2013.5.9(木) 本会議


183-衆-本会議-20号 平成25年05月09日

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、災害対策基本法等一部改正案について質問します。(拍手)

 東日本大震災の検証を進めながら行った昨年の災害対策基本法改正案審議においては、災害対策の基本的理念の明確化や、復興の枠組みの整備を図ることが、積み残された課題とされていました。本法案並びに同時に提出された大規模災害からの復興に関する法律案は、防災に関する制度のあり方の全般的検討を踏まえたものとされています。

 災害対策や復興のあり方を考える際には、東日本大震災を初め、阪神・淡路大震災など、この間の災害の経験と教訓を生かすことが必要であります。

 そこで、東日本大震災では、国の復興基本方針と第三次補正予算が成立した十一月末まで実質被災自治体は復興計画を具体化できず、復興のおくれにつながりました。今後の大規模災害における基本方針や予算の枠組みの決定のプロセスはどのように改善されるのか、伺います。

 「いうまでもなく、地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは人災であるといえる。したがって、人間の英知と技術と努力により、地震による災害を未然に防止し、被害を最小限に食いとめることができるはずである。」一九七一年に制定され二〇〇〇年に全部改正された、東京都震災予防条例の前文であります。

 ここで言われているように、相次ぐ災害からの教訓は、災害の発生そのものを防止することに知恵と力を集中すること。そして、災害が発生してからの対策は、再度災害防止と被災者の生活再建を柱とした復旧復興とすることを基本とするべきではないでしょうか。

 その点で、まず、災害の発生を予防し、被害の拡大を防止するための対策についてです。

 経済効率性を追求した土地利用が優先され、水害や崖崩れ対策、地震、津波対策は、開発行為の後追い、災害が発生するまで対策が行われないなどの深刻な状況にあります。東日本大震災の被災地でも、住民が長年求めていた防潮堤が整備されないまま放置されたことにより、被害が拡大したなどの事例が生じています。

 こうした事態を打開するためには、まちづくりを含めた、災害対策基本法第八条が規定する、災害の発生を予防し、災害の拡大を防止するための事項について、防災上の配慮ではなく、行政が優先して取り組むべき義務として明確にすることです。

 災害復旧事業は原形復旧であるという原則を見直すときではありませんか。お答えください。

 次に、発災直後の応急対策から被災者の生活再建を視野に入れた支援のあり方です。

 大規模災害からの復興に関する法律案では、「基本理念」に、被災地域における生活の再建とあります。これは被災者一人一人の生活再建という意味でよいのか、明確にお答えください。

 一方、災害対策の基本的理念を明記する災害対策基本法には、「被災者の援護」とあるだけです。大規模な災害の場合だけではなく、小規模、中規模な災害でも、被災者一人一人の生活再建は理念として明確にすべきと考えますが、答弁を求めます。

 被災者の生活再建を進める上で、東日本大震災を初め、この間の災害を通して、以下の点が改めて求められています。

 第一に、被災者生活再建支援法の拡充です。

 支援金支給額の限度額を当面五百万円に引き上げるとともに、圧倒的多数を占める半壊、一部損壊を支援の対象とすることです。

 第二に、災害救助法については、これまで以上に被災地の状況に即した柔軟な運用が行われる必要があります。

 住宅の応急修理や障害物の除去の所得要件などを撤廃し、国庫負担の割合を最大で全額とするべきです。また、避難が長期化している中で、子供の進学などさまざまな事情で住みかえが必要となっており、仮設住宅の住みかえは複数回認めるべきです。

 第三に、被災中小企業に対する支援については、いわゆる二重ローン対策や、仮設店舗、グループ化補助金など、今回切り開いた経験を踏まえて、被災事業所の再建へ直接支援を行うことを明確にすることです。

 これら三点の改善を速やかに行うべきだと考えますが、答弁を求めます。

 最後に、災害緊急事態布告に伴う対処基本方針について伺います。

 改正案では、災害緊急事態の布告があった場合、対処基本方針を閣議決定し、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督できるとしています。

 これに対し、災害緊急事態が発生した場合、政府が国民の権利を一時的に制限する必要があるなどの踏み込んだ考えも報道されています。

 しかし、被災地の現状や被災者の生活再建と無関係に政府に権限を集中しても、政府の決定は被災現場の実情とかけ離れたものとなり、結果として、地域の復興をおくらせることにならざるを得ません。

 国民の権利制限については慎重であるべきですが、答弁を求めます。

 東日本大震災から二年目の三月十一日、河北新報の社説は、生存権が脅かされている、いら立ち、不安、焦りが募ると指摘をしています。

 震災関連死が二千三百人を超えるという中、こうした東日本大震災の現状から出発し、被災者の生活となりわいが再建されてこそ、地域社会や町の復興があることを改めて指摘をして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣古屋圭司君登壇〕

○国務大臣(古屋圭司君) 高橋議員にお答えをいたします。

 まず、大規模災害における復興の基本方針などの決定プロセスについてのお尋ねがありました。

 これまでの大規模災害における復興の枠組みは、その都度、特別法の制定により対応をしてきたところですが、今回の大規模災害からの復興に関する法律案においては、政府による復興対策本部の設置や復興基本方針の策定、市町村の復興計画の作成などの基本的な枠組みについて、あらかじめ法制化を図ることといたしております。

 これにより、これまでのように、災害発生後の特別法の制定を待たず、迅速に、閣議決定により復興対策本部を設置して、基本方針を策定することなどが可能となります。

 さらに、このような国の取り組みを受けて、地方公共団体においても、早期に見通しを立てて復興計画を作成することが可能になるものと考えております。

 このように、大規模災害からの復興に関する法律により、全体として、これまでよりも速やかな復興への取り組みが期待できるものと考えております。

 次に、行政が優先して取り組むべき義務についてのお尋ねがありました。

 災害対策基本法第八条は、国及び地方公共団体が実施すべき防災上の重点事項を幅広く明示し、努力義務として規定したものであります。その上で、津波、洪水、土砂災害などの個別の災害対策を進めるため、このような努力義務を超えて行政が対応すべき事項については、個別法で具体的に規定をされております。

 例えば、津波対策に対しては、津波防災地域づくりに関する法律において、都道府県が津波防護施設の管理を行うことや、都道府県知事が津波災害特別警戒区域を指定することにより、区域内での一定の開発行為や建築物の建築を制限できることなどが明記されているところであります。

 次に、大規模災害からの復興に関する法律案と災害対策基本法における基本理念についてのお尋ねがありました。

 大規模災害からの復興に関する法律案における被災地域における生活の再建とは、大規模災害から地域住民の生活を立て直し、安定をさせることであり、被災者一人一人の生活再建を図ることを意味しております。

 一方、災害全般を対象とした災害対策基本法においても、今回明確に規定した基本理念規定の一つとして、被災者一人一人の生活再建を図ることを含めて、被災者の援護を図り、災害からの復興を図る旨を規定しております。

 被災者生活再建支援法の拡充についてのお尋ねがありました。

 支給限度額の引き上げについては、与野党一致の議員立法により成立をした立法経緯、見舞金的な性格を有するものとしての他の制度とのバランス、国、地方の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えます。

 また、被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、自立した生活再建を支援し、被災地の速やかな復興に資することを目的とした制度であることから、住家に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた世帯に限って支援の対象としております。

 このような制度の趣旨からすれば、半壊世帯、一部損壊世帯まで支援の対象とすることについては、制度の根幹にかかわることであり、慎重な検討が必要と考えます。

 次に、被災事業所の再建支援についてのお尋ねがありました。

 大規模災害からの復興に関する法律案においては、今後発生が懸念される大規模災害からの復興に共通する一般的な枠組みを定めています。

 これに加えて、災害の個別具体の状況については、法制上の対応も含めた追加的な措置が必要となることも考えられ、このようなケースを想定して、今回の法律案においては、特別な必要があると認めるときは、別に法律で定めるところにより、復興のための財政上の措置等を速やかに講ずべき旨の規定を設けております。

 御指摘の地域経済の再建支援についても、今回の法律案に定める一般的な枠組みのほか、必要に応じ、個別具体の災害ごとの被害状況や地域の実情等を踏まえ、既存制度の活用を含め、関係省庁と連携をしながら適切に対処してまいります。

 最後に、災害緊急事態における国民の権利制限についてのお尋ねがありました。

 今回の改正において、災害緊急事態の布告があったときには、対処基本方針を閣議決定し、これに基づき、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督することといたしておりますが、対処基本方針を根拠として、直接的に国民の権利を制限するような仕組みとはしておりません。

 一方で、大規模広域災害時における国民の権利制限のあり方については、さまざまな指摘もなされているところであり、この問題については、憲法の規定と深く関係することから、両院の憲法審査会、国会の場やあるいは政党間において、適切に議論されることが適当であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

○国務大臣(太田昭宏君) 災害復旧事業についてお尋ねがございました。

 御指摘のように、河川、道路、海岸等の公共土木施設の災害復旧事業におきましては、被災前の形態、機能に戻す原形復旧を基本としております。

 しかし、例えば、斜面崩壊により道路が被災し、従来の道路位置での復旧が困難な場合には、現道の復旧ではなく、トンネルを掘り、新たなルートで復旧するなど、必要な機能が確保できるように対応することが可能となっております。

 また、災害復旧事業にあわせて、堤防のかさ上げや川底の掘削を行い、河川の流下能力を拡大し、浸水被害を軽減するなど、施設の機能の向上や再度災害防止を図るための改良復旧を行うことも可能となっています。

 国交省としては、これらの災害復旧関係事業が適切に活用され、迅速に必要な復旧が図られるよう、被災自治体をしっかりと支援してまいります。

 自然災害による被害の軽減を図るため、事前の備えとしての減災・防災対策と災害発生後の災害復旧の両面から、引き続き対策を強力に推進してまいる覚悟でございます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

○国務大臣(田村憲久君) 高橋議員からは、災害救助法の柔軟な運用についてのお尋ねをいただきました。

 応急修理や障害物除去の諸要件のあり方については、被災者の住宅確保策を総合的に検討する中での課題と考えております。

 また、救助費用については、現行で最大九割の国庫負担をいたしておりまして、地方と国の役割分担を踏まえますと、国庫負担を十割とすることは、慎重に対応すべきことと考えております。

 なお、仮設住宅の住みかえに関しましては、被災者の転居先として恒久住宅を想定いたしておりまして、基本的には困難と考えております。(拍手)

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