レポート「学童保育の設置基準もっているのはわずか45自治体のみ
山口・高橋両衆議院議員の質問主意書への答弁で政府が始めて調査」


 夏休みや土曜日、放課後の子どもたち――働く父母たちにとって学童保育所は頼りになる存在です。全国で約一万五千ヶ所に五十四万人の小学生たちが学童保育を利用しています。そこで過ごす時間は、全国学童保育連絡協議会調査で、年間千六百時間となり、学校で過ごす時間千三百時間より多くなっています。しかし、政府は、床面積、指導員配置などについての設置基準をもっていません。このようななか、山口富男衆議院議員と高橋千鶴子衆議院議員が、小泉首相にむけて、学童保育の質の確保と予算の確保を求めて提出していた質問主意書に対して、七月三十日、答弁書が閣議決定され、そのなかで、全国でわずか四十五自治体(都県含む)でしか、設置基準をもっていないことが政府調査で明らかになりました。

 質問主意書は、学童保育の実際の経費は「ある例では、市がプレハブで無償の場所を提供しているケースで児童二十八人の規模で九百五十六万円」にたいして「単価の低さと補助率の低さなどで、国は、実際の経費のわずか六%しか補助していない」などの実態を告発し、予算措置と子どもたちの全面的発達保障と安全確保のための学童保育の質の確保を求め、そのなかで各自治体の施設基準についての調査を要求していました。厚生労働省は、答弁書作成にむけて、全国調査を行い、その結果、「施設等に関し基準を設けている地方公共団体は、全国で四十五」とし、各県ごとの内訳について別表を示しました。二十二県ではゼロとなっています。基準の内容については、「事業を実施するための室、トイレ、利用する放課後児童の所持品を収納するためのロッカー等について定めが設けられているが」「その定め方が多様であるため平均的な内容をお示しすることは困難」としています。国としての適正規模基準、学区内の複数設置などの要求については、その基準を「国において、一律に定めるのは困難」としながらも、「それぞれの地域の実情に応じ、多様かつ柔軟に実施されることが重要」「その適正規模や同一の小学校区における実施個所数については、地域の実情に応じて、個別具体的に判断されるべき」と自治体の判断を重視することを示唆しています。また、今年度中策定を検討中の新新エンゼルプランにおける目標設置については、「今後、市町村の行動計画の内容も踏まえつつ」検討するとしています。

 これらの答弁について、全国学童保育連絡協議会事務局長の木田保男さんは、「施設基準の設定について政府自らが市町村の調査を行ったことは重要で意味のあることとなった。そのなかで、たった四十五地方団体しかないということは、あたらめて設置最低基準について国に強く求め、学童保育の質の確保を図るために引き続き運動をひろげたい」といいます。  

また、小泉総理が強調してきた二〇〇二年以降すすめられてきた「保育所待機児童ゼロ作戦」について、山口・高橋両議員は、「従来の定義による二〇〇三年一〇月の保育所待機児童は六万七千七百九十五人で、九五年と比べると二万四千百五十人増」など、待機児童ゼロ作戦三ヵ年計画中も待機児童が増加している点や、一方で公立保育所が二〇〇三年の前年度比較だけでも百六十五ヵ所も減少となっている事態について指摘し、待機児童対策にたいする責任を強く求めたことに対して、答弁は、毎年五万人の受け入れ増をおこなっており、「順調に受け入れ児童数が増加しており、待機児童ゼロ作戦については、着実に進んでいる」と実態とかけ離れて自画自賛をするという内容になっています。しかし、一九九五年度以降入所児童数は前年度比で五万人以上増えつづけてきたものであり、「潜在を含めた待機児童解消のため」と小泉首相肝入りですすめてきた「待機児童ゼロ作戦」は単なる口先だけのスローガンであったといえます。答弁書は、この待機児童ゼロ作戦は、予定どおり、本年度で終了するとしています。



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