国会質問

質問日:2016年 11月 1日 第192国会 本会議

年金カット法案(国民年金等改定案)

年金カット法案 審議入り
衆院本会議 高橋氏「国民への約束破る禁じ手」

 公的年金の改定ルールを大改悪する「年金カット」法案(国民年金等改定案)が1日の衆院本会議で、審議入りしました。日本共産党の高橋千鶴子議員は「(物価が上がれば年金も上がるという)国民への約束を一方的に破る禁じ手だ」と批判。民進党も「現在、そして将来の年金生活者は守れない」(柚木道義議員)と主張しました。
 年金改定ルールの改悪の一つは、賃金が物価を下回った場合には賃金に合わせ、物価が上がった場合でも賃金が下がれば賃金に合わせて年金額を削減するというものです。
 高橋氏は、政府がこれまで物価が上がれば年金が上がる「物価スライド」を公的年金の有利なところだと説明してきたと指摘。「憲法に基づく財産権および生存権の保障という点からも許されない」と強調しました。
 もう一つのルール変更は、年金の伸びを物価・賃金以下に抑制する「マクロ経済スライド」の改悪です。この仕組みによる削減率が物価・賃金のスライド率よりも大きくて引ききれなかった場合、翌年度以降に持ち越す「キャリーオーバー制度」を導入します。
 高橋氏は「仮に物価・賃金が上がった場合でも、持ち越された調整分によって、実質的な年金額は削減される」と指摘。「『後代へのつけ回し』であり、現役世代にも信頼される年金制度とは到底いえない」と批判しました。
 安倍晋三首相は「(法案は)世代間の公平の確保等に資するものだ」と述べ、受給者にも現役世代にも給付減を押し付けることを正当化しました。
 高橋氏は、無年金・低年金対策こそ急ぐべきだと主張。最低保障年金の創設を求めました。
(しんぶん赤旗2016年11月2日付より)

 

――議事録――

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)
 国民年金法第一条は、「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」と明記しています。収入が公的年金あるいは恩給だけという高齢者世帯は五五%を占め、公的年金はまさに高齢者の生活を支える命綱となっています。
 ところが、今、六十五歳以上の単身世帯は、昨年の国民生活調査で二六・三%と、年々ふえ続けています。単身高齢者の基礎的消費支出は約七万二千円に対し、国民年金の平均受給額は約五万円にすぎません。相次ぐ年金引き下げは憲法違反だと、全国四十二都道府県、四千五百九十八人もの高齢者が三十九の地方裁判所に提訴しました。総理は、こうした高齢者の訴えをどう受けとめているのでしょうか。
 次に、法案について具体的に質問します。
 今回の年金改定ルールの変更の一つは、賃金が物価を下回った場合には賃金に合わせ、物価が上がった場合でも賃金が下がれば賃金に合わせて年金を削減するというものです。政府は、今まで、公的年金が他の私的年金と違って有利なところは物価スライドであると説明してきたのではなかったでしょうか。
 今回の改定は、こうした国民への約束を一方的に破る禁じ手であり、憲法に基づく財産権及び生存権の保障という点からも取り返しのつかない事態になり、許されるものではありません。
 物価が上がれば、それに伴って年金受給額も上がり、少なくともそれまでの生活水準は維持できるという期待権をも裏切るものではありませんか。
 現在の年金制度は、いわゆる百年安心とうたった二〇〇四年の改定によってつくられました。これは、世代間の不公平是正を口実に、マクロ経済スライドを導入すること、所得代替率は五〇%を下回らないこと、保険料は毎年引き上げるが、上限を厚生年金は一八・三%、国民年金は一万六千九百円に固定することが法定化されました。
 改定案は、マクロ経済スライド調整率による削減率が、物価、賃金のスライド率よりも大きくて引き切れなかった場合、翌年度以降に持ち越すというキャリーオーバー制度を導入するものです。
 現行のマクロ経済スライドは、前年よりは下げないという原則があったため、これまでたった一回しか発動しませんでした。キャリーオーバー制度はそのための苦肉の策と言えますが、そもそも、二〇〇四年当時描いていた、物価が上がり、賃金はそれ以上に上がるだろうという夢のような設計が間違っていたことを総理はお認めになりますか。
 民主党政権時に、いわゆる特例水準の解消がありました。デフレ下に二〇〇〇年度から二〇一四年度まで特例として年金水準を維持したことを、年金のもらい過ぎだとまで言って、十四年分、二・五%をわずか三年間で削減しました。
 今回制度化しようとするキャリーオーバーの制度も、二年後、三年後と持ち越される場合も考えられます。仮に物価、賃金が上がった場合でも、持ち越された調整分によって、実質的な年金額は削減されます。これでは、政府がいつも言う後代へのツケ回しであり、現役世代にも信頼される年金制度とは到底言えません。
 マクロ経済スライドによる基礎年金部分の調整期間は、報酬比例部分と比べて長期間にわたり、将来の基礎年金の水準が相対的に低下します。国民年金だけ、あるいは厚生年金部分の低い受給者の生活にまともに影響します。そのために、社会保障審議会の議論の整理では、放置できないとまで指摘されています。
 基礎年金へのマクロ経済スライドの適用はやめるべきです。お答えください。
 国民年金第一号被保険者の産前産後の保険料免除は、厚生年金では既に実施しており、当然のことです。しかし、次世代育成、少子化対策のためというなら、その財源は、財政基盤の弱い国民年金保険料負担のみによって賄うのではなく、国民全体で支えるべきではないでしょうか。
 短時間労働者への厚生年金の適用拡大は、将来の年金額がふえるという点では意義があり、必要なことです。しかし、本来、同じ条件の短時間労働者なら、事業所の規模にかかわらず全員が適用拡大の対象とならなければなりません。従業員五百人以上の事業所については十月から適用されますが、それ以外は、今回の改定案で労使合意を得て適用されることになります。
 今回の改定案では、中小企業も大企業と同じように、短時間労働者に適用させる方策がとられているのでしょうか。ないとすれば、中小企業の事業主負担に対する何らかの方策をとるべきではありませんか。
 長く非正規で働き、国民年金の保険料も払えなかったなど、未加入のまま働き続けている方もいらっしゃいます。厚生年金に加入しても十年に満たず、掛け捨てにならざるを得ない場合があり得ます。政府はこのような場合がどのくらいあるのか把握しているのか、何らかの救済策を考えるべきと思いますが、厚労大臣の見解を伺います。
 昨年度とことし第一・四半期でGPIFが十兆円を超える運用損を出したことが大問題となりました。二〇一四年十月にポートフォリオを変更し、国内、外国の株式投資に積立金の半分を使えるようにしたことで、株価操作につながり、外国投資を呼び込み、見せかけの景気浮上に使われました。
 GPIF法第二十一条には、国民の保険料から成る年金積立金の運用は、安全かつ効率的に行われなければならないと定められており、この間の事態は、安定的に運用することから逸脱していると言わざるを得ません。
 昨年度の業務概況書によると、GPIFが運用受託機関を通しての間接的に保有している国内外債券、株式について、GPIFが三十三社の実質的な筆頭株主になっていることがわかりました。上位十社の中には、三菱UFJ、三井住友、みずほフィナンシャルグループなどの運用受託機関が名を連ねてもいます。
 GPIF改革は、政府の経済対策と一体に政府の側から持ち出されてきたものです。GPIFの理事長、新たに設けられる経営委員会の委員長及び委員は厚労大臣の任命になりますが、どのように中立性を担保するのか、お答えください。
 老後の支えである年金の安定確保を願う国民の思いとの開きを、そもそもどう認識しているのか、総理に伺います。
 終わりに、無年金、低年金対策は喫緊の課題です。十年の加入期間で受給資格を得られる納付期間短縮法案が先ほど可決されました。再延期された消費税一〇%と切り離し、来年八月から施行するもので、本制度により初めて老齢基礎年金の受給資格を得る人は約四十万人と言われています。しかし、納付期間が十年なら、年金は月額一万六千円にしかなりません。
 無年金、低年金生活者の根本的な解決のためには、その実態をつかみ、国連社会権規約委員会から二度も勧告されている最低保障年金の創設が必要です。総理、お答えください。
 以上、終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。
 年金に関する訴訟についてお尋ねがありました。
 御指摘の訴訟は、特例水準の解消に関するものと思われ、政府としては、民主党政権時に成立した特例水準を解消する法律に基づき適切に対応したところでありますが、裁判所で係争中であることから、具体的なコメントは差し控えます。
 年金額改定ルールの変更と期待権の関係についてお尋ねがありました。
 年金制度は、現役世代が負担する保険料や税によって高齢者世代を支えるという仕組みによって運営されています。その仕組みにおいては、今回提案している、賃金に合わせた年金額の改定の見直しは、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることで、将来にわたって給付水準を確保し、世代間の公平の確保等に資するものであります。
 また、この見直しについては、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付が平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度から実際に適用することとしており、現在の受給者にも十分配慮しています。これにより、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えてまいります。
 あわせて、医療、介護の保険料の負担の軽減など、年金のみならず、社会保障制度全体で総合的に講じることとしており、まずこれらにしっかりと取り組んでいくことが重要です。
 このように、所得の低い方々に対してきめ細かく配慮を行い、憲法二十五条に基づき、国が社会保障の向上、増進に努める責務をしっかりと果たしてまいります。
 平成十六年の財政再計算において設定していた経済前提についてお尋ねがありました。
 平成十六年の財政再計算における経済前提は、経済、金融の専門家で構成される社会保障審議会における客観的な検討を経て、中長期的な視点に立って設定されたものであります。
 その後、デフレ経済が続く中、マクロ経済スライド調整が発動されず、今の年金の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドによる調整が長期間になり、結果として、マクロ経済スライドが完了した時点の基礎年金の給付水準が約一割低下しました。このような事実を踏まえ、今回のマクロ経済スライドの見直しなどを法案として取りまとめました。
 いずれにせよ、所得代替率五〇%を確保できるよう、適切な年金制度の運営に努めていきます。
 年金額の改定ルールについてお尋ねがありました。
 今回のマクロ経済スライドの見直しは、年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、前年度よりも名目額を下げないという措置の結果、生ずる未調整分についてキャリーオーバーの制度を導入することによって、翌年度以降に持ち越し調整することとしたものであります。
 このように、キャリーオーバーの制度は、未調整分をできる限り現在の受給世代の中で調整する仕組みであり、後代へのツケ回しという批判は当たらないと考えております。
 基礎年金へのマクロ経済スライドの適用についてお尋ねがありました。
 マクロ経済スライドは、平成十六年の改革により、将来世代の負担を過重にしないため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整する仕組みとして導入されたものです。このような仕組みは、基礎年金を含め、公的年金制度全体に共通する考え方であります。
 こうしたマクロ経済スライドを含む現行制度のもと、年金額が低い方や年金が受けられない方への対応として、社会保障・税一体改革において、年金の受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料負担の軽減など、社会保障全体を通じた対応を講じることとしています。
 産前産後期間の保険料免除についてお尋ねがありました。
 国民年金は、厚生年金と同様、被保険者が受給者を支える仕組みです。厚生年金では既に産前産後期間の保険料免除分を厚生年金の被保険者で支えているところであり、国民年金についても、国民年金の第一号被保険者全体が共同して負担することが適当と考えております。
 厚生年金の適用拡大についてお尋ねがありました。
 今回の法案は、中小企業で働く短時間労働者に、労使合意に基づき、厚生年金の適用拡大の道を開くものです。
 社会保険料の事業主負担は、働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であるとともに、事業主の利益にも資するという観点から事業主に求められているものです。
 その上で、中小企業でも適用拡大が進むよう、賃金引き上げなどにより人材確保を図る意欲的な企業に対し、キャリアアップ助成金を拡充し、積極的に支援を行ってまいります。
 GPIFの運用についてお尋ねがありました。
 年金積立金は、将来の安定的な年金の給付に向けて、長期的な観点に立って運用することを基本としています。
 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円となり、政権交代後の安倍政権のもとでは二十七・七兆円のプラスとなっています。このように、年金財政上必要な収益を十分に確保しています。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。
 また、長期的な観点から行った一昨年の基本ポートフォリオの変更を含め、積立金の運用は専ら被保険者の利益のために行っており、その結果、長期的に見て年金財政上必要な収益を十分に確保してきております。
 今後とも、国民の皆様の理解を得ながら、内外の経済動向等を考慮しつつ、安全かつ効率的な運用に取り組んでまいります。
 無年金、低年金対策についてお尋ねがありました。
 今回、受給資格期間を二十五年から十年に短縮することにより、六十万人を超える方が新たに年金の受給権を得ると見込んでいます。
 また、経済的事情により保険料を納付することができない方に対しては保険料の免除制度を用意しており、なるべく多くの方が年金を受け取れるよう、今後とも制度の周知を図ってまいります。
 所得の低い方については、社会保障・税一体改革の中で、年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料の負担の軽減など、社会保障制度全体で総合的に講じることとしており、まずは、これらにしっかりと取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 高橋千鶴子議員にお答え申し上げます。
 保険料納付済み期間が十年に満たない方への救済策についてのお尋ねがございました。
 今回の受給資格期間の短縮は、納付した年金保険料を極力給付に結びつけることで、年金制度への信頼を高めるものでございます。
 改正後において、七十歳までの期間を全て納付したとしても受給資格期間を満たすことができない無年金の方は、約二十六万人と見込んでおります。
 このような方に対しては、年金額には反映されないものの受給資格期間には含まれる、いわゆる空期間があればこれを活用することや、過去五年間の未納分の保険料納付を可能とする特例的な後納制度の利用によって、十年の受給資格期間を満たすケースもあると考えられるため、個別にはがきを送付するなどにより、制度を十分周知してまいります。
 GPIFの役員の中立性についてのお尋ねがございました。
 年金積立金の運用は、法律上、専ら被保険者の利益のために行うこととされており、積立金はこれまでも一貫して被保険者の利益のために運用され、この点は、本法案による改正後も全く変更はございません。
 また、本法案では、検討段階における労使の代表者の意見も踏まえ、役員の任命を厚生労働大臣が行うこととしていますが、任命に際しては、その任命基準を、社会保障審議会の意見を聞いて定めるとともに、経営委員に、拠出者団体の推薦に基づき、被保険者、事業主の利益を代表する者各一名を任命することとしており、適切な任命が確保される仕組みとしています。(拍手)

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