国会質問

質問日:2018年 2月 22日 第196国会 予算委員会

時間外労働の上限規制

残業月100時間未満でも過労死
政府の上限案 企業免罪
衆院予算委で高橋氏 提出方針撤回求める

 日本共産党の高橋千鶴子議員は22日の衆院予算委員会で、「働き方改革」関連法案に盛り込まれる残業時間の上限規制は、労使で「三六(さぶろく)協定」を結べば「単月100時間未満、複数月80時間」という過労死ラインの残業を合法化するものだと批判し、法案の提出方針の撤回を求めました。
 高橋氏は、現行労働基準法では労働時間の原則は1日8時間・週40時間であり、残業の限度は週15時間・月45時間・年360時間であることを確認。2014年に事故死し、8日に横浜地裁が過労との因果関係を認めて和解が成立した会社員・渡辺航太さん=当時(24)=の事例を紹介しました。
 事故発生直前の労働時間は拘束21時間42分、事故前10日間は拘束1日平均13時間51分、最長23時間。ひと月の残業時間は91時間49分でした。高橋氏は「月単位で見れば100時間に収まっている。『法律の範囲内だから』と企業を免罪することになる」とただしました。
 加藤勝信厚生労働相は「今は三六協定を結べば青天井で働くことが可能。そこに規制をかけようということ」と答弁。高橋氏は「天井を過労死ラインにしたら、ぎりぎりまで働かせても違法でなくなってしまう」と批判し、重ねて見直しを求めました。
 高橋氏は、航太さんの母・淳子さんの「人間の限界を試すような働き方で生産性をあげていくという考え方は間違っています」という言葉を紹介し、「上限規制はひと月単位や1年単位ではなく、1日、1週を大切に生きる基準にすべきだ」と求めました。
 安倍晋三首相は、上限規制について「ぎりぎり実現可能な水準として労使が合意に達した内容」だと釈明しました。高橋氏は「過労死ラインに引っ張られて何が『働き方改革』か」と批判。長時間労働とともにパワーハラスメントが過労死・過労自死につながっているとして「時間の長さだけでは分からない過重労働の実態がある。法案を取り下げ、質の問題も含めた見直しを」と強調しました。
(しんぶん赤旗2018年2月23日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうはシンプルに、時間外労働の上限規制について質問いたします。
 まず、おさらいになりますが、労基法第三十二条は、一日の労働時間を八時間以内、一週四十時間を超えてはならないとしています。時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限に抑えるべきであるという考えのもとに、大臣告示でその上限を示してきました。今回の法改正に当たっては、その告示で示された時間を時間外労働の上限として、月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年七百二十時間、単月では百時間未満、複数月では八十時間という上限を決めました。
 確認をいたします。
 労働時間の原則は、あくまでも一日八時間、一週四十時間、ここは変わらないし、今回法律に書くわけだけれども、だからといって、四十五時間がそもそも最初から許されているのではなくて、三六協定をきちんと結ばなければならないし、臨時的な場合であるということが条件になっていると思いますが、確認をしたいと思います。
○加藤国務大臣 もう委員御承知のように、労働基準法第三十二条では、使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間、一日について八時間を超えて労働させてはならないと定めておりますから、これが原則になるのはそのとおりでございます。これは、働く方の心身の健康を確保するとともに、仕事と生活の調和の実現を図るため、労働条件の最低基準として法定をしているものでございます。
 この法定労働時間を超えて労働させる場合には、使用者に労使協定、いわゆる、これは労働基準法第三十六条に基づきますので、三六協定、三六協定、こう称しておりますが、その締結と届出を義務づけていますが、じゃ、それを出せば毎日その時間までいっぱい働かせていいかというものではなくて、時間外労働というのは、あくまで臨時的なものとして必要最低限にとどめられるべきものでございます。
 さらにまた、現行の枠組みでは労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能でありますが、これは、先ほど委員がおっしゃったような形での上限をつけるべく今法案を検討させていただいているところでございます。
○高橋(千)委員 三六協定を出せば毎日働いてもいいという意味ではないのだということをおっしゃいました。この必要最小限というものをやはりもっともっと厳密にしていかなければならない、そういうことを今考えているわけなんです。
 それで、どうして今回の時間外労働の上限は月から始まっているんでしょうかということなんですね。大臣告示には、一週間、二週間、ここには一週間十五時間と書いているわけですけれども、一週間刻みで上限があるわけなんですね。だけれども、今回法律に書き込むのは一カ月からなんです。
 ということは、極端に言えば、一日八時間働いて十五時間残業して、二十三時間ぶっ通しで働いたり、三日間連続して働いても、でも、月四十五時間が最初の上限ですから、その中におさまっちゃえば違法ではないということになっちゃうんですよね。だけれども、やはり集中して寝ないで三日間連続して働いたら死んでしまうわけで、今回、罰則つきの上限を法律に書くというんだったら、週十五時間の上限もきちんと書けばよいのではないでしょうか。
○加藤国務大臣 この上限規制については、これまで本当に労政審でも議論されてきましたけれども、なかなか結論が出ない。そういう中で、働き方改革実現会議によって、安倍総理が座長になり、そしてそこに労使のそれぞれの代表も入っていただいて、そしてぎりぎりの合意の中ででき上がったということでございますので、そういった中で、今回、そこのお示しにある、一カ月の四十五時間と一年間の三百六十時間ですか、それを決めさせていただいた、こういうことでございます。
○高橋(千)委員 ぎりぎりの合意という表現をされましたけれども、結局、使用者の側に、そこまで一週間刻みでやられるとやはり自由にやれないんだ、そういう思いに応えてしまったところに、本当に過労死をなくすなんて気持ちがないんだということを指摘しなくちゃいけないと思うんです。
 配付資料を見ていただきたいんですが、「過労事故死 和解成立」、これは二月九日付の東京新聞です。二月八日の横浜地裁川崎支部で、会社員の渡辺航太さん、当時二十四歳の事故死と過労の因果関係を認めた和解が成立しました。
 商業施設などに草花などの装飾を手がける株式会社グリーンディスプレイに勤務していた渡辺航太さんは、二〇一四年の四月二十四日、徹夜勤務を終えてミニバイクで帰宅途中に、電柱に衝突して事故死をしました。本当は、新卒正社員募集、試用期間なし、時間外は月平均二十時間と求人票にあり、それに応募したんですけれども、実際は、アルバイトとして採用され、五カ月間、深夜、不規則、長時間労働が続き、事実上の試用期間の扱いになったんですね。それで、とうとう正社員になった。事故はその翌月のことでした。
 通勤中の事故は、よそ見だとか持病だとか言われて、本人の責任とされることが多く、過労死防止法にも規定がないため、過労による事故死という労災及び訴訟というのは、先例は極めて乏しいとされております。
 ただ、記事の中にもあるように、事故発生直前は拘束時間二十一時間四十二分。これは徹夜ですから、二日間ぶっ通しで働いています。事故前十日間の拘束時間は一日平均十三時間五十一分、最長二十三時間。こうして見ると、やはり一日刻みのきちんとした規制があれば、あるいはせめてインターバル規制がきちんとあれば避けられたんじゃないかと思うんですね。しかも、直前の一月は九十一時間四十九分です。これは、一月単位で見れば繁忙期百時間の中におさまっているじゃないかとされる可能性があるわけなんです。
 私が伺いたいのは、法律に書くというのは大変重要なことです。でも、そのために、百時間だって、法律で定めた範囲内だから我々は問題ないんだ、違法じゃないんだというふうに企業を免罪することになりませんか。
○加藤国務大臣 今との比較でありますけれども、今は、特に先ほど申し上げた三六協定でも、更に特別条項ということで、特別に結べばいわば青天井で働くことも可能になるわけでありますから、やはりそこをまず是正していこうという意味で、天井をつけていく。上限つきの、しかも罰則つきの規制をかけようということであります。
 ただ、そこで、先ほど申し上げたように、決めたところまで目いっぱい働かせていいというものでもありませんし、それから、労使が一緒になってその長時間労働を是正する、こういった取組もしっかり進めていただく、そういった中で長時間労働の是正を図っていきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 その天井が、厚労省がこれまで過労死ラインだと認めていた連続八十時間、繁忙期は一月で百時間、それを上限にしてしまえば、このぎりぎりまで働かせたって違法ではないとなっちゃうじゃないですか。法廷で争ったらそうなっちゃうでしょう。幾ら通達を出しても、ガイドラインを出しても、しかし、法律に書いているのは百時間なんだ、私は違法ではありません、守っています、遵守していますと言われたらどうしますか。
○加藤国務大臣 今委員の御指摘は、現行法の中でも同じことが言えるわけであります。
 ですから、それを少なくとも百時間まで抑え込むという意味においては私は意味がある措置だというふうに思いますし、また、先ほど申し上げましたように、労使合意を踏まえて、可能な限り労働時間の延長を短くする新たな指針も定めることにしておりますし、労働基準法にその根拠規定も設け、また、これにより行政官庁が使用者及び労働組合に対して必要な助言指導も行えるようにするということを予定しているわけでありますから、百時間でいいということではなくて、そういうことになったとしても、更にそれを下げる努力もしてほしいということをしっかりと、そういう取組をしていきたいと思います。
○高橋(千)委員 現行法でも同じって、そこを開き直っちゃだめですよね。
 書いちゃうんですからね。そうすると、書いちゃう方が重みが出ちゃうわけなんですよ。厳しいものを書くのならわかるんです。そうじゃなくて、今までは、過労死ラインというのは法律には書いていなかった。認定基準の中で、判例が積み重ねられる中で、もう疑いなく百時間というのは過労死だよねということが積み重なってきたんだけれども、現実には、八十時間、あるいは六十時間でも認めているわけですよね。認めているわけですよ、現実には、働き方をしっかり見れば。だけれども、それを法律に書き込むことによって、過労死ラインが天井だ、ここまでは認められちゃうと言われたって仕方ないじゃないかと言っているんです。
○加藤国務大臣 今、百時間、八十時間、一カ月でいえば百時間、あるいは複数月でいえば八十時間、これが一つの過労死認定の基準になっているわけでありますが、その中で、例えば六十時間であっても、それ以外の要因があればそれも加味して認定がなされているということでありますので、時間だけで機械的に適用されているのは八十時間、百時間ということでありますから、それを超えることが少なくともないように。
 先ほど、できるじゃないかとおっしゃったんですが、今、労使協定を結べば、際限なく高い、これは新聞にも報道されておりますけれども、二百時間を超えるようなところもあるわけでありますから、それをないように、まず百時間以内にしていく、そしてそれを更に短くしていく努力をしていく、そういった流れをつくっていきたいと思います。
○高橋(千)委員 それ以外の要因もしっかりと書き込むべきなんです。そうでなくて、これだけが書き込まれて、あとはいろいろな指導の中でですよと言うから、これは争いになりますよということを指摘しています。これは外すべきだということを重ねて指摘します。
 亡くなった渡辺航太さんは、私の息子と同い年なんですね。母親の淳子さんの言葉を見ていて、本当に想像を絶する、苦しみに震える思いがいたしました。生きること全てが奇跡であり、それを喜び、楽しむことをモットーとしている息子でした、息子を失った喪失感と、自分が生き長らえていることへの罪悪感でいっぱいでした、このように述べています。
 そういう思いをみんな乗り越えてずっと闘って、どうやって働いたのかなという時間を計算するのをやってきて裁判にするわけですけれども、この和解勧告で裁判長は、二〇一四年六月制定の過労死防止対策推進法において、過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失である、そうして、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現が立法事実であると明記をしています、本件和解によって過労事故死を防止する新たな社会規範となることを期待したいと述べました。そうして、具体的に、原告に謝罪を求めるとともに、十一時間のインターバル制度などの再発防止策を提言しています。
 淳子さんは、人間の限界を試すような働き方で生産性を上げていくという考え方は間違っています、こう述べています。総理は、この淳子さんの言葉をどう受けとめるでしょうか。せっかくつくる上限規制は、一月単位や一年単位という考え方ではなく、一日一日、一週一週を大切に生きる基準にしていく、そういう立場で法案は抜本見直しをするべきではありませんか。
○安倍内閣総理大臣 過労死という悲劇を二度と起こさないというこの目標、考え方については高橋委員と同じだ、こう思っておりますし、また、強い決意で長時間労働の是正に私たちは取り組んでいるわけであります。
 もう既に厚労大臣が答弁をさせていただいたように、これは七十年間、いわば三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設けることはできなかったわけでありますが、今回初めて労使が合意をし、その限度を設けることになった。この重みは、そしてその方向性ができたということは大変重いと考えております。
 具体的には、時間外労働の上限は月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記するわけであります。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めます。
 これは、実効性があり、そして、かつ、やはりこうしたものは労使が合意してしっかりとお互いに責任を持って進めていくということによって、これは法定をしますが、より実効性のあるものになっていくんだろう、こう考えるわけでありますが、ぎりぎり実現可能な水準として労使が合意に達した内容であって、それに沿って法定するものであります。
 さらに、労使合意を踏まえて、可能な限り時間外労働を短くするため、新たに、労働基準法に基づき、時間外労働を適正化するための指針を定め、国が使用者及び労働組合等に対し必要な助言指導を行えるようにすることを予定しております。
 なお、企業現場において、業務の繁閑、忙しいときとそうでないときがあるなどの態様がある中で、さらに短い期間での上限規制を罰則つきで定めることは慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 働き方改革を総理が最初に言い出したころに、やはり産業界が一番おっしゃったことは、それ自体には賛成だ、上限規制をつくることも賛成だ、では、どう適用除外を決めていくか、それが鍵だということを口々におっしゃったんですね。それが、一昨日私が質問したように、適用除外の業種が実はたくさん残っているわけなんです。裁量労働制だって同じ理屈なんです。あるいは、新商品の開発、そういう形でさまざまに抜け穴を用意しています。その上、ようやっと決める上限規制さえも過労死ラインに引っ張られている、これが実態じゃありませんか。何が働き方改革なのか、このことを改めて問わなければならない。やはり振出しに戻らなければならないと思うんです。
 渡辺御夫妻に昨年お目にかかったときに口々に訴えられたのは、実は労働の質も取り上げてくださいということなんです。時間だけでも大変なのに、その中でパワハラもやはりありました。手がもげても足がもげても働け、苦しい顔をするな、そういう上司の発言が、更に無理に無理を重ねるしかない、正社員になれるかもしれないという思いで働いてきた、そういう中で起こった事故であるわけなんです。
 最後につけた資料を見ていただければ、精神障害の年齢別請求、本当に二十代以下が二百五十四人、十九人という形で請求をしていて、実は自殺が随分いるんですね。そして、その時間外労働数でいうと、実は二十時間未満の方が八十四名もいて、一番多いんです。これは本当に労働の質の中身なんですね。
 この点でも、パワハラやセクハラを法律にきちっと書いてくれと私たちは求めてきました。その点でも、今回の働き方改革には残念ながら盛り込まれませんでした。
 そういう意味でも、今回、施行日を見直す、一年おくらせるということが言われておりますが、この際、全部法案を取り下げて、抜本的な見直し、今言った働き方の質の問題も含めて見直しをするべきだ、このことを指摘して、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

 

――資料――

2018年2月22日衆院予算委員会配布資料

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