核燃料サイクル問題に関する質問主意書

平成十六年六月十日提出

提出者

高橋千鶴子

衆議院議長 河野洋平殿


(1)核燃料サイクル問題に関する件について


 原子力委員会は、新原子力長期計画(以下、新「長計」と呼ぶ)の策定に着手し、来年中にまとめるとしている。平成十五年版原子力白書は、核燃料サイクルについて、「プルサーマル計画の実施や、『もんじゅ』の改造工事については、立地地域を始めとする国民の十分な理解を得た上で進める必要があり、現状において計画通りには進んでいない」と明記している。この際、核燃料サイクルの根本的見直しが求められている。

これまで原発から出る使用済み核燃料は全量再処理する、としてきたが、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場は、使用済み核燃料貯蔵プールの水漏れ問題、不良溶接問題など、度重なるトラブル発覚のもと、本格操業は繰り延べされ、二〇〇六年七月をめざすとされ、それすらもさらに遅れるとも言われている。一方、今年一月電気事業連合会は、再処理工場操業から廃止までの再処理関連の総事業費を十八兆八千億円と試算し、公表した。そのうち十兆円については、電気料金に上乗せし、各電力会社内部に非課税で積み立てる制度があるものの、残り九兆円弱について、誰が負担するのかが問題になっている。経済産業省はプルサーマル発電用MOX燃料加工費用など、三兆円強を電力業界への負担とする考えを検討している(二〇〇四年五月八日付「陸奥新報」)という。原子力委員会は使用済み核燃料を再処理せずに直接、地中に埋める方法の費用を算出し、全量再処理の場合と比較検討する(五月五日付「毎日新聞」)とし、そうなればむつ市などが誘致をしている中間貯蔵施設や第二再処理工場の建設についても当然、見直しが迫られる。

こうした中、青森県は再処理工場のウランテストに向けた安全協定締結を準備しているが、ひとたびウランテストを開始してしまえば、再処理工場全体が「巨大な放射性廃棄物」となりうる恐れをはらむものであり、急ぐべきではない。


JCOの臨界事故、東京電力の損傷隠しや再処理工場のトラブルなど、青森県民の中には原子力政策に対する根強い不信感があるにもかかわらず、青森県は一貫して、「国策」として核燃料サイクル推進に協力をしてきた。まさにいま重大な時期を迎えているものと受け止め、以下の質問により、国の考えを問うものである。


一、中間貯蔵施設について

 1、青森県は、むつ市が誘致を決定している中間貯蔵施設については、改定される新「長計」で第二再処理工場がどう扱われるかを見極めてから立地の是非を判断するとしている。もともと、再処理工場で年間に処理できる能力は八百トン、全国の原発から一年間に出る使用済み核燃料は九百から一千トンといわれ、この差をどうするのか、という指摘に対し、中間貯蔵をしたのち、第二再処理工場に搬出されるといわれてきたものである。第二再処理工場ができなければ、中間貯蔵施設が永久貯蔵施設になりかねない。

 中間貯蔵施設の役割について、新「長計」の中で見直すことになるのか。貯蔵期間があいまいであり、少なくとも「最終処分」に耐えうる施設ではない、とこれまで説明されていたと思うが、あくまで一時的な施設であり、最終処分ではないことを確約できるか。あるいはそれをどう担保するのか。


(2)青森県以外での中間貯蔵施設検討状況について伺いたい。


二、第二再処理工場について

 第二再処理工場は、十六年前の第七次「長計」では「二〇一〇年頃運転開始」とされていたが、第八次では「二〇一〇年に方針を決定」となり、現行第九次「長計」では「二〇一〇年頃検討を開始」というように大きく後退した。そもそもバックエンド事業のコスト試算からも外れ、事実上計画倒れとなっている。

 また、第二再処理工場は、プルサーマルの使用済みMOX燃料、高速増殖炉の使用済みプルトニウム燃料を再処理すると説明されてきた。プルサーマル計画導入県である福島県や新潟県は、第二再処理工場が不確実なものである以上、今度は使用済みMOX燃料を施設内に置かざるをえなくなるという理由からも、プルサーマルを拒否している。そこで、

1.使用済みMOX燃料の再処理については、技術的にも未確立の分野といわれている。高速増殖炉の実用化やプルサーマル計画も見通しがないもとで、そもそも第二再処理工場は必要のないものではないのか。

2.よって、中間貯蔵施設についても、中止をするべきであると思うがどうか。少なくとも、その方向性が決定するまでは中間貯蔵施設の建設も中止するべきではないか。

3.仮に第2再処理工場建設について検討の余地が残っている場合、コストについてはその中身と負担する者について、明らかにされたい。


三、ウランテストについて

1.ウランテストで想定されるトラブル事例について、その具体的内容と対処方法について明らかにされたい。これについて、県と六ヶ所村議会はもちろん、有識者も含め、県民に十分な検討機会と時間が必要と思うがどうか。

2.新「長計」改定作業の中に、再処理工場を稼動させないという選択肢も排除されないのか。

3.同様に、第2再処理工場の扱いによって、再処理工場そのものもまた、問われてくるものである。サイクル全体の見通しがたたない以上、ウランテストはやめるべきと考えるがいかがか。

 

四、バックエンド事業のコストについて

 コスト等検討小委員会において、事業者から説明された費用十八兆八千億円について、今後の見直しによって、追加や減額など、変動する可能性のあるもの、あるいはすでに国として変動を見込んでいるものについて、その具体的内容と理由を明らかにされたい。


五、再処理工場の不良溶接問題等について

 再処理工場の本体を含む二百九十一箇所もの不良工事について、品質保証体制が正しく機能しなかったことが問題となった。日本原燃の「報告」は、品質保証上の配慮、人員配置、協力会社とのコミュニケーションに欠けるものがあり、それらに関し、トップマネジメントの関与の不足をあげ、「改善」策を示し、原子力・安全保安院はそれを「評価」している。

 しかし、その見方、捉え方にこそ根本的な弱点がある。建設段階であろうが、運転段階であろうが、品質保証に関する規定もそのための体制も何らの法的根拠をもってこなかったことにこそ、もっとも導き出される根本原因がある。四月七日の青森県議会全員協議会での質疑の中で、原子力安全・保安院の審議官は「やはり品質保証というものを法規制の中で担保せず、民間の自主性に任せていたということに一つの原因がある。まさに、おっしゃるとおり」と、日本共産党の諏訪益一議員の指摘に対して答えている。

 運転段階のものについては、昨年十月一日施行の品質保証に関する省令改正で法規制が加わることになったが、建設段階のものは、今後検討することになっている。早急に建設段階の法規制を整えること。同時に、不良工事の根本原因について、法規制がなかったことについて、原子力安全・保安院の責任の所在を明確にするべきと思うがどうか。


六、現行「長計」においては、「原子力の開発利用、特にプルトニウム利用政策をとっている我が国の原子力平和利用路線に対する疑念が存在する」として、「今後、我が国がプルトニウム利用を進めるに当たっては、平和利用の原則を厳重に確保することはもちろん、我が国が行っている平和利用の確保に係る取組について積極的に情報発信に努める等、国際社会の理解と信頼とを得るための努力を継続することが重要」であり、「我が国のプルトニウムの利用については、利用目的のない余剰プルトニウムを持たないという原則を踏まえて、透明性を一層向上させる具体的な施策を検討し、実施していくことが重要」と記述されたが、プルトニウム需給計画を数字で示すことはしなかった。

これまでの姿勢を確認するという点でも重要であり、かつ、核燃料サイクルというプルトニウム循環路線そのものが今、問われていることからいっても、改定される新「長計」では、プルトニウム需給計画について、具体的数字で示す考えがあるか。


七、高レベル放射性廃棄物の最終処分場について、候補地の選定など、現時点での検討状況について、明らかにされたい。


右、質問する。




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