国会質問

質問日:2017年 3月 15日 第193国会 厚生労働委員会

雇用保険法等改定案、残業時間上限規制について

月100時間未満やめよ
残業時間上限規制で追及 高橋議員

 日本共産党の高橋千鶴子議員は15日の衆院厚生労働委員会で、安倍首相が残業時間の上限規制を「月100時間未満」と示したことについて、「過労死ラインまで働かせてよいと政府がお墨付きを与えるもので絶対やめるべきだ」と迫りました。
 高橋氏は、これまでの質疑でも大臣告示による「月45時間、年360時間」を法に定めるべきだと求めてきたことを指摘。「月45時間超は年6カ月のみと制限したものの、年限は720時間と広げている。半年間は毎月75時間でもよいことになり、結局過労死ラインすれすれの残業が慢性化する」と批判しました。
 塩崎恭久厚生労働相は、大臣告示を超えるのは「繁忙期など特別な事情がある場合のみ」だと述べ、上限規制は「大きな前進だ」と繰り返し答弁。高橋氏は、昨年度の「過重労働重点監督」の結果、法令違反のあった事業所では、月80時間、100時間超の残業が大部分を占めていたことを示し「“特別な事情”だと言えばこれらも指導の対象にさえならなくなるのではないか」とただしました。
 育児・介護休業法改定案について高橋氏は、育児休業を最大2年まで再延長を認めることは「あくまで臨時的な措置であり、必要な保育所整備を行うのは大前提だ」と指摘。男性の育休取得率が2・65%と著しく低いが、その期間は2週間が一番多い(全労連調査)と指摘。育休を取ると昇給できないなどの環境を変えるべきだと迫りました。
(しんぶん赤旗2017年3月16日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 初めに、資料の一枚目に昨日の読売新聞をつけました。見出しが「政治決断 連合に配慮 残業規制決着」とありますが、結局、この間議論をしてきた繁忙期の上限規制が百時間未満ということに決着したと報じるものであります。きのうは、全紙が一面に、この百時間という数字が躍っておりました。
 総理がこの未満をつけたそうでありますけれども、九十九時間まではオーケーということになり、結局、過労死ラインまで働かせてよいと政府がお墨つきを与えることになる、これは一緒だと思います。
 高橋まつりさんのお母さんも、過労死遺族の一人として強く反対します、このような長時間労働は健康に極めて有害なことを政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ法律で認めようとするのでしょうか、全く納得できませんとコメントを発表されています。
 総理は、過労死をなくす強い決意のもと、労働界と産業界が合意したことは画期的だと述べたそうですが、強い決意があるなら、どうして過労死ラインを認めるのですか。絶対やめさせるべきです。
○塩崎国務大臣 今お触れになられました今回の労使合意では、時間外労働の上限規制につきましては、月四十五時間かつ年三百六十時間を原則としておりまして、一時的な業務量の増加がやむを得ない場合に限って一年七百二十時間、これは月平均六十時間となるわけでありますが、こういった特例を認めることとしております。
 このように、一カ月当たりの時間外労働時間の限度は原則月四十五時間としておりまして、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意をしなければ、これを上回ることはできないということになっております。
 さらに、労使合意では、特例の場合について、休日労働を含み、単月は百時間を基準値とするというふうになっておりまして、一方で、特別条項を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなくて、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要だということが明記をされているわけであります。月百時間といった時間外労働を安易に認める趣旨では全くないというふうに考えております。
 加えて、この点につきましては、「指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を盛り込む。」ともされておりまして、厚労省としては、この合意を踏まえて具体的な制度設計を行ってまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 読売を採用したのは、実は、このグラフがとてもわかりやすいからなんですね。数字がいっぱい出てくるのは、一体どういうことなんだろうかということなんです。
 私が先週の金曜日あるいは二月二十七日の予算委員会でも繰り返し質問したのは、一つは、先ほど大臣が言ったように原則四十五時間、三百六十時間なんだ、しかし年は七百二十時間だ、こういうときに、四十五時間を超える場合、それが毎月でもよいのかという質問をしました。現行の特別条項は年六回と決まっている、それをあえて書かなければ毎月六十時間でもよいことになるのかということを何度も聞いたわけです。そのときは明確な答えがありませんでしたが、今回は、これは六カ月のみとなりました。その趣旨が生かされたのかなと、まずは受けとめたい。
 それで、私がなぜこの回数にこだわったのかというのは、毎月四十五時間を超えるということになると、結局、大臣告示基準を法律に書いた意味がなくなること。もう一つは、結局、慢性的な長時間労働が続くじゃないか、四十五時間を超えれば疲労が蓄積されていくと言ってきたにもかかわらず、それをずっと超えてもいいとなると、やはりそれは慢性的な長時間労働だということが言いたかったわけなんです。
 しかし、いろいろ算数をやってみますと、いろいろな罰則がつく例を八十、百とやっているわけなんですね。七百二十時間と、年を倍に広げました。そうすると、半年間は毎月七十五時間でもよいことになるわけなんです。あるいは、一月は、非常に繁忙期なので百時間未満となって、九十九時間だとしましょう。そうすると、残りは七十時間が五カ月あることになるわけですね。そうすると、やはり過労死ラインすれすれの残業が慢性化することになるのではないかということなんです。
 資料の二枚目を見ていただきたいんですが、この間、「かとく」が過重労働重点監督をずっと行ってきて、昨年度のまとめが出たわけなんですけれども、押しなべて昨年よりもふえております。法令違反の事業場が四千七百十一、六七・二%もあるわけですね。時間外、休日労働が一カ月当たり二百時間も超えているなど、悪質な事例もあります。しかし、大部分は、見ていただければわかるように、八十時間を超えるもの、百時間を超えるものというところなんですね。「かとく」の重点監督も、八十時間を超えるものを目安として監督をしてきたわけです。
 そうすると、ここの部分は違法ではなくなって、指導の対象にさえならなくなるんでしょうか。
○塩崎国務大臣 高橋委員はこの六回というのにずっと注意を払っていていただいたわけでありますが、今般の労使合意では、一カ月当たりの時間外労働時間の限度は、先ほど来申し上げているように、原則月四十五時間と確認をされたところでありまして、臨時的な特別の事情がある場合、これは、この合意の文書にもございますように、「月四十五時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする」ということが明示をされたわけでございまして、これを上回るわけにはいかないということでございます。
 加えて、労使合意では、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなくて、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要だということも重ねて書かれているわけでございまして、私どもとしても、これを強調しながら、今回、計画をつくっていきたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 答えていただいていないと思うんですね。
 結局、問題になるのは、確かに、努力をしなさい、なるべく安易に百時間と結んじゃいけないんですよ、それを言うのはわかります。わかるけれども、しかし特別な場合は認めるとしてしまったわけですから、うちの事業場は九十九時間です、これは別に違法じゃありませんとなったときに、指導ができるんですかと言っている。そういうことをみんなが懸念しているんです。
○塩崎国務大臣 今回の合意の画期的なところは、これまで、労政審を含めて労使の間で労働時間の上限規制については合意がなかなかできなかった、そして、特に法律でもってこの上限時間を設定するということができなかったし、特にこだわっておられる六回以内、ここのところが青天井であったということがあって、しかし、今回はそれにふたをするという格好にやっと法律でもってできるようになったわけであります。そういう意味で大きな前進だというふうに私どもは思っているわけでございますので、これを受けて私どもとしては、この合意のラインでもって考えながら、次回の実現会議で御議論を賜って、計画をつくり込んでいきたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 よく、労使の合意がこれまでできなくてやれなかったんだからとおっしゃいますけれども、それはやはり政府の決意次第だったと私は思いますね。
 今聞いているのは単純なことなんですよ。きちんとこれまでどおり指導していきますかと聞いているのに対して、どうしていろいろ言うんでしょうか。それができなくなるんですかと。そんなことはありません、過労死をなくすためには引き続いてやっていきますとなぜ堂々と言えないんですか。それだけのことを聞いています。
○塩崎国務大臣 それは当然、指導は私どもとして今回新しく法律をつくる哲学でもってしていくわけでありますから、長時間労働はできる限り控えてもらうようにしていくというのが当然私どもの指導するラインであって、長時間労働あるいは過労死をなくすという総理の決意は私どもも共有をしているわけでありますので、しっかりと今回の哲学でもって指導をしてまいるつもりでございます。
○高橋(千)委員 初めから使用者側が百時間にこだわっていた。総理の決断で未満はつけたわけですけれども、絶対、繁忙期は必要、そういう声がずっとあってなかなか一致できなかった。それは、初めから百時間でおさまらないことはわかっている。だったら、初めから業務量が多過ぎるんです。もともと、人手をふやす以外にないんです。そのことを置きかえてはならないと思います。
 私は、一律規制をやることによって、あるいは除外や例外は災害時など極めて限定的にする、そうして全体として、オール・ジャパンとして労働時間を減らしていくんだ、そうでなければやはり幾らスローガンは掲げても変わらない、このことを重ねて指摘したいし、十七日ですか、働き方改革実現会議があるようですけれども、これはもう絶対やらないということを重ねて指摘したいと思います。
 きょうは次の質問があるものですから、進みます。
 職業安定法について質問します。
 現在、ハローワークでは、民間職業紹介事業者に関する情報を提供し、一方、民間職業紹介事業者に対して、事業者の了解を得て、オンラインで情報を提供できることになっています。
 それぞれ、どの程度の民間職業紹介事業者が参加して、実績がどの程度あるんでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 ハローワークでは、労働市場全体としての求人、求職のマッチング機能を強化するために、職業安定法五条の二の規定、職業安定機関と民間事業者等との相互協力の規定でございますけれども、これに基づきまして、平成二十五年十一月から、求職者本人が職業相談窓口で民間人材ビジネスの利用を希望した場合には、民間人材ビジネスを紹介したリーフレットを配布しております。
 今までに民間紹介事業者からリーフレットの配布申請を受理した件数は二千八百七十八件でございまして、実際に配布したリーフレット数は三十八万五千四百二十一枚でございます。
 それから、平成二十六年九月からは、ハローワークの求人情報のオンライン提供を行ってございますけれども、これにつきましては、平成二十八年の十二月時点で、民間職業紹介事業者五百九十三団体が利用しております。
 平成二十七年度のこの利用に基づく採用決定の実績につきましては、民間職業紹介事業者の採用決定数九百件、地方自治体等も含めますと、合計で四千七百四十三件となってございます。
○高橋(千)委員 まず、三十八万枚以上のリーフが配られていると。一定、数字が積み上がってきたなと思って聞いておりましたけれども、同時に、オンライン提供の場合は、もちろん事業者が了解しなければならないわけですけれども、採用決定数は四千七百四十三件、ただ、民間職業紹介事業者の割合でいうと九百件ということで、実績がない事業者もあるという計算になると思うんですね、これは五百九十三団体とおっしゃっていましたから。そういうことをまず現状認識しました。
 その上で、今これを実施しているのに、今回の改正で、ハローワークでも職業紹介事業者に関する情報を提供するとまた書いたのはなぜでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 職業紹介につきましては、ハローワークの職業紹介と、それから創意工夫を生かした民間の職業紹介事業者等による職業紹介が相まって、より適切、円滑なマッチングが進められることが望ましいというふうに考えてございます。
 そして、こうした考え方のもとに、先ほど申し上げましたとおり、現在も、民間人材ビジネスから自社のサービス内容等を記載したリーフレットを公募いたしまして、民間人材ビジネスの活用を希望する求職者に対してリーフレットを配布するなど、連携を行ってございます。
 今回の法改正は、こうした取り組みを法律上位置づけるという面もございますけれども、職業紹介事業の運営を見える化するという観点から、就職者数や、あるいは離職者数、手数料に関する事項など職業紹介事業者の業務実績等に関する情報を、希望する求職者や求人者に提供するようにしていくものだと考えてございます。
○高橋(千)委員 あえて書いてさらに拡大したいということなのかなと思うんですが、ちょっとその関係で、問いを飛ばして進みたいと思うんです。
 昨年六月三日に、雇用仲介事業等のあり方検討会報告書が出されて、さまざまなことがあるんですけれども、面積要件を廃止すると出されました。今はおおむね二十平米以上が課されている面積要件を廃止し、事業所の外でも、プライバシーや個人情報の保護の措置が講じられていることを条件として可能だとされました。
 しかし、これは法律事項ではなくて通達などで緩和されることになるので、言わなければ気づかないということになるわけですよね。そうすると、事業所の外だとすると、例えば喫茶店などでも認めるということですか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、現在、職業紹介事業者の許可要件、二十平米以上という要件がございますけれども、今回におきましては、プライバシー保護の措置といたしまして、個室の設置やパーティション等での区分などを有するという要件、それから、他の求職者や求人者と同室にならずに対面で職業紹介を行うことができるような措置を講ずる、こういった要件を前提といたしまして面積要件を外す。逆に言いますと、このいずれも満たさない場合には、従来どおりの面積要件を課すということでございます。
 また、事業所外でございますけれども、これに加えまして、職業紹介責任者が職業紹介を実施している場所にいること、または速やかに到着できることという要件を課す予定でございますので、こうした要件からいたしますと、一般的には、喫茶店などにおきまして職業紹介事業を実施するということは要件を満たさないのではないかと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 きのうのレクでは、個室があればとおっしゃいましたが、違いますか。
○鈴木政府参考人 一般的と申し上げましたのは、一般的には喫茶店は個室等がございませんので、対象とならないかということでございます。
 もし仮にこういった要件を満たす喫茶店等があれば、それは要件には該当するということでございます。
○高橋(千)委員 そういうことなんですね。事業所を持たなくても、事業所の中でなくても、求人、求職の方が、事業所の近くに喫茶店があって個室があればそれでもできるよ、そういうふうにかなりの緩和だと思います。
 それで、改めて聞きますが、これはちょっと通告していませんが、単純な質問です。
 雇用仲介事業というのは、いわゆる民間も含めた職業紹介事業者より広い意味になると思います。公共職安や学校や労働組合や民間職業紹介事業、そのほかにどんなものを想定していますか。
○鈴木政府参考人 雇用仲介事業でございますけれども、例えば労働者供給事業、現在、職業安定法の規定がございますが、そういったものでありますとか、雇用情報の提供事業者、いわゆる求人広告とかインターネット求人メディアなどを想定しているところでございます。
○高橋(千)委員 そういうことなんですね。要するに、派遣会社もそうだし、就活サイトやフリーペーパーや広告、そうしたもの一般を雇用仲介事業と、これをかなり広げていくというのが今の方向ではないのかというふうに思うんです。
 もう一つ聞きますが、職業紹介事業者間の業務連携についても、より迅速かつ的確なマッチングの実現を図るため、複数の職業紹介事業者と業務提携することも可能であることを明確化することが適当とされました。複数の職業紹介事業者。そうすると、法令上の義務については、求職者に対応した事業者が負うとされています。例えば私が先週取り上げた労働条件の変更など、それが納得いかない、そういうトラブルがあったときに、責任が曖昧になりませんか。
○鈴木政府参考人 今回、求職者、求人者の利便に供するということで、複数の事業者の連携につきまして、その要件を明確化するということにしたものでございます。
 労働政策審議会の建議におきましては、職業紹介事業者と複数の職業紹介事業者間の業務提携につきましては、労働条件等の明示義務は、原則としまして、求職者から求職を受理した職業紹介事業者が履行するという提言をいただいてございます。
 こうした求職者の保護につきましては十分に配慮いたしまして、今後、詳細の取り扱いにつきまして検討を進めてまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 これはやはり、どんなことが起きるのかをよく想像してみるべきだと思うんですよ。例えば東京と埼玉とか神奈川とか首都圏の範囲で業務提携している、そういうふうなイメージをすれば意外に身近かなと思うかもしれないけれども、決してこれは同じ系列会社とかというわけではないんです。全然違う会社でもいいし、複数と言っているから、二つでなくてもいいわけですね。三つでもいいわけなんです。だから、その人の情報がいろいろな会社に回るということになります。
 東京で希望して、北海道に就職したい、そういうときも東京の会社がどこまで責任を持てるんでしょうか。もう採用直前まで行ったけれども、こんなはずじゃなかったというときに、本当にできるんでしょうか。今回は国外まで認めるわけですからね。そういう点では、責任の所在が本当に大丈夫なのかということを重ねて指摘したいというふうに思います。
 それで、この検討会の報告書が出される一年前の規制改革会議の第三次答申には、多様な働き方を実現するために何が必要かを再検討して問題を抽出すると。それで、昨年答申で取り組んだ円滑な労働移動を支えるシステムの構築、これのために、一つが今言っている雇用仲介事業の規制の再構築、そしてもう一つが労使双方が納得する雇用終了のあり方について、いわゆる最後に出てくる解雇の金銭解決だと思うんですがね。
 この間も、いろいろリストラ助成金など取り上げてきました。しかし、職業紹介は単なるマッチングというビジネスになってしまって、ハローワークの民間事業者への開放、そして取り締まる労働基準監督官も民間委託という、最悪のシナリオが見えてきたと言わなければなりません。
 職業安定法そのものは、一九一九年の第一回ILO総会において、失業に関する条約第二号、失業に関する勧告第一号が採択されて、大正十一年から出発したと聞いております。戦後、日本国憲法とともに再出発したときには、国営による職業紹介事業を行うことによって、労働者の職業選択の自由と事業主の雇い入れの自由を前提として、求職者と求人者の間に立って雇用関係の成立をあっせんするものだ、自由の原則、適格紹介の原則、公益の原則、均等待遇の原則、中立の原則、労働条件等明示の原則に基づいて行うべきとされた。
 これは本当に今、派遣のときも議論になりましたけれども、例外がどんどん原則と成りかわってきている、改めて私は原点に立ち返るべきだ、このことを指摘したいと思います。
 それで、きょうは育児・介護休業法についても質問をしたいと思います。
 この間、きょうもたくさん議論がありました。保育所に入れない場合等に限り、最大二歳までの再延長を認める、これは、保育所整備が先であるということと、待機児童の定義から外さないという指摘が繰り返しあった。私は全くそのとおりだと思っております。
 ただ、今回の法案はそれが目的だったのではなくて、昨年十二月の労政審の建議で、国として、育児休業を取得した労働者が安心して職場復帰できるよう保育所等の整備を一層進めることが必要であること、四月に限らず育児休業から復帰を希望する時期に子供を預けられる環境の整備及び保育の質の確保が必要とされて、あくまでも今回の育児休業の延長は緊急的なセーフティーネットの一つとして位置づけたものであって、本来は保育所政策の後退ではないはずなんですよね。
 大臣に確認をします。今言ったようにあくまでこれは緊急避難的な措置であって、必要な保育所整備を行うのが大前提であること、また、再延長したことが保育所入所を希望する保護者にとって不利にならないよう徹底すべきである、このことをお願いします。
○塩崎国務大臣 御指摘の育児休業期間の延長というのが今回提案をされているわけでありますが、労働政策審議会での議論を踏まえて、子供が保育園等に入園できないことを理由に離職をしてしまうという事態を防ぐ、このために緊急的なセーフティーネットとして行うものでございます。審議会から、おおむね妥当との答申をいただいたことを受けて、今回こういう形で御提起を申し上げているわけであります。
 あわせて、育児休業からの復帰を希望する時期に子供を預けられる環境を整備するために、保育の実施主体でございます各市区町村、ここが行います保育の受け皿確保等の取り組みを強力に支援して、そして、引き続き待機児童の解消に全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 確認をさせていただきました。
 この問題は、保育所待機問題あるいは保育所をどう改善するかという問題については、先ほど来議論が出ているように、やはり集中的な審議を行うべきだ、このように思っております。
 それで、私は、育児休業をとるかどうか、いつとるか、どのくらいとるか、これは本人が選択するものだと思っています。そのためには、とれる環境づくりあるいは職場であり、所得保障も含め、進めていくべきだと考えています。
 この資料の4を見ていただきたいんですね。この上の方は、よく見る育児休業の取得率です。これは、率だけは女性は八割台をキープしています。現在八一・五%。これは厳密に言うと離職した人の割合が入っていないからだとか、議論を今までしてきたわけですが、しかし、比べると男性は二・六五%にとどまっている。これはこの間議論されてきたこと。
 問題は、下を見ていただきたいんですね。全労連女性部がとったアンケートで、産休、育休をとった妻の配偶者で育休をとった人がどのくらいいるかというのは、実は五・八%しかいないんですね。その中の割合でも、どのくらいの期間育休をとったか、一番多い答えは二週間未満なんです、四四・九%。たったそれしかとれていない。三カ月まで広げて、七七・五%なんですね。
 これは、六カ月とれば云々という議論、パパ・ママプラスどころではないわけなんです、現実は。きのうの参考人も、天野さんや矢島さんなども指摘していました。パパも育休をとれるためのメリットをつくって促進するべきだと思います。
 そこで、具体的な提案をします。
 資料は、ちょっと飛んで申しわけない、下から二枚目の7です。
 両立支援等助成金というのがあります。育休取得時の代替要員を確保した場合、これは右側にありますが、一人当たり四十七万五千円、一つの事業所で十人まで五年間支給するという制度がありますね。かぎ括弧して六十万円というのがあるんですが、今回改正される生産性要件を入れるとということなんです。これ自体はちょっと問題があるんですが、しかし、この代替要員というのは若干見直しをしてきたんですが、この間頑張って続けてきたわけです。どの程度の実績がありますか。そして、それをもっと使うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
 働く方が出産、育児を経ても働き続けられるようにするために、育児休業取得者の代替の要員を確保していただく中小企業の事業主の方々に対して、今御指摘の両立支援等助成金を支給しているところでございまして、この二十七年度の支給実績は六百八十二件となってございます。
 この助成金は、二十八年度から支給額を一人当たり三十万から五十万に増額、充実をして、その上で、今資料にもお示しいただきましたように、二十九年度の予算案では、生産性要件を満たす場合には六十万という形で計上をさせていただいております。
 私ども、今後とも、仕事と家庭の両立支援に取り組む中小企業の方々にこれを一層活用していただくということが大事だと思いますので、周知徹底についても努力をしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 これは私、仙台の地方労働局に行ったときに、こういう制度があるということを中小企業の事業主が知らずに、制度があるんですよと言うと初めて、ああ、そうかとなるんですということを聞いたことがずっとひっかかっていて。ただ、今でも、それは何年もたったんですが、たった六百八十二件。拡充はしてきたけれども、まだまだ少ないですよね。二十七万人以上が育児休業給付を受け取っているという実態から見たら、もっと思い切って広げていくべきではないか、このように思います。
 次に、この育児休業給付については、夫婦ともに六カ月ずつ六七%まで給付をされる。六カ月を過ぎると五割にダウンしちゃうわけですけれども、やはり、せっかく今回延長をするということもあるわけですから、全期間給付を行うべきではないか。かつ、追加で延長する夫分は給付率を上乗せすることも検討すべきではないか。いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 まず、六七%の給付率を六カ月ずつということになっていることの趣旨は、女性を中心に育児休業が取得をされているという実態を踏まえて、原則として取得できる休業期間である一年の半分に当たる六カ月に限って給付率を六七%に引き上げることによって、女性だけではなくて男性も育児休業を取得するインセンティブとしたい、そういう発想でしているわけでございます。
 夫分の給付率を上乗せすべし、こういう御指摘をいただきましたが、給付水準のさらなる引き上げにつきましては、育児休業給付金について非課税であるために休業前の手取り賃金を超えてしまうおそれもあるということが一つ、それから、基本手当との給付のバランスを考慮する必要があるということから、慎重な検討が必要と考えているわけでありますが、いずれにしても、男性の育児、家事参加を進めていくということは、言うまでもなく大変重要なことであると思っております。
○高橋(千)委員 さっき紹介したように、結局、六カ月、男性もとって女性もとってというインセンティブだとおっしゃったけれども、二週間が限界だというのが実態ですから、これをどう変えていくかということを議論していかなければならないと思うんですね。給付の問題、所得保障の問題は非常に大きなとれない要因の一つになっておりますので、そのことを重ねて要望したいと思って、少し研究してくださいという、きょうは研究という意味で言っております。
 次に、職場復帰後も短時間勤務や時間外労働の制限など、子育てしながら働きやすい環境づくりが必要だと思います。
 一番下の資料、これは平成二十七年度の雇用機会均等法違反並びに育児・介護休業法違反に関する是正指導件数なんですね。
 育児関係を見ていくと、所定外労働の制限とか時間外労働の制限とか所定労働時間の短縮など、せっかく、職場復帰していきなりフルではなく、あるいは残業ではなく、ならしながら無理のない範囲でやっていくといういい制度があるんですよ。だけれども、それができていないということで是正指導の対象になっているというのが非常に多いわけなんですね。これはやはり職場の理解や協力が進んでいないと思いますが、いかがでしょうか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
 育児・介護休業法の履行を確保するために、都道府県労働局の雇用環境・均等部あるいは雇用環境・均等室におきましては、労働者の方々などからの相談に対する的確な対応というものをやらせていただくとともに、事業所に対する指導というものを積極的に行ってございます。特に法違反に係る事案につきましては、都道府県労働局長による助言、指導、勧告と、事案に応じて対応させていただいておりまして、その是正を図っているところでございます。
 御質問の平成二十七年度におきましては、育児関係で何らかの違反が確認された事業所に対しましては、一万四千八百四十九件に及ぶ是正指導を実施したところでございます。特に、そのうち、いわゆる所定労働時間の短縮措置でありますとか、あるいは時間外労働の制限という、育介法上に掲げてございますような労働時間に関する是正指導件数というのが約九千九百件、全体の三分の二になっているところでございます。
 私どもとしましては、今後、都道府県労働局の雇用環境・均等部あるいは室による是正指導を進めますとともに、あらゆる機会を捉えまして、法制度の周知、あるいはこういう事例の好事例と言われるものを提供させていただくことによりまして、職場復帰後も育児と仕事の両立をしやすい環境づくりというものを進めてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 資料の5と6に、先ほど紹介した全労連女性部のアンケートの続きなんですけれども、これは、育児のための短時間勤務制度が職場にありますかという質問に対して、トータルで七七・二%があると答えて、正規なら八割、非正規でも四四・三%。一応あることの方が多いんだなというのに気がつくんですね。だけれども、利用したのは四七・三%にとどまっている。
 それはなぜかというときに、めくっていただきたいんですが、非常に興味深いのは、制度を利用した方にも質問をしています。制度を利用した方が、よかったと答えているのが七五・六%と、よかったが一番多いわけですけれども、しかし、多忙で結局残業になることが多かったとか、賃金が減って困った、これは合わせて二割以上になるんですね。せっかく利用したんだけれども、それが本人にとってデメリットとなって返ってくる、これではやはり本末転倒だろうと思うわけなんです。
 同じように、利用しない方が右についてあるわけですけれども、所得保障がない、一時金が出ない、昇給がおくれる、そして、さっき私が紹介したように、代替要員がいない、こう答えている。
 この現実を思い切って変えていかなければならないと思いますが、一言いかがですか。
○塩崎国務大臣 育児休業の取得などを理由とする解雇とか雇いどめとか、昇進をさせない、そういう不利益な取り扱い、意地悪を受けるというのは育児・介護休業法に違反するものだ、そういう行為であるわけで、これは許されるわけではないわけでございます。
 また、事業主からの不利益取り扱いの禁止に加えて、上司あるいは同僚からの嫌がらせ防止をするために、育児休業取得に対するハラスメント防止措置の義務づけというのがことしの一月から既に施行になっているわけでございます。
 法に違反する事業主に対しては、都道府県労働局雇用環境・均等部において厳正な是正指導を行っているわけでありますが、引き続き、育児休業を取得しやすい職場環境づくりに取り組んでまいりたいと考えておりますけれども、何よりも、これは働き方改革の方で総理も私どもも申し上げているとおり、企業の文化や風土というものを変えていかないといけないと思っておりますので、そのために何をすべきかということをさらに考えていきたいと思っております。
○高橋(千)委員 男性が育児休業をとれない最大の問題は、やはり、とったことによってのデメリットが大き過ぎる。たった三カ月育休を取得した男性が昇給や昇格が認められない、これが違法とした最高裁判決がございます。この場合は、就業規則に育休をとった翌年は昇給させないと書いていて、ところが、翌年も、翌々年も試験さえ認めないという事案があって、これは違法だということが認められました。しかし、こういうことがほかにもあるわけですよね。たった三カ月、たった六カ月、それが後々まで昇給に影響するということでは、全くとれるはずがないわけなんですよ。
 ここで本当に強い国の指導を、今制度が変わってきたということを言っているわけですけれども、それを昇給、昇進に影響させないんだということ、もちろんそれは女性も同じですけれども、強い決意を示していただきたいということを指摘して、時間になりましたので終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

 

――資料――

2017年3月15日厚生労働委員会資料

 

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI