国会質問

質問日:2017年 3月 10日 第193国会 厚生労働委員会

雇用保険法等改定案、労働基準監督業務の民間委託化

国庫負担減「筋違い」
衆院委 高橋氏、失業給付で

 日本共産党の高橋千鶴子議員は10日の衆院厚生労働委員会で、失業給付の国庫負担を時限的に13・75%から2・5%に引き下げる雇用保険法等改定案について、現状でも失業者の2割しか失業給付を受給できていないことを示し、「必要な人が受給できていないのに国庫負担を減らすのは筋が違う」と批判しました。
 また、職業安定法改定案では、ハローワークで示された求人票と面接で提示された労働条件が異なる場合にも、変更を明示しさえすればよいことになっていると指摘。「求職者は雇用者に比べて立場が弱く、不利な労働条件が提示されても拒否できない。最初から低い水準で採用するねらいで求人票の労働条件を過大に書くこともある」とただしました。
 厚労省の鈴木英二郎派遣・有期労働対策部長は「それは虚偽求人であり、罰則の対象になる」として、虚偽かどうかの境目は「刑事訴訟で見極める」と答えました。高橋氏は「求職者が訴訟を起こさなくても済むように、適格紹介を原則にするハローワークが事業所に労働条件の確認をし、指導すればよい」と主張しました。
(2017年3月14日付より)

※冒頭、規制改革推進会議が検討している労働基準監督業務の民間委託化について質問。「ブラック企業の取り締まりなども期待され、もっとも民間委託がなじまない分野だ」と指摘し、「人手が足りないから」と民間委託するのではなく、労働基準監督官の抜本的な増員こそ必要だと強調しました。(記事:しんぶん赤旗2017年3月13日付

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 まず冒頭、労働基準監督官の体制について質問をいたします。
 資料の一枚目に、七日付の日経新聞をおつけしました。「労基署業務を民間委託」というこの見出しに非常にびっくりしたわけですけれども、最もなじまない分野のはずだ、こう思ったわけですね。長時間労働をなくすためにも活躍が期待されている監督官、記事では「九日の規制改革会議で検討に着手し、六月の答申に盛り込む」と書かれております。
 きょうは内閣府に来ていただいておりますが、二枚目に、みんな知らない知らないと言ったけれども本当だったんだなと思ったのは、やはり、記事にあるように、きのう規制改革会議がやられまして、「「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」の設置について」というものが決まったということで、資料の二枚目につけております。
 どういう経緯でこの議論が出て、どんなことを考えているのか、御説明いただければと思います。
○刀禰政府参考人 お答えいたします。
 ただいま委員からお話のありましたタスクフォースというものができたわけでございますが、これは昨年十月の規制改革推進会議で、本会議で取り上げる案件のうち、本会議での議論の前に専門的検討を行った方が望ましい課題について、必要に応じタスクフォースを置く、タスクフォースで取り上げる議題については本会議で決定するとされていたところでございます。
 その後、タスクフォースで取り上げる具体的な議題について検討が行われ、昨日九日の規制改革推進会議において、今お話がございましたように、労働基準監督業務の民間活用を議題としてタスクフォースを設置することが決定されたものでございます。
 今後、規制改革推進会議の答申取りまとめに向けて検討が進められることとなりますが、その具体的な進め方についてはタスクフォースの中で議論されることになると承知をしております。
○高橋(千)委員 済みません。もう一つだけ伺ってよろしいでしょうか。
 タスクフォースを設置するということは昨年の十月に決まっているわけですよね。ところが、今回決まったのはまだ一つ目だということであります。そして、議題はまだ去年の時点では決まっていなかったということなんですが、昨日伺ったところによりますと、八代氏が主査になることだけは決まっていた。議題は決まっていないんだけれども、八代氏が主査になることだけは決まっていたということなんですね。
 これは、最初から何か筋書きがあるんじゃないでしょうか。
○刀禰政府参考人 お答えいたします。
 経緯につきましては先ほど答弁申し上げたとおりでございますけれども、事柄の性格といたしまして、本会議というのはいろいろな案件を取り扱いますが、中には専門的な検討を事前に行った方が望ましい分野もあるのではないかという問題意識が、議長を初め委員の方々おられまして、タスクフォースというのを設置しながらこの本会議を機動的に運営していこうというお考えがあったものと理解をしております。
 その中で、タスクフォースの設置については、他のワーキングの座長等を決定する際に、本件については八代先生にお願いするということはあらかじめ決まっていたものでございます。その後、八代先生と大田議長等が相談をされまして、その中で、今回、議題の提案が行われ、このテーマを取り上げるということが決まった、そのような経緯でございます。
○高橋(千)委員 聞いていて皆さんも本当におかしいなと思うと思うんですね。
 本会議の前に専門的にいろいろと議題を決めてやるのは、それはありだと思うんですよ。そういうことを十月に決めておきながら、きのうまでまだ一つも立ち上がっていないわけですね。そして、いきなり立ち上がったんだけれども、立ち上がる前に座長だけは決まっていた。何を専門的にやるのかわからないのに、やる人だけは決まっていた。これは誰が考えたっておかしいですよ。
 実は、十月のその規制改革会議の前の九月の会議のときに、八代氏がこの民間委託について発言をしているんですよね。やはりそれはそんたくされているんだろうと思うんです。ちょっとだけ時間を置いたということなのかもしれません。
 言い出しっぺの八代氏がタスクフォースの主査になった。この八代氏は、三月一日付のダイヤモンド・オンラインで、次のようなことを述べています。
 「ブラック企業の労基法違反摘発を「民間委託」すべき理由」、これがタイトルです。「過労死等の事故が増え、政府の「働き方改革」でも法律で定められた上限を超えた長時間残業を罰則付きで規制することでほぼ合意されている。しかし、ここで見落とされているのが、労働基準監督官の不足に象徴される、職場環境を守る監視体制のお粗末さだ。 労働法違反の摘発を進めるためには、一般企業への定期監督等」、これは具体的なんですよ、「一般企業への定期監督等の業務の一部を民間事業者に委託することで、悪質な企業への「臨検」に力を入れられるようにする「集中と選択」が不可欠である。」要するに、人手が足りないから民間だと言っている。しかも、八代氏は、駐車違反の取り締まりも、いろいろ反対があったけれどもうまくいったじゃないか、そんなふうにやればいいんだと言っているんですね。これは本当に本末転倒だと思うんです。
 大臣、この考え方に対して、やはり厚労省として、それは違うと言うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 それは、ダイヤモンド・オンラインに載っている八代さんの書いたものについての今コメントがあったかと思うわけでありますけれども、私ども、先ほども答弁を申し上げたように、この労働基準監督業務の民間活用タスクフォース、これがこういうことになってできたという話は、できたということは聞いておりましたけれども、中身は、今、刀禰さんからもお話があったように、今後の議論の進め方は決まっていないというわけでありますので、まず、この規制改革推進会議でどういう議論が進められるのか、一体、民間活用というけれども、何に活用するのか。
 人が足りないということは、我々も非常に強化したいと思っていますから、そういう意味では、人を強化するということ自体は、人材を強化したいということはそのとおりであるわけで、また財政的にも非常に厳しいということもわかってはいますが、さあ、それをどういうふうにやるのかというのは、まだこれから私どもとしては議論しなきゃいけない。
 駐車違反をやるのと同じだというようなお話があるようですけれども、駐車違反とは少しやはり違うのではないかなという感じはいたします。
○高橋(千)委員 少しですか。もう少し自信を持ってお答えいただいたらいいんじゃないでしょうか。
 資料の三枚目に、監督官の定員の推移ということで十年間の数をつけておきました。監督官は、これは十九年度と二十九年度と、左から、ちょうど十年間のスパンでとっておりますが、十年間で二百八十人ふえているんです。しかし、下の方を見ていただくと、監督官を除く定員は二百六十九人減っております。合わせると十一人しかふえていないんですね、相対で。
 これはどうしてそうなっているかというと、二十一年度からは、新人事制度ということで、監督官として全部採用する。今までは、それぞれ安全衛生分野、労災行政、技官、事務官ということで採用しておりましたけれども、全部ひっくるめて採用して、それぞれの分野を一年ずつ回って経験を積むということになっているそうです。
 そうすると、確かに一つわかることはあるんですよ。つまり、監督官しかできない業務と言っていたおかげで、その方が例えばそれこそ育休をとったり病気になったりすると補充されていない、そういうところに私は居合わせたことがあって、やはりそれはだめだろうと思うんです。
 だけれども、一年ずつ順繰り順繰りだと、やはり必要な経験は積むことができない。安全行政というのは、化学物質ですとかさまざまなことを覚えなければなりません。労災は今とても複雑になっております。やはりその道をずっと積み上げていくということが大事なんじゃないのかというふうに思うんですね。
 特にこの間「かとく」の活躍が非常に目立ち、ブラック企業取り締まりなども期待されているんです。だからこそ、総枠をふやすべきなんです。
 さっき紹介した日経の記事に、雇用者一万人当たりの監督官を見ると、日本は〇・六二人で、主要国ではドイツの一・八九人や英国の〇・九三人などを下回ると指摘をしています。本来、ILO基準であれば、雇用者一万人に一人、つまり五千人以上にしなければならないんですね。
 働き方改革は安倍政権の目玉です。きちんと増員要求するべきと思いますが、いかがでしょうか。
    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕
○塩崎国務大臣 働く方の労働条件を守って、労働基準監督署はそれなりに頑張っているわけでありますが、監督署は、長時間労働の是正など監督指導を通じた法令遵守の徹底、そしてまた労働災害の防止というのも大変大事な仕事、そしてまた迅速な労災補償の実施、こういうような、いずれも重要な役割を求められておりまして、これまでも必要な体制の確保は努めてまいっているわけであります。
 平成二十九年度の定員については、今お配りをいただきましたけれども、監督署全体で九人増でありますが、そのうち監督指導を行う労働基準監督官は、長時間労働の是正に向けた法規制の執行強化の観点から五十人増、こういうことになっています。それから一方で、今お話をいただいたように、労働災害防止とか労災補償を担う定員は四十一名減ということにこの二十九年度はなっているわけであります。
 労働災害防止のための安全衛生指導、過労死等の複雑な事案を初めとする労災補償の適切な実施を含めて、労働基準監督署が求められる役割をしっかりと発揮できるように、今後とも監督署全体の体制確保に努めていかなければならないというふうに考えております。
○高橋(千)委員 二〇一七年の労働基準監督官の採用試験、「働く人たちを守る! 労働Gメン!!」という、なかなか工夫をして、どこかテレビドラマにあったものにちょっと雰囲気が似ているかななんて思って見ておりましたけれども、それぞれの分野で活躍している現場の人たちの写真とメッセージが載せられていて、とても意欲的なパンフレットかなと思いました。
 「労働基準監督官に任官された者は、ILO条約などで規定されている労働監督制度の趣旨に従い、労働基準法により労働基準監督官分限審議会の同意がない限り罷免されません。」こう書いている。やはり特別な存在なんですよね。特別な存在だからこそ、これを一部は民間でもいいんだ、社労士さんが来ていいんだ、そういう議論では全然ないということを、今大臣も懸命にふやしているということをおっしゃいましたけれども、それはしっかりと発言をしていっていただきたい。規制改革会議は、なかなか、大臣がいつも出ているのではなくて呼ばれないと行けない仕組みになっておりますので、やはり決まってからでは遅いわけで、声をうんと上げていっていただきたいということを重ねて指摘したいと思います。
 それでは、雇用保険について質問をいたします。
 本案では、雇用保険料率が〇・八%から〇・六%に引き下げられ、本則も一・二%から一・〇%へと再度の引き下げをいたします。
 きょう問題にしたいのは、国庫負担の部分です。
 資料の四枚目につけてありますけれども、国庫負担は本来は基本手当の二五%であるべきである、それが本則であるわけですけれども、今でもその五五%、つまり一三・七五%しか負担していません。ところが、今回は、わずか、その本来負担すべき額の一〇%、基本手当から見るとたった二・五%しか国は負担しないということに決まったわけです。これにより、一千百億円の国費が削減できます。こういうことになるわけですね。下にあるように、保険料率等国庫負担を減らしても、三年後にまだ積立金残高は三兆六千億円あるから大丈夫、こういう説明がされているのかなというふうに思うわけです。
 労政審雇用保険部会の報告でも、「雇用保険の保険事故である失業は、政府の経済対策・雇用対策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきであるとの考えによるものであり、失業等給付に係る国庫負担の制度を全廃することは、国の雇用対策に係る責任放棄につながり、適当ではない。」とされています。全廃じゃないからいいという意味ではなくて、「変更を加え、その低下につながるような場合も、国の責任の観点から合理的かつ十分な説明が求められる」としております。
 二・五%で国の責任を果たしたとは到底言えません。まして、基金が余っているから減らすとしか思えないんです、これでは。三年後に戻すと言っていますが、何の保証もありません。いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 近年の雇用情勢は改善をしているということは総理から何度も御説明を申し上げておりますが、そういうことから、雇用保険の被保険者の数は増加をする一方で受給者も減少傾向にあるということで、雇用保険財政はこのところ安定的に推移をしているわけでございます。
 今回の国庫負担の引き下げは、こうした状況を踏まえて、雇用保険制度の安定的な運営を確保できることを前提として、三年間に限定をして時限的に行うものでございまして、失業が国の経済政策、雇用政策と関係が深く、政府もその責任の一端を担うべきということで国庫負担を導入してきているわけでありまして、この基本的な考え方は全く変更はないということでございます。
 また、国庫負担率の引き下げを三年間に限り行うということは法律上も明記をされているところでございまして、その後は現在と同じ水準に戻るということに法律上もなっているわけでございます。
○高橋(千)委員 法律上もなっている、ですが、二〇一五年のときの報告も、「できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとする」、つまり二五%に戻すということを書いてあったわけですよね。それが、その後の今度の改正で逆に遠のいているわけですよね。近づくんじゃなくて遠のいている。法律に書いたと今おっしゃいました。だったら、これは絶対に変えないと約束いただけますか。
○塩崎国務大臣 今申し上げたように法律で三年に限ってということが書いてあるわけでありますから、当然、法律どおりこれは執行されるものだというふうに思います。
○高橋(千)委員 基金に余裕があるように見えるけれども、本来必要な人に支給されているのかということがやはり問題だと思うんです。
 完全失業者に占める基本手当受給率はどのようになっているでしょうか。そのうち、自己都合ということで給付制限を受けている受給者はどのくらいでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 まず、完全失業者に占めます基本手当受給率でございますけれども、平成二十七年平均で約二二%となってございます。
 ただ、労働力調査で完全失業者をはかるわけですけれども、その中に、雇用保険の受給者の中で、三カ月間の給付制限期間中の方についてはカウントされていない、その期間中はカウントされていないということがございますし、新しく仕事を探し始めた方や自営業を廃業した方も含まれていないということを考えますと、この二二%という水準がそんなに低いわけではないんじゃないかというふうに考えてございます。
 それから、給付制限を受けた方の数でございますけれども、平成二十七年度の受給資格決定者のうちで正当な理由のない自己都合離職であるために給付制限を受けた方は七十五万人となってございます。
○高橋(千)委員 今、七十五万人という数字をいただきました。給付制限の人などがいるから全体としては二二%でも少なくないんだという答弁でありました、ちょっと正直驚いて。
 今の答弁、新しく就職活動をする人も全部ひっくるめての数だからという答弁は前にも聞いているんですね。だけれども、資料の五枚目にその数字をグラフに示したけれども、私が前に質問したときは三割だったわけなんですよ。さらに下がっているじゃないかということですよね。
 しかも、先ほど井坂委員も質問されておりましたけれども、自己都合の人に対しても、この間何度も議論があって、一定、要件を見直ししているわけですよね。でも、それでもこんなに率が上がっていかないということは、やはり重く見る必要があるんじゃないか。そういう必要な人が受給権がとれていないのに、いや、基金がまだまだあるじゃないかというふうに見られるのは、やはり私は筋が違うというふうに思うんです。
 それで、一つだけ聞きますが、自己都合退職は今言ったように原則三カ月の給付制限があるんですけれども、部会報告においても、「特定受給資格者以外の給付についても見直すべきである旨の意見があったが、」と書いているんですね。「が、」の次が、後何もないんですよ。どうなんでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 報告書の中にそういう記述がございますけれども、そういう議論があったわけですけれども、その後、具体的にその議論を生かしてどうするということまで議論が深まらなかったということでございます。
○高橋(千)委員 とても残念な答弁ですね。せっかく議論があったと書いていただいたけれども、深まらなかったということでありました。
 であれば、今要望しますけれども、せっかくこの間、自己都合というふうに振り向けていたものを、いろいろな、そうはいっても会社の都合なんじゃないかということで、限定的に絞ってきた経過があるわけですよね。私も、これは自己都合にされているけれどもサインせざるを得ない関係、要するに労使の間でそういう関係にあったんだとか、そういう事例も述べたこともありました。
 だったら、一定の見直しをしてきたことでどんなふうに変化があったのか、見直しをするだけの材料が一定出てきているのかということについて調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 まず、自己都合離職の関係につきましては、御本人が職場でどういう状況に置かれて自己都合になったのかということにつきまして御疑問があられるときにつきましては、ハローワークの窓口で申し出ていただければ、実態を把握しまして、実際は自己都合じゃないんじゃないかというふうなことがあれば、その離職理由を見直して、給付も見直していくということは日常的にやっておるところでございます。
 それから、今回の改正におきまして、特定受給資格者の要件を変えるということで、例えば、事業主の方が労働条件を変更した結果、当初の労働条件と著しく異なることになったときについては、就職後一年以内に離職したケースしかそういう変更を認めていなかったんですけれども、労働条件変更後一年以内に離職した場合につきましては特定受給資格者として扱うようなことですとか、あるいは、育児・介護休業法の法的義務に事業主が違反した場合につきましては特定受給資格者として扱うとか、あるいは、妊娠、出産の不利益変更があったような場合につきましてはそういう扱いをするだとかといったような見直しはやっておるところでございまして、今後とも、給付制限がかかる、あるいは、特定受給資格者になる、ならないというふうな判断につきましては、きめ細かに状況を把握して、必要な対応をとっていきたいと思います。
○高橋(千)委員 引き続き、どんなふうに実際に運用されているのか、正しくされているのかと見ていきたいということも今ありましたので、引き続き見ていきたいなというふうに思っております。
 ちょっと質問の順番を変えて、一番最後の資料について質問したいと思います。
 労働契約締結前の労働条件等の明示について、今ちょっと触れられましたけれども、今回、求人票と違う労働条件を面接などで提示されても、弱い立場の求職者は拒否できなくなるんじゃないか、私、このように思うんですね。
 求人側の都合のよいように使われるおそれがあるわけで、やはりこれはやめるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 労働契約の締結に際して、一つ一つの具体的な労働条件について、通常、事業主と働く方との交渉などによって確定をするわけでありますが、働く方の希望とか能力などによって、最初の求人票などで示された労働条件から変更されるということは十分あり得るわけでございます。
 このように、実際の労働条件が求人票等で示された労働条件から変更される場合であっても、働く方がその変更点を十分に理解した上で労働契約に臨んで締結をするということになるようにすることは、働く方を保護するということになるんだろうというふうに思います。こういうことから、今回の改正では、こうした変更前の明示を新たに義務化するということにしたものでございます。
○高橋(千)委員 今大臣は、求職者の希望に沿った場合、希望とか能力によって変更される場合と、何かいい方向の話だけを紹介したと思うんですね。
 本来なら、労働条件の明示というのは、労働基準法十五条違反なわけですから、非常に慎重に扱わなければならないわけです。
 ここの資料の例も比較的いい例ばかり挙げているなと思いますけれども、1のところは、基本給三十万円と書いていたけれども、基本給二十八万円、こういうふうに変わる。労働条件が期待したものよりも下がる、賃金が実は安くなっちゃう、あるいは、週休二日制ですよとちゃんと書いていたのに時間が違っちゃう、こういうことが当然想像されるわけなんですね。
 日本労働弁護団は、ハローワークに苦情というのはもう毎年一万件を超えている、その中身は、今言ったように、賃金や時間が違うというものなんだと。そのときに、今は、働いてからの条件変更じゃないわけですよ。まだ働く前の、採用される前の話でしょう。そうすると、その方たちが、労働組合があるわけでもないし、まして就職活動をしているわけですから、全く弱い立場なんです。そういう人たちが、訴えるとかそういうことよりもやはり就活に専念したい、だったら諦めるしかないのかなというふうになっちゃうんだということを指摘しているんです。
 結局、そういう求職側の弱みにつけ込んでと言ったら表現がよくないですけれども、はなから二十五万円しか出すつもりはないのに求人票を三十万と書いて、そのつもりだと思ったら、面接の時点で言われちゃう。どうですか、それだったら、ちょっと都合が悪くて少し減っちゃうけれども採用するつもりですよと言われたときに、なかなか断れない状況が生まれるじゃないですか。こういうことを許せるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 今、例えば、はなから払うつもりもないのに賃金を高目に提示して実際の交渉で引き下げるというようなお話もありましたが、そういうケースにつきましては、まず、これは虚偽の求人条件の提示になりますので、今回の法改正の中でも事業主が虚偽の条件を提示して募集ないし求人票の提示などを行いました場合には罰則という形になってございますので、まずは、そういうケースは、罰則をもって担保し、かつ、その指導をするということでございます。
 今回ここで申し上げておりますのはそういうケースではございませんで、例えば賃金を幅を持って提示するとか、例えば、幅はないけれども、ハローワークなんかでも、若干求人者側のニーズに合わない方でも、雇用の安定のために、こういう方でもちょっと面接してくださいというふうにお願いをして面接に送り出すこともございます。そういうケースで、若干条件は外れるけれども雇ってもいいよというケースは、交渉に応じて賃金を下げて雇うというケースもあります。
 そういうさまざまなケースがある中で、上がる場合、下がる場合がございますけれども、労働者の方が納得して労働条件を変更した上で契約を結ぶというのは、これは十分あり得ることだと思いますし、逆に、そういう交渉の中でいろいろと条件が提示された場合に最終的にどういう条件になったのかというのがなかなかわからないケースもあるので、そこは最後にきちんと、では最終的にはこういうことですねということを明示して契約を結ぶということは、これは十分求職者の利益につながるのではないかと考えておるところでございます。
○高橋(千)委員 はなから払うつもりがないのにと私が言ったことに対して、それは虚偽であるとおっしゃいました。そのとおりです。虚偽であり、罰則もあります。だけれども、どこにその境目を設けますか。それは、はなからそんなつもりはなかったと言うかもしれないじゃないですか。どこでそれに境目をつけますか。
○鈴木政府参考人 虚偽かどうかにつきましては、当初からそういう、賃金を支払う条件で雇うつもりがなかったかどうかでございますけれども、実際は、さまざまな形かと思いますけれども、例えば、実際に刑事訴訟等にもなりましたら、それは、そういう形で、求人を提示した場合に、全ての、かなりの数が、下がって雇っているとか、そういういろいろな外形上のものを判断して、虚偽かどうかというのを見きわめるものだというふうに承知をしております。
○高橋(千)委員 結局、境目を決めるには訴訟しかないんですよ。きのうそう言われましたよ。だから言ったじゃないですか、たった今就職活動をしていて、そんなことをやっている場合じゃないって泣き寝入りしちゃうと。だから、訴訟とかそういう前に行く段階でやめさせなきゃいけないでしょう。それを見きわめるのは本来職安の仕事じゃないんですか。
 適格紹介という原則があるじゃないですか。本来は、求人票の内容と面接時に聞いた内容が違っている、そうなったときには、求人者に対して求人票の内容を確認する、実施する、事業所を訪問してどうしてそうなったんですかと聞く。そういう虚偽を言っているような、あるいは、はなからそのつもりだったかもしれない、そういうところには紹介を保留する、こういう手続をとるべきだ。これは、総務省の行政評価局の監査で、東北地方のハローワークを全部評価したときに、そういうことをちゃんとやるべきだということを改めて指摘しているんです。
 適格紹介の原則というのがあるじゃないですか。そして、その上でどうしても条件を変えなきゃいけないというんだったら、求人票をちゃんと出し直す。それは窓口で指導できるじゃないですか。何でそれを、面接に行った人がどうするああするという話になっちゃうんですか。だからこれは、これを書かなくてもハローワークがやるべきことをすれば防げる話じゃないですか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 まず、ハローワークの業務のやり方といたしまして、求人条件を受けて、それを求職者に提示して紹介するわけですけれども、最初、求人企業から受けた求人条件は、基本的には最終的な就職の条件と余り変わらないようにするということで、まず指導するという対応は今もいたしておりますし、これは今回この規定ができたから変わるわけではなくて。
 この規定はどういう意味かといいますと、仮に、その求職者の方が求人企業に行って、それで、現状の制度だと、求人条件の明示と、それから最終的な、労働基準法に基づく採用に基づく明示しかないわけですけれども、ここはこう変わったということがもし仮にあるとすれば、その変わったということを御本人に明示するという義務を課すことによって、より御本人がそれに気づく機会がふえるということがございます。
 ハローワークの紹介については、今、求人条件が最終的な就職と変わったときに、事業主の方に、条件相違ということで、変わった条件について連絡してもらうようになっているわけですけれども、事業主の方を信頼すれば確実に連絡があるわけですが、必ずしもそうとも限らない中で、労働者の方からもそういう報告がとれるということは非常に意味があるというふうに思っております。
 それから、民間の紹介所の紹介につきましては、そもそもそういうことが担保できない可能性もある中で、今回新しく求人企業に対してそういう義務を課すことによって、労働者の方の気づきが生まれるというふうに思っております。
 ですから、明らかに労働者の保護になるというふうに思っております。
○高橋(千)委員 違うでしょう。労働者にまだなっていないんですよ。これは採用前の段階じゃないですか。
○生田政府参考人 お答えいたします。
 求職者の方でございますので、ただ、採用された後は労働者になるということでございますので、労働者と一般的に申し上げました。失業者の方につきましても、労働者という表現を使うことは当然ございますので、おかしいとは思っておりません。
○高橋(千)委員 とんでもない表現だと思いますよ。
 私、最初に言いましたよね。労働者になってからは、労働組合があったりとか、一度結んだ労働条件を変更するというのは、もっと意味が違ってくるわけですよ。
 だけれども、この今回の労働条件の明示というのは、求人者等と求職者等との交渉等となっている、面接の場面なんですよ。そのときに、実際は、済みません、予定より五万円安いんです、雇うつもりなんですといったときに、それは約束と違うと言って、訴えますとか、そうなるわけがないじゃないですか。それを、そういう仕組みをつくってしまうということが大問題だと言っているんです。その自覚がないんですか。
○塩崎国務大臣 大分熱の入った議論になっておるものですから、ちょっと私の方から説明をしたいと思います。
 高橋先生がおっしゃっているのは、適格紹介の重要性ということをおっしゃっていて、それはそのとおりだと思います。
 ただ、ここで、今回、この労働契約締結前の明示というのは、締結をしてしまったらそれで終わってしまう、確定してしまうわけですね。確定してしまう前に、改めてこういうことだということを示すこと、そして確認をその方にしていただくということ、そのチャンスをもう一つかませるという意味で。
 先ほど私がお話をしたときに、いい方向の話だというふうにおっしゃいましたが、逆のときでも、いい方向であろうと悪い方向であろうと、話し合いの中で、実は週五日じゃなくて、自分は三日でいいんだ、あるいは三日がいいんだというようなことで少し変えるということもありましょうし、いろいろなことがあって変わるということもあり得るわけで。
 もちろん、悪意を持って変えてくるということもないことはないので、それを、締結を正式にする前にチェックをまず入れるという、そのステップを今回かませるということで、労働者保護になるということを前提にこの新しい制度を入れるということでありますので、そこのところは、多分、働く人を守るという意味においては同じ方向でなかろうかというふうに思います。
○高橋(千)委員 本来、求人票に何が書いてなければならないか、そして正しくなければならない、それは原則なわけですよね。それを、初めて社会に出る、そうじゃない人もいっぱいいるわけですけれども、求職者がそこまでチェックして、しかも条件が変わって、いやいや違うだろうという話にはならないんですよ。その前段階で、求人票としてちゃんとしたものになっているかというのをチェックするのはハローワークの仕事なんですね。それを本来はできていなければならない。だけれども、今は、民間職業紹介とのいろいろな連携などもやられている中で極めてそれが難しい状態になっている、そういう中でこの議論が出てきたんだと思います。
 虚偽の求人との境目も非常に曖昧であった、それどころか訴訟するしかないという議論にもなりました。これはやはり、ちゃんと本来のやるべきことをやれば大丈夫なんだという、そして、そのために必要な人をふやさなきゃいけないという議論にどうしてもなっていきますけれども、そういう立場で、これは断じて認められないということを指摘して、終わりたいと思います。

 

――資料――

2017年3月10日厚生労働委員会提出資料

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