国会質問

質問日:2014年 6月 11日 第186国会 厚生労働委員会

労働安全衛生法の一部改定案

労使協議へ指導を / 日航裁判 高橋議員が国に要求

 日本共産党の高橋ちづ子議員は11日の衆院厚生労働委員会で、今月相次いで不当判決が出された日本航空の不当解雇撤回を求める裁判を取り上げました。
 高橋氏は、原告が繰り返し求めてきた解雇時の人員数などが明らかにされないまま、高裁が「原告の計算は間違っている」と整理解雇を認めたことを指摘。一般論としても数字を出すのは解雇の要件を満たすか否かの前提ではないかとただしました。
 田村憲久厚労相は「一般論では争いの事実については証拠調べが必要」と答えました。
 高橋氏は、政府は「リストラされた労働者の再雇用を念頭に協議を求める」とした国際労働機関(ILO)の勧告に基づき会社側が労働者との協議の場につくよう指導するべきだと主張しました。
 高橋氏はまた、日航の元契約制客室乗務員が最高裁でパワハラ(職場のいじめ)が認定され、厚生労働省のホームページにもパワハラによる不法行為の具体例として載っていることを紹介。パワハラの再発防止へ国が強く指導するべきだと求めました。
(しんぶん赤旗 2014年6月21日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 JALの整理解雇撤回を求める裁判の東京高裁判決が、三日、客室乗務員、五日、乗員で相次いで出され、いずれも控訴棄却という判決でありました。
 この件について、私は五月二十八日の本委員会で質問いたしました。このとき、原告らが繰り返し求めていた数字、つまり、解雇時の人員が何人いたのか、一般退職は何人だったのか、こうした数字について内閣府に質問したわけですが、係争中として答えていただけませんでした。
 しかし、今回の判決を見て、改めてこれが最大のネックだったということを感じました。高裁判決では、原告らが、会社が目標とした人員体制が既に達成されており、解雇の必要性がなかったと主張しているのに対して、原告側の数字の正確性には疑問がある、これは客乗です、最終的な削減目標人数は当初の説明に用いた数字とは異なる、乗員、として、整理解雇の合理性を認めたのであります。
 しかし、これはフェアじゃないですよね。つまり、争点となっているわけですよね。この正確な数字を示さないで、間違っている、こういう判決があるでしょうか。裁判所はそれを確認もせずに、解雇に合理性があるというのは全く意味がわかりません。そもそも、整理解雇の要件とは、避けられない解雇だったのかをきちんと説明するのが前提ではないでしょうか。解雇回避努力や人選の合理性など、四要件に照らしてどうかが問われる、その出発点が不透明だと言わなければなりません。
 大臣、一般論でもいいですので、きちんと双方が納得いくために数字を出す、当たり前だと思いますが、いかがお考えですか。
○田村国務大臣 一般論とおっしゃられますけれども、もう個別の事案を委員がおっしゃっておられます。
 これは、個別の係争中の案件でありますし、司法機関でもまだ係争中だということでございますので、コメントの方は差し控えさせていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 では、一般論でもう一回聞きますけれども、整理解雇の四要件、これまでも判例法理ということを厚労省として整理をしてきました。そのときに、やはり必要だったのかどうかというときに、正確な数字というのは、基本的に、お互いに知らなければ、そこから議論が始まらないのではないかと思うんです。これはたとえ裁判になっていようがなっていまいが、当然必要ではないかなと思うんですが。
 感想でよろしいですので。
○田村国務大臣 一般論で申し上げますと、客観的合理性、社会通念上の相当性というものを争う民事訴訟におきましては、要件の妥当性を主張する者と妥当性を否定する者の間に争いがある事実については、証拠調べの手続が必要となりますが、証拠調べは、当事者の申し出た証拠につき、裁判所が必要と認めた場合に行われるのが原則であるということであります。また、証拠による事実認定は、証拠調べの結果に基づいて、裁判官が自由な心証のもとに行うということでございます。
 一般論で申し上げて申しわけないわけでありますけれども、そういうことでございます。
○高橋(千)委員 普通に考えて、必要なものだよなということが理解できるのではないかなと思うんです。
 そこで、ILOの結社の自由委員会からのたび重なる勧告について、原告らは、ことし二月十日に追加の情報提供を行っています。ILOからは、日本政府についても報告をしたと回答しております。このことを承知しているでしょうか。一言でよろしいです。
○中野政府参考人 先生御指摘の、二月十日付でILO結社の自由委員会に対して提出した追加情報提供につきましては、同月二十一日付でILO事務局から、追加情報提供がなされた旨日本政府に転送されてきておりまして、厚生労働省としても承知しております。
○高橋(千)委員 確認をさせていただきました。
 乗員の判決の中に、ILO結社の自由委員会の勧告について、本件に関して何らかの具体的措置を要請するものではなく、解雇してはならないという内容のものではないと書いているんですね。その上で、だから、勧告は解雇が許されないという根拠にはならないとしています。
 でも、私も前回指摘をしましたし、原告らが主張しているのは、別にILOが、解雇を不当だから撤回せよとか、裁判に干渉するとか、そういうことを言っているのではないんだ、ちゃんと聞いてほしいということを言っているんですね。
 つまり、係争中だということを理解した上で、十月のフォローアップ勧告は、ILO百五十八号条約、リストラで解雇された労働者には優先的に再雇用される権利がある、この条約にのっとって、やはり新規採用を連続して行っているわけですから、今後、再雇用を念頭に協議を求める、するべきではないかという趣旨だったと思います。
 これに踏み込んで言及しているにもかかわらず、この判決文書は、あえて六月の勧告、今私が言った十月ではなくて六月の勧告で、そんなことは言っていないというふうに言っているんですよ。
 実は、参議院の福島みずほさんの質問を見ました。福島みずほさんが、質問で、十月のフォローアップと質問しているのに、大臣が、あえて六月と答えているんですね。あなたは話をそらしているんですよ。
 そうではなくて、何も、のりを越えて勧告しているんじゃないんです。そのとおり受けとめてほしいということを言っているだけなんです。だから、追加情報が来ていますということを承知していますという答弁がありましたので、改めて、そこを踏まえて、会社側は、国から言われた場合は受ける、そう答えています。このことをちゃんと見詰めるならば、勧告の趣旨である、協議の場に着くことを指導するべきではないでしょうか。
○田村国務大臣 ILOの自由委員会の十月の報告書、これは我々も承知をいたしております。協議がなされるべきであるという話であるわけであります。
 今、JALが国からというお話がありましたが、我々はそういう話はいただいていないわけであります。そもそも、労使、労働組合と使用者の交渉を行うための必要な措置はしっかりと講じられている、これはもう労働組合法の中で講じられておるわけでありますので、労使が交渉していただくのは自由でございますから、ある意味、国が何かというような話自体、我々としては、ちょっとどういう意味合いなのかというのがよく理解もできないわけであります。
 あわせて申し上げれば、まだこれは司法の中で争っておられることでございますので、我々としては、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと考えております。
○高橋(千)委員 この点に関してはもう言い切りにしますけれども、結社の自由委員会ですからね。交渉は自由だと大臣はおっしゃいました。でも、本来であれば、現役であれば交渉に立てる組合員の皆さんは、みんな解雇されたわけです。こういう実態があるということを踏まえて、やはり正当な協議の場に着くべきだということを主張しているんですよ。
 私は、きょう言いたいのは、会社が、更生手続決定を受けつつ、一便の運航もとめない、そういうことを当時言いました。そのときに、どういうことかといいますと、二年前の二〇一一年十月十四日、政府がILOに対して返す報告書の中で、会社側の参考意見というのをつけていますよね。そのときに、政府の協力は不可欠だったと言っているんです。
 なぜか。だって、このままでは、会社更生手続中だから、世界じゅうの取引業者が理解して、完全に不安を払拭して、ちゃんとこれからも取引してくれるというのは不可能だ、つまり、このような事態を回避するためには、一私企業である日本航空が対外的に説明するだけでは不十分であり、日本国政府の協力が不可欠であった、具体的に書いているんですね、自分たちが。日本航空が十分な資金を確保できるように必要な支援を行うことを政府声明に織り込むよう要請したと。
 つまり、政府声明は出ていますよね。政府の支援によって運航をとめないということを言っていますよね。だから、逆に言うと、政府声明なかりせば、会社の更生はなかったんです。これだけ国が関与していることなんですよ。それを日本航空自身が言っているわけです。
 だから、国がそうやって支援をしたんだから、きちんとできていますかということを指導すれば、会社が従うのは当たり前じゃないですか。国から言ってきてくれたらやりますよなんて、会社が国にわざわざ言いに来るわけないでしょう。だけれども、そういう関係なんだということをちゃんと受けとめて、新しい勧告が出るでありましょうし、しっかりと受けとめていただきたいと重ねて指摘をしたいと思います。
 きょうは、もう一つのJALの問題をお話しします。
 これは係争中ではありません。昨年十月二十二日に最高裁判決が出ています。たった一人の客室乗務員、それも契約制乗務員が会社を相手に闘い、雇いどめ撤回にはならなかったんですけれども、三日間のパワハラ行為が認定をされました。実は、きょうこれを選んだのは、法案にも関係があるなと思ったからなんです。
 そもそも、今JALは、客室乗務員の新規採用は全員が契約制客室乗務員として採用されています。新規のときには正社員はおりません。一年ごとの契約を結んで、三年たてば正社員になれると約束するものの、そのための厳しい適性評価がございます。同じ機内に乗務して、お客様へのサービスから一挙手一投足を監視され、その状況が上に報告をされるというシステムであります。
 判決では、退職強要自体が違法とは言えないが、長時間にわたる面談は違法な退職勧奨と認めるのが相当として、使用者責任も一部認めました。明確にパワハラを認定した判決でありますが、この判決について承知をしているでしょうか。
○中野政府参考人 御指摘の事案につきましては、退職勧奨が不法行為に当たると判断された事案であるということで承知しております。
○高橋(千)委員 確認をいたしました。
 最高裁は被告、原告双方を棄却したのであって、どちらも完全勝訴というわけにはいきません。ただ、ここで私が言いたいのは、パワハラを認めたことの意義が大変大きいのではないかということです。
 元原告らは、この判決を受けて、会社の謝罪と再発防止策を求めていますが、受け入れようとしません。それどころか、裁判の証人に立った人も傷ついた、だから、こういう負担があったことに対して原告は謝罪する気持ちがあるのかと、何か、お門違いの反論をしてきたのであります。
 でも、社長自身は、植木社長ですが、昨年十一月八日の経営協議会の場で、私は、最高裁で出た判決に関しましては、会社としての主張が認められた部分、認められなかった部分を含めて厳粛に受けとめたいと思います、間違っていた部分があればそれをしっかりと反省して、ただ、一番大事なのは、このような闘いを起こさなくてもいい会社にしていくと述べています。原告らは、その発言をしっかり実践してほしいと願っているだけなんですね。
 そこで、パワハラ再発防止のための労使協定案を提示して、これについて協議をしてほしいと実は言っているんです。
 それで、資料の二枚目に、これはJALじゃないですよ、政府がつくっている、二十一世紀職業財団、「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」、こういうものがございますが、その中に載っている、パワーハラスメント防止に関する協定書の案であります。こういう案が幾つか載っています。つまり、労使間のパワハラ協定の締結を、やはり防止対策として政府も推奨していると思いますが、いかがですか。
○中野政府参考人 個別の事案についてコメントをすることは差し控えたいと思いますが、一般論として言えば、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議の提言において、職場のパワーハラスメントを予防、解決するための労使の取り組みの一つとして、ルールを決めることを挙げておりまして、その例として、就業規則に関係規定を設けること、労使協定を締結すること、ガイドラインを作成すること等が盛り込まれております。
 厚労省といたしましては、提言を踏まえ、それぞれの職場におけるパワーハラスメントの予防、解決に向けて、セミナーあるいは好事例集の作成、周知等を行っており、今後とも、このような取り組みを続けていきたいと考えております。
○高橋(千)委員 厚労省が推奨していることをぜひやりましょうと言っているわけですから、ぜひ実現をさせていただきたいなと思っているわけですけれども、資料の一枚目を見てください。
 これも厚労省のホームページなんですね。左肩にある、「あかるい職場応援団」「みんなで考えよう!職場のパワーハラスメント」ということで、こうしたホームページがございますが、この中に、ずっと裁判例が載っているんですね。そのうちの「第十三回 退職勧奨が不法行為にあたると判断された事案」、これがまさしく今私がお話をしている当該事案であります。厚労省のホームページで紹介をされているということです。
 この左側の下の段を見ていただきたい。ここにアンダーラインを引いていますけれども、「原告が、自主退職はしない旨明言した後に、なお、上司が「いつまでしがみつくつもりなのかなって」「辞めていただくのが筋です。」「懲戒免職とかになったほうがいいんですか。」などの表現を用いて退職を求めたこと、しかもその面談は長時間に及んだこと」、あと、ちょっと飛んで、「一年を過ぎて、OJTと同じようなレベルしか仕事ができない人が、もう会社はそこまでチャンス与えられないって言ってるの。」「もう十分見極めたから。」「懲戒になると、会社辞めさせられたことになるから、それをしたくないから言ってる。」「この仕事には、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」、こういう言葉まで出てきたと。これが違法性があるとして認定されたんですね。
 それを厚労省が紹介しているんですから、もうこういうことがあってはならないですよね、どこの職場であっても。
 実は、その後も、職場の中にパワハラの実態があるとアンケートの中で浮き彫りになっています。精神安定剤と睡眠薬を服用しています、フライト中にダサいサービスだと言われて、仕事中にもかかわらず動けなくなってしまった、もしよろしければ個人的に振り返りしましょうと、要するに居残りを求められ、一時間五十分、威圧的な反省に帰りたくても帰れなかった、体型について言われ、食べ過ぎなどと言われるので、過食症になって、それが結局、摂食障害になったなどなどの訴えが今も寄せられております。
 再発防止策へ真剣に取り組むべきだと思いますが、大臣の考えを伺います。
○田村国務大臣 個別の案件に関しましてはコメントは差し控えさせていただきますけれども、一般的にではありますが、やはり、パワーハラスメントという問題、これは、労働者の方々の尊厳、人格を傷つけるわけでありまして、あってはならないわけであります。
 今も局長から話がありましたが、職場のいじめ・嫌がらせ問題円卓会議、この中で報告書といいますか提言をいただきました。先ほどの内容、こういうものを周知を図っていく中において、やはりこのパワーハラスメントという問題、これがこれからしっかりと予防ができていけるように、企業とも協力をしながら、我々はしっかりと政策を進めてまいりたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 なかなかそれ以上は踏み込んでいけないと思いますけれども、その答えの中にしっかりと届くものがあればいいなと思っております。
 資料の三枚目に、これは昨年の八月二十日の朝日と読売の記事を載せておきました。右側の朝日は、「全日空、客室乗務員を正社員採用」と書いております。左側の読売は、「全日空 契約CAやめます」と書いております。
 実は、全日空もJALと同様に、スカイサービスアテンダント、SS制度と呼ばれる契約制度をやっておりました。一年契約を結んで、三年が経過した後、長期社員か契約社員かを選ぶという制度でした。これを、記事の最初の方にあるように、今年度から、契約社員ではなくて正社員として採用する。そして、左側にありますけれども、「在籍するCA約六千人のうち約千六百人いる契約社員についても、一四年度以降、本人の意向に応じて正社員に切り替える。」こういう英断をしたわけです。
 これはなぜかということを考えてみたいと思うんですね。八割が、三年たってどうしますかといったときに正社員を選ぶということ、雇用が安定しない契約社員での入社を嫌って、内定を出しても就職を取りやめる人もいる、そういう中で、ANAの客室センター長が記者会見で言っておりますけれども、「競争が激しく、サービスの向上に優秀な人材を確保したい。先手を打って採用環境を整える」とコメントしています。
 確かに、正社員だと年金ですとか退職金など人件費はふえるけれども、離職率が下がれば逆に採用にかかる新入社員教育とかの経費が節減できるということを見合いで考えると、大幅なアップにはならないというふうに判断をしたというんですね。あえて最後に書いていますが、JALも九五年度からやっていると書いていて、これはずうっとまだ続いているんですね。
 連合の雑誌の中に、ANAの労組に聞くインタビューがありますけれども、これは組合も会社側から提案があって非常に驚いたということを率直に言っています。でも、むしろ誇らしく思えたと。コスト競争力だけではなく、本当の意味での企業の競争力、生産性を上げていくにはどうすればいいのかという問題意識を持ち続けてきたと述べていらっしゃる。非常に大事なことだと思うんですね。
 それで、JALが整理解雇に当たって年齢基準を設けましたよね。このときに、ANAと比較すると年齢が非常に高い、だから、将来の貢献度でいうと、平均年齢を下げる、そのために基準を設けるとしたら、年齢基準というのは合理性があるんだということを言っていたわけなんですよ。でも、それは、ANAの年齢が低かったのは、こうやって次から次へとやめていったということもあるんですね。同時に、だからこそ今、正社員に切りかえようとしている。そういうことこそ本当は、比較の上で自分たちも取り入れようとすればいいなと私は思うんですね。
 これは、感想でいいですので、大臣に伺いたいと思います。
○田村国務大臣 ANAの二〇一四年以降の客室乗務員の労働契約に関しましては、今言われましたとおり、今まで有期の契約であったわけでありますけれども、無期の契約社員というような形になるというような話を、我々も報道等も含めて聞かせていただいております。
 やはり、その方が多様な人材が集まるということ、さらには、言われますとおり、安定的な長期な雇用、これが保障されるわけでありまして、その分だけ早期に人材の養成ができていけるというようなこともあるわけであります。そういうことを期待されながら、このような形をおとりになられる。
 これは、我々といたしましても、労働契約法を改正いたしまして、五年を超える労働契約に関しましては無期転換というようなものがあるわけでありますが、これを先取りするような形で、新しく契約をされる方々に関してはもう無期での契約ということでございますので、大変我々も頼もしく感じさせていただいております。
○高橋(千)委員 ぜひこうあってほしいなと。やっている仕事は同じですからね。お客さんから見たら同じなんですよ。ですから、同じ仕事をしているのに、雇用の形態によって差別的な扱いがあってはならないという議論を重ねてきました。やはりこの立場に立つべきだなということを、今述べてくださったことでも確認をさせていただきたいと思います。
 そこで、わずかな時間しか残っていませんが、労働安全衛生法の中で少し議論したいと思うんですが、パワハラ問題ですね。今もパワハラの事案を取り上げましたけれども、政府としても、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議の提言を受けて、パワハラ問題に取り組んできました。今も答弁の中で少しあったわけですね。
 そこで、精神障害の労災認定の中でパワハラと思われるものはどのくらいあるのか、また、そのことをどのように認識しているのか、お願いします。
○中野政府参考人 労災認定の内訳でパワハラという直接的なものはございませんが、職場における嫌がらせ、いじめ等が原因で精神障害を発病したとして労災認定された件数は、平成二十二年度三十九件、平成二十三年度四十件、平成二十四年度五十五件となっておりまして、労災認定件数は増加傾向にあると認識しております。
○高橋(千)委員 資料の四枚目に、ハンドブックの中に書いてある資料をつけておきました。
 局長が今、上のところだけ読んだんですね。「精神障害の労災補償の支給決定件数全体」、三百八件、三百二十五件、四百七十五件のうち三十九、四十、五十五というのは、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」、これはどう考えてもパワハラでいいだろうという整理だと思うんですね。
 だけれども、その下の「上司とのトラブルがあった」「同僚とのトラブルがあった」あるいは「達成困難なノルマが課された」、こういう中にも当然パワハラの芽があるであろうということは類推できるわけなんですよね。このことが円卓会議を受けて出てきて、少しずつこういう整理ができてきたんだと思うんですが、やはりそれは精神疾患の要因の一つであるということで認識されてきたと思うんですね。
 こういうときに、今回の安衛法のフローの中には、一切このパワハラに関することが出てこないわけなんですけれども、この仕組みの中で何らかの対策というのを考えるつもりでしょうか。どうですか。
○半田政府参考人 私どもの新たに導入しようとしておりますのはストレスチェック制度でございまして、ストレスの度合いを評価するというものでございます。
 それで、先生御指摘のパワーハラスメントは、そういったストレスの一因ではあると思うんですけれども、私どもがやろうとしているのはあくまでもストレスでございますので、ストレスの状況をどうやって把握するかということでございます。
 ただ、この項目の中には、職場での関係ということも若干触れられるようになってございますし、そういったことを踏まえまして、このストレスチェックを踏まえた後に面接指導ということになれば、職場の状況についてもお尋ねすることになりますので、そういった中で、ある程度は、パワハラの現状なんかについても把握するようなことができるのかなと思ってございます。
 また、この結果を集団的に把握することによりまして、その職場職場の特徴なんというものを把握していくようになってございまして、そういった中で職場改善につなげていただくということを考えてございまして、そういった中では、御指摘の点も含まれてくるのかなというふうに考えております。
○高橋(千)委員 要因の一つであるというデータがあるにもかかわらず、朝からの議論を聞いていてもそうなんですけれども、何か、メンタル不調だけをあぶり出していくような対策では本当はだめなんだろう、私は強く言いたいと思うんですね。
 きょう、もう一問だけ質問しますけれども、長時間労働に関してだってそうなんです。これは、面接指導制度ということで、義務化されている部分がありますよね、資料の六枚目につけたんですけれども。やはり、義務化のところとセルフケアのところと結びついて、単に時間が長いだけではなくて、長時間労働によるさまざまなストレスや身体的な負荷と、パワハラのような負荷と、いろいろなことが総合的になっているんだということをちゃんと見なくちゃだめなんです。
 それで、この長時間労働に対する面接指導制度というのは、義務化されているのは、百時間超の時間外労働を行い、疲労の蓄積があり、面接を申し出た者だけなんですね。百時間を超えていたら、労災を文句なしに承認される人ですよね。その人だけが義務であると。
 どういう措置を講じたかというと、めくっていくと、四二・一%が、時間外労働の制限というのを医師が指導したと。当たり前じゃないですか。百時間も働いて、時間外労働を削れというのは、言われなくても当たり前のことでしょう。
 その程度の対策しかできないのかということでいうと、この義務をもう少し前倒しをして、少なくとも八十時間からはもう義務にするとか、そういうことをしていかないと本当に対策にはならないと思いますが、いかがですか。
○田村国務大臣 委員がおっしゃられましたとおり、長時間労働において、本人の申し出において医師に対して面接指導を受ける、受けさせなければならない、企業に義務づけているのは百時間以上ということになっておるわけであります。
 これは、御承知のとおり、長時間労働というのは脳や心臓疾患等々に影響を及ぼす可能性もあるわけでありまして、そのような意味で、しっかりと健康というものをチェックしていくという意味で義務づけております。ちなみに、八十時間以上は努力義務ということになっておるわけであります。
 もちろん、本人が申し出るということが前提になっておりますが、そこは必要に応じて申し出るように勧奨もしていかなければならぬわけでございますが、一方で、申し出によらない面接指導というものも、これは事業者の判断で、こういうことに合わせて制度とかをつくれるわけでございます。
 その対象としましては百時間以上というわけではないわけでありますので、八十時間以上の方々も含めて、そのような判断をそれぞれの事業主がしていただく中において面接指導を受けていただけるということもあるわけでございますので、我々といたしましては、このような制度等も含めて周知徹底を図りながら、長時間労働に対するしっかりとした健康とチェックというもの、これを進めていただけるように、各企業に周知徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 時間が来ましたので、続きはまた来週やるんですけれども、一言だけ。
 二〇〇九年三月二十六日の局長通達、「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」というものがありますが、ここでは、「企業及び事業場のトップに対して、局署幹部から、様々な機会をとらえ、メンタルヘルス対策の重要性等について説明を行うとともに、率先して取り組むよう指導等を行うこと。」つまり、トップに対して指導を行えという通達を出しているわけですよね。
 だから、先ほど来私が指摘をしている、個別案件だといつも言っていることに対しても、ちゃんとトップに対して物を言えということをみずからが通達として出しているわけですから、ぜひそれを実践して、模範的な会社としてやっていけということを指導していただきたいと指摘して、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

 

――資料――

【資料1】退職勧奨が不法行為に当たると判断された事案(日本航空事件)

【資料2】労働協約等の労使協定の例「パワーハラスメント防止に関する協定書案」

【資料3】朝日新聞2013年8月20日付「全日空、客室乗務員を正社員採用」、読売新聞2013年8月20日付「全日空 契約CAやめます」

【資料4】「精神障害などの労災補償も増加」「どのような行為がパワーハラスメントにあたるのか」

【資料5】職業性ストレス簡易調査票の項目一覧

【資料6】長時間労働等に対する面接指導制度

【資料7】長時間労働者(時間外・休日労働100時間超)の面接指導の結果を踏まえての措置内容別事業所割合

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