2004.11.30(火) 農林水産委員会

兼業、零細農家支援を

高橋議員 農政見直しただす

衆院農林水産委員会の農林水産関係の基本政策に関する参考人質疑が十一月三十日に行われ、日本共産党の高橋千鶴子議員は、農政見直し問題をただしました。高橋氏は、「農業生産力の圧倒的部分を支えている兼業農家や零細農家が支援の対象から外れれば条件不利地域が残り、耕作放棄地が増えるのではないか」とのべ、参考人の全国農業協同組合中央会専務理事の山田俊男氏の見解をただしました。

山田氏は「兼業農家や零細農家が対象から外れた場合は、間違いなく耕作放棄地が発生しやすくなる心配がある」と答えました。

高橋氏は、規模拡大を進めてきた農家の側からも「規模拡大自体が大変だ」との声が出ていることを紹介し、「規模拡大のデメリットは何か」と質問。山田氏は「法人化・大規模化した農家から『経営が維持できない』『負債がかさんでいる』などの悲鳴が聞こえる」とのべ、大規模農家が厳しい状況に置かれていることを認めました。

山田氏はさらに「コメの政策改革の中で担い手経営安定対策の取り組みが出てきているが、認定農家で三万戸、集落型経営体で約二百しかなく、この仕組みの魅力は十分あるのだろうか」とのべ、担い手経営安定対策が十分機能していないことを明らかにしました。

(2004年12月7日(火)「しんぶん赤旗」より転載)


161-衆-農林水産委員会-4号 平成16年11月30日【参考人質疑】

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、大変忙しい中、御三人の参考人の皆さんの出席をいただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきました。本当にありがとうございました。

 きょうは、限られた時間ですので、JAの山田参考人を中心に、担い手問題に重点を置いて伺いたいと思っております。

 JAグループから、ことし九月に発表された新たな基本計画の策定に向けた討議検討資料をいただいております。また、先日も、十一月に発表された具体策、そしてきょうも資料をいただきました。その中で言われているのが、多様かつ幅広い担い手の確保という提案でございますが、先ほど来担い手に対しての意見がいろいろ言われているわけですけれども、政府案との、政府が今基本計画の見直しの中で提起をしている担い手との具体的な違いについて、ぜひまず伺っておきたいと思います。

○山田参考人 国の方は、将来の我が国の農業を担う層として構造改革の展望等を出しておるわけでありまして、その一環として提案されているのが五百三十万円の所得であったり、それを担うことのできる例えば都府県の一年二作のところでは十ヘクタール、さらに集落営農であれば四十ヘクタールという、単なる割り算でありますが、そうしたおよその規模を打ち出しているわけであります。それに向かうための一つの育成すべき担い手として、四ヘクタールの考え方が米政策改革の取り組みの中で出されているところであります。

 こうした四ヘクタールの基準にしましても、地域の実態を踏まえますと大変厳しいというふうに考えておりまして、上から四ヘクタールであるとか十ヘクタールであるとかという基準が出てくるのではなくて、地域の中でこの担い手に担ってもらおう、それから地域の中で手を挙げてもらって意欲のある人に担ってもらおう、さらに集落営農等に参加、参画していこう、そうした意欲とか参画、それを基準にする取り組みにしていけないか、こんなふうに考えているところであります。

○高橋委員 ありがとうございます。

 我々も今、上からではなく地域から出てくる担い手ということに着目して、全国的な調査や提案などをまとめているところであります。

 そこに行く前に、まず、さっきお話がありました所得の目安の考え方ですよね。政府は、他産業並みの労働時間で他産業の従事者と遜色のない所得を確保するということで、効率的かつ安定的な農業経営を図っていけば五百三十万くらいの所得になるというふうなことを一つの目安として提起をしているわけです。

 ただ、これは、例えば現行でいうと米価一万六千円がベースになっていると言われているんですけれども、現実には、関税の引き下げによる影響など、一層の下落が予想されるのではないか。そういう中で、こうした所得を維持するということをどう見るかということなんですね。つまりは、どんどん下がっていってもしようがないよという立場か、あるいは強力に担い手に集中する中で十分可能なのだというふうに見ているのか。農協から見て、この他産業並みの所得の維持という考え方、どのようにそれができると思っているのか、御意見をぜひ伺いたいと思います。

○山田参考人 二点あろうかというふうに考えております。

 第一点は、将来地域の中で農業を担っていこうとする担い手は、やはりどうしても所得が必要であります。所得なしには到底担っていけないわけでありまして、そういう意味では、五百三十万円という金額も、一つの大きな目安といいますか基準であろうかというふうに思います。そうした農業経営をつくるためには、一つは、そうした担い手に農地をしっかり集めていく、農地の利用を集めていくということでありまして、その集め方として、我々は、集落における利用の集積が一番大事、その具体化としての集落営農を打ち出しているところであります。

 第二点は、そういいましても、先生御指摘のように、米価も変動があります。計画生産がうまくいかなければ直ちに価格が下がっていくということでありますし、麦についても大豆につきましても、豊凶によりまして大きな変動があります。そうした部分につきまして、内外価格差を補てんする、もう一つは価格全体の変動を緩和する、そうした直接支払いといいますか補てんの仕組みが必要ということでありまして、その補てんの仕組みのあり方を企画部会で検討し、詰めていただけるものというふうに期待しております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 この補てんのあり方というのが今後の論点になってくるかなと思うんですけれども、中山間直接支払い制度が、来年度も継続に向けて農水省としても概算要求をしているところでありますが、全国から大きな要望もあって、歓迎されていると思っております。

 この点でも、先ほどお話しくださった、地域から出て担い手になろうという取り組み、集落の取り組みなど、いろいろな取り組みが直接支払い制度を生かして全国で始まっていると思うんですが、JAとしてこの中山間直接支払い制度のメリットを挙げるとすればどのようなことが考えられるか、御紹介いただきたいと思います。

○山田参考人 この仕組みで一番いいというふうに思いますのは、過疎化している集落の中で、集落の話し合いの回数が、直接支払いの協定締結前に比べまして、締結後話し合いが飛躍的に進んでいるということであります。この結果としまして、例えば耕作放棄地の発生を防止するとか、それから全体で農道や水路等の資源管理をやるとかという形の取り組みが具体化してきておるところでありまして、この中山間地直接支払い制度の意義は大変大きいということでとらえております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 それで、この点については意義が大変大きいということで同じ気持ちでいつもおるんですけれども、例えば政府の財政審などにおいても、中山間直接支払い制度においても例えば担い手の明確化だとか絞り込みの要件ということが今話題になってきているわけですけれども、その点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

○山田参考人 制度の中で十分な議論を行った上で見直しが必要だという部分は、国民全体の負担で実施しておる事業でもありますから、必要な見直しは行っていいだろうというふうに思っておりますが、今議論されております将来の担い手をそのまま中山間地に適用するなんということは到底不可能なわけでありますから、中山間地、平場、作物、それから地域によりまして基準が当然多様に設定されてしかるべきだ、そうした地域の自主性を生かす直接支払いの仕組みをどうしても維持していただきたい、こんなふうに考えています。

○高橋委員 ありがとうございます。

 一方、規模拡大を進めてきた農家の側からも、いわゆるプロ農家あるいは担い手農家と称される方たちなんでしょうけれども、それ自体が大変だという声も随分出ております。

 先日は長野の方に行ってまいりましたけれども、確かに規模は一定の拡大をしたんですけれども、引き受けた土地が地域的にちょっとばらばらということもこれありということがあるんですけれども、それだけではなくて、耕作機械が非常に高いことや、農薬や肥料やさまざまな資材費などを合わせるとやはり立ち行かなくなっていくのが現実なんだと、そういう規模拡大で逆に出てくる弊害などが指摘もされておりました。

 こうした点で、大規模農家によっての、規模拡大を進めたことによってのデメリットというのもまた認めることがあると思いますけれども、どのようなことがあるというふうにお考えか、伺いたいと思います。

○山田参考人 我々も、法人化し、かつ大規模化した農家から悲鳴のような形で、経営が維持できない、負債がかさんできているという声を聞くところであります。

 一番課題になりますのは、農地を一元的、団地的に利用できる仕組み、そして、そのことによってコストを引き下げることが可能になるわけだし、さらに必要な規模拡大が可能になるということでありますから、担い手に対して農地をもっと安く、そして利用しやすく集積できる仕組み、これがやはりどうしても必要になっていくというふうに思っております。

 それから二点目につきましては、米の政策改革の中で担い手経営安定対策の取り組みができておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、認定農家で三万戸、さらに集落型経営体で約二百でしかないわけでありまして、この仕組みの魅力が果たして十分あるのか、そうした担い手の経営を支えるだけの仕組みになっているのかということについて、我々としても問題意識があります。今議論しております直接支払いの仕組みが、より充実したものとして、かつ地域の実態に合う形で実現していくこと、それが早急に今求められるというふうに考えております。

○高橋委員 ありがとうございます。大変貴重な御意見をいただいたと思います。

 私は、今、中山間での取り組み、また大規模農家でもいろいろな悲鳴が上がっているというお言葉がありましたけれども、困難を抱えているということが紹介されたと思うんですね。そうしたことを加味して、やはり一定規模を拡大して頑張ってやっていきたいという人もいる、同時に、集落で力を合わせて、条件不利地であっても頑張る人もいる、そうした方たちが全体として日本の生産力を支え、自給率を高めていく、そういう方向に向かっていくことが望ましいのではないのかなと思っているんです。

 最後に一言伺いたいと思うんですが、やはり日本の生産力あるいは土地、この圧倒的部分を支えているのが兼業農家であり零細農家であると思うんです。これらの農家が支援の対象からもし完全に外れていくとすれば、現行生産力が維持、拡充できるだろうか、あるいは規模拡大や土地の集積が進んでいけば、むしろ条件不利地が残り、耕作放棄地が残るという懸念があるんですけれども、これに対する御意見を伺いたいと思います。

○山田参考人 先生おっしゃいますように、そうした兼業農家や零細農家が対象から外れるということになった場合には、やはり間違いなく耕作放棄地が発生しやすくなったりする心配があります。ですから、こうした兼業農家やそれから零細農家が喜んで、かつ意欲的に集落営農に参加したり、さらに受託組織に参加したりする中で、引き続き村の農業経営を、村全体の農業経営、集落全体の経営を維持していくという観点での政策が何としてでも必要というふうに考えております。

○高橋委員 終わります。どうもありがとうございました。

    



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