小泉自公政権による「地方の切り捨て」でなく、
東北の市町村を真に「自治体らしい自治体」にするために
―――日本共産党の地方財源政策(東北版)

2003年10月24日

日本共産党前衆議院議員 松本善明

日本共産党東北ブロック事務所

高橋ちづ子

               五島 平

佐藤秀樹

日本共産党岩手県委員長 水戸正男

1、地方財政の削減は「地方切り捨て」策

自治体が住民のくらしと福祉をまもるという本来の仕事を投げ捨て「自治体が自治体でなくなる」状況が深刻になるなかで、小泉自公政権がすすめている市町村合併の押しつけ、「三位一体の改革」による国から地方への財政支出の削減が、これに拍車をかけています。

東北地方の現状をみても、基礎的自治体としての300こえる町村の大半は、いずれも人口規模も弱小で、財政力も乏しいため、財政的にいっそう「自治体らしさ」を失う事態になりかねません。

東北の自治体は、人口や財政の規模では小さくとも、大都市にはない豊かな自然と豊富な食料の供給基地に恵まれて、大都会と共存共栄の関係をもった重要な役割を担ってきました。全国町村会も「町村は、食料の供給、水資源の涵養など重要な国家的な役割を果たして」(03年2月 町村自治確立総決起大会「決議」より)きたことを強調しています。

農林水産省が公表している「農業・森林の有する多面的機能」によれば、「農業や森林による国土保全や水源かん養などで発揮される、農産物供給以外の多面にわたる機能のこと」として、貨幣評価に置き換えると「農業で約8兆円/年、森林で約70兆円/年」としています。このようにみると、農業と森林を有する自治体の維持・発展なくして、わが国社会の均衡ある持続的発展はありえません。

国から地方への財政支出の削減による「地方の切り捨て」問題は、地方自治体と地方財政がどうあるべきかをめぐって、重要な問題を提起しています。

2、自民・公明案に対して全国の知事や市町村長会からも大反対

10月16日付の毎日新聞によると、47都道府県知事にあてにアンケートを行い、その結果を報道しました。それによると、現在20兆円にのぼっている国庫補助金について、自民・公明の4兆円削減案に対して支持する知事は一人もなく、民主党の18兆円削減案を支持したのが3知事にとどまった、という内容です。

こうした結果について、毎日新聞記者は、「税源の移譲が少ないことに知事側が反発したものとみられる」と分析しています。

――自民・公明案は、06年までに補助金を4兆円廃止・縮減し、8割程度をめどに税源移譲するというものです。義務的な事業は「徹底的な効率化を図った上で所要額の全額を移譲」としていますが、「徹底的な効率化」は費用の削減であり、塩川前財務相は「8割くらいにできる」と言っていたものです。廃止・縮減の重点には、教育・福祉の義務的な国の支出である義務教育、保育所運営費などをあげており、介護保険、生活保護も見直しの検討対象にしています。

――民主案は、総額20兆円の補助金のうち18兆円廃止としています。地方に渡すのは単純に計算してもマイナス5、000億円となります。それは、5.5兆円の税源移譲と、12兆円の一括交付金で、計17.5兆円にしかならないからです。そして、一括交付金については、知事会も疑問を表明しており、「毎日」でも「中央の意向でいつ減らされるかわからない財源」と紹介されています。

3、東北地方の自治体財政はますます危機に

国から地方への財政支出の削減が東北地方の自治体にたいしてどういう影響を及ぼすでしょうか。

自民・公明案の削減額は4兆円ですから、20兆円として平均2割の削減となります。国の補助が切られた分は交付税で措置されるのですが、その交付税も縮小方向がすでにいわれているのです。また、地方に税源移譲するのが8割程度となっていますが、税源は大都市などに偏在するので地方の弱小自治体にとっては税源移譲の恩恵を受けるのは大変厳しくなるのは避けられません。

東北の6県でみると、国からの補助金額は、2001年度決算の金額ベースで1,000億円〜2,000臆円が配分されています。これは歳出総額の16%〜21%を占めます。こんどの自民・公明案は2割削減となっているので、各県ごとに、200億円〜400臆円規模の削減額となります。

このほか、市町村財政は県財政以上に厳しい状態です。例えば、宮城県の市町村財政は、国・県からの補助金額が約1、000億円(宮城県の国からの補助金額が約1,500億円)、うち2割の削減となれば、宮城県の県・市町村あわせて数百億円の削減額となります。これら使い道の大半が、保育所など生活に密着した経費ですから影響の深刻さは図り知れません。

  国庫支出金額 歳出総額に対する比率 (参考)地方交付税 同比率
宮城県 1,592億円 18.40% 2,220億円 25.60%
福島県 2,056億円 19.80% 2,729億円 26.30%
山形県 1,020億円 15.90% 1,980億円 31.00%
岩手県 1,947億円 20.10% 2,819億円 29.10%
秋田県 1,665億円 19.80% 2,612億円 31.00%
青森県 2,015億円 21.40% 2,722億円 28.90%

4、日本共産党は、地方財源を拡充し「自治体らしい自治体に」にします

自治体が住民のくらしと福祉をまもるという本来の仕事を投げ捨て「自治体が自治体でなくなる」状況が深刻になるなか、小泉自公政権がすすめている市町村合併の押しつけ、「三位一体の改革」はこれに拍車をかけています。日本共産党は、国から自治体への財政支出の削減でなく、福祉や教育を守り充実させるために、地方財源の拡充・改善をおこなうことを提案しています。

――無駄な大型公共事業を中心とした補助金を廃止・縮減して、地方への税源移譲にあてれば、自治体が住民のために自由に使える財源をまるまる増やすことができます。また、中小企業に仕事がまわる生活基盤の公共事業などについては、自治体が自らの裁量で使える総合補助金制度にあらためて、無駄なく地元の活性化に使えるようにします。

――3000余の市町村を1000にまでしようという国による合併押しつけは、自主的な地域の発展と暮らし向上の努力を妨げ、地方自治を侵すものです。このねらいは国から地方への財政支出を削ることにあり、地方の切り捨てです。合併を誘導し、“強制”するための特例地方債や地方交付税の措置をあらためさせ、国による合併押しつけをやめさせます。小規模自治体の権限を強制的に取り上げる検討をやめるとともに、この間すすめてきた小規模自治体の交付税削減をもとにもどします。

――地方自治体への税源移譲は、地方財源の拡充のため、所得や資産にかかる税を中心に行います。税源移譲には、都市と農山村自治体との税収格差を広げるという面もありますから、それに対しては、地方交付税制度のはたすべき財源保障・調整の仕組みを充実させ、税源を移譲されたものの、実際には課税対象の少ない自治体の財源を保障するようにします。これらの財政措置によって、福祉や教育のナショナルミニマムを維持・向上させる財源を保障するとともに、自治体の独自のとりくみの強化につなげます。

以上



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