国会質問

質問日:2014年 2月 14日 第186国会 予算委員会

労働者派遣法改悪は許されない

ずっと派遣労働可能に / 衆院予算委 高橋議員が法改悪を批判

 日本共産党の高橋ちづ子議員は14日の衆院予算委員会で、今国会で狙われている労働者派遣法の改悪について、臨時的・一時的な業務に限定した派遣労働の原則を転換するものだと追及し、「派遣が例外ではなく、あたりまえの働き方になる改悪はするべきでない」と主張しました。
 高橋氏は、今回の改悪案では個人の派遣期間は3年に制限するものの、(1)派遣労働者を代えればずっと派遣可能(2)同じ労働者でも部署が若干違えば派遣可能(3)派遣会社に無期雇用される場合は期間制限なし―だと指摘し、「臨時・一時的な原則が変わるのではないか」と追及。田村憲久厚労相が、派遣継続には「労働組合の意見聴取が必要」と釈明したのに対し、高橋氏は「労働組合が反対してもできる仕組みだ」と批判しました。
 高橋氏は、いすゞ自動車や日産自動車で「派遣切り」された労働者が「家族みんなの生活が破壊された」と訴えていることを紹介。派遣切り以降で雇用者は21万人減っても非正規雇用は2000年比で541万人増えていることを示し、「派遣と期間工など非正規の中を行ったり来たりしているのが実態だ」「『企業が利益を上げれば賃上げにもつながり、好循環』という掛け声はうたい文句にすぎない」と批判しました。
 菅義偉官房長官が「雇用の安定を促進する」と釈明したのに対し、高橋氏は「派遣は派遣のままになるのが今回の見直しだ」と述べました。
(しんぶん赤旗 2014年2月15日付より)

 

高橋「業界の要望そのもの」 厚労相「労組の意見聞けば継続」

 14日の衆院予算委員会で、今国会で狙われている労働者派遣法改悪をやめよと追及した日本共産党の高橋ちづ子議員。派遣制度の大原則を掘り崩す問題点が浮き彫りになりました。

 職業安定法44条は、強制労働やピンはね(中間搾取)を招くとして「人貸し」業=労働者供給事業を禁止しています。労働者派遣制度は1985年にその例外として、臨時的・一時的な業務に限定して認められたものです。正社員から派遣への置き換えを防ぐため、最長3年に派遣期間が制限されています。
 高橋氏は、今回の改悪案について、(1)派遣労働者を代えればずっと派遣可能(2)同じ労働者でも部署が若干違えば派遣可能(3)派遣会社に無期雇用される場合は期間制限なし―だと指摘しました。

 高橋 臨時的・一時的という原則は変わらないか。
 田村憲久厚労相 (派遣の継続は)過半数以上の労働者代表の意見聴取をしなければならない。
 高橋 労働組合が反対してもできる仕組みだ。(原則の)担保にならない。

 高橋氏は、日本生産技能労務協会と日本人材派遣協会が昨年7月に田村厚労相に提出した要望書の内容が改悪案に盛り込まれたことを指摘し、「派遣業界の要望そのものだ」と批判しました。
 いすゞ自動車や日産自動車で「派遣切り」にあった労働者が「家族みんなの生活が破壊された」と訴えていることも紹介し、派遣先の責任を問うべきだと迫りました。

 田村 問題が起こったのは事実。その7割が再就職した。
 高橋 再就職といっても、派遣と期間工の間を行ったり来たりしているのが実態だ。

 高橋氏は、「派遣切り」以降で雇用者は21万人減っているが、非正規雇用は2000年比で541万人増えていることを示し、「企業が利益を上げれば賃上げにもつながり『好循環』という掛け声は歌い文句にすぎない」と批判しました。
 派遣法は2012年の改定で、違法派遣があれば派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなす制度ができました。当時、野党として改正を骨抜きにする「修正」案の提出者だった田村氏の姿勢を、高橋氏はただしました。

 高橋 田村氏はこの改定案を審議した厚生労働委員会で「みなし規定がなくなることも含めて、労政審で議論をいただきたい」と答弁していた。
 田村 今回はやめるという議論にはならなかった。

 田村氏は“申し込みみなし制度”は当面残ると認めました。
 マツダ防府工場(山口県防府市)の「派遣切り」裁判で山口地裁は昨年3月、原告13人を正社員と認める判決を出しました。高橋氏は、法改定について「『派遣労働者の保護』がその目的として正面から規定されるに至った」とする判決文を引き、「(派遣の)原則は変わらないといいながら、例外である派遣があたりまえになる改悪はするべきではない」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2014年2月16日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、労働者派遣法を中心に、雇用労働問題について質問したいと思います。
 好循環実現国会が今国会の目玉だと言われています。一月二十四日の施政方針演説でも、企業の収益を雇用の拡大や所得の向上につなげる、それが消費の増加を通じてさらなる景気回復につながる、経済の好循環なくしてデフレ脱却はありませんと総理は強調されました。
 そこで、きょうは官房長官においでをいただいておりますので、お願いをしたいと思います。
 今国会提出に向けて準備をされております労働者派遣法の改正、この派遣法の改正と好循環がどうかかわるのでしょうか。
○菅国務大臣 提出予定であります労働者派遣法改正案の具体的な内容については、現在まだ政府内で検討している段階であって、詳細については法案審議の際に御議論いただきたいというふうに思います。
 なお、現在の検討状況としては、派遣期間の見直しだとか、さらには、雇用の安定やキャリア形成に資するものとして、派遣労働者のキャリアアップの促進をも検討しているところであります。特に、ことしの補正予算において、非正規の方々の雇用の安定だとか処遇の改善を推進するためのキャリアアップ助成の拡充等を行ってきたところであります。
 一方で、今回の派遣法の見直しは、成熟産業から成長産業へという失業なき労働移動と多様な働き方を実現することによって、活力ある日本経済を取り戻すとともに、企業収益が雇用拡大さらには賃金上昇につながるという経済の好循環を目指す安倍内閣の方向に沿ったものであるというふうに認識をいたしております。
○高橋(千)委員 もちろん、法律そのものはまだ出ておりませんので、詳細について議論するつもりではないんです。ただ、建議という形で方向は出ておりますので、それをあえてこの国会で通したい、それも二十四年に改正したばかりですのに、そういうことと好循環がどうなのかということで、あえて官房長官にお聞きをいたしました。
 今の、多様な働き方の実現ということがこれまでの本会議などでも答弁をされているんですが、やはり納得いかないので、それでどうして好循環になるんだろうかということなんですね。
 少し田村大臣と議論を進めていきたいと思うんですが、官房長官にもう一度、後で質問いたします。
 総理が言う、企業が世界で一番活動しやすい国、これがやはり答えなんだろうと思うんですね。経団連は昨年の七月に「労働者派遣制度のあり方について」の中で、日本再興戦略、これは成長戦略と我々はよく呼んでいますけれども、の中で、失業なき円滑な労働移動の実現には労働市場の柔軟性確保が必要と。柔軟性、つまり伸び縮みですよね。企業の都合に合わせてふやしたり減らしたりできる、大変便利だし、できるだけ安くと、企業の論理になるのではないか。これが私はやはり核心ではないかというふうに思うんです。
 それで、まず、議論を進める前におさらいをしますけれども、職業安定法四十四条は労働者供給事業を禁止しています。労働者派遣はその例外であり、一時的、臨時的なものに限るとして、一九八五年に制定されました。常用雇用の置きかえであってはならないということだったと思うんですね。
 そこで、なぜそうなのか。職安法が労働者供給事業を禁止していることの意味と、派遣がその例外であるという意味について、簡潔に説明していただきたい。そして、これからもその原則が変わらないのか、伺います。
○田村国務大臣 派遣が臨時的、一時的な労働力の需給調整役ということで、常用代替の防止として期間制限というものが設けられているというのは、これは基本的に、ネガティブリストが採用された平成十一年の労働者派遣法の改正、このときにこういう考え方が導入されたわけであります。でありますから、期間制限の中で、やはりこれに関しては臨時的、一時的であるというような位置づけがされているわけであります。
 今般、この国会に労働者派遣法の改正を提出させていただきたいと思っておりますけれども、これに関しましても、期間制限の中身自体、若干これは変わっておりますが、しかし、期間制限は設けておるわけでございまして、今まで同様、やはり臨時的、一時的な扱いとして派遣というものがあるわけでございますから、そこは変わっていません。
 ただ、例外として、無期で派遣で働く方々、この場合は比較的雇用が安定をしておるということでございますので、無期契約の派遣労働者に関しましては、これは期間制限なしで働けるというような形を今回例外的にとらせていただいておるということでございます。
○高橋(千)委員 戦後、労働者の基本的人権を明記した日本国憲法とともに、労働者供給事業は禁止された。いわゆる人貸し、そういう仕事ということの強制労働やピンはね、これをやはりもう禁止しようということで憲法とともに生まれた、そういう経過があったのではないかなと思っています。
 ただ、今大臣がお答えになったとおりに、平成十一年の中で代替の防止という概念が非常に狭められた。そういうことを図らずもおっしゃったのかなと思っております。さっき紹介した経団連の提言は、もうその原則さえも廃止してしまえと言っているわけですからね。私は、もうかなりそういう中身になっているのではないか、こういうふうに思っております。
 それで、一応、一時的、臨時的な働き方なんだということは原則だということは建議の中にも書いております。しかし、実際にどういうことになるのか。
 期間についてだけ今質問しますけれども、個人については三年未満というのは変わっていない、だけれども、人をかえれば、派遣する人をかえれば、それはずっと入れてもいいんだ、それから、同じ労働者が、今まで働いていたラインでない、ちょっと違う部署に行けば、それは別に派遣のままでも構わない、それから三つ目に、今も大臣がおっしゃった、派遣会社に無期雇用されている労働者ならば期間制限はかからない、この三つ、どうですかね。確認です。
○田村国務大臣 今般の建議でいただいたものの内容は、今言われた期間制限の中身を見直す。つまり、今までは、業務に関してそれがあったわけであります。それに対して今度は、人というところ、それから派遣先というところに着目して、三年間というような期間制限を設けるわけであります。
 まず、人がかわればいいではないかという話がありますが、今も申し上げましたとおり、基本的には、これは臨時、一時的なものでございますので、この場合には、やはり意見聴取を、その職場で過半数以上の労働者を代表する方々と意見聴取をしなければならない。それの中において、例えば反対等々の意見がある場合には、対応方針というものをしっかりと示していただく。
 そういう意味では、やはり、一番現場がわかっている、職場がわかっておられる労使ともの、一応そこでのいろいろな意見を交わす中において、それが可能かどうかということを調整いただくということでございますから、野方図に、これは三年、人がかわればまたその後いいというわけではないということであります。
 それから、職場は一緒であっても部署がかわればいいではないかというのは、これは今までも実は現状、そういうようなところがあったわけでございまして、今までは全く何もない中でそのようなことが現実として行われておったということがございます。
 しかし、今回は、同じ職場であれば、部署が違っていたとしても、やはり同じように労働者の過半数を代表する者と意見聴取をしなければいけないわけでございますので、今までよりかはハードルはちゃんと上がっておるわけでありますから、そういう意味では、常用代替防止という意味からしますと、ここは強化されたのではないのかなというふうに思います。
 それから、無期で派遣元と契約をされておられる方、そういうふうな派遣労働者の方々に関しましては、先ほども申し上げましたけれども、比較的雇用が安定しておるという点でございますので、これは例外として、三年という期限を設けずにその職場で働けるというふうなことにしたわけでございまして、決して、委員がおっしゃられたように、人さえかえれば何でもできるという話じゃございません。
 この後、多分また御質問があろうと思いますけれども、みなし制度に関しましても、やはりこれはちゃんと意見聴取というようなプロセスを踏まなければ、それは違反でございますので、そのままみなしという形になっていくわけでございますから、しっかりとそういうところで担保はさせていただいておるというふうに認識をいたしております。
○高橋(千)委員 今でも実際に起こっていることを、それ自体が問題じゃないかという認識がないんだろうな、逆にそれを法定するということを御説明しているわけですから。また、それを強化するんだともおっしゃいました。
 でも、労働組合にも意見を聞くといっても、それは、聞けば、とりあえずは、反対だと言われても、いいということになっているじゃないですか。そう説明しているじゃないですか。それでちゃんと担保されているなんということは言えない。
 しかも、これは、労働組合といっても、ちょっとうっかりするところなんですけれども、派遣先の労働組合ですからね。派遣労働者の労働組合じゃないわけですよ。そうしたら、派遣先の労働組合が、自分の職域が荒らされないかどうかということは意見は述べられるかもしれないけれども、派遣労働者の立場に立って言えているわけじゃないんですから、そこは、それで担保しているという話じゃないんだ、これを指摘しておきたいと思うんですね。
 それで、日本生産技能労務協会と日本人材派遣協会は、昨年の七月二十六日付厚労大臣宛ての要望書の中で、業務ごとの制限ではなく、個々の派遣労働者ごとの就労期間の制限とすること、ただし、派遣元において無期雇用の労働者については、就労期間の制限を設けないと申し入れています。
 これは、言ったとおりのことを今、法定したことになるじゃないですか。この要望書は、大臣自身が直接、大臣室で受け取っているわけですよね。これは、派遣協会のホームページに写真が載っておりますから、大臣自身が受け取っている。派遣業界の政治連盟との大変密な関係もございますということがあると思うんです。きょうはそのことは指摘をしませんよ。これ以上は言いませんけれども、派遣業界の要望そのものなんだ、結局、今出てきているのは。これでも常用雇用の代替ではないとおっしゃいますか。
○田村国務大臣 まず、派遣先の労働組合の意見聴取、また、反対がある場合には対応方針を示すというようなこと、これはなぜそうなっているかといいますと、常用の雇用の代替の禁止ですから、それはもうまさに派遣先の常用の雇用、これとの代替の防止ですから、そこの労働組合とやはりしっかりと労使で話をしていただくのがこれは私は筋だというふうに思いますので、そのような仕組みをとらせていただいたわけであります。
 あわせて、今おっしゃられた中で、それはいろいろな議論はありました。といいますのは、そもそも、前回の労働者派遣法の改正のときにも、我々は野党でありましたけれども、幾つかの政党がいろいろな議論をする中において、今般のこの建議の中身に関しても、そのときにもいろいろな議論があったのは、多分、委員も覚えておられる話だと思います。そういうところの中において、当時、附帯決議等々でいろいろなことが盛り込まれ、その後、研究会で御議論いただいた上で、労働政策審議会の中で今般建議という形でいただいたわけでございますので、急に降って湧いたわけではございませんでして、以前からそのような御議論がある中において今回建議をいただいたものであろうというふうに我々としては認識をいたしております。
○高橋(千)委員 その当時の議論については、後で質問しますので。
 だから、今大臣がおっしゃったのは、やはり、派遣先の労働組合、ここに派遣という間接雇用の問題点があるんですよ。常用雇用の置きかえになっている派遣労働者の立場に立って物を言う、そこができないじゃないかということを指摘している。ただ、尊重するということは言っているんだから、そこはちゃんと確認をしたいと思うんです。
 ちょっと話を進めたいと思うんです。
 やはり、派遣先の責任、このことがこの間ずっと問われてきたのではないかなと思うんです。
 少し振り返りたいと思うんですが、正社員で働いていた会社をリストラされて、いすゞ自動車栃木工場で三年一カ月働いたTさんという方がいらっしゃいます。いすゞが派遣契約を打ち切ったことで、二〇〇八年の十二月二十六日に解雇されました。実は、青森県出身の方で、この間、三年一カ月の間にですよ、派遣、期間、派遣と切り変わっているんです、働き方が。それで、自分の生活費を切り詰めて、給料の大半をふるさとの家族に送金をしていました。解雇後は、失業給付、わずかですけれども、一日一食に切り詰めて仕送りをした。それでも家族の生活費は賄えず、子供たちも進学の夢を諦めるんですね。だから、解雇は、私の生活だけではなく、家族みんなの生活を破壊し、子供たちの人生を狂わせたのだ、そういうふうに東京高裁の弁論で訴えました。
 本当に、この当時、随分議論されましたよね、労災が随分多いじゃないかとか。だけれども、派遣労働者は、派遣先の正社員であれば認められている、だけれども、この人の場合は、指を切ったとしてもカットバンでいいんだ、そういうことがあって、やはり、同じように働いているけれども、都合が悪くなれば紙切れ一枚で首を切られる、そういうことをやめようじゃないかということで、派遣法の抜本改正が叫ばれてきたんだったと思うんですね。
 それで、まず聞きますけれども、あの派遣切りに遭った方たちがその後どうしたのか、政府は把握していると思いますが、お願いします。
○田村国務大臣 まず基本的な認識として、我々もそういう問題意識があるからこそ、今般、この建議をいただいて、法改正に取り組んでいきたいと思っているんです。
 それは、やはり派遣元業者、ここもリーマン・ショックの後、いろいろな問題が起こったのは事実でございます。そういう中において、ちゃんと派遣業者を育成していかなきゃならない。そこで、今般の建議の中では、特定派遣、言うなれば、登録だけで業務をやっておる、このようなものはやめて、許可を受ける、許可制の派遣労働業者、こういうものしか認めないというふうにしようということで、質をしっかり担保していこうということが一つ。
 それから、やはり、派遣労働者の方々が、これから教育訓練を受け、またキャリアアップをしていただかなきゃならぬわけでありまして、その意味からしますと、派遣元に、しっかりと定期的な教育訓練と、それからキャリアコンサルティングを含めたキャリアアップの手法、こういうものを義務づけておるわけであります。
 あわせて、三年間というような期間制限がありますけれども、その三年がたったときに、派遣先に対して直接雇用の依頼を派遣元がしたりでありますとか、無期の派遣労働の雇用転換でありますとか、そういうような措置というものもしっかりと対応していくこと、これも義務づけているわけであります。
 そして、派遣先に関しましても、均衡待遇ということでございまして、例えば賃金、それから教育訓練、さらには福利厚生、こういうものに対して、自分のところの直接雇用の職員と同じような扱いをするような配慮義務、これもお願いをさせていただいておるわけであります。
 そのような意味からいたしますと、まさに、派遣労働者の方々が今よりももっと安定した、そのような待遇になるようにというような思いの中で、実は今回このような法律を出させていただきたいと思っておるわけであります。
 先ほど官房長官がおっしゃられたように、キャリアアップ助成金というものを今回拡充しました。これは、一人当たり四十万だったんですけれども、五十万円。しかも、派遣から正規の場合ではさらに十万円加算でありますから、こういうものを使って処遇改善をさせていただきたい、このように思っておるわけであります。
 本題に入ります。簡潔に言います。
 どうなったかという話をいたしますと、平成二十年十月から平成二十四年十月まで、全国の労働局、ハローワークを通じて事業所に聞き取りをさせていただきました。この中において、離職後の状況について、平成二十二年十一月まで把握しておりますが、七割強が再就職をされておられます。
 雇いどめの方も申し上げます。雇いどめは、これは、派遣だけではなくて非正規全体でありますけれども、十九万人に達したわけでありますが、これは二十年であります。二十四年度は一万人まで数が減ってきております。派遣に関して申し上げれば、今、千六百八十九人、これは平成二十四年度の四月から十月の数字ではありますけれども、このような形になってきております。
○高橋(千)委員 順々に聞いているのに、余り一遍に言わないでいただきたいと思うのね。
 結局、今言ったのは派遣元の話なんですよ。そんなにお人よしの派遣元がありますか。派遣契約を切られてもずっと、無期雇用だといって抱えていて、キャリアアップの訓練までさせてあげて、そんなことをやるわけないじゃないですか。結局、このいすゞだって、違法派遣だというのが高裁で決まったんですよ。だけれども、切ったのは派遣会社であって、いすゞは痛まないんです。それが問題だということをずっと言ってきているじゃないですか。
 話に行きますけれども、結局、累計だと、厚労省の調査では、三十万人切られているわけなんですね。だけれども、その中で、今おっしゃったように、再就職は七割を超えています。これはすごい数字だねという話でしょうが、だけれども、何でそうなのかということを考えたときに、それは、再就職といっても、さっき例に言ったように、派遣、期間工、派遣と、また繰り返しているんですよ、非正規の間を。それで、また三年近くなって切られている。そういう実態が全然見えてこないだろうということを指摘しなければならないと思います。
 私は、二〇一〇年の一月二十五日の予算委員会で、日産自動車を相手に闘っている、Tさんという方なんですが、女性のことを取り上げたことがございます。六年間、三カ月契約を二十五回も繰り返して雇いどめされて、今、神奈川県内で日産自動車と日産車体の非正規切りされた五人の労働者が闘っているんです。ぜひ官房長官に聞いていただきたいんですが、この方の最後の陳述でこんなふうに言っているんです、昨年の十一月、横浜地裁で。
 日産自動車による解雇によって、私の生活は大きく変わりました。解雇通告のあった二〇〇九年二月以降、精神的ショックから、うつ病、睡眠障害を発症しました。解雇からはさらに、電車に乗るだけで目まいがして、動悸で胸が苦しくなり、パニック障害という病まで患いました。ストレスから摂食障害にも悩みました。解雇で受けたダメージは、精神だけにとどまらず、私の体全体に及びました。ほかの四人の原告も皆同様に、並大抵ではない生活をしながら裁判を続けています。原告の一人は、精神不安定な状況から、体重の増減を繰り返したり、腎臓を病んで入院治療してきました。
 でも、何で原告らがそんなにつらい思いをしながら裁判を続けてきているかということに対して、彼女はこう言っています。
 日産自動車のような大企業は肥え太る一方で、派遣労働者や期間工は、会社から解雇されて路頭に迷っても泣き寝入りするしかない、そんな暗黒のような社会を次の世代に引き継ぎたくないのです。こう言っているんですね。
 日産自動車は、〇九年、リーマン・ショックの影響だとして、世界で二十四万人いる従業員を三万五千人、リストラを発表したんですね。国内では、正社員四千人、派遣、期間工八千人に始まって、トータルで二万二千人以上がリストラされているんです。
 解雇ということがどれほど労働者を経済的にも精神的にも苦しめるか、このことをどう受けとめるかということと、企業が利益を上げれば賃上げにもつながって好循環というかけ声は、やはりそうはならない、うたい文句なんだということは、この間にもう証明されているんじゃないですかということを、官房長官。
○菅国務大臣 今回の改正法の考えというのは、派遣期間の見直しはもちろんですけれども、雇用の安定とキャリアのアップ、こうしたものの促進というものも主に検討されておるわけでありますし、いずれにしても、派遣労働者の一層の雇用の安定というものを掲げて、私どもは今、この改正を検討しようというところであります。
○高橋(千)委員 結局、派遣は派遣のままで、それでも安定を図っていけばというお話だったと思うんですね。それがどういう意味なのかということを少し議論したいと思うんですね。
 期間工、派遣社員の賃金は、日産の場合では大体年収で三百万円程度なんだ、こういうふうに言っているんです。だけれども、カルロス・ゴーンCEOの役員報酬は、日本で一番高い九億八千八百万円なんですね。しかも、内部留保は、トヨタには負けますけれども、それに次いで自動車業界では二番目に高い四兆四千六百億円なんですね。だけれども、世界じゅうでリコールが大問題になっています。数十万台の規模になっているんですね。
 それで、ことし一月六日には、日産の重要な株主であるフランス・ルノーの労働組合が、日産自動車と日産車体での雇用確認を求めた裁判について、日産経営は、利益拡大のために労働者の権利と利益を侵害し、非正規労働者を利用してきた、こう指摘をして、横浜地裁に公正な判決を申し入れているんですね。
 だから、国際競争とか成長戦略とか盛んに言っているんだけれども、やはり働き方の面でも世界に恥じない、そういう企業じゃなくてはいけないんですよ。そういうことをうたった雇用と職業の差別をなくす国連グローバルコンパクト、これには日産だってキヤノンだってみんな署名しているんですよね。そういう国際的枠組みに署名しているのに何でこうなのかということをやはりちゃんと言わなきゃいけないと思うんです。
 それで、パネルと同じものを資料で皆さんのところにも配っております。
 キャリアアップの問題が本当にできるのかということなんですけれども、派遣労働がピークだったのは二〇〇八年です。リーマン・ショックの直前ですね。その後、二〇一二年まででいいますと、雇用者の数というのは減っているわけですね。二〇〇八年から二〇一二年までで二十一万人減っています。だけれども、この黄色いところ、非正規の労働者はふえているんですね。全体が減っても、まだふえている。二〇〇〇年と比べると五百四十一万人もふえているんです。ですから、割合が、三五・二%にまで比率は高まったんですね。
 だから、派遣はその中ではまだちっちゃいんですけれども、この中で、非正規の黄色い枠の中で行ったり来たりしているというのは見てわかると思うんですね。非正規の割合が高いことが全体の賃下げにつながっているということは、厚労省の労働経済分析でも数年にわたって指摘をしているところなんですね。
 だから、キャリアアップと幾ら言っても、この非正規の枠の中で行ったり来たりしている、そういう実態じゃないですか。そこをどう見ているんですか。
○田村国務大臣 基本的な認識は一緒なんですね。これは、きょうは派遣の話だという話なんですが、全体として非正規の問題が大きいんだと思います。非正規と派遣とをどう見るかという問題が一方であります。
 派遣と直接雇用の非正規、ここに二十四年度の資料がありますけれども、登録型派遣、時給、これは全体の平均ですが、千二百六十三円。常用雇用型は千四百三十二円。それに対して、一般労働者、これは直接雇用の正社員以外ですけれども、千百九十八円。実は派遣よりも低いという数字が出てきておるわけでございまして、我々は、派遣労働というのは、決して派遣労働ばかりが悪いというのではなくて、非正規、本来ならば正規になりたいというのに、仕方なく非正規で働いておられるという方々をどうやって正規に働いていただけるか、こういうことを考えておるわけでありまして、キャリアアップ助成金もそのうちの一つの手法であります。
 同時に、先ほど来官房長官がおっしゃっておられますけれども、多様な働き方という中においては、多様な働き方の中において正規というような、そのような形のことも我々はいろいろとこれから考えていっておるわけでございまして、言われるとおり、本来正規で働きたいという方々を、ぜひとも正規で働けるような環境をつくっていく、そのためにはやはり経済の好循環もつくっていかなきゃならない。景気がよくならないことにはなかなか正規の雇用というのはふえないわけでございますから、そのようなことをする中において、しっかりと正規をふやしていく、その中にこの派遣労働というものも一つのツールとしてあるわけでございますので、思いとしては先生と同じ思いの中で、しっかりと、非正規で働く方々が正規に移っていけるような環境整備をしてまいりたいというふうに考えておるような次第であります。
○高橋(千)委員 そこで、環境整備ということで、二十四年の改正で唯一残ったのが、資料の二枚目、労働契約申し込みみなし制度なわけであります。これは、野党だった自公修正によって、登録型派遣、製造業派遣の原則禁止が削除されたわけですよね。それで、この労働契約申し込み制度が残った。
 イメージ図がございます。下の点線の囲みの中であるわけですけれども、禁止業務に従事させた場合とか、無許可、無届けの派遣元事業主から受け入れた場合とか、派遣可能期間を超えて受け入れた場合とか、いわゆる偽装請負とか、そういう違法のときには労働契約を申し込んだとみなすということを決めました。
 だけれども、これは何と何と二〇一五年十月施行なんですね。まだ施行されていない。果たして日の目を見ることができるでしょうか。
○田村国務大臣 労働契約の申し込みみなし制度でありますが、今委員がおっしゃられましたとおり、平成二十七年の十月施行する予定でございます。
 これに関しては、本来、前回の労働者派遣法の中では、結果的に、このみなし制度に関しましても、見直す検討をするということでございましたが、今般の建議の中では、これはそのまま残っておるわけでございます。
 あえて申しますと、期間制限の考え方が変わりましたので、そこの部分は若干見直す部分はありますけれども、基本的にこのみなし制度自体は残っておるわけでございまして、今般の法律を改正させていただく、今国会に提出をさせていただく予定の法律案の中には、この部分に関しては、これを見直すということは書かれていないという状況でございます。
○高橋(千)委員 まず、そこは確認しました。
 ただ、大臣は、二〇一二年の、二十四年の改正のときは修正案の提出者だったわけですよね。厚労委員会の中でこのことを聞かれています。それで、答えています。
 この労働契約申し込みみなし規定というのは、やはり、採用の自由でありますとか、また労働契約の合意原則からいたしましても、ちょっと問題があるのではないかという意見も多くあります。私自身も、こういうものでペナルティーをかけること自体がいいのかどうかというようなことは思っております。
  そういう意味で、この三年の間に、このみなし規定自体がなくなるということも含めて、労政審の方でしっかりと議論をいただければありがたい
こういうことを、大臣は当時、修正案の提出者としておっしゃっています。
 言ったけれども、しかも、この中身は、さっき言った派遣協会の要望書の中にも、三年の間にやめてしまえという要望も入っています。しかし、今おっしゃったように、やめないということでいいんですね。
○田村国務大臣 いや、ですから、今回の労働政策審議会の中において、これに関して、やめるというような議論にはならなかったということでありますし、私も、中身を見ていただいたら、読んだとおり、いいのかどうなのかということですから、絶対だめだと言っているわけではないので、そういうことも含めて、いいのかどうなのかということも含めてということを言っております。
 ただ、これから、この規定の中において、これは検討するということにはなっておりますので、今後検討するかどうかというのは、これからまた労働政策審議会の中でいろいろと御議論をいただくべき問題だというふうに思っております。
○高橋(千)委員 まずは確認をしました。ちょっと心の中にいろいろな思いがあるような気がいたしましたけれども。
 ただ、この点線の中身を見ますと、今言ったように、許可業種しかだめになった。これは私、質問で何度もやったんです、許可制にしなさいと。そうなったとか、そういうことを言うと、違法の範囲がほとんどなくなっちゃったというのがあるんですよ。労働組合に意見も聞かなかった場合くらいなんですよね。そういう意味では、ちょっと骨抜きにされちゃったということがあると思います。しかし、それはやはり大事なこととして残すということを確認いたしました。
 実際は、このみなし規定、あるいは二十四年の改正をしたことが、日の目を見たというか、生かされたことがあったというのを御存じなのかなということでお話をしたいと思うんです。
 資料の三枚目、これは、昨年一月九日の、マツダ派遣労働者地位確認訴訟の山口地裁の判決であります。
 この原文の中の本当の一部ですけれども、雇いどめされた労働者十五名のうち十三名について黙示の労働契約が成立していると認めた画期的な判決なんですね。これは国会でも取り上げられたんですけれども、いわゆる三カ月のクーリング期間、これは、三カ月プラス一日ということで間を置いて、それをサポート社員と名乗って直接雇用して、同じ社員を切れ目なく働かせていた、こういう事案だったわけです。
 そこで、アンダーラインを引いているところを見ていただけるといいんですけれども、「同改正により」、つまり二十四年の改正によって、「「派遣労働者の保護」がその目的として正面から規定されるに至った経緯を踏まえると、」云々、ちょっと飛ばして、「同法が派遣労働者の保護にも配慮する労働法としての側面を併有していたことは否定できないというべき」である、こういうふうに言っているんです。
 つまり、法案の名前を、保護という言葉を入れました。その趣旨をやはり踏まえたい。これは、派遣法の世界だけでは、違法派遣なんだけれども、だけれども罰則がないんだ、だから公序良俗だ、まさに労働者の保護にならないということであの判決が出たんですね。まさにこれは国会の意思が判決に反映された、この意味はやはり本当に大事だと思うんです。
 そうやって、さっきの派遣切りされた労働者の思いから始まって、こうやって国会で議論してきたことが、我々にとっては随分不満なところがあったけれども、しかし、保護ということが判決にも生かされて、地位を取り戻すということになったわけですね。
 こうした到達を踏まえて、原則は変わらないといいながら、例外では派遣がもう当たり前になるような今度の改悪はやはりすべきではないと私は思いますが、いかがでしょうか。
○田村国務大臣 派遣切りでありますとか解雇というような形の中で、派遣のみならず非正規の働き方に対しては、リーマン・ショック後、いろいろな、我々も反省しなければいけないところもあったのも事実であります。
 そういうところも踏まえて、平成二十四年十月には、派遣契約の中途解除をするときには、あらかじめ、これに対して、解除のときの派遣労働者の雇用の安定を図るための措置、これについて取り決めをしておくということを義務づけ、さらには、中途解約の場合には、派遣先が派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならないということで、例えば、これは、派遣切りといいますか中途解約をした場合に、解雇予告手当等々も踏まえて、しっかり派遣元が派遣先に請求をするというようなことも進めてきておるわけでございまして、そういう意味では、派遣労働者を保護する、そういうような制度は着々と進んできておることは、これは間違いないと思います。
 我々も、今回の法律改正、提出をさせていただこうと思っておる内容は、まさに派遣労働者の方々をしっかりとキャリアアップも含めて守る、そういう思いの中でいろいろと法改正をさせてきていただいておるわけでございまして、そのような意味では、今委員がおっしゃられた派遣労働者の保護という意味では、まさにその精神のもとで法改正をさせていただきたい、このように思っておるような次第であります。
○高橋(千)委員 さっき私が言ったことを少し訂正しますけれども、ごめんなさい、マツダのものはまだ係争中なので、まだ戻ってはいないのです。ただ、それを本当に生かしてほしいということを改めて言いたいなと思っています。
 やはり、せっかく今大臣が派遣労働者の保護ということを何度も言ってくれた。ただ、派遣先についても一定のことを言っているわけですよね。やはりそこをちゃんと見ないと、派遣先指針というのは、実態で見よう、単なる期間だけではなくて、実態で、常用と同じことをやっているんじゃないかということを見ようということを書いているわけなんですね。
 だから、ここの議論もそうなんですよ。単に期間制限を守っているかいないかということだけではなくて、ランクをつけて、派遣社員を派遣先が評価をして、それで配置がえをしたりとか、そんなことまでしているんです。そこを見て、やはり問題なんじゃないか、これは実質、代替になるよねということを見ているんだ、そういうことがちゃんと拾われるように検討するべきだ。ここは、きょうは時間なので、指摘にしておきたいと思います。
 それで、最後に、紹介だけして終わります。
 さっき、賃金が派遣の方が高いんだよとか、そういうお話をされました。人材派遣協会のアンケートでは、やはり三割が二十六業務で、時給も比較的高いんですよ。約半数が、今の仕事の内容に満足してやりがいを感じていると答えている。だけれども、一方では、賃金に対する不満は満足を上回り、雇用の安定度に対しての不満は五七・四%で、満足の三倍なんです。それで、長く働いても、現時点では正社員登用をなかなか現実として採用してくれないので、今後の派遣法改正の際の派遣期間終了時に不安が非常に大きい、できれば、正社員登用をあっせんしていただけるようお願いしたい、こういう声があったんです。
 だから、緩和せいと言っている派遣業界のアンケートの中でも、やはり正社員にできればなりたいということを言っているんだから、そこをちゃんと見ていただきたいということで、きょうは指摘をして、時間なので、終わります。

 

――資料――

【資料1】雇用者減っても増える非正規

【資料2】労働契約申し込みみなし制度イメージ(厚労省資料)

【資料3】マツダ「派遣切り」裁判 山口地裁(2013年3月13日)判決文より

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