国会質問

質問日:2018年 5月 16日 第196国会 厚生労働委員会

「働き方改革」一括法案(同一労働同一賃金)

同一労働同一賃金言葉なし
高橋議員 「働き方」法案批判

 日本共産党の高橋千鶴子議員は16日の衆院厚生労働委員会で、「働き方改革」一括法案に「同一労働同一賃金」という言葉が一言もないと批判し、非正規雇用労働者の裁判事例を挙げて、待遇改善をはかるよう求めました。
 高橋氏は、同一労働同一賃金は安倍晋三首相が今国会の施政方針演説で強調したにもかかわらず、従来の法律の内容と「何ひとつ変わっていない」と指摘。パート労働法では、パート労働者の1・5%しか「差別的取り扱い禁止」の対象にならず、「あまりにも少ない」と強調しました。
 郵政グループが手当の格差を違法だとした判決を受け、正社員の住居手当などを廃止しようとしていることに対し、高橋氏は「法の趣旨に反する」と問題視。加藤勝信厚労相は「法案は非正規雇用の待遇改善が目的であって、格差をならせばいいというものではない」と答えました。
 高橋氏は、地下鉄売店業務のメトロコマース契約社員の裁判で、店舗業務以外の正社員と比較して格差を認めた不当判決が出たと指摘。「待遇差の合理性は、企業側が立証責任を持つべきだ」と追及しました。
 加藤厚労相は「訴訟は、それぞれが主張立証していく」などと労働者側にも立証させようとしましたが、追及に「企業側しかない情報も多々ある」と認めました。
 高橋氏は、経団連が「自社にとって」同一労働かを評価する提言を出しているとして、「企業の言い分だけでは前進しない。格差是正に実効性を持たせるべきだ」と強調しました。
(2018年5月17日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 安倍総理は、二〇一六年の施政方針演説で、本年取りまとめるニッポン一億総活躍プランでは、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えでありますと発言しました。
 翌二〇一七年には、同一労働同一賃金を実現します、ガイドライン案を策定しました、その根拠となる法改正について、早期の国会提出を目指し、立案作業を進めますと言いました。
 そして、働き方改革国会と言われる今国会、施政方針演説では、長年議論だけが繰り返されてきた同一労働同一賃金、いよいよ実現のときが来ました、ここまで強調されました。
 まさに総理肝いりの案件であり、労働者の中にも期待はありました。
 大臣に伺いますが、法案にはその同一労働同一賃金の名前さえないのはなぜですか。
○加藤国務大臣 今、高橋委員、総理の施政方針演説で言及をいただきました同一労働同一賃金は、同一企業、団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指そうというものでありまして、そういった意味において、総理は、例えば百九十三回の国会でも、不合理な待遇差を個別具体的に是正するということを申し上げているわけでありまして、それについて、今回、この中身について、もうこちらから申し上げませんけれども、そうした中身を入れているということでありまして、法案には同一労働同一賃金という言葉は使っておりませんけれども、これらの改正内容が、まさに同一労働同一賃金の実現、すなわち、正規と非正規で働く方の間の不合理な待遇差の改善を目指すというものであるということであります。
○高橋(千)委員 労政審の建議にも、同一労働同一賃金の実現に向けてとちゃんと銘打っていたわけですよね。それででき上がったものが要綱が資料の一枚目にあるわけですけれども、それがない。
 ないということは、同じなんだ、今おっしゃっている、不合理な差をなくすんだということで、同じ意味なんだと言っているのか、あるいは、我々がイメージしている以上に、もっと広い意味で正規と非正規の違いをなくすんだとおっしゃっているのか、曖昧になっているような気がしますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 まさに今委員が出していただいたこの資料の上の方の箱書きにありますけれども、企業内にある正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の実効ある是正を図っていくということが、今回の法案の目的であります。
○高橋(千)委員 私は、何一つ変わっていないと思います。総理が何回も実現しますと言って、私たちとともに運動している労働者の皆さんも、もしかしてと期待をしていました。だけれども、ふたをあけてみたら、パート労働法に有期雇用契約労働者を加えたこと、同じ趣旨を派遣法に盛り込んだだけじゃありませんか。
 パート法第九条、差別的取扱いの禁止の対象となり得るパート労働者はどのくらいなんですか。全体のパート労働者数と割合で答えてください。
○宮川政府参考人 お答えさせていただきます。
 全体のパート労働者、いわゆる一週間の就業時間が三十五時間未満の者という労働力調査のものでございますが、千六百八十三万人でございます。
 今回、平成二十八年パートタイム労働者総合実態調査によれば、正社員とパートの両方を雇用している事業所において、職務、これは業務の内容及び責任の程度でございますが、職務が正社員と同じであり、かつ、人事異動等の有無や範囲も正社員と同じパートの割合は一・五%となっているところでございます。
○高橋(千)委員 そうなんですよ。一・五%、余りに少なくないですか。これはパート労働法を議論したときにも、一体何人がその対象者になるのよという話をしていました。そのころよりも少ないような気がします。全然変わらないじゃないですか。違いますか。
○宮川政府参考人 今回の法律改正は、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者につきまして不合理な待遇差、差別的取扱いを禁止するということでございまして、具体的には、現行パート労働法におきます八条の均衡規定と九条の均等規定。今先生の御指摘になりました、いわゆる差別的取扱いの禁止、九条につきましては先ほど申し上げた数字が対象となりますが、第八条、これは全てのいわゆる非正規雇用労働者が対象となるところでございます。
○高橋(千)委員 今、全てのパート労働者が対象になる、有期も入りますからね、という意味でおっしゃったと思うんですけれども、今、パート法にある八条、不合理な待遇の禁止、これを均衡処遇と呼ぶと。九条、差別的取扱いの禁止、これを均等待遇と呼んでいるわけですよね。
 だけれども、今までは、全てのとおっしゃったように、短時間労働者の待遇の原則としていたわけです。それが、不合理な待遇の禁止に変わったのはなぜでしょうか。また、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法第二十条を削除して、パート法の八条に含めました。これまでとどう違いますか。二つを一つで聞いています。
○宮川政府参考人 御指摘の今回の見出しの問題で、現行のパートタイム労働法八条の見出しは、御指摘のとおり、短時間労働者の待遇の原則となっておりまして、また、現行の労働契約法第二十条の見出しは、期間の定めがあることによる不合理な待遇の禁止となってございます。
 現行のパートタイム労働法は、第八条から第十二条までが待遇に関する規定でありますが、同法九条から十二条までの規定は一部の短時間労働者又は一部の待遇を対象とすることに対しまして、パートタイム労働法第八条は全ての短時間労働者の全ての待遇に関する規定であることも踏まえ、現行規定では、短時間労働者の待遇の原則としているところでございます。
 今回の改正におきまして、労働契約法第二十条を新しいパート・有期労働法第八条に統合することといたしておりますが、改正後の新第八条の見出しにつきまして、この第八条が不合理な待遇差を禁止するものであるという趣旨がより明確になるように、現行の労働契約法第二十条に倣いまして、不合理な待遇の禁止としたものでございます。
 また、二問目の方を引き続き説明させていただきます。
 パート法に有期雇用労働者が組み込まれ、労働契約法二十条が移されたわけでございますが、今回の改正によりまして、現行の労働契約法は、パート・有期労働法では第八条に統合されます。現行パートタイム労働法第九条の規定については、有期雇用労働者も新たに対象となる。
 このほか、今回の改正法案によりまして、有期雇用労働者につきましても、本人の待遇に関する説明、それから正規雇用労働者との待遇差の内容、理由等に関する説明が事業主に義務づけられます。さらに、有期雇用労働者に関する均等・均衡待遇規定について、行政による助言指導などや、裁判外の紛争解決手段、いわゆる行政ADRの対象とする、こういうような形になるわけでございます。
○高橋(千)委員 まず、八条にこれを入れたことによって、不利益な条件の禁止をより明確にするものだとおっしゃいました。でも、全ての短期間、短時間労働者の待遇を均衡待遇ということで改善していこうというときに、逆に、この不利益な条件の禁止ということで三要件を張りつけて、かつ、その他の事情、これは職務の成果とか能力とか経験ということが例示をされていますよね。これは結果として、不利益な条件の禁止に当たるものが狭められたと言えませんか。
 それと、労契法の場合は、これまで均衡処遇しかありませんでした。それが禁止規定に入る、均等待遇に入る、それはあると思います。だけれども、やはり労契法の二十条を根拠として戦っている人たちがいるわけです。日弁連などは、これによって私法的効力が後退するのではないかと心配しております。それについて、そんなことはない、だとすれば、それを明確にしていただきたい。
○宮川政府参考人 お答えいたします。
 今回の改正法案におきましては、パートタイム労働法第九条を改正し、有期雇用労働者も新たにその対象とすることといたしました。この規定は、職務の内容及び職務の内容、配置の変更範囲が通常の労働者と同一である有期雇用労働者に対して、全ての待遇の差別的取扱いを禁止するものでございます。
 また、今回の改正では、現行の労働契約法第二十条をパート・有期労働法第八条に統合することとしておりまして、この改正後のパート・有期労働法第八条の規定におきましては、現行の労働契約法第二十条と同様に、個々の待遇によっては、職務の内容や職務の内容、配置の変更範囲が異なる場合であっても、相違を設けることが不合理であると認められ、同一の取扱いが求められるものもあると考えられるところでございます。
○高橋(千)委員 今のお答えは、私法的効力が弱まるものではないということでいいんですね。
○宮川政府参考人 私どもの考えとして、このパートタイム労働法に統合するということでございますので、法的効力に変化はないものと考えております。
○高橋(千)委員 確認させていただきました。
 これまで、同一労働同一賃金については、田村元厚労大臣が何度も答弁をされておりまして、欧米の職務給と比べ、日本は職能給だから単純な比較はできないということを何度も何度もおっしゃっておりました。そのことをこの間ずっと議論してきたわけですよね。検討会もやり、労政審もやり、そういう中で、結果として乗り越えられていなかったのかなと思うんです。だけれども、私は、やはり現実に裁判が多数行われていて、労働者の現場の中、実態の中にこそ同一労働はあるんだということを言いたいなと思うんです。
 資料の二枚目を見てください。
 これは見出しがまずちょっと衝撃的な見出しですけれども、「正社員の待遇下げ格差是正」と。ちょっと大変な見出しですよね。朝日の四月十三日付です。
 二十四万人を擁するJP労組が、ことしの春闘で、組合員の半分を占める非正社員の待遇改善を図るために、正社員だけに認められている扶養手当や住居手当など五つの手当を非正社員にも支給するように求めたのだそうです。それに対して会社側は、一部の正社員の住居手当を廃止、これは対象になる人が五千人いらっしゃいます、寒冷地手当の削減を提案してきた。それで、要するに、正社員を下げて非正規に近づけた。これで同一労働同一賃金だと言われたらたまりませんよねという話なんですよ。
 めくっていただいて、資料の三枚目。
 通信文化新報、四月三十日付。「注目される最高裁の判断」という論説がありますけれども、まさに今私が質問した労契法二十条の法案先取りのような訴訟が今相次いで争われているということが三段目あたりに紹介をされています。でも、何か法案に合わせたのかどうかわからないんですが、最高裁の判決は六月一日に出るそうであります。
 その中で、今言った日本郵政の非正規労働者の起こした裁判、裁判の方が先ですよ、言っておきますが、について、下から二段目に書いています。東京地裁、大阪地裁はそれぞれ、住居手当の、東京は六割払いなさいと言った、大阪は十割払いなさい、こういうふうな判決を出しているわけなんです。もちろん、住居手当だけではなく、さまざま、全く認められなかったものもあるわけですけれども、そういうのがあったんです。
 でも、これは地裁だから、これから争うわけなんですよね。ところが、春闘という形をもって手当をなくしちゃったといったら、比べるものがなくなっちゃって判決の効力が失効してしまう、そういうことに今なっているわけなんですね。
 それで、ここから先は一般論で大臣に伺いますが、このように、正社員の待遇を下げて非正規労働者と均等待遇にするというのは法の趣旨とは違うと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 今、委員から一般論としてということでございますので、ちょっと個別の件に関してはコメントは差し控えたいと思いますけれども、まさに一般論としては、同一労働同一賃金の目的は非正規雇用労働者の待遇の改善であり、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図るわけでありまして、ならせばいいというものではないというわけであります。
 したがって、正規雇用労働者の待遇を引き下げようとするなど労働条件を不利益に変更する場合、これは、労働契約法上、原則として労使双方の合意が必要になります。
 また、労使で合意することなく就業規則の変更により労働条件を不利益に変更する場合は、労働契約法の規定に照らして合理的な変更でなければならないとされているわけでありまして、いずれにしても、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消に向けて、まずは各企業において処遇体系全体を労使の話合いにおいて確認し、非正規雇用労働者を含む労使で共有していることが肝要だということでありますけれども、基本的には、同一労働同一賃金に対応するために、まさに各社の労使で合意することなく正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とは言えない、こういうふうに思います。
○高橋(千)委員 しっかりと答えていただきました。望ましい対応とは言えないということだと思います。当然ですよね、これまで非正規の待遇を改善するんだということで訴えてきたわけですからね。
 原告の一人、二〇〇七年から九年間、十九回も契約更新をして集配業務に従事していたAさんからお話を聞きました。集配の仕事に正規、非正規の違いはないんですよね。シフトローテーションも全く同じなんです。慢性的な人手不足の中、繁忙期でもある夏季、冬季の休暇もとれずに、国民の祝日も関係なく働いて業務を支えてきたのに、病気になって休めば無給になるわけです。余りにも格差が大き過ぎると訴えました。
 ところが、驚いたことに、このAさんの裁判のときに、右陪席が、裁判官の一人ですよね、Aさんに聞いたそうです。なぜ正社員にならないんですか、そうすれば同一労働同一賃金になるのにと。Aさんは驚いて、私はもう何年も正社員登用試験を受けましたが、でも受からないのですとお答えになりました。
 かんぽ生命のコマーシャルは人生夢だらけなどとうたっていますが、これを支える現場の労働者は夢も希望も奪われているんです。正社員に望んでなれるなら苦労しませんよね。
 郵政民営化以来、毎年登用試験はやられていて、ことし四月でいえば三千四百五十二人が正社員になりました。でも、その何倍も試験で落とされて、依然として、グループ全体の半分に迫る十九万二千人以上の非正規労働者によって維持されているのが職場なんです。
 こうした現場の実態を見て、正しい判決が出ることを強く望みたいと思います。これ以上個別の話はいたしません。
 それで、もう一つ伺いますが、パート法第二条の定義における、比較対象労働者と非正規の労働者の、比較するときの同一の事業主というのは、現行法では同一の事業所となっていますが、その違いと趣旨を述べてください。
○宮川政府参考人 現行のパートタイム労働法第二条におきましては、短時間労働者、これは同一の事業所に雇用される通常の労働者との所定労働時間の比較により定義されておりまして、適用単位は事業所でございます。
 均等待遇あるいは均衡待遇規定につきましても、同一の事業所に雇用される通常の労働者と比較することとされております。
 一方、現行の労働契約法第二十条は、同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者と比較することとされており、適用単位は事業主であります。
 昨今は、同一の事業所内には待遇を比較すべき正規雇用労働者が存在しないケースも見られるなど、事業所単位では十分に保護が図られない場合が生じていると考えられることから、労働契約法第二十条をパート・有期労働法第八条に統合することも踏まえ、事業主単位とすることとしたものでございます。
 これによりまして、他の事業所の正社員との比較が可能となり、結果として不合理な待遇差の解消が進む効果が期待されるところでございます。
○高橋(千)委員 私も、この事業所と事業主というのを考えたときに、要するに、一つの事業所にパート店長とアルバイトの学生しかいなかったりして比較のしようがないよねとか、そういう場合には確かに有効かなと思いました。でも、その逆もあるんですね。
 資料の四枚目、朝日新聞の二〇一四年七月十一日付です。メトロコマース、地下鉄の売店業務に従事していた契約社員が、労働契約法二十条違反を争った裁判を紹介した記事です。
 売店四十八店舗、正社員十九人に対し、契約社員は八十一人。一番上の段に少し仕事の内容を書いています。商品の発注や、売れ残った新聞や雑誌の返品、売上金の管理など、正社員と契約社員で仕事の中身や責任は変わらない、これは容易に想像ができると思うんですね。制服なども全く一緒、外から見て何一つわからないわけです。
 ところが、次をめくっていただいて、資料の5、この裁判、契約社員側が地裁判決で敗訴いたしました。二〇一七年三月二十四日付の産経新聞です。吉田徹裁判長は、契約社員と正社員は責任が大きく異なるなどと指摘をし、原告側の訴えの大部分を棄却したと報じています。
 実は、裁判長は、今述べたように、同じ売店業務、専ら売店業務だけに従事している正社員がいるにもかかわらず、さまざまな業種に従事している正社員六百名、いろいろな人がいる、指導的な人もいる、そういう人たち全部と比較をして、差別を合理的と判断をしたのです。
 ちょっとだけ売店をやることがあっても、主には違う、指導的な仕事をしている、そういう人もひっくるめて比較して、差別は当然、正社員の方が責任が重い、合理的だと。これをやられたら、大ベテランで同じ重さの仕事をしている契約社員であっても、もっと指導的な立場の正社員がいるよとなったら、何も変えることができません。
 またここから一般論で大臣に伺いますが、まず、比較可能な労働者の範囲が問われると思います、今回の法案の中でも。まずは、業務が同じ、職務の内容が同じ、そこから、一致するところから見ていくものだと思う。極端に違うことを、違うのがわかっているのを比較するというのは違うと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 一般論になりますけれども、改正後のパート・有期労働法においては、非正規雇用労働者と待遇を比較することとなる通常の労働者とは、いわゆる正社員を含む無期雇用フルタイムの労働者ということになります。
 このパート・有期労働法第八条では、事業主に対して、非正規雇用労働者の待遇について、職務の内容等が近い通常の労働者との間の不合理な処遇差を禁止をする、また、職務の内容等がかけ離れた通常の労働者との間には不合理な待遇差を禁止するということで、これは非正規雇用労働者の待遇改善に資するというふうに考えております。
 非正規雇用労働者は、不合理な待遇差の是正を求める際には、通常の労働者の中でどの労働者との待遇差について争うのか、これについては選ぶことができるというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 ということは、かけ離れた、見てすぐわかるような、いわゆる職務の内容が違う人を比較するということはまず考えられないと。今、選ぶことができるというふうなことをおっしゃいましたよね。それでよろしいんですよね。
○加藤国務大臣 ですから、かけ離れた人を選ぶ中でも不合理差というのはあるわけでありますから、ただ、どの人を選択して不合理だというのは、そこの、今度は事業主ですから、事業所じゃなくて事業主全体の中で働いている中において比較する人をピックアップして、そこと、この人と違うというなら、この人ということは、これはまさに訴える側が選ぶことができる、こういうことであります。
○高橋(千)委員 ですから、ごめんなさい、この人と基本は同じ職務なのに待遇が違うということは、訴える側が選べる、そういう意味ですよね。
○加藤国務大臣 多分、私が言ったことと同じことをおっしゃっているというふうに思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。確認をしました。
 それで、やはり、合理的でなければならないなのか、不合理であってはならないなのかということが随分議論をされてきたと思うんですが、最後の資料で、これは、二〇一六年七月十九日に経団連が同一労働同一賃金の実現に向けてと発表していますが、その概要なんですね。
 まず私、言っておきたいんですが、上の段の四角が三つあるんですが、この真ん中、現行法の基本的考え方を維持すべきと経団連は言っているわけ。だから、何だ、結局変わらないのかということを言いたくなるし、そのとおりに進んじゃったら困るじゃないのということが言いたいわけです。
 左の下に、日本型同一労働同一賃金というのがあります。さまざまな要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働と評価される場合に同じ賃金を支払うことを基本とする、こう言っちゃうと、結局、同一か差があるのかというのは会社が決めるんだという話になっちゃうわけですよね。これでは救うことができないわけであります。
 これは、違いが合理的であるとするなら、企業の側が立証するべきだと思うが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 立証責任の話と経団連の考え方の話、一緒に御質問されているんですが、経団連は二十八年七月にはこうしたことを言われたわけでありますが、その後、経団連も参画した働き方改革実現会議や労政審の議論を踏まえて今回の内容のものが出てきているということであります。
 例えば、処遇についても、これは総合的にというふうに書いてありますけれども、処遇ごとに見ていくというふうに今度条文には明確に書いてあるわけでありますから、そういったことも含めて、今回の法案が取りまとめられたということであります。
 他方で、裁判上の立証責任について、どちらが負うかという議論、これはこれまでもこの委員会の場等でもあったように記憶をしておりますけれども、ただ、いずれにしても、訴訟においては、訴える側も訴えられる側もそれぞれが主張して立証していくということになるわけでありますから、それが当然なのではないかなというふうに思います。
 ただ、待遇差に関しては企業側しか持っていない情報が多々あるわけでありますから、非正規雇用労働者もそれを知ることができて、そして訴訟において不利にならないようにしていくということが必要でありますので、今回の法案では、非正規雇用労働者が事業主に求めた場合、正規雇用労働者との待遇差の内容、理由等についても説明義務を事業主に課す、また、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁止するということを明文化しているわけであります。
○高橋(千)委員 実は、さっきのメトロコマースの判決の中に、労働者も立証せよ、企業も立証せよという二つのことが書かれているわけなんですね。やはりこの背景に、確かにこれは二〇一六年のものだとおっしゃいましたけれども、なるべく今よりも変えたくないという、背景にこうした思想があれば、どうしてもそれがひっかかってくるということが言いたかったわけですが、大臣が今おっしゃってくれたように、待遇差というのは、企業側がやはり有利な情報を持っているわけですから、やはり、そこをきちんと資料を求めるというふうに書いたんだということは大事なことであるし、それが本当に実効性が上がるということを期待したいなと思います。
 あともう一問、これはちょっと芽出しになると思いますが、男女の賃金格差についての言及が法案に全くないのはなぜでしょうか。
 出発点の、さっき私、三年分言いましたけれども、一億総活躍は、女性活躍も大きな柱であったと思います。男女の賃金格差が縮小してきたとはいえ、まだ七割など、固定化していることは指摘され続けてきたわけです。正社員であっても、配転の可否などを理由に昇給、昇進に差をつけられている、男女の差がつけられている、それがずっと固定化するということがこれまでも何度も言われてきたということを考えたときに、やはりILO百号条約に照らしても、ここをしっかりと、同一労働同一賃金とうたってきたわけですから、男女の格差も是正するということをきちっと位置づけるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 まず、男女の賃金格差については、もう御承知のように、労働基準法第四条において、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」こう明確に規定をしているわけであります。
 また、今回は、もう御承知のように、私どもが今提案している法案は、同一企業、団体における、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すわけであります。
 今委員もお話がありましたように、非正規雇用で働く女性の割合、これは男性と比べてかなり高いわけでありますから、こうした法案を進め、そして待遇差を埋めていくということは、男女間の賃金格差解消にもつながる側面があるというふうに思います。
 また、これまでも、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる配置、昇進、教育訓練等の雇用管理を行ういわゆるコース別雇用管理、これが事実上の男女別雇用管理と言われてきたこともあります。したがって、そうしたことにならないように指針を策定して、その周知にも取り組み、また、男女雇用機会均等法に照らして問題がある場合には、企業に対して助言指導等をしっかり行っていきたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 非正規の中に女性が多くいる、でも、そこだけでやはり丸めるわけにはいかないわけで、確かに労基法の四条には書いていますが、これはやはり男女の賃金格差を明確にしてほしいということで、女性活躍推進法のときも随分議論をいたしました。その課題はまだ残っていると思いますので、引き続き求めていきたいと思います。
 終わります。

 

――資料――

2018年5月16日衆院厚生労働委員会提出資料

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