2013.5.21(火) 災害対策特別委員会 参考人質疑


183-衆-災害対策特別委員会-8号 平成25年05月21日

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、本当にお忙しい中御出席いただき、また貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。

 こう言っている時間も惜しいくらいですので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 初めに、河田参考人に伺います。

 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの主査を務められました。また、きょうも非常に熱意を込めてそのことを訴えられたと思います。

 それで、この被害想定を、二百三十兆円という大変ショッキングな数字でありましたが、三月十八日に古屋防災担当大臣とともに記者会見で先生が発表されまして、そのときに、防災、減災に特効薬はなく、対策の積み重ねが必要だ、このようにおっしゃったと報道されています。私は、特効薬はないというのは非常にそのとおりだと思いまして、やはりあらゆる知見とそして経験を総動員させて、国民の命と財産、国土を守っていかなければならないと思っています。

 そこで、本日の資料の最後に、減災とレジリエンスということで提起をされています。この考え方は、既に先生は二〇一一年の五月に復興構想会議に対して、災害にしなやかに対応できる安全、安心な地域、都市づくりという形で提言をされています。

 政府は、今、レジリエンス、国土強靱化法案という形で、法案で準備をされているわけですよね。だけれども、正直言って、しなやかに、どんなときにも対応できるというのは、政治そのものじゃないかというか、全部じゃないかというような気がするんですね。それを施策にするというのはなかなか難しいと思うんですけれども、どのようなイメージをされているんでしょうか。伺いたいと思います。

○河田参考人 もともと、被害をゼロにする防災というのは非現実的だと私どもは二十数年前から主張しておりまして、被害を極小化する減災というものを目標にしなければいけない。これは、東日本大震災復興構想会議の委員にも私、なりましたので、これからの我が国の防災対策では減災ということを中心にしなければいけないということで採択していただいたわけであります。と同時に、このレジリエントという、非常に回復力のある、力強い国土づくりといいますか、こういったものが必要だということなのであります。

 そうなりますと、一体何から手をつけるかといいますと、例えばレジリエントな社会というのは、言いかえれば、民主主義が非常に成熟した社会になっている。すなわち、自助、共助、公助がうまく組み合わさっている、そういう社会だろうと考えています。

 そういたしますと、まず基本となるものは自助であります。つまり、自己責任の原則というものがきちっとそこで担保されなければいけない。例えば、これからもますます防災情報というのは充実してくると思います。例えば津波の避難勧告にしても、正確に、詳細に、そして内容が非常に適宜出てくるというふうな時代になっていくことは間違いないわけですけれども、肝心の国民がそれにどう対応するかというところが実はとても大事なわけで、防災教育の大事さというのはまさにそういうところに尽きるわけであります。

 ですから、レジリエントというものを具体的にどう具現化するかという形になりますと、やはりその基本になっているのは国の骨格をつくっている社会基盤整備、これがまだまだ不十分だということに実は尽きるわけであります。

 といいますのも、結局、ソフトが大事だと申しましても、あるレベルまではハードで守らないと、ソフトだけではいかんともしがたいわけであります。ですから、ハードでカバーできないところをソフトがカバーする、こういう互換的な意味を込めて、ソフト対策も強靱化の中できちっと組み合わさなければいけない。つまり、ハードとソフトをどう組み合わせていくかということがこれから問われている。

 そして、お金のない時代ですから、全てをハードですることは不可能です。そうすると、どこまでソフトをみんなが認知するのかというところが、実は民主主義の成熟と非常につながっているということに私どもは気づいたわけで、そういう制度的な設計の充実と、もう一つはやはり自己責任の原則を中心とした民主主義の成熟というものを軌を一にして進めなければいけないと考えている次第です。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 さらに伺いたいところですが、次に進めたいと思います。

 次に、泉田参考人に伺います。

 知事は、先ほど少し紹介もありましたけれども、中越地震や中越沖地震など、たび重なる災害を通して本当にさまざま先駆的な経験をされてきたのではないかと思っています。私自身も、地震のみならず、雨、雪、さまざま、新潟に通わせていただきましたけれども、やはりこれまでの既存の制度というのをさまざまな形で乗り越えてきた。例えば、長岡の高町団地のような人工の擁壁でもやはり公共と結びつけて支援をする、またそれを柏崎では山本団地の再生に結びつけること、そして公共に結びつけた上で基金がさらに個人を支援するというふうな形で乗り越えてきたのではないかと思っています。

 それで、今回の大規模災害からの復興法案というのは、復興の枠組みをあらかじめつくっておく。ただ、やはりさっき言ったように災害によって違うので、基本方針はその都度つくらなければならない。それから、財政は全く決まっていない。その事情によって財政は措置すると書かれているので、下手すると全く同じ道をたどってしまうことになりかねないわけですよね。ですから、さっき野田市長もおっしゃったようなスケジュール感の問題と、やはり復興基金の問題というのがあらかじめ一定決まっておかないとうまくないんじゃないかなと思っているんですけれども、伺いたいと思います。

○泉田参考人 御指摘のとおり、やはり災害はそのときそのとき顔が違いますし、優先順位も地域の事情によって異なってくるということだと思います。住居中心の大都市部と、それから住居兼店舗もしくは漁業等の仕事の場というところがあった場合に、同じ優先順位にはならないですよね。住む場所だけ確保すればいいということじゃなくて、仕事とセットになるケース、さまざまあるわけですから、どの順番でやるかは、やはり住民の希望にかなった形で優先順位をつける、こういう制度が必要ではないかと思います。

 一方で、では無限に支援できるのかというところについても、やはりキャップの議論というのは出てくるわけですから、これぐらいの被害が生じたらこれぐらいの金額というのをまずキャップを決めて、そして優先順位を地方で決められるという制度にしていただくと精度が高まるのではないかなと思っています。

 新潟の場合は、復興基金、これは県に任せていただける制度設計にしていただいたということで、優先順位を決めることができました。やはり、これが新しい制度に結びついていったということがありますので、国全体のマネジメントとそれから地域のニーズを整合させるような運用というのをぜひお願いできればと思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 今おっしゃるとおりだと思うんですね。ある程度の、経験を生かした標準的なものと、同時に自治体の裁量でもう最初からこれは任せるよという、当然、何が一番大事なのかということを自治体が一番よくわかっているわけですから、ぜひそういうのが早く、積み残しと言わずに具体化していけばいいなと思っているところです。

 同様の趣旨で野田市長にも伺いたいと思うんですが、私、二〇一一年の四月の頭に釜石の箱崎の漁民の皆さんと避難所で懇談をした際に、避難所にも入ったばかりなんだけれども、仮設住宅、二年で切られちゃうんだってとか、そういう声がすぐ出たりとか、あるいは、家は高台でもいいけれども、仕事場だけは浜に欲しいとおっしゃった。そうした際に、土地は買ってくれるんだろうかということをおっしゃった。

 なので、たった今のことで、なかなか先のことは考えられない、でも、ある程度、ここまでは国が支援できるということがわかっていれば、多分持ちこたえられるんだろう、そういうことが、すごく私が実感して思っていることなんですね。市長が言っているスケジュール感というのもそれに近いのかなと思うんですけれども、少しお話しいただければと思います。

○野田参考人 先ほどもお話し申し上げましたとおり、やはり地域によってさまざま、被害の程度も違いますし、また、個々それぞれのお立場によって、自分は助かった、家族みんな助かったという方もおられれば、いや、全て流されたという方もおられます。

 同じ避難所の中でそういったさまざまな方々がお住まいになっていますから、一概には言えないんですけれども、ただ、今までの流れの中で言えることは、例えば、いつ仮設に入れるんだとか、仮設に入ったら、二年という期間がどうなるんだとか、やはり心配になるわけですよ。特に高齢者の方が多いものですから。我々からすれば、それは何とか国がちゃんとやってくれるから、そんな細かいことを心配しなくていいんだと思うわけですけれども、実際、被災された方々にとってみれば、その日暮らしの中で、そういうところが実は大事なんですね。ですから、国の方で、そういったところが、もう心配ないですよというメッセージがちゃんと伝わるようにしていただければありがたい。

 我々も、先ほど制度の話をしましたけれども、全てが法で決まったとおりに来ているわけで、例えば、法律が変わった、仮設が二年から今度一年延長になりましたというふうな話は、結局新聞等でわかるわけなんですね。ですから、新聞を見ている人と見ていない人が何か混在するというふうな状況の中で、やはり国の強いメッセージというものを復興庁なり対策本部なりがきちんと被災者に対して出す。これがちゃんと一人一人に伝わるような出し方も必要ではないかなと。

 先ほどのスケジュールというのは、まさにそういう一つ一つのことが、被災者の立場に立った目線で、全体の流れが見えるような仕組みが欲しいと思います。

 冒頭申し上げましたが、今回我々がやってきたのは、目の前がどうしたらいいかわからない暗闇の中で、少し何か、課題があって改善をしていく。次も一メーターの、明かりがちょっと見えてくる、またそこで課題を解決。振り返ってみると、今やっと全体像が見えてきたという感じなんですね。これは我々だけじゃなくて、実は国もそうなんですよ。県もそうなんです。誰もその先を示してくれる人がいなかったと思います、きちんとした形で。だから、先ほどスケジュール感という話をさせていただきました。

 これは、国も県も市町村も、そして個々の被災者の皆さんも同じ共有できるものをぜひ示していただければありがたいと思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 それで、もう一度泉田知事に伺いたいと思うんですけれども、先ほど、法体系に対しての積み残された課題ということをおっしゃいました。知事の提案はかなりの部分が今回の法改正に盛り込まれたと思っているんですけれども、新潟県は真っ先に今回、南相馬市の方たちを受け入れて、現在、五千二百三十二人の避難の方を受け入れていらっしゃいます。

 それで、今回、災害救助法に基づく支援策について、求償制度を変えるべきじゃないかというのは昨年やってほしかったんだけれども、それができないで、今回は国が立てかえるという形で、一歩前進だと思っております。それで大体解決するのか、あるいは現場の混乱からするとまだ課題があるのかを伺いたいと思います。

○泉田参考人 今回の地震、津波、そして原子力災害、やはりちょっと特殊なところがございまして、特に福島県からの避難者の皆さんは帰れるかどうかということの確信を持てないでおられます。そういった中で順次支援策が打ち切られていくという状況の中で、二重生活を強いられている避難者もおられます。そして、その支援の程度も、もと住んでいた場所によって違うというようなことになっておりますので、本当に困っておられる方々の支援を今のままできるのかということになると、やはり限界がある。

 実際に、受け入れている自治体が把握をしている避難者のニーズをどう実現していくかということについては、またもう一歩前に進んでいただけるとありがたいなと考えています。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 残念ながら時間になっちゃったんですけれども、新潟県は、これまで母子世帯などへの高速道路料金の支援を行っていまして、さっきおっしゃったように、国が無料化をやると言ったんだけれども、支援の対象外のところを引き続き継続して支援をされるということを決められました。本当にありがたいことだと思っています。そうしたことが本当に国の支援策の中で生かされて、同じ避難者という形で支援ができればいいなということで、今後とも頑張りたいと思います。

 きょうは、本当にありがとうございました。



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