国会質問

質問日:2013年 4月 16日 第183国会 予算委員会

米に譲歩のTPP、参加表明撤回を

(写真)質問する高橋ちづ子議員=16日、衆院予算委員会

(写真)質問する高橋ちづ子議員=16日、衆院予算委員会

 日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は16日の衆院予算委員会で、環太平洋連携協定(TPP)の参加表明の撤回を求めました。
 高橋氏は、自民党が米、麦、乳製品など5分野を「例外」とすると求めていたにもかかわらず12日に日米の事前協議で合意した内容は2月の日米首脳会談での共同声明と同じ文言を確認したにすぎないと指摘。自動車ではアメリカの求めに応じて日本車への関税の撤廃を「できるだけ後ろ倒し」とした点を挙げ、「(日本が)さらなる譲歩を求められたのが実態ではないか」とただしました。
 甘利明経済再生担当相は「センシティビティー(重要品目)があることは2国間協議でも確認できた」と、確認済みのことを繰り返しました。
 高橋氏は、米国通商代表部(USTR)の発表文書で、日本がかんぽ生命のがん保険凍結などを発表したことを米側の“成果”としていることを紹介。日米の合意文書(概要)で「日米間でTPP交渉と並行して」非関税措置に取り組むとしていることをあげ、「かんぽ生命やBSE(牛海綿状脳症)のように、本格交渉を待たなくても(日本が)国内法や国内制度を変える対応を迫られるという意味ではないか」とただしました。
 岸田文雄外相は「非関税措置は協定やその他の手段を通じて実施される」とあいまいにしました。
(しんぶん赤旗 2013年4月19日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 時間が限られておりますので、早速質問したいと思います。
 今月の十二日、TPP交渉参加に向けた日米間の事前協議で合意をしたと発表されました。九十日間の米国議会での手続期間を経て、最短だと七月にも参加をするのか、そういう見通しだと言われております。
 総理は、十二日の主要閣僚会議の席上で、日米の合意は国益を守るものだ、一日も早く交渉に参加して、交渉を主導していきたいと発言されたと報じられておりますが、何をもって国益を守るなのか、それから、交渉を主導できるとはどういうことなのか、伺います。

○安倍内閣総理大臣 TPP交渉への参加は、アジア太平洋の成長を取り込み、そして日本経済のさらなる成長に道を開くものであります。また、米国を初めとする国々とアジア太平洋における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益になるだけではなく、地域や世界に繁栄をもたらすわけでありまして、我が国は、GDP世界第三位の国力を生かして、交渉力を駆使して、この新たなアジア太平洋のルールづくりを主導していく考えであります。
 我が国にとってセンシティブな品目の扱いに関しても、当然、日米の共同声明を踏まえ、今後、交渉の中で守っていくことになります。この点に関しては、今般の日米合意においても、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識と明確に確認されているわけでございまして、今後のTPP交渉において、我が国として、強い交渉力によって国益をしっかりと守っていきたいと考えております。

○高橋(千)委員 もう少し総理のお言葉で、交渉力を発揮するとはどういうことなのか、あるいはどう発揮してきたのかということをぜひお聞かせいただきたいなと思ったわけでありますが、前段はほとんどこれまでと同じ答弁ではなかったかなと思います。
 そこで、日米合意内容については、四月十二日の日米の往復書簡、佐々江賢一郎日本国大使、そして相手方はUSTRのデミトリオス・マランティス代表代行、この往復書簡が公的な文書とされております。
 これによりますと、両国政府は、日本がTPP交渉に参加する場合には、日本が他の交渉参加国とともに、二〇一一年十一月十二日にTPP首脳によって表明されたTPPの輪郭において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認しましたとあります。これについては、内閣府の対策本部がまとめた日米協議の合意の概要というペーパーにはあえて触れられていないわけです。
 そうすると、前段は、TPPのアウトライン、二〇一一年のアウトラインを踏むんだと。そうすると、全ての関税撤廃が基本という点では、基本的には変わっていない、そういうことではないですか。

○甘利国務大臣 TPPは、もともと、できるだけ高いレベルの通商交渉にしようということは、発足当初からの理念であります。私どももそれを受けた上で、もちろん、センシティビティーはありますから、それはきちっと主張していきますが、TPPの理念は理解した上で交渉に参加する、そのための事前協議を行っているというところでございます。

○高橋(千)委員 ですから、今、もともと高いレベルという表現をされましたけれども、結局、このアウトラインを読み解くと、これまでほとんど一〇〇に近かったものを高くするというのですから、限りなく一〇〇に近い、要するに、全ての撤廃と読み取れるんだということがこれまで議論をされてきたわけですよね。
 その上で、今、総理が、センシティブについては共同声明を踏まえて合意が得られたというふうに答弁をされました。それは、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった、二国間貿易上のセンシティビティーが両国にあることを認識しつつ云々という、この文章だと思うんですね。でも、これは、二月の共同声明が言明した文章と全く同じであります。そうですね。同じことを確認しただけであります。
 一方で、二月の共同声明のときには残された懸案事項とされていた自動車部門あるいは保険部門については、極めて具体的に確認されているのではないでしょうか。自動車については、関税を、最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ最大限に後ろ倒しされること、及び、米韓FTAでの扱いを実質的に上回るものになることを確認しているわけであります。
 そうすると、自民党さんはこれまで、交渉参加に当たって、米、麦、乳製品、牛肉・豚肉、甘味資源作物などの五分野を例外扱いにするよう求めてきました。もちろん、それさえ守られればよいという立場では決してありません。しかし、その最低限の重要品目について、新たな手がかり、守るよということでの新たな言質が何かとれたわけではないけれども、日本側は二月に懸案事項とされていたものの譲歩を迫られている、それが実態ではありませんか。

○甘利国務大臣 今回の日米で確認した文書というのは、日本がTPPに入るに際して、現参加国の了解をとらなければならないという手続があります。その手続を基本的にはクリアしたということであります。
 そして、日米双方にセンシティビティーがあるということは、日米首脳会談で日本が交渉参加に向けての意思表示をしたときにも確認されましたし、そして、今回、アメリカの了解をとる二国間の協議の場でもアメリカ側はそれを確認したということであります。
 アメリカの自動車の関税撤廃手続について、いろいろな見方があるかと思います。しかし、一つの見方をすれば、アメリカは、もちろん年限はこれからTPPの中で決めることですが、自動車に関する関税を取っ払うということを約束したわけでございます。これは見方によっては、もう既に、交渉に入る前に一つとれたということも言えるかと思います。

○高橋(千)委員 税を取っ払うのを約束したというのが一つの成果だというのであれば、さっき大臣がおっしゃったように、基本原則は、取っ払うのが原則なわけですよね。それをできるだけ後延ばしにしたというだけではありませんか。だから、日本の自動車業界がこれでは足りないと批判をしているのではないですか。しかし、それしかないのかなということでもあり、それが唯一のカードを切ってしまったということでもあるかと思います。
 そこで、簡潔にお答えください。日米間で、TPP交渉と並行して非関税措置に取り組むというふうにありますけれども、この「並行して」というのはどういう意味でしょうか。これは外務大臣に。

○岸田国務大臣 今般の日米合意におきましては、両国政府は、TPP交渉と並行して、自動車分野とそして非関税措置に関しての交渉、この二つの交渉について並行して行うということを決定しましたが、これらの協議は、TPP交渉とは別に、二国間の関心事について協議が行われるものということでございます。
 自動車分野に関しましては、並行して行う交渉の結果として合意される権利及び義務は、この枠組み文書に記されておりますとおり、TPP協定に附属される日米二国間の市場アクセスの表に組み入れられることになっております。
 一方、非関税措置に関しまして、並行して行う交渉の結果は、法的拘束力を有する協定、書簡の交換、新たなまたは改正された法令その他相互に合意する手段を通じて実施される、こういったことになっております。

○高橋(千)委員 今、書簡の部分をお読みになったと思うんですね。「TPP協定が発効する時点で実施されることを確認します。」と。これは、実は外務省と内閣府にこの「並行して」の意味を聞いたときに見解が分かれていたものですから、ちょっと整理をしたかったんですね。
 要するに、TPP交渉の枠組みの中に入ることを目指して並行して日米の協議をやっていくのか、それもあるかもしれないけれども、TPP交渉とは関係なしに、つまり、交渉の中身に入らなくても並行して協議もしていくという意味ですか。

○岸田国務大臣 自動車分野に関しましては、この枠組み文書にありますように、最終的にはTPP協定に組み込まれるということになります。
 非関税措置に関しては、その結果については、協定ですとか書簡の交換、あるいは法令その他の手段を通じて実施されるということになっております。

○高橋(千)委員 その他の手段を通じて実施されるということの意味がちょっとよくわからないんですね。
 確かに、今、自動車は組み込まれるとおっしゃいました。自動車だけは自動車貿易TORという形で附属文書がわざわざ出ていますので、これはTPP交渉の中でやっていくんだろうということですよね。ただ、その他については、非関税措置、九項目全部列挙をされています。それが、全部並行してやるということを言っているんですよね。そのことの意味を聞いているんです。
 十二日のUSTRの発表、これは日本で言うところの日米協議の合意の概要に当たるものだと思いますが、ここでは二つのことを強調しています。輸入自動車特別取扱制度で年間販売台数の上限を拡大するという一方的決定を日本が発表したと。これはさっきのTORとは別ですよね。もう一つは、日本郵政グループのかんぽ生命、このがん保険や単品の医療保険展開を凍結すると日本が通告したというふうに、極めて具体的に明示をしているわけです。
 これは、同じ日に麻生財務大臣が記者会見をやっておりまして、記者団にTPPのためですかと聞かれたときに、TPPと直接関係するわけではありません、ちょうどたまたま同じ日になったみたいな答弁をしているわけです。しかし、USTRが日本が通告したというふうに言っているわけですから、日米事前協議におけるアメリカにとっての成果そのものだと言えるのではないか。
 つまり、言いたいことは、並行して行われる日米協議によって、TPPの本格交渉を待たなくても日本が国内法や国内制度、規制を変える、今のような、かんぽみたいな話です、BSEもそうです、そういう形で対応を迫られる、この意味を含んでいるのではありませんか。

○岸田国務大臣 自動車分野そして非関税措置における交渉、これは両方とも、それぞれの並行協議は日本がTPP交渉に参加した時点で開始される、スタートするということです。
 そして、終わりの方は、自動車の方は先ほど申し上げましたTPP協定の中に組み込まれるわけですが、非関税分野の交渉については、これは書簡の中にありますように、「TPP協定が発効する時点で実施されることを確認します。」こういった文章が書簡の中にあります。

○高橋(千)委員 同じ答弁を繰り返してもわからないじゃないですか。結局、今指摘をしたように、国内法の改正ということが現実にあるんだと。もう時間ですので終わりますが、産業競争力会議の中でも、TPPへの参加に伴って国内改革の実施というのが必要だ、痛みが生じる方も出てくる、こう言っているんですね。結局、交渉をしやすいように国内環境を整える、こういう圧力があるんだということもしっかり踏まえて、大事な問題だということで、TPP撤回を求めて、終わりたいと思います。

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