国会質問

質問日:2013年 5月 24日 第183国会 厚生労働委員会

財界要求の「限定正社員」、〝リストラ・解雇を助長〟

(写真)質問する高橋ちづ子議員=5月24日、衆院厚生労働委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=5月24日、衆院厚生労働委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は5月24日の衆院厚生労働委員会で、財界が求める「限定正社員」を取り上げ、解雇をしやすくするものだと追及しました。田村憲久厚労相は「多様な働き方をしっかりと普及していく」とし、そのための環境整備を図ると述べました。
 高橋氏は、首相が産業競争力会議で「多様な正社員のモデルを確立したい」と発言したことを示すと、田村氏は「今の社員を無理に限定正社員にするわけではない」と言い訳しました。
 高橋氏は、規制改革会議で、労働契約にあたっては就業場所と業務を特定し、勤務地、職務が「消失」した場合も解雇事由に加えることが提起されていることを明らかにし、「事務所の撤退、再編、縮小などでリストラがしやすくなる」と指摘。田村氏は「解雇権の乱用は認められていないので、そのような法律をつくっても意味がない」と述べました。
 高橋氏は、産業競争力会議には労働者側の代表もいないと批判。「労働者にとってよい国を目指すべきだ」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2013年6月4日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、時間を変更していただきました委員各位の皆さんに、お礼を申し上げます。
 久々に一般質問の時間をいただきましたので、きょうは雇用のルールについて伺いたいと思います。
 昨日、株価急落のニュースで、内心穏やかではないと思いますけれども、安倍総理の三本の矢、金融政策、財政政策、成長戦略について、来月中ごろまでにまとめるということで、産業競争力会議がさまざまな議論を進めております。
 そうした中で、安倍総理は、四月十五日、楽天の三木谷会長主催の新経済連盟のサミット前夜祭の中で、我々の目標は企業が最も活動しやすい国だ、こう述べたといいます。
 そこで、その前なんですけれども、第六回会議の場で、日本経済再生本部長として、我が国の規制環境を世界最先端にするという観点から、早急に規制・制度改革の具体策を検討することと指示を出されています。
 当然この文脈は、規制改革の場で発言をしていますから、労働の規制を取っ払って企業が活動しやすい国ということを言っているのかなと思うわけですよね。そうすると、労働者にとっては、残念ながら安心して働ける環境とは真逆ではないか、普通に読めばそう読めるわけです。
 なので、大臣に伺いますが、世界一企業が活動しやすい国とは労働者にとってどんな国だと思いますか。

○田村国務大臣 もう山井委員との議論は終わりましたので、高橋委員の御質問にお答えいたしたいと思います。
 確かに、総理は、企業が最も活動しやすい国ということをおっしゃられるわけでありまして、基本は、まずデフレを脱却して、経済再生をしていく上においては、言われますとおり、規制改革も必要ですし、イノベーション、これも必要であろうというふうに思います。
 そういうふうに、企業が最も活動しやすい国というのは、逆に言えば、総理は、頑張る人が報われる、そういう社会にするとも言われておりますので、しっかりと企業が活動していただいて、そして利益を出していただいて、その利益が働く方々に還元される、そのような国である。
 つまり、企業が幾ら発展しても、国民の皆様方がそれで苦しんでおったのでは、これは日本の国全体がいいとは言えないわけであります。大もとは、やはり日本の国の皆様方が幸せになること、働く方々が幸せになること。しかし、その環境をつくるためには、やはり糧であります、企業というもの、ここが稼いでおかないと、糧が稼げないわけでありますから、そのような意味でおっしゃっておられるというふうに私どもは理解をさせていただいております。

○高橋(千)委員 まさか、労働を所管する大臣がそうでないことを言うはずはないと思って聞いておりましたけれども。
 ただ、やはり糧がなければというお話の中で、この間、六重苦などという言葉が言われてきまして、例えば、正社員から派遣などに移ってきたという中で、そういう非正規化というのはもう限界がある、だったら正社員をどうにかしなければいけないんだ、賃金を下げるという点ではもうある程度やれることはやってきて、今はまさに正社員をどうするかというところに議論が移ってきている、そういう背景があるのではないかなと言わなければならないと思うんですね。
 世界で最も活動しやすい国、その中に、諸外国の皆さんが最も活動しやすい国、こういう言葉を続けておっしゃっているんですね。だから、いろいろな企業が日本に入ってきて、また、民間資本、外資の開放などそういうこと、TPPとも絡んでいろいろなことをおっしゃっているんだろう。だから、それが本当に労働者にとってプラスになるのか。甘利担当大臣はおっしゃっていますけれどもね、プラスになると。それはこの厚労の場では、そうとはなかなか言えないと思うんです。
 そこで、午前の議論でもありましたが、政府の規制改革会議の雇用ワーキング・グループの優先的検討事項に、限定正社員の雇用のルール整備が位置づけられました。
 きょう用意した資料の一枚目は、厚労省が出したものであります。第七回産業競争力会議、四月二十三日ですね、「「二極化」した働き方から「多元的」な働き方へのシフト」とあります。これは、ジョブ型とか限定正社員という言葉は使っておりませんけれども、どう考えてもそのことを指しているのであろうと。
 これは、総理も、多様な正社員のモデルを確立したいということで産業競争力会議でも発言をしていますから、政府の方向性であるということは間違いないと思うんですね。
 そこで、限定正社員を進めていく立場なのか、環境整備とはどういうことなのか、厚労省の方針を聞いています。

○田村国務大臣 限定的な正社員、限定正社員ですか、という言い方がよくされるわけでありますけれども、決して、今の正社員の方々をこの限定正社員に無理にするようなことがあるわけはないわけでございまして、そんなことをすれば、これは完全に法律に違反になっちゃいますよね。あくまでも御本人が、例えば、自分自身は、今、生活の家庭的ないろいろな事情があって、その中において、時間的に限定した働き方がしたいとか、場所的に限定した働き方がしたいというようなことで申し出られるパターンはあると思います。
 しかし、そもそも、限定のない正社員の方を限定のある正社員に無理やりするなんということはできないわけでございますから、そこは御理解をいただけると思いますし、一方で、非正規雇用の方々を限定正社員という形でより安定的な環境のもとでお働きをいただく、そういうようなことをイメージいたしております。でありますから、そのような、委員が心配されるようなことは、我々は考えているわけではない。
 その上で、環境整備とは何ぞやという話なんですが、例えば、働き方のモデルとして、どういうような限定的な働き方、正社員、多様な正社員といいますか、どのようなモデルがあるのか、うまくいっているような例を例示していきながら、それを周知徹底していく。実は、午前中の山井議員との議論の中でもありましたけれども、今もあるんですよ、限定的な契約のもとでの正社員というのは。ですから、そういうものも普及をしていく中において、これをモデル化したものの成功事例を周知啓発していく、これが一つ。
 それから、雇用管理上の留意点というのがあると思います。今の限定のない働き方と、限定的な働き方。例えば、限定的な働き方と言って労働契約をして、結果、限定のない働き方と同じような扱いをしたのでは、これはいろいろと問題が起こってまいりますので、いろいろな留意点を整理する必要がある。だから、そういうようなところをしっかりと整理した上で、周知啓発をしていく必要があるであろう。
 それから、ジョブカードをうまく使って、限定的な社員、特にこの場合、今、ジョブ型という話がありましたけれども、例えば職種だとか、そういうものに限れば、余計にこのジョブカードというものが見える化として使えるわけでございますので、このようなことをいろいろと促進していくことによって、環境を整えていく。
 そして、この多様な働き方というものをしっかりと普及していくというような考え方のもとに、今、議論が進んでおるということでございます。

○高橋(千)委員 今、無理にすることはないとおっしゃいました。だけれども、それが議論をされているから問題なんですね。
 先日、テレビでも、今おっしゃったような限定正社員は、実は企業の半数は既に導入していますということで、ホームセンターなどで働いている方で、子育て中なので、八時間の勤務だったところを六時間にして、保育所の送り迎えもできますよというふうなことを紹介しておりました。
 その根拠が、資料の三枚目に、最後のところにつけておいたのですけれども、昨年、多様な形態による正社員に関する研究会のアンケート調査というのがありまして、例えば、千九百八十七の企業数のうち、千三十一が多様な正社員を使っている、五一・九%である。従業員でいうと、五十一万九千百五十二人、三二・九%。このくらいもう既に限定正社員がやられているということなんですね。
 だから、逆に言うと、今だってやっているんだから、それがもしうまくいっているんだとすれば、無理に法定をする必要はないわけなんです。それがなぜ議論になるかというところに問題があるんです。
 局長、簡潔にお答えください。法定をもしするとなれば、労働契約法や労働基準法をさわることになります。どういうことが考えられますか。

○中野政府参考人 御指摘のように、現在も多くの企業で職務や労働時間等が限定された雇用形態は存在しておりまして、労使の合意によりこうした働き方を導入することについて、現行法上、特段の規制はないものでございます。
 一方、規制改革会議雇用ワーキング・グループでは、座長から、「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について」と題した資料が提出されまして、これを参照しながら委員による議論が進められていると承知しております。
 同資料によりますと、例えば、均衡処遇に関しまして、「労働契約法二十条に類する規定」、すなわち「雇用形態による不合理な労働条件の禁止」の規定でございますが、「を定めることを検討することが必要ではないか。」と記載するなど、法改正による規制の新設も視野に入れていると見られる記述も含まれております。
 他方、「ジョブ型正社員の人事処遇ルールの検討」の項目では、「法解釈等について最終的に立法事項とするのが難しければ、解釈通達などで明文化してはどうか。」とあるなど、規制手法や内容についてはこれからの議論と思われる記述も含まれております。
 このように、現在、さまざまな観点から議論がなされているというふうに受けとめております。

○高橋(千)委員 当たりさわりのないところだけ紹介をしたなという気がいたします。
 四月二十八日、規制改革会議の雇用ワーキング・グループの鶴光太郎座長から、今おっしゃった話ですが、「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について」というものが、改訂版なんですね、出されています。
 まず、座長の問題認識といいますか、現状をどう見ているかということで、事務所閉鎖、事業や業務縮小の際の人事上の取り扱いが通常の正社員と同じ場合が多い、つまり、余り違いがないということを言っています。
 それから、労働基準法十五条、労働条件明示義務、労働契約法四条二項、これを通して、労働条件を明示することがあらかじめちゃんと法定をされているんですけれども、そこで、ジョブ型正社員といわゆる正社員との書面の整理が必要だということを問題意識として書いているわけですね。
 それはどういうことかということですよね。だから、そこが結構曖昧だよ、逆に、はっきりしろ、詳細に書けということを言っているんです。就業の場所及び従事すべき業務に関する事項を詳細に設定することを求めたらどうか、もっと踏み込んで、就業規則の解雇事由に就業の場所及び従事すべき業務が消失したことを追加することを可能としたらどうだ、こう言っている。
 つまり、限定正社員ということを本人が選んだ以上は、あなたの仕事はなくなりました、そもそも事業所を撤退しますというときに、最初からこれを、要するに、解雇権の濫用には当たらないということを期待して言っているわけですよね。
 だから、法制化されてしまうと、結局、事業所が縮小、撤退、再編、そういうときは、もう解雇と言わなくてもいいような環境をつくるんだということが狙いとして読めるわけですよね。どう考えますか。

○桝屋副大臣 けさからずっと議論が続いている内容でありますが、今委員から、限定正社員が法制化されてしまうとと、される、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、午前中から大臣も答弁しておりますように、直ちに何らかの法制上の整備を行わなきゃならぬと考えているわけでは決してありません。まずは、成功事例の周知啓発などを通じて、多元的な働き方のモデルの普及促進を図りたいと大臣も申し上げているとおりでございます。
 なお、解雇権濫用法理、午前中から議論がずっと続いておりますが、大臣が申し上げるとおり、法の一般原則である権利濫用法理のもとで形成されてきたものでございまして、単に労働契約等で限定された職務や勤務地が消滅したということのみを理由として、適用されなくなるものではないということでございます。
 職務等が限定された正社員の整理解雇についても、個々の労務管理の実態に対応して、労働者の雇用継続に対する期待が保護すべき合理的なものであるかどうかが、個別のケースごとに司法判断されるというものでございます。
 委員、先ほどからそういうふうにおっしゃっておられますが、我々厚労省としては、職務限定正社員など多様な正社員は、非正規雇用で働く労働者の処遇の改善にもつながる部分もございますし、あるいは、ワーク・ライフ・バランス、これを促進するという側面もあるわけでありまして、そうしたメリットを大事にしながら普及を図っていこうというのが大臣の思いでありまして、決して労働者を解雇しやすくするために進めるというものではございません。よろしくお願いします。

○高橋(千)委員 それを大臣にちゃんと言ってもらいたいのです。だから、質問をしています。
 私は、厚労省がそう言っているんだと言っているわけではありません。だけれども、実際に法制化をしろと言われているわけです。
 さっき、解雇権濫用の問題がありましたけれども、鶴座長は、契約解除についての裁判例を見ると、いわゆる整理解雇四要件の判断枠組みを基本的に維持しつつも、職務や勤務地が限定されている点を考慮し、無限定正社員とは異なる判断を行い、解雇を有効とする事例が見られるとわざわざ書いている。
 つまり、今でさえも、限定正社員であることによって、法律がなくても、いわゆる正社員とは同じじゃないよという事例が出ちゃっている。そういうことをあえて言って、もっと明確にしましょうよと言っているわけなんです。そういう大変な危機感を持たなければならないわけです。
 五月二十一日付の読売新聞では、日本総研調査部長の山田久氏は、「論点」のコーナーで、「正社員の流動化」を取り上げて、「職種や勤務地が選べ、その限りで雇用が保障される「限定型正社員」が普及すれば、企業は事業の撤退・新規参入が容易になり、企業成長の促進と新たな雇用増につながる効果」というふうにはっきり言っているんですね、事業の撤退、新規参入は容易だと。
 それが成長戦略なんだと言っちゃったら、もう労働者はどうでもいいということになっちゃうんですよ。だから、何度も指摘をしています。
 資料の二枚目につけているんですけれども、さっき紹介したアンケートで、なぜ正社員に複数の雇用区分を設けていますかという問いに対して、「優秀な人材を確保するため」というのが実はトップなんですね。それから、「従業員の定着を図るため」、そして、「(ワーク・ライフ・バランス)支援のため」。だから、「賃金の節約のため」というのは、二割はあるんですけれども、それでも、そんなではない。
 テレビで大変好事例が紹介されましたが、今はやはり本人と企業が納得して、この人材がこれからも必要だから、今は六時間だけれども、この後ちゃんと復帰してもらうよというふうに活用されていると思う。それでいいんですよ。それ以上踏み込むということは、今言ったような趣旨なんだということになっちゃう。解雇がしやすいことになっちゃうんだということで、法制化に触れるということは、本当にそういう深い意味があるんだという立場で質問をいたしました。
 改めて、法制化する必要はないという態度を鮮明にしていただきたい。大臣、お願いします。

○田村国務大臣 今委員がくしくも言われたとおりなんですね。
 つまり、どういうことかといいますと、司法が積み重ねてきた判例の中で解雇権濫用法理というものが確立してきました。つまり、人事労務管理の実態、それがどうなっているかということで、司法は整理解雇というものに対して判断を下すわけです。
 ですから、今も限定的な働き方があります。しかし、そういう契約であったとしても、実態が違っていれば、それは、何ら限定なしの労働者と変わらないわけでありますから、多分、不当解雇という話になると思います。
 一方で、本当にいろいろな意味で限定された人事労務管理の中で、企業がそこから撤退というようになった場合に、司法が今判断をしておられるというものは、これは司法の一つの判断でありますから、それは解雇が認められる場合でありまして、幾らそんなものに法律をつくっても、結果的には、これは、先ほど来言っておりますけれども、権利に内在した基本的な、その中に入っている一つの法的な要請ですから、社会規範的な。つまり、権利というものに対しては、必ず、濫用しちゃいけないと。
 ですから、幾ら法律をつくっても、そもそも民法に大原則として書かれていることでありますので、それは、解雇しやすいようにと書いても、そもそもそれ自体が無効である、意味がない、こういうふうに私は認識いたしておりますから、そのような法律をつくっても意味がないのではないかということを先ほど来申し上げておるということであります。

○高橋(千)委員 今の最後の、法律をつくっても意味がないと言った、もう少し、法制化しないと言ってほしかったんです。だって、その前段に、法制化しても、裁判ではちゃんとできるというふうな趣旨のことをおっしゃったから、それじゃだめなんですよということを指摘したいと思います。
 一言だけ最後に述べて終わります。
 五月二十二日付の東京新聞で、ILOのガイ・ライダー事務局長のインタビューが載っておりました。雇用の規制緩和は大変注目をしていて、安倍総理に対しても、面談の際、どうなりますかという質問をしたということを言っております。
 「強調しておきたいのは、雇用の規制緩和が成長をもたらす魔法のような解決策ととらえるのは間違っている。」「日本の成長鈍化は、労働市場の硬直性が原因ではない。逆に言えば、雇用の規制緩和や流動化が成長につながったケースもない」と指摘していることは、大変重要だと思います。
 政府がILOを持ち出すのは、決まって、公労使という三者で決まった労政審の決定を尊重するときだけであります。ILO条約百八十九本中四十八本しか批准していない。しかも、今回の産業競争力会議の中には労働者側の代表もいないという指摘もされていますから、本当にこの指摘を重く受けとめて、最初に言ったように、労働者にとってよい国を目指していただきたいと思います。
 終わります。

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