国会質問

質問日:2011年 8月 3日 第177国会 厚生労働委員会

原発労働者の被爆対策

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私も一日、委員会の視察に参加をさせていただきました。古屋委員のお話にもあったわけですけれども、Jヴィレッジにも初めて行くことができまして、そのとき見た光景は大変衝撃的に思いました。

 一日三千名の作業員が仕事をしているわけでありますけれども、皆さん、多くの方が無表情で、不安ですとかあきらめですとか怒りですとか、いろいろな思いを押し殺しているのかな、そういう思いをいたしました。

 タイベックスを脱いでスクリーニングをするわけですけれども、そこの場面を我々は見せていただいたんですけれども、案内をしてくれた東電の方が、今、あの方たちは汚れたところから来て、検査をして、きれいなところに戻っていくのだ、そういう表現をしたわけです。汚れたところと言いました。そしてまた、汚れているのでと言わんばかりなのか、私たちが視察をするときに、この人たちに触れないようにというようなことを非常に言われました。大変、なぜこんなことになったのかということを考えていると、この表現はないだろう、とても許せない、そういうふうに思いました。

 この間、原発労働者の被曝問題について何度か取り上げてきたわけですけれども、厚労省としてもさまざまな対策をされて、全国から派遣による医師の常駐体制などは非常にありがたいと思っております。

 ただ、夕方、帰りますと、大変ショックなニュースが飛び込んでまいりました。十シーベルトと。これはすぐに、ジェー・シー・オーの臨界事故で亡くなった二人の作業員のことを思い出しました。まさにそういう値であります。

 一分半で緊急作業時の被曝限度量である二百五十ミリシーベルトを超え、一時間では死亡すると言われている放射線量、これが福島第一原発一号機、二号機の原子炉建屋の間にある主排気筒付近で測定されたという発表だったと思います。

 なぜ、今になってこれほど高い数値が検出されたのか。またその後、建屋内で五シーベルトという検出もあったわけでありますけれども、どちらも、まあこれ以上測定不能ということで、十ではないわけですよね、十以上ということである。そういうことが非常に衝撃を与えたわけですけれども、原発敷地内でまだほかにもあると思いますが、どのように考えているのか、まず保安院に。

○黒木政府参考人 お答えいたします。

 その放射線レベルの高い状況がこれ以上ないのかということでございます。

 東京電力によりますと、瓦れき撤去作業後の線量の確認を行うために、線量を測定するガンマカメラで撮影したところ、一、二号機の、先ほどお話のございました主排気筒の底部付近の配管に高い線量というものを確認したわけでございます。これを受けまして、一昨日、一日に、同社の作業員三名でございますが、配管表面を測定した結果、時間当たり十シーベルト以上の放射線量が確認されたということでございます。また、昨日でございますが、一号機の原子炉建屋内において時間当たり五シーベルト以上の放射線が確認されたという状況でございます。

 現在、瓦れき撤去の作業を行い、撤去した後に放射線の線量の確認を行うという作業を行ってございますし、また、原子炉建屋内におきましては、放射線量率の調査を継続して行っているところでございます。

 その高い線量率が今後計測される可能性、これは瓦れき撤去や建屋内での測定調査を行っているところでございますので、可能性はあるというふうに承知しております。

○高橋(千)委員 今、まだこの先もそうした高い線量が検出される可能性があるということであったと思います。また、ベントのときの放射性物質が配管内に残ったのではないかということが、専門家の説がるる報道などにも紹介をされているわけですけれども、そうなると、原子炉容器内にさらに高濃度の放射性物質が残っているという可能性も否定できないし、そして現時点の作業の中では、その高濃度の放射性物質が完全に閉じ込められており外への影響がないとは言えないということも否定できないということになるのではないか。イエスかノーかで。

○黒木政府参考人 お答えいたします。

 どういう形でこういう高濃度のものが出たかということについては調査中でございますが、先生御指摘のように、ベントの過程において放射性物質が放出されたもの、それが付着した可能性があるということでございます。現在、調査を進めているところでございます。

○高橋(千)委員 その次の質問にはあえてお答えがなかったかなと思います。やはり、非常に腹立たしい思いがいたします。ベントの時期から見て、これほど長い間たってからまたこの十シーベルトという高い放射線量が出てきた、ではその間どうなっていたのかという本当に不安の声が広がるのは当然ではないかと言わなければならないと思うんですね。

 次に進めたいと思うんですけれども、資料を配っているわけですが、先に後ろのページを見ていただいて、昨日東電が公表しました作業の写真であります。ちょっと色が変わっているところがその検出された配管のところだと思うんですけれども、正直言って、こんな原始的な作業をやらなければならないのかということに大変衝撃を受けたわけですけれども、作業員が三人、被曝した最高値は四ミリシーベルトと紹介をされています。これらの作業員が東電の正社員なのかどうか、また、勤続年数について伺います。

○黒木政府参考人 お答えいたします。

 三名の作業員の方が約四ミリシーベルトの被曝をしてございますが、これらの方々はいずれも東京電力の正社員ということでございます。

 また、それぞれの勤続年数でございますが、一名の方は約三十年、他の二名の方は約十年の勤続年数であるというふうに聞いております。

○高橋(千)委員 はい、わかりました。

 そこで、厚労省は、前回この問題を指摘したときに、五月二十三日から、一日の被曝線量が一ミリシーベルトを超えるおそれがある作業について、事前に放射線作業届を富岡労働基準監督署に出すよう指示をしているという答弁をしています。

 それが実際にそうなっているということを私たちは一日に確認してきたわけですけれども、では、今回の作業、三人の方が約四ミリシーベルトの被曝をされたということでしたけれども、予想される被曝量を何ミリシーベルトと東電は届け出をしていたのですか。厚労省に伺います。

○宮野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の放射線測定業務につきましては、七月二十八日に東京電力から放射線作業届が富岡労働基準監督署に提出をされております。

 この作業届によりますと、予想される被曝線量につきましては、これは作業期間一カ月間でございますが、平均で約二ミリシーベルト、最高で約十四ミリシーベルトという内容になっております。

○高橋(千)委員 ちょっと今、私、昨日聞いたときは十ミリシーベルトというふうに聞いていますけれども、一カ月間ということは、最大で十四ミリシーベルトになるのは、これは一カ月作業した場合という趣旨で報告だったということですか。

○宮野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この作業につきましては、これまでも継続的に作業を行っております。その中で、この平均二ミリシーベルト、最高十四ミリシーベルトにつきましては、具体的には六月の実績を踏まえてこの数字で届けが出されているというふうに承知をしております。

○高橋(千)委員 ですから、聞いているのは、一カ月続けると最大の十四になるという意味ですかと。

○宮野政府参考人 作業届としては、一カ月間で平均二ミリシーベルト、最高で十四ミリシーベルトということでございます。

○高橋(千)委員 わかりました。

 私、これは届け出があったということをゆうべのうちに確認しております。それで、結局、放射線管理をするために、一ミリシーベルトを超えるだろうと思われる作業は届け出をしてくださいと厚労省は決めた。しかし、現実にそれが何かの歯どめになったのかなと。要するに、これは避けられぬ被曝だから仕方がないということなのか。一月たつと十四ミリシーベルトですよとわかっていたものを認めるのか。二百五十、全部、限度はそこだからしようがないと思っているのか。率直に厚労省の考えを伺いたいと思います。

○宮野政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回の放射線測定業務でございますけれども、これは、あらかじめ高い線量の場所を特定して、無用な作業員の被曝を避ける上で重要な業務であるというふうに考えております。

 今回の事案につきましては、遠隔操作によりまして瓦れきを撤去した後の環境放射線量の変化を測定するに当たりまして、離れた場所からガンマカメラで放射線量が高い可能性がある場所をあらかじめ把握した上で、作業員の被曝のリスクも考慮して、先生がお配りになった資料にもありますように、約三メートル離れた場所から棒の先に計測器をつけて測定をしたものでございます。

 いずれにいたしましても、今後も、瓦れき処理等の進展によっては、高い線量の場所が発見されるということも十分考え得るところでございますので、今後ともこの環境放射線の測定を実施する必要はございますけれども、作業に当たっては、できるだけ線量の低減が図られるように、東京電力に対しましても指導を徹底してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 私は、十シーベルトで、今回の被曝が四ミリシーベルトなんだということで、とても承服できる事態ではないのではないかと。それが、今後も当然そういう作業が予想できるということで、これで対策がとれているというふうにとても言えないということを言わなければならないなと思います。

 それで、ちょっと関連しますので資料に戻りますけれども、この間、情報公開を請求した団体があったということで、新聞報道で話題になった文書でありますけれども、四月一日に保安院が労働局と協議した、「放射線業務従事者の線量限度について」という文書であります。

 ここには、真ん中に書いてありますけれども、今後の緊急時作業により、百ミリシーベルトを超える者が三百二十名、五十ミリシーベルトを超える者が千六百名と試算をしている。それで、もともとの基準は年間五十ミリ、五年間で百ミリシーベルトという総量規制があるわけなので、それを守っていれば全国の原発の管理業務に重大な弊害を招くおそれがある、このように書いているわけです。

 これをめくっていただきますと、今後一年間で、最大三千五百名くらいの熟練技術者が必要となる。著しい逼迫ということで、今後一千名から二千名前後の熟練技術者が不足する事態が継続する、これは、福島第一原発の処理及び全国の原子力発電所の運用に重大な支障を来す、このように書いているわけであります。

 ということは、要するに、線量を守っていれば人が足りなくなるので、原発を維持管理ができなくなるので、もうそれはしようがないのだ、つまり、緊急作業を別枠として、二百五十ミリシーベルトを超えた人はほかの原発での作業は認めてほしい、そういうことを保安院が言ったということになるわけですね。これは本当に、原発の稼働が安全よりもまず先にあって、非常に手前勝手な議論ではないか、私はこのように思います。

 まず、三百二十名、千六百名の根拠は何か。

○黒木政府参考人 お答えいたします。

 当時、四月一日の前後の状況でございますが、事故収束に向けた工程が進捗するに伴いまして、福島第一原子力発電所で作業に当たる作業員の被曝線量の増加が想定されていたところでございます。作業員は他の原発におきましても作業に従事する必要があるということから、緊急時の被曝線量限度と平常時の被曝線量限度は別枠で管理しなければ他の原子力発電所で作業に従事できなくなるという懸念が示されていたところでございます。

 このため、当時、原子力安全・保安院の事務方の方から、東京電力及び協力会社に対しまして、事故収束に当たる作業員の被曝量の試算を口頭にて指示をいたしまして、報告を受け、その内容を取りまとめて厚生労働省に提出したものでございます。

 当時、事業者から提出されたデータにつきましては、その時点でのこれまでの被曝量の傾向と今後想定される作業量から算出されたものでございます。詳細な作業工程や作業環境から推定したものではなく、具体的な工程等が不明な中、大まかな傾向を概算として示していただいた、それを厚生労働省に提出したということでございます。

○高橋(千)委員 要するに、何の根拠もないわけですよね。これは上に書いてあるように、プラントメーカーがこれだけ必要だと言っている、では、そのバックデータは何かといったら、一切データがないわけです。それをまとめた東電がこのような数字を出してきた。

 被曝の問題が起こったときには、十シーベルトでも、四ミリシーベルトにとどまりました、それほどではないですよということを言っている、あるいは避けられるということを言っていながら、予測するときは過大な数字を出しておいて、これだけの被曝のおそれがあるから、足りなくなるから、それで、安全を守れということではなくて、基準を緩和しろ、そういう形になっていくわけですよね。

 では、保安院は、言ってみれば、東電の言い分を丸々言っているにすぎないわけですね。いわゆるその従事者を守るという立場は、保安院は何もしないということですか。

○黒木政府参考人 お答えいたします。

 当時におきましては、今後増大するであろう被曝線量、それを見積もって、他の原子力発電所、これも安全管理にどうしても必要なものがございますので、その状況について試算という形で集めて厚生労働省に提供したということでございます。

 保安院におきましても、線量限度について、それぞれ原子力事業所ごとに規制値として定めております。今回、現地に、保安検査官が福島第一原子力発電所に常駐しているところでございますので、被曝線量についても、しっかり保安検査官によってその状況について監視するという体制をとっているところでございます。

○高橋(千)委員 全く答えになっていないと思います。七月十三日の東電に対する指示を読んでも、評価の体制ができていないということを指摘しています。いわゆる内部被曝の評価が時間がかかっている。そのためにきちんと体制をとれということは言っているけれども、それを避けるための努力とかそうしたことについては一切触れていないということを指摘しなければならないと思います。

 最後に大臣に伺いたいと思うんですが、済みません、ちょっと通告と違うことを聞きますが、大臣は、緊急時の被曝線量限度を二百五十ミリシーベルトと決めたときに、これはある意味、苦渋の決断だったのかと思うんですね。これは今だけだ、本当に緊急時だからやむを得ないという、そういう判断をされたわけですけれども、今議論をしている保安院のこの文書というのは、ICRPの勧告によると、生涯一シーベルト、つまり、二百五十ミリシーベルトを超えるような緊急作業を生涯に四回やってもいい、それで担保されているよという議論になっているわけですよ。

 本当にそれでいいのかということをやはりしっかり受けとめていただいて、大臣の決意を伺いたいと思います。

○細川国務大臣 原発での作業をされている皆さんについての被曝量、これをしっかり管理しなきゃいかぬというふうに思っております。

 私も、この緊急作業というのはあくまでも緊急時にその作業をする人の被曝量の数値ということで設定をしているわけでありまして、その緊急時がいつまでもずっと続くということはいかがかというふうに思っておりますので、そこはどういう形に持っていくかということについては検討もしなければというふうに私自身は思っております。

 やはり第一原発のところで仕事をされている、この原発の事故を収束するために本当に一生懸命仕事をしていただいておりまして、そのことについては私は本当に敬意も表する次第でありますし、その作業員の方々が被曝をされて体の調子がおかしくなるということにはさせたくない、してはいけないというふうに思いますので、放射線の管理についてはしっかりやっていきたいということで、今後、長期的な意味でも、データベースをつくって健康管理をしていくということもさせていただくということになっております。

 委員の御指摘のこともしっかり踏まえまして対応してまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 終わります。ありがとうございました。

 


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