要な医療を早期に受けられる、これはまさに国民の権利であらねばならないと思っております。

 そして、その中で、今の資格証明書の件でありますが、ただ、前提としまして、国民健康保険は、被保険者全体の相互扶助で成り立っており、財源となる保険料の収納確保は、制度の安定的な運営や被保険者間の負担の公平を図る上で極めて重要でありまして、保険料を払わなくても医療が受けられるということが前面に出てしまうと、また未納者がふえてしまうというようなモラルハザードが起こっても非常に問題であると思っております。

 しかし、一方では、本当に払うことができない、お金があって払わないはだめなわけですけれども、お金がなくて本当に払えないという方も当然いるわけであります。国民健康保険法上、一年以上保険料を滞納した者が市町村の求めに応じ被保険者証を返還した場合、資格証明書の交付を受けることができると規定されておりますが、この仕組みは、市町村が滞納者との接触の機会を確保し、納付相談を行うことにより、保険料の減免や分割納付も含め、個々の事情に応じたきめ細かな対応を行うためのものであり、必要であると考えております。

 しかし、資格証明書の運用に当たっては、機械的に運用を行うことなく、個々の世帯について、保険料を納付できない特別の事情を適切に把握するよう、市町村を指導してまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 まず最初に、相互扶助で収納を確保しなければならないというお話があったと思うんです。それは当然なわけです。私は、だれに対しても、払わなくても受けられるようにしろと言っているのではございません。この問題は、小泉総理のときから、毎度毎度、総理がかわるたびに私は資格書の問題は質問をしてまいりました。やはり、今最後におっしゃったように、機械的に運用するのではないのだ、事情があって払えない人まで取り上げるのではないのだということが、繰り返し述べられてきたのではなかったかと思うんです。

 そこで、資料の二を見ていただきたいんですけれども、市町村国保の保険料収納率向上に向けた取り組みということでデータがございます。いっぱいあるので、囲んだところを見ていただきたいんですけれども、滞納者に対しては、既に差し押さえという滞納処分がやられております。二十年度は十六万四千二百六十八世帯、一年間で四万三千七百四十三世帯も増加しています。また、処分額も五百六十四億円。百十億円、一年間でふえているわけです。つまり、収納を確保しているわけですね。

 この中身については、私は大いに問題があると思います。事情がある人も含めて取り立てされている、あるいは差し押さえされているという問題がございますが、しかし、いずれにしても、本当に悪質な人、つまり払えるのに払わない人には滞納処分という方法で回収できる仕組みがあるわけです。ですから、医療の現場で命につながるような保険の取り上げということはやめればいいのではありませんか。

○山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 これは、国民健康保険の保険者は市町村であります。いかに公平に、そして適切に保険料を払ってもらえるかということに関して、今、多くの市町村が本当に頭を悩ませているところでありますから、その意味では、もちろん滞納する人に対しての差し押さえというのも一つの手段でありますが、それとともに、短期被保険者証の発行とか資格証明書の発行、それはやはり選択肢の一つとして、市町村の判断としてあり得るのではないかと考えております。

○高橋(千)委員 済みません、質問をちょっと通告外に、今おっしゃったことで一つ伺いますが、市町村の判断だと考えていると。だったら、市町村が一切資格書を出しませんということに対して、一切国は口出しをしませんと。よろしいですか。

○山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 最初の質問で申し上げましたように、大前提として、この保険制度というのは相互扶助で成り立っているわけでありますので、原則としては、やはり保険料は払っていただく、払える方には払っていただくということが原則だと考えております。

○高橋(千)委員 答えになっていないじゃないですか。先ほど市町村の判断だとおっしゃったんですよ。だから、市町村が出さないと言ったら、口出さないでいいですね。

○山井大臣政務官 これは、まさに保険者は市町村でありますけれども、国としては、やはり国保の財政の問題も非常に重要であります。ですから、国としては、やはり払える方には払っていただく、そして払える能力があるのに払わない方々に関してはきっちりと徴収をしていただきたい、そういう思いを持っております。

○高橋(千)委員 ですから、きっちりと徴収は、先ほどお話しした差し押さえなどという形でかなり厳しくやっているんですよ。口出さないではなくて、皆さん、本当に口出しているわけですよね。だから、市町村は追い込まれて、朝となく夜となく戸別訪問をして収納を督促しているという苦労をしているんじゃないですか。それを、一方では地域主権といいながら、一方では市町村に対して厳しく指導している、そういう実態なわけです。

 実は、子供の無保険の問題が起こったときに、全国の市町村の資格書の発行状態が一目でわかる資料が出てまいりましたよね。あのときに、私はちょっと嫌な予感がいたしました。つまり、資格書を出していない自治体を一目で見られるということは、ああ、ここに指導をかければいいんだなということになってしまうわけです。そのときにおっしゃった厚労省の担当職員の言葉は、法令違反ですからと、こういうことになったわけですよ。

 資格書を出さないのは法令違反なんだと、そういう形でぎりぎりと詰めてきたというのがこれまでのやり方なんですよ。だから、その中に、必要じゃない、本当は事情のある人まで取り立てられている、医療が奪われているということがあるのだということを、重ねて指摘をしなければなりません。

 ちょっと続けたいので次に行きますけれども、現在、三十一万世帯に資格書が出され、百二十万世帯に短期保険証が出されております。そもそも、短期証というのは法律事項ではありません。

 今回、子供は半年の短期証といたしました。そうすると、大人は今のまま、つまり、市町村の判断によって、三カ月とか一カ月期限ということのままだということですね。一言で、確認。

○山井大臣政務官 そのとおりでございます。

○高橋(千)委員 そういうことなんですね。

 この短期証のあり方、市町村にこれはまさに任せられておりますので、一月とか三カ月とかと期限を切っているわけです。政府の答弁は、これまで、先ほど山井政務官がおっしゃったように、納付相談を小まめにやるためにやるんだということを言ってきた。私は、実態がどうかということは、やはりちゃんと見る必要があると思うんです。

 全日本民医連の国保死亡事例、これまで四回調査され、発表されました。昨年は三十七名が、保険証がなかったり、あるいはあっても窓口負担が重くて、病状を悪化させ死亡に至りました。報道でも紹介されましたし、国会でも我が党議員が取り上げているところでありますから御存じだと思うんですが、やはりこれらの事例がどういう経過で死亡に至ったか、その背景についてよく学ぶべきだと思うんです。

 例えば、宮崎の五十歳の女性、無職で夫と息子がいました。急性大動脈解離で人工血管置きかえ術を行ったときに、高額の医療費が払えず借金をしたのがきっかけなんですね。だから、きっかけも医療だと。生活に追われて保険料が払えず、お金の工面ができたときだけ短期証を交付された。三カ月の期限ですので、三カ月に一回だけ受診をするということを繰り返して、最後は、とうとう保険証がないまま受診をされたそうです。ところが、滞納額というのはわずか三万円だったそうです。その三万円の滞納が払えないために十割負担の最後の治療費は七万六千三百四十九円、律儀に夫はこれを分割して払ったということであります。

 資料の一のアンダーライン、今もうしゃべってしまったわけですけれども、市町村と滞納世帯との接触の機会をふやすことと言っているわけです。だけれども、実際には、その期限が短いですので、本当に困ったとき、病院にどうしても行かなきゃいけないときに、幾ばくかの保険料を払って保険証をもらうんですね。言ってみれば、回数券を買うような状態になって、お金の切れ目が命の切れ目になっている、これが実態だと思うんです。今の事例はその典型なんですね。

 山梨の五十一歳の女性は、健保本人だったんですけれども、退職されて、パート。事業主が保険加入してくれないために、夫の国保に加入しました。これは、今度、一月の期限でありました短期証が交付されていたために、ぎりぎりのところで受診をされたら、せき、血たん、浮腫などがあって、もうかなり厳しい状況で、一週間後くらいで検査の結果が出ますよと言っていたわけですが、そうしているうちに救急車で搬送されて、八日目に死亡していらっしゃいます。高額療養限度額認定証が、短期証であるために、滞納があるからと交付はされませんでした。

 保険証がないために受診を我慢し、短期証の期限が切れる前に亡くなっている、こういう事例が本当に多いわけです。そうすると、短期証というのも、切れちゃうとないのと同じですからね。まさにこれは百二十万世帯、無保険の予備軍のような状態になっているわけです。この現実をどのように受けとめますか。

○山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 保険証が切れて、本当に必要な医療が受けられなくてお亡くなりになる方が出ることは、本当にこれは大きな問題だと私も感じております。

 そして、今、短期被保険者証の期間が短過ぎるのは問題ではないかということでありますが、国民健康保険のこの短期被保険者証は、通常の被保険者証と比べて有効期間を短くすることで、今高橋委員おっしゃいましたように、被保険者、滞納者との接触の機会をふやし、保険料の納付をお願いすることを目的としておりまして、やはりその有効期間というのは、原則として市町村の判断によるものであると考えております。

○高橋(千)委員 既にこの間、子供の無保険そして後期高齢者の無保険が解決をされて、真ん中の大人のことを今お話ししているわけですが、その大人が今、この間ずっと議論されていたように、派遣切りですとか、深刻な失業情勢の中でまさに無保険になっている。そうなったときに、もうこの仕組みはなくてもいいのではないかということを、やはり重ねて、踏み込んでしていいと思うんですね。少なくとも、短期保険証、一月で切るなんということはやめるべきですよ。

 今、接触の機会をふやすというのは違うんだという話をるるしてきましたけれども、例えば、三十代の男性、この方は派遣切りで無職です。収入がないんだけれども、自分には納税義務があるんだ、まさにおっしゃるとおりですよ、納税の相談に行ったんですね。分割払いとか何かできるのかと思って、本当に律儀に行かれました。そうしたら、何を言われたかというと、確定申告の還付であなた一万二千百円入っていますね、お金が入っているならこちらでいただきますね、預金通帳凍結、差し押さえできますからと言われたわけですよ。

 これはおかしいじゃないですか。差し引く前に、この方がこの一万二千円なくなったら、当座の暮らしをどうするか、当座の暮らしが支えられるお金が残っているのかを確かめるのが先ではありませんか。

 滞納処分に当たっては、国税も地方税も基本は同じなんです。生計費はちゃんと維持した上で、それで、例えば売り掛け債権のように商売が回っていかなくなるですとか、そういうものについては差し押さえしないということがちゃんとあるわけですよね。こういうことをちゃんと徹底しなければなりません。接触の機会をふやせといって、まじめに行った人がこういう目に遭うのではやっていられないわけですよ。いかがですか。

○山井大臣政務官 高橋委員御指摘のように、今回、子供の無保険の人をなくすということを高校生まで拡大したわけでありますが、やはり本来は大人の無保険者もいてはならないというふうに私も思っております。

 ですから、これは一歩前進にすぎませんが、ことしの四月からは、昨年に会社が倒産などして職を失った失業者が失業前に負担していた保険料と比較して過重とならないよう、国民健康保険の保険料を軽減する制度を創設したところでありまして、ハローワークや市町村を通じて制度の周知を図っておるところであります。

 今まででしたら、前年度の収入に応じて国保の保険料も算定されるわけで、それが払えないと一気に無保険になる方がふえていたわけでありまして、これも本当に画期的な大きな救済策であるとは思っております。

 しかし、今、高橋委員が御指摘になりましたように、市町村は、やはり資格証明書や短期保険証の発行を機械的にやるべきではないというふうに考えております。

○高橋(千)委員 今お話しされた失業者の問題は、これは雇用保険を給付できる人、しかも非自発的な方だけですので、一歩前進ではありますけれども、カバーできるものではないということをしっかり認めていただきたいと思います。

 資料の三に、先ほど紹介した民医連の調査の数字を載せておきましたけれども、一番上のところを見ていただくとわかるように、短期証が六人、資格書が四人、無保険が二十七人なんです。短期証も資格書も持っていない方が七割以上なんだと。

 ですから、無保険という方が、今、保険証を取り上げられている世帯は三十一万世帯ですけれども、その外にどれほどいるのかということの実態をしっかり見る必要がある、本当にそこに目を向けた施策をする必要があるということを重ねて指摘しておきたいと思います。ここはぜひ前に進むように、この後も続けて要望いたしますので、お願いをしたいと思います。

 最後に、大臣に一言伺いたいんですけれども、高齢者の窓口負担の問題であります。

 高齢者医療制度改革会議の中では、水曜日の委員会で紹介した、六十五歳以上を全部国保に入れる案、こうしたものなどが出されたわけですけれども、同じ日には、六十五歳以上の高齢者の窓口負担を引き下げた場合の影響額などの試算が出されております。これは宮武委員からでした。また、近藤委員からは、高齢者の受診抑制が起きているんだ、自己負担は一割未満にするべきだとの提言もされました。窓口負担がやはり大きいということがわかっているからこそ、自公政権のもとでも、法案成立後も二割、三割へ移さず経過措置をとっていたと思うんですね。

 この窓口負担の軽減は、やはり改革会議の中でも大体同じように、とにかく軽減しようというふうに言っているわけですから、政府として、ぜひ思い切ってやるんだということを言っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○長妻国務大臣 これは、だれがどこで医療費を負担するかというのは、税金かあるいは保険料か窓口負担か、簡単に言えば三つしかないわけでありまして、それをどう組み合わせるかということでございます。今の現状としては、基本的に、医療費はふえ、それぞれの今申し上げた負担はふえる傾向にある。ただ、それをそのままふやしてはならないということで、いろいろな手だてを使って抑制をしているという段階であります。

 今おっしゃられた点については、改革会議の中でも議論がある点ではありますけれども、今よりも水準を下げていくというのは、今三つ申し上げたカテゴリーそれぞれについて、大変難しい課題であるというふうに考えております。

○高橋(千)委員 ちょっとびっくりしました。自民党政権のときも下げることは一定検討されていたのではないかなと思います。

 改革会議の中では、岩見委員からも、老人医療が議論された際の目標は無料化であった、現在は状況が変わっているが、やはり七十五歳で線を引くというのであれば、最終的には無料化するといった理想を掲げるべきという発言もございます。私は、こういう立場に立つべきだと思うんですね。

 この間、何で後期高齢者が悪いのかとか、メリットは、デメリットは、そういうことがさんざん言われてまいりました。でも、何度も議論してきたとおり、やはり年齢を重ねると後期高齢者と呼ばれ、別枠の制度に入れられ、肩身の狭い思いをすることと同時に、若い人の保険料が上がれば、これは後期高齢者への支援金がふえたからだとおのずと対立構造が持ち込まれたこと、ここにこそ核心があったと思うんです。

 対立ではなく、だれでも年をとり、少しずつ病気もふえるんだから、それを全体で支えよう、先ほど紹介した最終的には無料化、こういう立場に立つべきではないかと思います。

 今、大学生の九割近くが、自分の老後は自分で面倒を見るしかない、そういうふうに考えているという調査がございます。これは、現役世代の負担が重過ぎるということを盛んに言われますけれども、そういう今の高齢者をねらい撃ちしたような施策を見ていて、では、自分たちのときにはもうだめなんだということで、社会保険制度からそもそも若い人たちが抜けていく。

 これでは本当の意味で制度が成り立たないことになるわけですから、むしろ、お年寄りが本当に大切にされて、私たちも将来ちゃんと大切にされるんだから支えていこうという立場に立てるような制度設計をするべきではないか、このことを問題提起して、次に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

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