国会質問

質問日:2018年 5月 30日 第196国会 厚生労働委員会

「働き方改革」一括法案の補充的質疑(労働時間データ問題、研究開発業務、高度プロフェッショナル制度)

長時間残業の受け皿に
高橋氏 研究開発が高プロ対象

 日本共産党の高橋千鶴子議員は30日の衆院厚生労働委員会で、「働き方改革」一括法案について、残業時間規制の除外となっている研究開発業務が高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)の対象となり、長時間残業の受け皿にされると追及しました。
 高橋氏が研究開発の職種や業種、労働者数を質問したのに対して、山越敬一労働基準局長は「さまざまな産業で同業務があるが、労働者数について把握できていない」と答えました。
 高橋氏は「労働政策審議会の建議で『現行の対象となっている職種を拡大しない』と言っているのに、その範囲が分からなければ歯止めにならない。企業があてはまるといえば研究開発になってしまう」と指摘。今でも残業上限を適用しないのに、高プロの対象とする理由をただしました。加藤勝信厚労相は「のびのびと自分のペースで自分の成果を出したいという声もある」と答えました。
 高橋氏は「研究開発は成果を上げるまでに失敗を繰り返す時間が必要だ。トヨタでは副社長が『生き残りをかけた技術開発』だという。目標や期日が迫られ、長時間労働に追い込まれることは明らかだ。高プロは過労死への道だ」と強調しました。
 また高橋氏は、労働時間データの虚偽データ削除の影響を指摘。労政審で、年1000時間超の残業実績が3・9%あったことを労働者委員が「非常に重い実績」と発言したことに対し、経営者委員が小さい数値だと否定するやりとりがあったことにふれ、再集計の48・5%でも同じ議論になるかとただしました。山越局長は「改めて労政審におうかがいすることは考えていない」と開き直りました。
(しんぶん赤旗2018年5月31日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本来なら、二十五日の採決をやり直すべきです。けさになって、また新たなデータの誤りが、訂正が来るということは本当に衝撃でありました。改めて審議をやり直さなきゃいけない、参議院もすぐに本会議があるということではないそうですので、じっくりと審議をしていただきたい、このことを最初にお願いをしたいと思います。
 きょうは、いただいた三十分間、私にとっての補充的質疑ということでお願いをしたいし、大臣にも局長にも詳しく通告をしておりますので、正面から答えていただきたい、そう思います。
 まず資料の一枚目なんですけれども、データ問題で信憑性が問われる平成二十五年度労働時間等実態調査、この調査は、やはり法案の中心部分にかかわる重要なことばかりです。
 けさの理事会でも、与党の筆頭理事が、高プロに関係ないから部分的な誤りがあってもいいんだみたいなことを言っていましたが、決してそんなことはありません。ここをまず最初に指摘したいと思うんです。
 この資料は、「三六協定における延長時間の状況」とあります。上が月単位で下が年単位です。囲みの中を見ていただくと、ほぼ一〇〇%が限度基準告示の範囲内におさまっている。月は四十五時間、年は三百六十時間の中にまず大体おさまっているわけですね。
 その上で、一番多いのは何かというと、月でいうと四十五時間、七〇・六%、年でいうと三百六十時間、七六・二%。やはり、基準を決めると、そこのマックスに照準を合わせてくるのが普通なのかなというふうに思いますよね。
 それから、資料の二枚目にも、今度は特別条項をつけた労使協定の場合に、特別条項は年六回までですので、その上限である六回を規定している、これが九〇・八%、こういうふうになっているわけです。
 そこで大臣に、まず、これは認識を共有していただけると思いますが、基準に労使協定を合わせてくる傾向が強いと思いますが、それは共有できるかというのが一点です。
 それから、そうは言っても二割強のところは、むしろ基準まで届かない協定を結んでいるわけなんですよね、それは別にいいことであって。今回、法定化する上限に合わせて引き上げてくるということが懸念として出されているわけですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
○加藤国務大臣 委員のお示ししていただいたまず一ページ目は、実際その中でどういう協定を結んでいるかというその数字で、とりあえず、通常の場合であれば四十五時間、三百六十時間となっている中で、四十五時間、あるいは三百六十時間に張りついている例が多いと。まさに、ここから読み取れるものはそのとおりだというふうに思います。
 それから、それより少ないところが、七〇%ですよね、それ以外のところもあるということでありまして。今の大臣告示もそうであります、今回の法律もそうでありますが、これはあくまでも上限を示しているものであって、そこまで上げていいということで我々は示しているものでは全くありません。
 具体的に、昨年三月の労使合意でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなくて、月四十五時間、三百六十時間の原則的上限、これは、済みません、それよりも上の特別条項の話でこうなっていますけれども、可能な限り、要するに労働時間の延長を短くするという、そうした精神が労使で合意をされているわけであります。
 その中において、労働基準法に根拠規定を置いて、新たな指針を定め、使用者及び労働組合等に対して必要な助言指導を行うこととして、長時間労働の削減に向けて労使の取組を促していきたい、そういう仕組みも今回の法律の中に盛り込んでいる、こういうことであります。
○高橋(千)委員 まず、やはり基準を決めるというのはすごく大事なことだと思いますよね。それを決めることによって、やはりそこに照準を合わせてくるというのが傾向であるというのは大臣もお認めになった。それと同時に、それに張りつくことをよしとしているわけではない、なるべく下げていくべきなんだということをまず確認をいたしました。
 その上で、資料の三枚目なんですけれども、これは、私、五月の二十三日に取り上げた問題なんですが、そのときは資料配付が間に合っていなかったので改めてつけたわけなんですけれども、特別条項つき労使協定によって何時間と決めたものに対し、実績の延長時間がどうなっているのかというものです。
 平均の者では、下の方が旧ですけれども、八百時間超一千時間以下が三・四%だったものが、上、新では五〇・三%になっている。めくっていただいて、最長の者ですと、一千時間超が、下、三・九%だったものが、四八・五%になっている。これは私、激増だと思うんですね。
 そのときに質問しましたけれども、山越局長の答弁は、審議に影響ないというものだったんですね。理解できないんですよ。これだけ激増しているのに、影響がないとなぜ言えるのか。
 労政審の労働条件分科会でもやられていると思いますが、このデータについてどのように議論されたのか、お答えください。
○山越政府参考人 御指摘のクロス集計表でございますけれども、労働政策審議会に提出した資料のうちで、今回の実態調査を用いて作成した資料を更新したものでございます。
 御指摘のように、精査前と精査後において数値の変化が見られたわけでございますけれども、これはそもそも百時間を超える特別条項を締結している事業場のサンプル数が少ない、そこで、サンプルの数による影響を受けやすいものになっているものでございます。
 この訂正前、訂正後、いずれのクロス集計で、どちらで見ましても、協定の特別延長時間が長いほど法定時間外労働の実績が長いというような関係になっているところでございまして、そうしたことからいたしましても、今回の法案に盛り込んでいる罰則つきの時間外労働の上限規制の必要性が薄まることはないというふうに考えているところでございます。
 労政審におきましても、このクロス集計の数値を見た議論がなされておりますけれども、例えば特別条項つき三六協定で定める特別延長時間が長ければ長いほど時間外労働の実績も高い、特別条項つき三六協定を適用する場合における上限時間規制を法定化すべきといった議論がされているところでございます。
○高橋(千)委員 労政審で、どう議論をしましたかというふうに聞きました。それで、今答弁されたのは、長いほど長いと。前回は、短いほど短いと言いましたからね。私が指摘したので直してくれたんだと思います。
 最初に出た百五回の労働条件分科会においては、労働側から、これはやはり特別条項を長く結んでいるとどうしても実績も長くなっているという指摘がありました。その心は、労働側委員は、やはり、たとえ数%でも非常に大きいんじゃないかと言っているんです。
 百十九回のときには、割合が三・九%、四%近くというのを非常に重いと言っているんですよ、重い。それに対して使用者側、経団連の代表は、まあ、それはですね、全体から見ると、協定を結んでいる中の、そのうちの特別条項を結んでいる中の、そのうちの三・九%だから、本当にわずかでしょう、大した数ではないですよと言って、だから、これはあくまでも不測の事態があったときの保険なんだという答弁をしているんです。
 これと同じような答弁をしたのが安倍総理なんですよ。二〇一五年の二月に志位委員長に対して予算委員会で答弁をしました。しかし、それは、三・九%だから、保険であって実績はそんなに長くないんだよと答えているわけですよね。
 それが、四八・五%だった。一千時間の協定を結んだら、半分くらいはそのくらいやっているんだ、残業しているんだという認識になった場合に、労政審は全然そういう認識を持たずに議論しているんですよ。それで何ともないと言うんですか。
○山越政府参考人 今御指摘をいただいたところでございますけれども、この千時間を超える特別条項を締結している事業場のサンプル数がもともと少ない、そして精査後は更に少なくなったということで、その影響が出ているというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、この訂正前、訂正後の集計でございますけれども、三六協定の特別延長時間が長いほど、今おっしゃっていただきましたように、法定労働時間の実績も長い、そういう関係であるということが示されているわけでございまして、労政審におきましてもそういうことを踏まえて御議論をいただいているというふうに考えます。
○高橋(千)委員 労政審に結果が変わったことをなぜ言わないんですか。認識が変わっているんですよ。
 結論が同じだから、つまり、残業時間の上限を区切ることには同じだから別にいいんだって、そう言っているでしょう。でも、それじゃ、一つ一つ積み上げてきた議論の意味が違うじゃないですか。四%でも重いと労働側が言ったのに対して、四八・五%なんですよ。それが何ともないというのはおかしくないですか。もう一回。
○山越政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたように、千時間を超える事業場のサンプル数、もともと少ない上に更に少なくなったことの影響が出ているということだと思います。
 ただ、そういう中で、このデータでございますけれども、訂正前、訂正後、いずれも、三六協定で定める延長時間が長いほど法定労働時間の実態も長い、そういった関係にあるということを示しているというふうに思っておりまして、労政審においても、これを踏まえて、特別条項つき三六協定を適用する場合における上限時間規制を法制化すべきといった議論が交わされているものであるので、こういった傾向は変わらない、そういった前提のもとで労政審で議論が行われたものというふうに考えます。
○高橋(千)委員 私は違うと思います。どれだけ、残業時間が協定に向けてちょっとしかやっていないか、半分もやっているかということによって、やはり政策の決め方というのは違うと思いますよ。
 長いほど長いって、それは当たり前ですよ。傾向が同じだから別にいいんだと。いいかどうかは委員に聞いてください、そして返事を持ってきてください、労政審の委員に。お願いします。
○山越政府参考人 労政審の議論でございますけれども、この労働時間等総合実態調査だけでなくさまざまなデータを踏まえまして、そして、労使の実情に明るい委員の方々が御議論いただいて結論を出していただいているものでございまして、そうした中で、このデータの傾向も変わらないわけでございますので、労政審の結論は変わるものではないというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 委員長、だめです、これは。
 返事を聞いてこいと言ったんです、変わってもいいんですかと。労政審の委員が別に構わないと言っているんですかと言っているんですよ。それを勝手に想像して答弁しないでください。
○山越政府参考人 今回のデータでございますけれども、この精査後のものにつきましては、労政審の委員に渡るように御送付をさせていただいているところでございます。
○高鳥委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○高鳥委員長 速記を起こしてください。
 山越労働基準局長。
○山越政府参考人 この労働政策審議会の議論でございますけれども、さまざまなデータを踏まえまして労使で御議論いただいたところでございまして、その上で建議が出されているところでございます。
 所要の手続を踏まえてやっているものでございますので、改めてお伺いするということは考えていないところでございます。
○高橋(千)委員 これは改めて理事会でお願いをしたいと思います。
 続けて、ちょっと問いを飛ばしますが、5の「新技術、新商品等の研究開発の業務」というのがあるんですね。これも、時間内におさまっているのが、七割と答えていたものが、五割になるわけです。これは重要でして、関係ない、関係ないと言うかもしれないけれども、とんでもないんですよ。
 まず、今、研究開発業務というのは、限度基準から除外されています。専門業務型裁量労働制の対象業務の一つでもあります。そして、高プロの対象業務のうちの一つでもあります。
 伺いますが、一体どのような職種、業種があり、またどのくらいの労働者がいるんですか、研究開発業務。
○山越政府参考人 この研究開発業務でございますけれども、業種につきましては、さまざまな産業でこういった研究開発をされている方はそういった業務があるものだというふうに考えておりますし、また、職種も、職業分類のうち専門的・技術的職業従事者に含まれるものが多いというふうに考えられますけれども、他方で、この専門的・技術的職業従事者の中には、こういった研究開発でない方も多数おられますので、今おっしゃられたような労働者数については把握ができていないところでございます。
○高橋(千)委員 これも立法事実がないんです。
 ずっと、私、何年もこれを聞いています。どのくらいいるんですかと。何人と答えられない、どのくらいの部署かというのも全然答えられない。だけれども、今回また高プロの対象にするわけですよね。冗談じゃありません。ありとあらゆる、製造業などに、研究開発業務というものがあるんですよ。だから、限りなく広がるおそれがあります。
 資料の六枚目を見てください。これは、百三十四回の分科会に出された資料です。実例として厚労省が出しているわけですからね。
 A社、電気機器メーカーの研究本部。研究本部ですから、さすがと思いますが、従業員規模は百五十人程度。うち百二十人程度が当該業務として研究開発に従事している。百五十人中百二十人ですよ。これだけいる。C社を見てください。食品メーカーですが、従業員規模は六百人程度。うち十人程度が。失礼しました。B社、医薬品メーカー。従業員規模は四百人程度。うち百人弱が当該業務として従事をしている。D社は精密機器メーカーです。これは開発拠点である。従業員規模は四百人程度。うち百人弱が当該業務として従事をしているということで、厚労省自身が実例として挙げているわけなんですよね。
 一つの会社の中でも、研究開発という名でこれだけの人が従事をしているわけなんです。大変な規模だと思います。
 「時間外労働の上限規制について」という労政審の建議には、「現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とすることが適当」とあります。適用除外というのは、まだこれは限度時間の話ですよ、対象を明確化した上で除外、範囲を超えた職種に拡大すること。
 さて、その職種が明確でないのに、拡大するなというのはどういう意味でしょうか。
○山越政府参考人 現在の限度基準告示でございますけれども、この研究開発につきましては、解釈として、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務というふうに解釈されているところでございます。
 そうした中で、労政審の建議におきましては、現行制度で対象とされていない業務が今後新たに適用除外の対象になることがないように、すなわち、この対象業務を拡大しないように解釈の明確化を、これは解釈でございますので、行政に求めているものというふうに理解をしております。
 したがいまして、今後、対象となる業務についての法解釈について明確化をするということをしてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 そうじゃありません。
 今読みました。「現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、」ですよ。職種です。研究開発業務といったら業種になっちゃうじゃないですか。職種というのは何ですかと聞いています。
○山越政府参考人 御指摘でございますけれども、この労政審の建議は、適用除外とする対象となる業務、これを拡大することがないようという趣旨で示されているというふうに考えております。
○高橋(千)委員 私、何回も聞いたんですよ。
 じゃ、対象というものがこれこれこういうものですとはっきりして初めて、それ以外はだめよというんでしょう。それが何かがわからないから聞いているんじゃないですか。
 この資料の五番目に戻りますけれども、囲みの中の米印に書いています。基発四五号、「「新技術、新商品等の研究開発の業務」とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいうものとすること。」これ以上何にもないんですよ。何回も聞いたら、これ以上何にもないんです。
 だったら、食品メーカーだろうが、化粧品だろうが、車だろうが、電化品だろうが、全部、これに当てはまりますと企業が言えば、そうなっちゃうじゃないですか。だから、拡大するなと言う以上は、これは何だともっと厳格にしなかったら意味がわからないじゃないか、そう言っているんです。
 大臣が行く前に大臣に質問しなければいけません。
 そういう中で、まず、はっきりしていないのにどうやって拡大するなと言えるのかということを大臣も考えていただきたい。その上で、今も専門業務型でもあり、かつ適用除外でもある、それを高プロの対象業務ともする、なぜですか。
○加藤国務大臣 現状よりも拡大するなということがこの建議の趣旨だと思いますので、それにのっとってしっかりと対応させていただきたいというふうに思います。
 その上で、今おっしゃったように、例えば研究開発職の中で、これは今度は高プロになるという、もう研究開発職は今の形でいいんじゃないか、あえて高プロまで要らないんじゃないか、こういう御質問なんだろうというふうに思いますけれども。
 これについては、今の研究開発業務については、例えば、今でいえば現行の時間外労働に対する大臣告示の適用は除外をされていますけれども、当然、時間外労働を命ずれば割増し賃金が必要となるわけでありまして、したがって、労働時間の長さや時間帯が割増し賃金と基づいている。
 そういった意味で、企業においては、労務管理が、働く時間の長短あるいは時間帯のあり方、そうしたものを意識した管理にならざるを得ないわけでありますから、そういった管理下においては、本人がそうした自律的で創造的な自由な働き方を時間や場所にとらわれない形で実施することがなかなか難しい。
 こういったことを踏まえて、今度は、そうしたものの規制も外す中での高度プロフェッショナル制度というものを創設しよう、そして、その創設によって、高度専門職の方々が、健康を確保しつつ、働く時間の長さや時間帯をみずから決定し、効率的に、そして創造的な成果を出していただきたい、そういった働き方をつくっていきたい、こういうことであります。
○高橋(千)委員 どうしてそこになると同じ答弁を繰り返しちゃうんでしょうか。
 まず、現状よりも拡大するなと言っているんですと言ったって、現状がわからないと言っているんですよ。何人いるかもわからないのに、拡大したかどうかもわからないじゃないですか。減ったかどうかもわからない、ふえたかどうかもわからない、それでどうしてこれを対象にできるのかと言っているんです。
 やはりこれは、時間の手当を出さなくてもいい、だって一千時間を超えるような残業をしているんですもの、現実に。それがわかっているからこそ、その分を高プロにすれば払わなくていいよねという話になっちゃうじゃないですか。
 総理が上限規制を言い出したときに、使用者側は、賛成するものの、除外をどうするかというのをしきりに言っていました。つまり、エグゼンプションと上限規制というのは一体なんです。規制をつくるけれども、一方で除外を残す。うまくいけば、高プロで残業代も払わなくてよくなる。
 これまでも高プロの立法事実がないと指摘してきました。本来、建議で例示された五つの業務については、どのような働き方で、実際に高プロニーズが労働者の側にあるのか調べることは当然なんです。
 逆に、幾らいるのかもわからない、どこにいるのかもわからない、それで除外していたこと自体信じられないけれども、研究開発業務というばくっとした表現で、規制のはみ出した部分の受皿になってしまうんじゃないか、それを恐れていますが、そうじゃないと言えますか。
○加藤国務大臣 まず、業務についてはこれから省令で書くということでありますけれども、それを前提にお話をさせていただきますと、更にそれ以外に、年収の要件とか、あるいは、もう何回も同じことで恐縮ですが、職務についての同意等々、あるいは健康確保措置、こういったことを実施をする、こういったことを課すということによって、先ほど申し上げた方々が自律的に創造的な仕事をやっていただく、そういう仕組みとして提案をさせていただいているということでありますので。
 今委員御指摘の、現行の研究開発職種の方々が時間外労働規制、規制といいますか、時間外の上限の設定の外にあるというのとはまた別のことなんだろうと思います。
○高鳥委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後二時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 あと五分ですので、最低二問は聞きたいと思います。大臣にお願いします。
 研究開発業務が現行どのくらいの職種にどのくらいの人が従事しているのか全くわからないまま高プロに入っていくことは、絶対やってはいけないと思います。だけれども、わかっているのは長時間労働だということなんですよね。五割が限度内におさまっていないということ。そういう実態を見て、やはりこれは考え直すべきではないかと思います。
 質問は、成果と時間の問題です。
 労働条件分科会の公益委員でもある早稲田大学の黒田祥子教授は、高プロの推進論に、いつ働くかによって賃金が変わるとマネジメントをゆがめる、そういう意見が出ているけれども、時間ではなく成果で評価される働き方が、個々の意欲や能力を十分に発揮でき、高い生産性が実現などということはほとんどエビデンスがない、このように指摘をしています。
 前例を踏襲できないという意味で仕事に高い不確実性があり、試行錯誤の結果、失敗に終わる可能性も高い仕事である、革新的な発明や技術の開発というのは、何万回というトライ・アンド・エラーを経て実現する場合がほとんどで、その背後にはたくさんの失敗がある、このトライ・アンド・エラーの時間を評価する必要があるという指摘をされています。
 これは、難しい言葉を使わなくても誰でもわかると思うんですよね。やはり、開発、発明、こうしたことをやるためにはたくさんの時間を必要とするわけです。成果と時間はリンクできない、そう単純ではないということをまずお認めいただけますか。
○加藤国務大臣 ですから、今委員おっしゃった、成果と時間は単純にリンクできないということなんだと思います。
 したがって、そこは、そこの関係性が高くないものについて、やはりそれなりの働き方が必要なんだということで今回の法案を提出させていただいている。
 今、研究開発業務についてお話がありましたけれども、確かに、研究開発をしようとするときには、常に成功ばかりじゃなくて、ある意味では、特に基礎的研究について言えば、相当な失敗の中で新しいものが出てくる、こういった側面もあるんだろうと思いますけれども、しかし、それは単に長く時間をしたからそうだということではなくて、例えば、五時間程度の研究を十日間繰り返すよりも集中してやった方がより効果が出る、そしてトータルとしての時間も短くて済む、そういった声もあるわけでありますので。
 今回は、そうした意味において、法律で業務について記載をし、そして具体的には省令で定めるわけでありますけれども、そういった観点も含めて労政審で中身についてはしっかりと議論していきたいと思いますけれども、その前提としては、先ほど申し上げた、時間と成果が直接、関連性が通常高くない、こういったものを前提に考えているということであります。
○高橋(千)委員 逆の意味にとられたと思うんですけれども。
 それは、時間が長くかかっても仕方がない分野があるんだということです。そうでしょう。失敗を繰り返して初めて今がある。それを、成果によって評価をするんだよといったときに、成果が出ないこともいっぱいある。それも評価をしなければ、長時間残業したのはあんたのせいだと。それは違うでしょうと言っているんです。一言で認めて。
○加藤国務大臣 ですから、時間に縛られることが、結果的にそういったプレッシャーがあるということが、逆にしにくい。むしろ、そういったプレッシャーから外れて、ある意味で伸び伸びと、自分のペースでそうした研究開発、そして成果を出していきたい、そういう声もあるわけであります。
 ただ、先ほど申し上げておりますように、研究開発を今やっている人全てに高プロを適用するわけではありません。もう言いませんけれども、一定の要件をかけて、そして、そういう中でそういったことにある意味ではなり得る、そういった方にまさにその力を発揮していただきたい、これが今回の制度の趣旨であります。
○高橋(千)委員 大臣、そんなことをおっしゃったら、全国でそうした業務についている人たちがやはり驚くと思いますよ。伸び伸びと、自由に、自分の好きな時間で、そんなわけにいかないでしょうが。ちゃんと目標があるんですよ。期日が決められているんです。そんなことあるわけないでしょうが。
 もう大分前ですけれども、トヨタに視察に行ったときに、研究開発業務が最も長時間労働だと聞いたことがあります。トヨタは今、自動運転化、電動化、コネクテッド化など、自動車産業の百年に一度の大激動期といって、研究開発職のヘッドハンティングを進めているといいます。
 春闘の労使協議会では、寺師副社長が、生き残りをかけた技術開発として、一兆円を超える研究開発費を投じると述べたそうです。
 社運をかけた目標、期日が迫られているわけなんです。長時間労働に追い込まれていくことは明らかではありませんか。もう既に、そういう分野で何人も過労死しているわけなんです。
 高プロ導入は、企業にとってはその切り札であり、労働者にとっては過労死への道になりかねません。絶対に認められない。引き続き審議を求めて、終わりたいと思います。
○高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

 

――資料――

2018年5月30日衆院厚生労働委員会配布資料

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