2004.4.14(水) 農林水産委員会 参考人質疑



159-衆-農林水産委員会-11号 平成16年04月14日

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、大変お忙しい中、本委員会に参加をいただき、また貴重な御意見をいただきまして、参考人の皆様には心からお礼を申し上げたいと思います。

 初めに、中村参考人にぜひ都市農業の問題でお伺いをしたいと思うんです。

 平成十一年制定の食料・農業・農村基本法にも都市農業がしっかりと位置づけられたわけでありますが、今回の農業委員会法の改正の中で、市街化区域内の農地が必置基準面積から除外される、生産緑地を除いて除外されるということがありまして、例えば、先般お会いした大阪の農業会議の方などからは、非常にこのことを心配しているというお話がありましたし、東京の農業会議などでは、先日、皆さんのところにも行っているかと思うんですが、四月六日付で、「都市農業軽視の農業委員会法改正を糾弾する」という形での決議が上がっているというふうなことも拝見をしております。

 非常にその点で心配をしているわけですけれども、まず、具体的に全国農業会議所として把握していることを伺いたいと思うんですが、今回の法改正になれば必置基準面積から外れる、対象にならないだろうという農業委員会、こういうところがどの程度になるものなのか、もし把握していたらお伺いしたいと思うんです。

○中村参考人 お答えを申し上げます。

 今、前半で先生が御指摘になりましたように、市街化区域の農地につきましては、組織としても大変な議論を積み重ねてまいったところでございます。そこでも申し上げましたけれども、さまざまな意見がございました。

 議論の結果、生産緑地につきましては三十年という長期の義務づけがございますし、もう一つ、農地に返すためには、線引きのし直しで市街化区域をまた戻すという方法もございます。それを除きますと、いずれにしても、これはいつ転用するかわからないという農地でございますので、ここを除くのはやむを得ないではないか、あるいは当然じゃないかということで、組織としての決定は除くというようなことで決定をしたところでございます。

 その結果、それではどのぐらいの農業委員会が除かれるだろうかという試算をしてみますと、東京、愛知、大阪等都市部を中心に二十三市区町村ぐらいではなかろうかという数字が出ております。

 これは議論の過程で議論もしたわけでありますが、現在の基準面積以下でも農業委員会を置いております市町村は八七%に及んでおりまして、必要な市町村は必置基準以下でもほぼ置いておるという実態もございますので、そこで対応もできるのではなかろうかというふうに理解をいたしまして、組織としてはこういう改正案に賛成をする、こういうことでございます。

○高橋委員 必置基準面積以下であっても農業委員会を引き続き設置をして頑張っていくという決意だろうなというふうに受けとめさせていただいたんですけれども、私、その中で、やはり都会で農地があり、そこで農業委員会が働いているということの意義というんですか、都市農業ならではの役割、必要なんだということで、どんなことがあるのかというのを少し紹介していただければと思うんですが、中村さん、お願いします。

○中村参考人 都市地域の農業につきましては、これは農水省もそうでありますけれども、基本法でも新たに位置づけをしておりますし、また、都市計画部局におきましても、新しい都市計画の中で、農業あるいは農地のある町づくりというようなスローガンのもとに都市計画が進められるというふうにも聞いております。

 したがいまして、現在農業委員会といたしましては、仕事は、一つは、農地転用の届け出の受理と現地確認、あるいは生産緑地の管理協力、そして農地の相続税納税猶予にかかわります証明事務など、法令等に基づいた業務もございますが、今申し上げましたようなこともございまして、また我々も、市民農園あるいは体験農園とか、そういうものの取り組みも積極的に運動論的にやっておりますけれども、今後ますますそういう需要も多くなってくると思いますので、それらにつきましても農業委員会としての対応をしてまいりたいし、また、対応をしていくべきではなかろうかというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 今御紹介いただいた、例えば納税業務の問題ですとか、全体の面積が小さくてもその分さまざま散在している中で、やはり一番土地をわかっているのが農業委員会であって、その中で重要な役割を果たしていることや、やはり都会の中での市民農園の活動など、そうしたことも大きな役割になっているのかなと思っております。

 心配されている声が随分下からも上がっておりますので、これをぜひ農業委員会としては頑張っていただきたいし、また同時に、国の方にはそれを支援する形で頑張っていくように求めていきたいと思っております。

 ぜひ佐野参考人にも伺いたいと思うんですが、先ほど来、同じ東北の女性として、本当に生き生きと頑張っていらっしゃる様子をうかがってうれしく思っておりますけれども、女性の農業委員が出る上でも大きな役割を果たしている選挙で選ばれる農業委員、今回、下限定数が撤廃されるということになったり、あるいは推薦団体の中に土地改良区がふえたりとか、私は、選挙で選ばれる委員の数がどうなるんだろうというのを非常に心配しました。

 ただ実際は、推薦される委員よりはふやすということで、枠は確保されるんだという説明だったと思うんですが、改めて、やはり選挙で選ばれる委員と推薦される委員とのバランスというんですか、要するに、選ばれてくる委員の大事さということをぜひ現場のお立場からお話しいただきたい。

 あわせて、やはりいろいろな御意見をふだんお話ししてくださっているんだろうなと思うんですが、農業委員会が小さくなったり廃止になったりする中で、市町村の農政部局で対応すればいいじゃないかという議論もありますね。でも、そういう中で、やはり農政部局ではできない農業委員会の役割、あるいは農業委員会が農政部局とうまく連携をとって、意見を出し合ったりして活動が進んでいく、そういうことで何か紹介できることがあったら、お話しいただきたいんです。

○佐野参考人 お答えさせていただきます。

 片や、農村は煩わしいと若い人たちから言われます。でも、その反面、コミュニケーションがとれています。それで、私たちも一言言えばすぐに村じゅうに広がります。もちろん聞こえてもまいります。それをうまく利用すれば、もう鬼に金棒でございます。

 それで、私の考えとしましては、本来ならば公選で選ばれた農業委員が本当はふさわしいと思います。なぜなら農業者の代表であるからです。でも、先ほどもちょっとお答えいたしましたけれども、封建的で封鎖的な農村では、まだまだ男性社会であります。その中で女性が登用されるというのは大変難しい現況の中で、やはりこれは各市町村から頑張っている女性を推薦していただくというのが一番賢明なやり方ではないかと考えております。理想としましては、環境を整備しまして公選にだんだんなっていただきたいと考えます。そのためには、先ほど申し上げましたように、農村環境の整備が大変必要とされております。そんなところで、先生にもぜひ御配慮いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高橋委員 市町村の農政部局との連携について、何かありますか。

○佐野参考人 先ほど答弁で申し上げましたけれども、一応議会の方には農業委員会の会長として出席しておりますので、一部始終、村の情勢は存じ上げておりますので、農政部局ともかかわりは強いと思っております。

 よろしいでしょうか。

○高橋委員 ありがとうございます。大いに発言をして、農家の代表として頑張っていただきたいと思っております。

 次に、普及事業の問題で、須之内参考人に伺いたいと思います。

 今農業委員のときにお話ししたことともちょっと関連するわけなんですが、行政と普及事業の独立というんですか、私はそのことがやはり非常に大事なことなのではないのかなと思っております。

 先ほど、前の方の答弁の中で、いろいろな業務があって、現場に行くのがなかなか大変なんだというお話をされたと思うんですが、今、センターの必置規制の撤廃ということが案にはなっているんですが、既に都道府県の改良普及センターなどはかなり統合が進んでいますよね、実際のところは。平成七年度から見ると百一カ所、地域農業改良普及センターがもう既に減っております。そういう中で普及員の数も減っておりますから、実際もう現場が遠くなっているんじゃないのかなと思うんです。だから、都道府県によっていろいろバランスはありますけれども、実際統合が進んでいる中で起こっている現場の状況など、ありましたら、教えていただきたいと思います。

○須之内参考人 実際に統廃合等が非常に急速に進んできておりまして、そういう中で絶対的な普及員の人数も減ってきているということがございますので、我々の努力云々ということ以前に、もう物理的に現場に足を運べないような状況になっているというのは、先ほど申し上げたとおりです。

 具体的には、例えば、以前ですと、電話で一つ要請があれば、すぐに現場に駆けつけて、その現場の状況を確認しながら、いろいろな助言指導をしてきたわけですけれども、やはり電話があっても、現場まで一時間、二時間という話になりますと、電話だけで対応をせざるを得なくなる。また、現地に赴くにしても、翌日なり翌々日なりというようなことでタイムリーな対応ができないというようなことが具体的に出てきております。

 そういうこともございまして、実際には合同庁舎の中などに我々どうしても入ってくるわけですけれども、我々が足を運べない、農家の人たちが普及センターに来られないというような状況は非常に顕著になってきておりますので、そういう面ではいわゆる普及活動の効果が非常に出にくくなってきている、言いかえればサービスを受けにくくなっているということだろうと思いますけれども、そういう実態がございます。

○高橋委員 今具体的にお伺いして、やはりそうだなというふうに思ったんですけれども、極端な話、普及員がどこにいるのよと聞いたら、県庁の中にいますというところもあって、現場に行くにも、一日の出張時間のほとんどが移動で、全然効率が悪いじゃないかということだとか、あるいは、対応する農家も兼業農家がふえているわけなので、夜討ち朝駆けですよね、通常の時間ではとてもできない。そういう中で苦労されて、少しでも現場に入って指導したいというふうなことを心がけているということを、私も普及員の方にお話を聞いたことがあるわけですけれども、そういう特殊な性格というのをやはりしっかりと維持しなくちゃいけないんじゃないのかなと私は思っているんです。

 それで、ちょっと先に高橋参考人にお伺いしますが、先生は、検討会の中で、普及事業の見直しということでいろいろ御意見を出されているんですけれども、例えば、できるところは民でもいいんじゃないかなどということも御意見としてあったかに思っておりますけれども、その点で、私自身は、やはりこれは事業そのものをしっかり、協同事業だから国と県の責任で維持をし、またセンターは必置するべきだというふうに考えているんですけれども、そういう役割と、民でもいいんじゃないかというふうな考えについて、先生はどのように、もう一度お願いします。

○高橋参考人 先ほどの発言の中で、普及事業が三つの層で運営されるというお話をいたしました。それで、一番最後に述べたのが、民の農業経営の支援事業で、例えば税理士だとかあるいはマーケティングの専門家だとか、農業経営の役割というのは非常に幅広くなってまいりました。そして、普及員が固有に対応する領域以外の注文も出てまいりました。例えば、ある農産加工をやっているところでは、パッケージをどうするか、そこまで普及員が全部やっていたのでは、とても対応できません。それは専門家に任すべきだというふうに考えております。

 ですから、民に任せた方が有効なところは民に任す。しかし、民に任せられないところが必ず残る、それが少なくとも二つの領域であるということで、高度な技術指導とそれから地域の農業のコーディネート機能だ。地域の農業のコーディネート機能が普及センターでなければいけないのか。これは確かに地域に在住した方がいいわけです。役場あるいは農協の指導部のところに机を借りて置くことだって、私はそれは可能だろうと思います。それから、高度な技術指導の場合には、技術開発とタイアップしていかなきゃいけないので、どちらかといえば、試験場だとかあるいはその支所みたいなところで共同に開発をしていくというようなところも考えられるのではないかというふうに思います。

○高橋委員 それでは、高橋参考人と須之内参考人にそれぞれお伺いしたいんですけれども、専門家に任せられるところはあっても、必ず普及事業として残るところがあるというお話だったんですけれども、確かに、高度な技術を絶えず研究するというところは残す、そしてそれを農家に還元できればいいと思うんですけれども、検討会の報告書の中には、知見の集約という言葉になっていますよね。

 ですから、技術を研究し、だけれども、実際にはそれは研究してそこを還元するところまでいかないんじゃないのか。というのは、さっき言ったように、現場が遠くなっている、足を運ぶ余裕がなくなっているということで、そこはちょっとどうなのかなというのがまず心配していることなんです。その点について、一つ伺いたい。

 それから、普及事業は、当初は食料増産ということで始まったわけでありますが、今は時代が変わって、求められる中身というのも変わってきているのは確かだと思うんですね。ただ、そういう中で、逆に、化学肥料の問題ですとか、多様な今ならではの課題があって、そういうことを、確かに現場に行って農家の指導に当たる、援助に当たる普及員の役割というのはますます今求められてきているのではないのか。

 あるいは、今お話しになった経理の問題にしても、最終的には専門家に任せるにしても、農家には先立つものがないという事情もありますし、まずそこで普及員がそばにいるということが大事なんじゃないのかなと思うんですよね。その点で、ごめんなさい、時間がなくなりましたが、一言ずつお願いします。それで終わります。

○高橋参考人 今まで、普及員の方々は、非常に程度の低い農家を指導するということが今までの考え方だったと思います。これからはそうじゃなくて、非常にすぐれた人たちと一緒に技術開発をし、あるいは地域の農業を維持していこうというふうに変わってきたということが私は一番重要ではないかと思います。

○須之内参考人 基本的には、農家の方にとってどういう方法で進めていったらいいのかということ、あるいは農家にとって何がいいのかということでございますので、それが民間の技術、民間の企業がよいということであれば、そういう形もいいと思います。

 ただ、我々、農業技術を媒体にして、いろいろな技術、知識を普及していくというところでは、そういう専門的なところと農家との仲立ちという役割はぜひ必要だろうというように考えておりますので、それが今後とも普及としても、だれが具体的に役割を果たすかという部分をつなげていくようなことは、まだ重要な役割として残るんじゃないかというように考えております。

○高橋委員 終わります。ありがとうございました。



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