2004.10.5(火) 農林水産委員会

連続台風

融資法適用「前向き」

高橋議員に副大臣答弁

日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は五日の農水産委員会で、相次ぐ台風による農業被害の支援策をとりあげ、天災融資法の発動について「個別の台風ではなく連続した災害による被害の拡大を考慮し、まとめて対象にすべきだ」と質問しました。

岩永峯一農水副大臣は「被害が連続している状況を考え、前向き、積極的に検討している」と答えました。

高橋氏が、塩分を含んだ風雨で稲が全滅するなどの塩害について「農作物の技術的対策について指導すべきだ」と求めたのにたいし、白須敏朗生産局長は「技術指導の徹底を図っているが、さらに各県や改良普及員との連携し周知徹底を図っていきたい」と答えました。

農業共済の問題で高橋氏は、共済金の早期支払いとともに、査定確定後に再び災害に見舞われた場合は、再査定も含めて指導するよう求めました。

また、果実などが木に残っているが傷がついていて出荷できない「樹上損傷」について「被害として認められてない実態がある」と告発。須賀田菊仁経営局長は「制度上は被害対象として扱うことになっているが、現場では一部誤解があるようだ」と答弁。高橋氏は、「一部の誤解などではない。現場では長い間『樹上損傷』は被害として認められてこなかったのが実態で、こうした現状をただすべきだ」と、指摘しました。


(2004年10月7日(木)「しんぶん赤旗」より転載)


○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、台風被害についてお伺いをいたします。

 先ほど来、この間の連続した台風被害が四千三百億を超えるということが御報告をされております。まさに、十五号、十六号、十八号と、間隔を置かずに同じようなルートをたどって列島を駆け抜けた、そうした特徴もあったために被害も本当に大きくなっております。秋田、山形、青森と歩き、また、先日の委員派遣では熊本の農業被害も一部見させていただきました。本当に農家の皆さんの御苦労が忍ばれます。

 水稲作付面積の七割で被害を受けた山形県庄内地方の農協の方がこのような言い方をしております。被災農家はこれまで経験したことのない大きな不安に駆られており、離農農家の発生や営農意欲の低下を招くとともに、農業経営、ひいては地域経済に重大な影響を及ぼす深刻なものだと。まさにこの言葉に集約されるのではないかなと思っております。農協の役員さん、市役所の部長さんからこもごも、営農意欲を失わないように支援が欲しいということが訴えられました。農家の皆さんがまず農業をあきらめてしまわないように、国の強い決意がいただきたいと思います。

 そこで、最初の質問です。この間、具体的に各県の皆さんと申し入れをしてきたわけでありますが、天災融資法の発動についてですが、指摘がありましたように、十五、十六、十八などと単独に見るのではなく、個々には被害額が小さくても、災害が連続したために全体としては大きな被害になっている、こういうものをまとめて考えて天災融資法の発動などを検討すべきと思いますが、見解を伺います。

○岩永副大臣 先生のところも十八号は大変厳しゅうございました。今回の台風の被害に遭われた方、亡くなられた方々に、私の立場からもお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に対し、心からお見舞い申し上げる次第でございます。

 天災融資法の発動は、御承知のとおり、農林水産業の被害が著しく、かつ国民経済に及ぼす影響が大であると認められる天災に対して行われるわけでございますが、具体的には、農作物の被害額や被害面積等の被害の広がりのぐあいが第一、そして、被災された農林漁業者の融資需要の総額、これが幾らかということを総合して勘案して、発動の可否を決定しているところでございます。

 本年八月の中旬から九月の上旬に来襲した台風十五号から十八号につきまして、記録的な暴風雨を伴って短期間に次々に来襲したばかりでなく、その被害が連続的に発生していることなどから、天災融資法を発動できるかどうか、前向きで積極的に今検討しているところでございます。

 このため、被害等の広がり状況や被害を受けた資金需要について調査を今現在行っておりますし、その発動については、調査結果を踏まえて対応していきたいということでございますが、御期待に沿えるように頑張ってまいりたい、このように思っております。

○高橋委員 ありがとうございます。前向き、積極的という御回答をいただきましたので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、今回は、今まで余りなじみのなかった塩害という被害が広がりました。例年なら刈り取りが終わった後に来ていた台風が非常に早かったために、刈り取り直前に潮風をかぶる形で枯れるような状況が、水稲では大きな被害がありました。その後、雨が降らなかったということもあって、これまでの経験になかったという声が上がっています。また、ナシなどの果樹が花芽が一気に咲いてしまって、来年あるいはその次の年など、続けて影響があるのではないかという心配もされています。

 こうした被害について、やはり市町村レベルではなかなか対応ができないということで、技術的な対策について指導すること、同時に、今後の災害予防技術についても独自の研究が求められていると思いますけれども、国のお考えを伺いたいと思います。

○白須政府参考人 ただいま委員の御指摘の塩害の関係でございます。お話しのとおり、特に水稲なり、あるいはまた海岸に近いところの果樹というふうなところで、現在の台風の襲来によりまして大きな被害が発生しておるということでございます。

 特に果樹につきましては、塩害によりまして樹体への影響が大変大きいということでございまして、過去にも平成三年の台風の際に大きな被害が発生したところでございます。そこで、私ども、実は、平成三年の台風によります被害発生の際に、そういった果樹の風害あるいは潮風害対策の手引というふうなことを取りまとめまして、それ以降、毎年三月には、この手引を踏まえまして、技術指導の通知によりまして指導を行ってまいっているわけでございます。

 また、特に今回、一連の台風によりまして大変大きな塩害が生じておりますことを踏まえまして、実は、台風十六号、これが八月二十九日から三十一日にかけまして襲ってまいったわけでございますが、その直後の八月三十一日に事後指導ということで、北海道及び地方農政局に対しまして技術指導の徹底を図っておるわけでございます。

 と申しますのも、塩害というのは、もう委員も御案内かと思いますが、七日から十日かかって発生をいたしますので、できるだけ速やかに、被害を受けてもすぐに除塩、水をかけまして、まず塩分を取り除くというのが何よりも大事でございます。また、程度に応じましては、日やけ防止剤、これは果樹でございますが、そういうものを樹体に塗布するといったことが必要でございますので、そういった技術指導も行っているわけでございます。

 そういったようなことをやっているわけでございますが、さらに関係都道府県との連携、あるいは改良センター、普及員の方々とも連携を密にいたしまして、生産現場に対する技術指導の周知徹底というものを図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○高橋委員 今後はこの塩害が珍しいことではなくなることも十分予想されますので、これが本当に市町村レベルまで徹底されるように要望したいと思います。

 次に、共済の問題なんですけれども、早期支払いと適切な査定をぜひお願いしたいということです。

 特に、今お話があったように、塩害は、最初の瞬間から徐々に被害が広がっていくので、どこで査定をするか、タイミングが非常に難しいということがあります。ただ、タイミングを見計らっていればどんどん査定がおくれて支払いもおくれるということになるわけですから、そういう点では、再査定も含めて、急ぐ、適切にするということをあわせてやっていく必要があると思うが、いかがか。

 それから、もう一つ、あわせてですけれども、例えば、米は二割とれたというけれども、その二割は実際には売り物になりませんよという場合、リンゴが樹上に残っているけれども、傷がついて、だんだんその傷が大きくなっていきますよ、それは樹上損傷という言葉があるんだけれども、実際にはそれは共済で見てくれないということが現地の一番の大きな問題なんですね。その点も正確に、やはり損失として共済の対象にすべきと思いますが、その点の指導についてどうお考えか、伺います。

○須賀田政府参考人 水稲の共済金、できるだけ早期に支払うようにしたいというふうに考えております。

 先生御指摘の再評価の件でございます。

 おっしゃられますように、一回台風が来まして共済組合等による損害評価が終了した後また被害が拡大するといった場合には、農業共済組合は再評価をするということになっております。損害評価の契機となりますのは農家の方々からの損害通知でございますので、こういう場合にはちゃんと共済組合あるいは共済組合連合会に対して通知するよう、農家の方々に対する指導を行っていきたいというふうに考えております。

 それから、木の上になったまま傷がついて売り物にならない果実の被害扱いの問題でございます。

 制度上は、おっしゃいますように、木になったままの果実でありましても、風で枝と果実がすれて傷が生じた、規格外になったといったものは被害の対象として扱うということになってございます。ただ、現地の一部に、木になっておるのならば被害じゃないんじゃないかというような誤解もあるようでございますので、そういう誤解を与えることのないよう、共済組合等を通じまして指導を徹底していきたいというふうに考えております。

○高橋委員 一部の誤解とおっしゃいましたけれども、これが長い間、全体にわたってそういう状態だったというのが現地の実態でありますので、本当に制度上あるのであれば、しっかり適用されるように御指導をお願いしたいと思います。

 共済制度については、本当に、青森のリンゴでいいますと三割の加入率ですし、その他のミカンや桃、ナシなどを見ても三割以下というのが実態であります。ですから、この加入率がもっともっと上がって実効あるものにするように、入りやすい、そして入った以上は成果がある、そういう制度に改善していくことを今後も要望していきたいと思います。



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