食の安全・安心に関する質問主意書

平成十七年三月一日提出

質問 第二十五号

提出者

高橋千鶴子 山口富男

 

近年、「食品の安全・安心」を脅かす不祥事・不正行為などの事件が後を絶たず、消費者・国民は「何を基準に,何を信じて買い求めればいいのか」という不信・不安を募らせており、「安全・安心な食料を安定的に国民に提供」すべき行政の責任も厳しく問われる状況にある。

 乳業界においては、2000年6月に発生した「雪印乳業集団食中毒事件」を通して、乳業工場の衛生管理の不備や回収製品の杜撰な再利用などの実態が明らかになる中で、消費者・国民の怒りと批判の声は企業に向けられると同時に、当然のことながら厚生労働省や農林水産省の監督指導のあり方をも厳しく見られている。この雪印乳業集団食中毒事件を契機に厚生省(当時)での有識者懇談会による、「飲用乳の製品の再利用に関する報告書」などを踏まえ、「食品衛生法」の厳格な運用と「製品再利用に関する指針」を明確にするなど業界への指導が行われたものと理解している。そして、業界団体である日本乳業協会は、「飲用乳の製品の再利用に関するガイドライン」及び「品質保証と危機管理」等など信頼回復に向けて自ら襟を正す基準を策定するに至った。

 しかし、残念ながら食品を巡る不祥事・不正行為はその後も続発する異常な事態にある。特に、雪印乳業食中毒事件を契機に業界トップ企業になった明治乳業において、雪印乳業の教訓が生かされることなく同様の不祥事が繰り返されていることは重大である。そしてこれは監督指導に当たるべき行政の責任であることも明白である。

 従って、次の事項について質問をする。


1、 明治乳業稚内工場での「汚染脱脂粉乳再利用」問題について

(1)厚生労働省の「食品衛生法第11条第2項に違反」という見解に対して,明治乳業は再利用の発覚時「社内規定に基づくもの」と釈明しているが、「雪印乳業集団食中毒事件」の原因であった「汚染脱脂粉乳の再利用」が業界トップ企業で繰り返されていたことに対する監督省庁の責任をどう考えているか。

(2) 「食品衛生法」違反の認識もなく、「社内規定で汚染原料の再利用」が行われていた等、「食品衛生に対する企業モラル」が厳しく問われているが,明治乳業に対しいかなる行政指導を行ったか,事件発覚後の経緯と指導内容について明らかにすること。

(3)北海道衛生局,稚内保健所が立ち入り調査で「汚染脱脂粉乳再利用」を確認したのが2004年7月であり,食用流通停止の「食品衛生法違反」という指導が8月になされ,その後9月13日に業界紙が報道するまで事件はいっさい公表されなかった。北海道衛生局は「食用に流通していないので公表しなかった」としているが,「法律違反の疑いが強い事例なのに,積極的に公表しないのは甘い対応ではないか」(北海道新聞)という消費者・国民の不信・疑問は当然である。この点に関する厚生労働省の認識と公表しなかった経緯について明らかにすること。

(4) 明治乳業は「社内規定に基づく再利用」と釈明しているが,全社的な問題であることは明白である。直ちに全社各工場の製造検査記録などを可能な限りさかのぼって立ち入り調査を行い,総点検の結果を公表することが監督省庁の当然の対応と考えるがどうか。

(5) 明治乳業は,社内では「法令及び社会の視点という面での認識が不足していたことを痛感」(リスクコンプライアンス委員長の従業員への説明)等としているが、公には謝罪も再発防止への「危機管理体制の見直し」も公表していない。企業責任と今後の対応について,公表させるべきだと考えるがどうか。

2、 農林漁業金融公庫(以下,公庫と略す)の明治乳業への多額融資に関して

(1)公庫が明治乳業に融資している金額・利息・担保(1997年度〜2003年度)について明らかにすること

(2) 公庫の設立趣旨との関係で、乳業界トップ企業の明治乳業への215億円余の融資は「正常な融資」といえるのか。

(3)公庫の融資は,長期・低利であり,国から多額の赤字補給金(2002年度662億円,2003年度605億円)が投入されている。経営困難な農林漁業の振興発展を目指す融資なら当然であるが、筆頭株主が「みずほ銀行」という業界トップ企業に対して同じ融資条件で多額に行われることに問題はないのか。

(4)財政制度等審議会財政投融資分科会(2004年10月27日)における宮坂農林水産省大臣官房審議官の報告について、「資金使途の一部を廃止するなり,大企業向けの融資率引き下げ」等の実施を報告しているが,「一部廃止」とは何をさすのか。また、「融資率引き下げ」の具体的内容は何か。

(5)食品産業融資枠が2001年度の1022億円から2004年度には680億円に減少させたとの宮坂報告があるが、明治乳業への多額融資はなぜ問題にならないのか。融資の背景も含め明らかにすること。

(6)1991年の「食品流通改善資金」及び1998年の「食品産業品質管理高度化促進資金」創設の背景と理由について明らかにすること。

(7) 「食料の安定供給の確保に必要な長期かつ低利の資金で,一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的」とする政策金融を多額に利用している明治乳業がこれまで述べてきたような不祥事・不正行為を繰り返し,その事実を隠蔽していることに対する行政の指導責任(貸し手責任)をどう考えているのか。また、「食の安全・安心」への消費者・国民の信頼に応えるためにも,コンプライアンスはもちろんのこと,業界のトップ企業として健全な企業活動を行うように指導すべきと考えるがどうか。

右質問する。





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