国会質問

質問日:2013年 6月 11日 第183国会 厚生労働委員会

精神障害者の支援を ー参考人質疑

(写真)質問する高橋ちづ子議員=11日、衆院厚生労働委

(写真)質問する高橋ちづ子議員=11日、衆院厚生労働委

 衆院厚生労働委員会で11日、障害者雇用促進法改正と精神保健・障害者福祉法改正について参考人質疑が行われました。
 地域で精神障害者の支援を行っている、やどかりの里常務理事の増田一世氏は改正案について、障害者の権利擁護の視点が欠如していると指摘。精神障害者の治療で1人の保護者に責任を負わせる保護者制度の廃止は前進だが、家族などの同意による入院制度が残るため、「安易な医療保護入院(強制入院)を広げるのではないか」と述べ、当事者の権利が擁護されるよう公的責任を持つ第三者機関の設置や、当事者の意思決定を支援するための代弁者制度の創設を求めました。
 日本共産党の高橋ちづ子議員は、精神障害者の尊厳を守り、地域で支える支援はどうあるべきかと質問しました。
 全国精神保健福祉連合会の川崎洋子理事長は「当事者を抱える家族は家に引きこもり、支援が届かない。365日、24時間体制の訪問型の支援が求められる」と述べました。
(しんぶん赤旗 2013年6月17日より)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、六人の参考人の皆さん、本当にお忙しいところ出席をいただいて貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。障害者の雇用主であり、家族であり、医療、福祉、それぞれの分野で御苦労され、また切り開いてきた皆さんの取り組みに心から敬意を表したいと思います。御意見を生かしたいと思います。ありがとうございました。
 早速ですが、川崎参考人に伺いたいと思います。
 保護者制度について、一番最初に、一人の人間として扱わない差別法である、こういう表現をされました。この表現は実は、先般の参議院の参考人質疑でも、代弁者制度に取り組んでこられた弁護士の方が同じ表現を使っていらっしゃいまして、私はまさにそういうことではないのかなと思っております。
 川崎さんの所属をしている全国精神保健福祉会連合会が平成二十一年に精神障害者の自立生活と家族支援を目指す実態調査に取り組まれており、また、先ほどその一端を御紹介されてきたと思うんですが、その家族の実情に照らして、繰り返し繰り返し保護者制度の廃止を求めてきた。そして、国会でも、検討、検討ということが附帯決議に盛り込まれましたり、そうされてきたんだけれども、ここまでずっと措置されずに来てしまった。そういうことに対しての率直な思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。

○川崎参考人 川崎です。
 まさに、本当に大変な月日、年月を私どもは費やしてきました。
 今までなかなか理解されなかった私たち精神障害者の問題がここで一気に大きく飛躍しようとしているのは、まさに私どもは、例の障害者権利条約の批准に向けての障害者制度改革のところにおきまして、やはり、障害者を差別してはならないとか、どんな障害を持っていても地域で生活する権利があるとか、それらの背景があって、ここに私ども家族会として意見を述べる機会ができたのではないかなと思っております。
 今まで本当に同じようなことを、五十年近くこの運動をしてきましたけれども、なかなかこういう機会も得られずに、現状になっておりましたけれども、ぜひとも、ほかの団体の方からも言われております、今ここで精神障害者のいろいろな問題を底上げしよう。
 やはり福祉の対象でなかったということが、かなり私どもにとっては、病者であるということからどうしても医療の対象でありましたけれども、ここに来て、福祉の対象ということで、就労に向けていろいろな対策もできてきましたし、また地域生活の支援策もできてきているということは、これは大変に、まだまだ不十分であるとは思いますけれども、これからの、精神障害者が地域で生活していく大きな足がかりになると思っております。
 いろいろと御支援をいただいた方々にお礼を申し上げます。ありがとうございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 障害者の権利条約の批准に向けてということで、いろいろな問題が大きくクローズアップされてきた。その背景には、やはり当事者の皆さんの、国に対する働きかけもあったし、また国連に対する働きかけですとか、そういうことの中で前進がつくられてきたのではないかなと思っております。
 そういう点で、増田参考人も、川崎参考人と同じように、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で発言をされてまいりました。その中で、医療保護入院にかかわる同意を含む保護者制度の問題点の解消に向けて、障害者権利条約の求める人権擁護の観点から、新しい仕組みの検討を求めていたと思います。やはりそれは、単なる手続論の問題ではなくて、医療も福祉も家族の責任、負担が前提だったという制度が大きく変わらなければならないと思うんですね。
 そういう中で、今回、その保護者制度は廃止なんだけれども、家族等の同意という形で要件が残ってしまった。その理由に、権利擁護ですとかインフォームド・コンセントがやはり必要なんだということを言っているんですが、それは、今、権利条約に照らしてずっと議論を積み重ねてきた権利ですとかあるいは障害者の自己決定とか、そういうことから見るとちょっと意味が違うんじゃないかと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

○増田参考人 ありがとうございます。
 医療保護入院が残ってしまったことというのは、多分背景に、重篤化させてしまう今の地域のありようというのが基本的にはあるんだろうというふうに思っています。
 私たちのところで支援を始めて、自分の病気のことだとか自分のペースをつかめていくと、そんなに入院される患者さんというか当事者は多くいらっしゃらなくて、少ないんですね。なので、地域の生活を確立していき、自分の病気と生活のバランスを考えられるようになると、本当に、入院していく期間というのは少なくなるし、入院しないで暮らせる人がとても多くなるんだろうというふうに思います。
 ただ、現状では、やはり支援につながる人が少ないというのが精神障害の問題であって、本当に家族がおうちの中で頑張って抱えていらっしゃる方たちが多く、家族の力が尽きるとどうしても入院になってしまう、下手をすると長期的な入院になってしまう。でも、今は割と三カ月ぐらいで退院される方が多いので、なかなか病状が落ちつかない患者さんを御家族が必死で抱えているというような現状がやはりまだまだ変わっていないなというふうに思うところです。

○高橋(千)委員 ちょっと質問は、権利擁護とかインフォームド・コンセントということを言っているんだけれども、当事者や家族に十分な説明がされるということと今の同意要件というのは別ではないかと私は率直に思うし、先生もそういう立場でお話しされているのかなと思って伺ったんですけれども、もう一度、済みません。

○増田参考人 済みません、何かキャッチできていなくて。
 インフォームド・コンセントと同意入院の問題。(高橋(千)委員「はい。権利擁護と言っているけれども」と呼ぶ)
 私の最後の方に入れたと思うんですけれども、多分、病状が悪化してからどうするかというと、なかなか御自分の意思を明確に言えない患者さんがいるので、そこに対する権利擁護の仕組みが必要だというふうに思います。
 それは、病院の中に委ねられるのではなく、病院や家族とはまた違う存在の人たちがいて、そこでやはりその人の権利を守りながらきちんとした医療を受けられる権利を行使する、そういう仕組みにならないと、当事者や家族の人たちの本当の権利は守れないのではないかというふうに思っているところです。

○高橋(千)委員 済みません、ありがとうございました。
 そういうことで、検討チームの方で代弁者の創設ということが提案されたにもかかわらず、今回それがなくなっちゃったという思いがあって、何か話をごっちゃにしているじゃないかという思いがあって、ちょっと質問させていただきました。失礼しました。
 それで、籠本参考人にぜひ伺いたいと思うんですが、先ほど少し、精神科特例のことで、質問に対してお答えがあったと思います。
 先生が一番最初におっしゃったこと、外来と入院と退院と、医療しかなくて、間には何もなかったと。まさにその間をどうしていくかということが今問われていると思うんです。
 ただ、そのためにも、今、例えば早期退院につなげていくためにどんな支援が必要かとか、そういうことがまた医療の現場でも求められることが多いわけですよね。そのことを多職種という形で、スタッフを、医師と看護師だけではなくてというふうなことは大変よいことだと思うんですが、それをどう評価するかという点で、単に、今まで三対一であったものが、いろいろ入れて三対一であれば、負担は変わらないわけですよね。
 私は、上乗せしなければだめなんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういう点で、診療報酬をどういうふうに評価していくかということが、これから議論が始まりますので、先生の御意見を伺いたいと思います。

○籠本参考人 先生おっしゃるとおり、もちろん、地域での受け皿づくり、これはもう絶対必要です。生活と密着していますので、病状と。ここをしっかりしないと、医療が幾ら汗をかいて一生懸命やってもなかなかうまくいかない、再発、入院ということにつながってしまう。ですから、ここのところがまず重要です。
 ただ、片や、御病気になられて、どうしても治療が必要やというときに入院されるわけですが、その方の医療をきちんと提供する。適正な医療という形で厚労省の方は表現されておりますが、まさに御本人にとって非常に有益な、適正な医療。
 それと、過去にいろいろあったんです。要するに、強制入院させられた印象だけがあって、何となくよくなって退院してしまって、もう二度と入院はしたくないわというようなこともよく聞いています。
 そうではなくて、内科や外科の病気と一緒で、内科や外科の病気で入院して、いろいろ治療して、うまくいって、元気になって、入院せんかったらよかったなんということは普通はないですわね。それが、何で精神科の病院に入院したんだ。まあ、それは強制入院ということもありますけれども、やはりきちんとした、御本人が納得できる、家族が納得できる、そして何よりも医療従事者が納得できる医療サービスがまだ十分提供できる体制にないというのが一番大きな問題だというふうに思います。
 この体制を十分充実させるための人員の確保のためには、病院経営をやっていく者にとりましては、いいことをやりたいんですけれども、やはり先立つものがないと人が雇えない、研修ももちろんしかりです。ですから、その辺のところをやはり診療報酬でしっかり見ていただくようなバックアップがぜひとも必要ですので、よろしくお願いします。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 では最後に、川崎参考人と増田参考人に同じ質問をしたいと思います。
 当事者の立場からと、それから実際に地域で支援をされている立場から、当事者、精神障害者の尊厳を守りながら地域で支えていくための必要な支援とはどうあるべきかについて、一言ずつお願いいたします。

○川崎参考人 川崎です。
 まさに地域生活をするための支援というのが今求められておりまして、私どもは家族会として家族支援ということを言っておりますけれども、全国の家族から言われておりますことは、やはり三百六十五日二十四時間体制のいわゆる訪問型の支援なんですね。
 今の制度は、出向くという言葉を増田さんはおっしゃっていましたけれども、行かなくてはいろいろ支援が受けられない。でも、当事者を抱えていて、当事者の状態が悪くて、当事者は、お母さん、外に行かないでと言っているので、お母さんも子供も引きこもってしまって、そこに適切な支援が届いていないということがありますので、やはり、訪問して、そして必要な支援ができるようなアウトリーチ。アウトリーチが、いろいろとモデル事業が終わりまして少しずつ進んでいきますけれども、私たち、家族、当事者が本当に必要とするアウトリーチ、それがしっかりと制度化される、それを強く望んでいるところであります。

○増田参考人 この間、精神障害者の支援に、やはり家族に重たい負担を課してきた。それをやはり一日も早く変えていくことがまず一つ挙げられると思います。
 もう一つは、精神障害の人たちを重篤化させない支援ということが求められているし、それには、もっと精神科にかかりやすい、あるいは精神疾患についての正しい知識を多くの人が共有する、学校教育等でも正しい知識を伝えていく、そんなことが求められます。
 そして三つ目は、精神障害の人たちのいろいろな特徴があります。すごくすぐれているところもあるし、苦手な部分もある。そういうことを丸ごと引き受けて生きられるような、そういう地域を地域ごとにつくっていくことだというふうに思っているところです。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 時間の関係で全員にお聞きできなかったことをおわび申し上げます。
 参考になりました。どうもありがとうございました。

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