2013.5.8(水) 東日本大震災復興特別委員会 参考人質疑


183-衆-東日本大震災復興特別委…-7号 平成25年05月08日

【午前 福島】

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 国会は何をしているのかという思いが非常に込められていたと思います。これからの私自身の発言や行動の中でしっかりと返していきたい、そういう決意を最初に述べさせていただきたいと思います。

 まず蜂須賀参考人にですけれども、先ほどちょっと質問の中でありましたけれども、やはり、国会事故調に避難生活を続けながら参加をされ、被災者の一人として発言をされてきたことの意味というのは本当に大きかったのではないかと思います。東電の勝俣前会長に対して、どこの会長さんですかという発言、大変厳しい追及をされたということも拝見をしております。

 それで、事故調が住民に対するアンケート調査とかタウンミーティングを御精力的に開いたということは、私は非常に大事なことだと思っていて、その中で、例えば大熊町でいいますと、渡辺町長さんも、原発は多重防護がされているので大事には至らないと考えていたということを告白されていたりとか、蜂須賀さん自身が双葉の町民の方に、事故のこと、原発のことを想定されましたかと質問されて、自身も、まさか地震と原発事故がすぐには結びつかなかったということをおっしゃっているかなと思うんですね。

 そういうことの認識と、同時に、その中で大熊町の消防団の方が、地震の直後と爆発の二度、死を意識したということを松本さんがおっしゃいまして、その上で、あのビキニ被曝の久保山愛吉さんの言葉を紹介されて、「私どものようなこういう悲惨な経験をした者は最後にしていただきたい」とおっしゃいました。私はやはりここに尽きるのではないかと思うんですね。

 やはり一日も早い原発事故の収束と、同時に、こういう思いを誰もが繰り返さないために、やはり原発の再稼働はしないという決断が求められていると思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

○蜂須賀参考人 再稼働につきましては、私、ここでは述べさせていただけないかなと思います。

 正直申しますと、先ほどちょっと怒りに任せてお話しさせていただきましたけれども、あの原子力発電所で生活が成り立っていたことは間違いございません。

 私も、商人として、よくいろいろなところで再稼働はどうすると聞かれますけれども、正直、私には二つの気持ちがあるとお答えさせていただいています。一つは、あそこで商売をしていた者、あの原子力発電所があるがゆえに生活が成り立っていた、もう一つは、もう二度と私たちみたいな原子力発電所の被災者は出しちゃいけないという強い思い、この二つが入りまじっております。

 ほかの地域での原発事故があって福島第一発電所がとまったならば、私たちがこういうふうな悲惨な生活を経験することがなかったならば、もしかしたら私たちも再稼働を叫ぶかもしれません。先生方もいろいろなところの立地町に行っていると思うんですけれども、本当に火の消えたような悲惨な状況でございます。あれが大熊町にももしかしたらあったかもしれません。

 ただ、ああいうふうな事故を起こさないためにも、もっともっと原因を追及して、そして、再稼働を考えると言ってはおかしいんですけれども、私は、再稼働もあってもいいし、ただ、古い原子力発電所は動かすべきではないと。私個人の意見です。個人の意見です。これは経験した者の苦しい思いと思っていただければありがたいと思いますけれども。

 もう本当に、なぜ原子力発電所でこんなに苦しい生活をしなければならないのかな、なぜ全国の人たちがあの当時は助けてくれたのに今は私たちが非難を浴びなければならないのかなと、今痛烈に感じております。その被災者の、変な意味での世間からの冷たい言葉というものを、先生方、どうぞ感じていただきたいと思います。補償をもらっているからいいだろう、だから遊んでいるんだろう。誰が好きで遊んでいるんですか。誰が好きであんな二間、一間のところで生活。

 さっきありましたけれども、東京の方からなぜ福島第一発電所まで行って作業しなければならない。そこには、先ほどおっしゃったとおり、責任があると思います。あそこの原子炉の中を十分に知っているのは、あそこで何十年と働いてくれていた作業員の皆さんじゃなかろうかと思っております。その作業員の方が、家族とばらばらになりながらも、あそこを収束させなければならないという思い、これも先生方には感じていただきたいと思います。とても悲しいことです。

 うちの場合も、娘の旦那はやはり、反対に千葉に来て働いております。あそこに残されたお母さんたちが、一週間に一遍、二週間に一遍帰ってくる父親のかわり。自分のうちでやっているのとまた別です。知らない土地で子供を育て、知らない人たちとのおつき合い、これは大変に苦しいことです。

 若い人たちは新しい地を求めていけますけれども、私たちの年になりますと、新しい土地を求めて何かをしようという気持ちには今はなれません。あの仮設住宅に残っている方たちはお年寄りが多くなってきております。

 済みません、まとまりません。よろしくお願いします。

○高橋(千)委員 率直な御意見、ありがとうございました。

 私も青森県の出身でございますので、原発の問題は避けては通れない課題であって、立地町の首長さんに対しても、私たちは、原発がなくても、だからといって、そこで働いていた人たちや、そこで地域経済が成り立たなくなるというふうなことではない対案を持って訪ねて歩いておりますので、ぜひそういう立場で御理解いただければなと思っております。ありがとうございました。

 山田参考人に伺いたいと思うんですが、住民の声を紹介していただきました。本当によく伝わりました。ありがとうございました。特に津島の問題は、馬場町長も本当に泣いて悔しがって訴えていらっしゃったことを本当に忘れることができません。

 ただ、浪江町はやはり、五年は帰らないと決意をしつつ、リトル浪江の取り組みですとか、そこに診療所を張りつけて、地域のコミュニティーを維持しながら頑張っていくということを取り組んでおられたと思いますので、そこに支援をしていきたいなと思っています。

 そこで、伺いたいのは賠償の考え方ですよね。やはり地価ではとてもじゃないがやっていけない、再建が可能なものをきちんと賠償するべきだということと、それがまだ途中である、一回払ってそれで終わりよということではない、まだ再建の途中であるというふうなことから考えても、そこに課税をするというふうな考え方もやはりおかしいのではないかなと私は思っているんですが、一言お願いします。

○山田参考人 私も言いたかったことなんです。

 例えば、私はひとり暮らしです。精神的な慰謝料については、月十万で、包括的に三年ぐらい今度支払われたんですね。私の場合は、一人で三百九十何万か。そうすると、五人家族は、単純に言うと一千二百万ぐらい入ったんじゃないかと思います。

 だから、これは、そういう考え方、精神的な慰謝料についての賠償の考え方に、例えば私個人になって申しわけないんですが、ひとり暮らしでも経費はほぼ変わらないんですよ。今は、家賃が国に負担していただいておりますから、何とか生活はできます。でも、これがいつ打ち切られるか。平成二十六年ですか、そのぐらいで打ち切られたら、その後は、月十万の慰謝料ではとても生活ができないと思う。

 さっき、蜂須賀さんも、商業をやっている方は、農業者は全て賠償してもらえるから、公務員は働きながら賠償してもらえるからというようなお話がありましたが、これは本当にそれが崩れればだめだと思います。

 ただ、財物的な賠償について、これもまた変なんですよ。高橋先生にお願いしたいことは、やはり今まで生きて培ってきた財産というものがあるんですね。例えば、家財を補償しますといっても、それも一人当たりなんです、一人五十万とか。こんな理不尽な話はないではありませんか。

 私は七十三年間生きてきたから、ちょっとは親に買ってもらったものもあるし高級なものもあるでしょう、娘に買ってやった訪問着もあるでしょう。そうしたら、一人五十万の補償では当然、納得いかない家庭があると思います。

 これは、十人の家族があれば五百万になるからね。そうしたら、一人も二人も同じですかという、そういう賠償の基準を誰がつくるんだか、東京電力でつくるんだか何だか、まず公平でないと私は思っております。もっと被災者の身を考えてやるべきじゃないか。もちろん、東電ではだめだったら、国の御指導を仰ぎたいと思っております。

 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。全くそのとおりだと思います。引き続いて頑張りたいと思います。

 残された時間が非常に厳しくなってまいりましたので、予定した質問がかなり残ったんですが、遠藤村長と及川副院長にそれぞれ、人に関する問題で質問させていただきたいと思います。一遍に言いますので、時間の中で何とかおさめたいと思います。

 帰村宣言をされてから四割の村民が戻ったということに対して、まだ四割とか、高齢者が多いじゃないかとか、そういう指摘がいろいろあります。でも、村長は、多分そういうことは全部織り込み済みで、全部整ってから帰村するというのではとてもいつになるかわからない、そういうことを覚悟の上で、やはりまず役場が出ていくんだ、そういうふうな思いだったと思うんですね。

 ですから、ただ帰ることがいかに困難かという村長のお言葉というのは、非常にいろいろな課題を本当は含まれているのではないかなと思うんですが、ちょっとお話の中になかった、役場が前面に出ていくことで、職員の皆さんも、それぞれに区域が分断されたり、家族がある中で大変な御苦労をされているし、当然、体制的にも非常に不十分ではないかということがございます。そういう点に思いをしてぜひ御発言をいただきたいと思います。

 及川参考人に対しては、南相馬市が分断をされて、かつてない長期間の屋内退避をされる、その中で、入院も受け入れられないし、職員も避難をさせなければならない、だけれども医療体制を維持してきた大変な御苦労をされました。

 その中のスタッフの御苦労ですとか、先生御自身が医事新報に書かれておりまして、逃げたくなるときはなかったのかというインタビューがあって、いや、もちろんそれはあったけれども、今とてもそれはできないということで決意をされて踏みとどまって、市立病院として、臨床研修医を育成するなどして医師をふやす取り組みをされてきましたよね。

 だけれども、それが全体としては、やはり市立病院だけが足りても間に合わないということですとか、さまざまな意味でまだ不足している課題があると思うんですね。ですから、その取り組んできた成果と課題ということでお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○遠藤参考人 行政運営において、やはり職員の役割は重要だと思います。まして、こういう緊急時です。ある面では臨戦態勢のこういうときに、職員の果たす仕事は一人二役、三役ということで、本当にありがたいことだなと感謝しています。

 職員みずから被災を受けています。家族がばらばらな職員もいますし、単身で村に戻られたという職員もいます。そういう中で彼らを支えているのは、やはり大義だと思います。その大義は何かというと、やはり、復興させてやろう、新しい川内村をつくろう、そういう大義、使命感だというふうに思います。

 ただ、時間の経過とともに、いつまでもその緊張感は続きません。こういうストレスをどう我々がとってやるかということが、二年目、三年目の一つの課題だというふうに認識しております。

○及川参考人 及川でございます。

 南相馬市全体の医療のことを考えた場合の課題をまず最初に挙げます。

 一つは、スタッフ不足だったんですね。それも、スタッフ不足の中にこういうことが起こりました。南相馬市に、旧緊急時避難準備区域に五つの病院があったんですが、我々の病院にスタッフが集まったんですね。つまり、ほかの病院をやめて我々の病院に、具体的には看護師さんが何人か集まってきました。これ自体には行政の方からもかなりクレームがあったんですね。五つの病院があって、その中で我々の病院だけがよくなっていいのかというクレームがあったんですが、我々が答えたのはこうです。

 医療効果を考えてみてくれと。五つの水道があって、全部泥水が出ていても誰も助からない、一つの水道だけでもきれいな水を出さなければ市民は誰も助からないんだと。ですから、平時だったらそのような考えはいいんだろうけれども、緊急時には飲める水を出さなくちゃいけない、一つの病院だけでもきれいにしなくちゃいけないということで、これは御理解いただきました。

 現在の問題です。先ほども挙げましたが、病院が開いていません。一番大きなボトルネックになっているのはスタッフ、特に看護師さん、看護師不足です。これを今後どういうふうに克服していくかが大きな問題で、今後の議論にまたれるところと思います。

 以上です。

○高橋(千)委員 終わります。ありがとうございました。

【午後 宮城・岩手】

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 どなたの御意見も大変示唆に富んでおりまして、聞く方も答える方も時間が足りなくて、非常に申しわけないという思いでいっぱいですが、何とか、限られた時間、全員には多分質問できないと思いますが、端的に御答弁いただければありがたいかなと思っております。

 最初に、桑原参考人に伺いたいと思います。

 六日付の河北新報のトップ、グループ化補助金について、交付決定前の復旧費をさかのぼって補助する遡及制度が三月の七次募集で打ち切りだという記事が報道されておりました。

 私、中小企業の問題は、震災直後の国会で、これは直接支援をやるべきだと取り上げたときに、中小企業庁が、塩釜の商工会議所に何度も足を運んで、被害の実態の大変さとか、支援を何としてもしなければならないということをお答えになって、グループ補助や仮設店舗ですとか、そうしたものができてきたという経過を見てきたものですから、非常に残念に思っているわけなんですね。

 やはり、大変歓迎もされている一方で、グループの相手が当時はいなかったとか、これからという企業もたくさんいるという中で、まだまだ拡充が必要ではないかなと思っていますが、御意見を伺いたいと思います。

○桑原参考人 今先生がおっしゃるとおりでございまして、ただ、今回に関しましては、国の方で一応決めておることでございまして、私たちの方から言わせてもらうと、今回は、もう既にやってしまったところはそのまま、ただ、今後やるところを補助するというのが第八次と私は承っておったわけですね。

 ですから、全然更地の状態である、例えば石巻さんとか女川さんというようなところが今後課題になってくるということだと私は承っておりますけれども、私の立場からお話をすれば、まだまだ塩釜も残されているところがございますので、そしてまた、もう既に八次に向かって立ち上げて、補助金の申請を出そうと思っている会社もございます。ですから、できればそういったところも助けていただければというのが本音でございます。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。ぜひそのことを強く求めていきたいなと思っています。

 次に、須田町長に伺いたいんですけれども、震災の年に町長に就任されて、大変な御苦労をされたと思います。また、きょうも大変具体的な提言をしていただいて、ありがたいと思っています。

 女川は、やはり震災区域とか被害率が大変高いために、土地の利用ということでは本当に苦労をされたと思うんですね。仮設住宅の三階建てというのは、見るまではちょっと想像できなかったんですが、実際見てみると非常によくできていたということもあったかなと思うんです。

 そういうふうな経験を経て、先ほど土地の権利の問題などは十分お話しされましたけれども、今後、復興公営住宅を、やはり住民が望む形で、住民主役でなるべく進めていきたいというふうに思うんですけれども、その点でのお考えをぜひ伺えればと。

○須田参考人 公営住宅の件について。

 住民が主役でというのは、どういう意味で捉えていいかちょっとわかりかねるところはあるんですが、基本的に、集合タイプかあるいは戸建てタイプか、そういう形で整備はさせていただくんですけれども、公営住宅という性格、つまり賃貸住宅という性格からいいますと、一義的には、やはり行政側、設置者側で、数であるとか、これはちゃんとニーズを伺った上で必要な分は全部きっちりやりますけれども、建設する場所ですとかタイプですとか、その辺は責任を持ってやっていく必要があると思っています。

 ただ、そこに、住民の皆さん、この地区にというようなお話で、いろいろな声はあるわけです。ただ、例えばAからEぐらいまで地区があって、ある程度まとまった一連の流れとすると、ここに希望が五戸ずつ、三戸、十戸あるからといって、そんな建設なんかできるわけはないんですよね。だから、ある程度大まかなまとまりの中での要望をきちっと伺いつつ、設定はもちろんさせていただくつもりであります。

 これも、あとは建築、時間の問題がありますので、その土地がいつ造成が完了するかというのが、どういうふうな形で対応していくかというところをかなり左右することになっていきますので、まずは面的整備を一日も早く完了箇所をふやしていくということが、その先につながる部分にもなっていくかなというふうに思っております。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 先ほど、仮設住宅の今後の整備をするとしたら、あと三坪あればということを町長さんはおっしゃいました。公営住宅も、間取りとか、ある程度は自治体に裁量が任せられているということで、やはりその地域の住民の要望を踏まえてやるべきではないかということを実は本委員会で取り上げたことがございまして、そうした点で、今課題となっている、先ほど町長がおっしゃったことを、これからの公営住宅の中にぜひ生かしていただければなと思って質問させていただきました。ありがとうございました。

 次に、水産特区の問題について、須能参考人と綱島参考人に伺いたいなと思っています。

 須能さんがおっしゃったように、漁協の独占について、言葉の暴力という指摘がありました。私も本当にそう思っているんですね。なぜそうなっているかということの歴史的な経過がちゃんとあって、資源管理や浜の秩序のために必要なものなんだということがあったと思うんですね。

 その上で、三月から、実際には合同会社は漁協に加盟してカキ漁を始めている。なので、本当は現行制度でもそんなにそごはないんじゃないかと率直に思うんですね。必要性はないんじゃないかと思うので、その辺のことをぜひお話しいただければと思うのと、綱島さんからは、プロセスの不透明さの問題のお話がありました。これはやはりトップダウンということで、いきなり、最初から漁協が反対していたのに、最後まで意見が聞いてもらえなかったというふうなことがあると思うんですね。

 でも、綱島さん自身は、漁協の皆さんやいろいろな方たちの意見も聞いているし、アンケートも随分把握をされている。そういう中でやはり切実な声も出されていると思うので、そこら辺も紹介していただきながら、少し補足していただければと思います。お願いします。

○須能参考人 宮城県の漁業特区なんですが、漁業者のためといって、漁業者が反対することは漁業者のためでしょうか。結婚を勧めていながら、結婚式まで私を信用していなさいというようなことをまさしく言っているので、村井さんは、改革という名のもとに、何か第三者の力を入れて突破をしないと農業も水産も改革できないということで、最初に改革ありきで議論を進めたことに問題があると思います。

 ですから、私は、加工業界や流通業界の力をかりることは必要だと思っております。否定はしておりません。現に、西日本のマグロの蓄養などは、浜に余裕があれば、そこを大手の水産会社、商社に貸して、そのかわり、漁協が冷蔵庫なり製氷工場なりあるいは資材会社をつくって、それを利用してもらって雇用の場を確保し、漁場の面積を貸すことによって収入も得て、それこそウイン・ウインの関係でやっているわけです。

 ただ、三陸の海は、海に余裕はないんです。今まで過密状態でやっているんです。ですから、第三者が入る余裕がない。たまたま今回、被災して船がないからやれない。やる人の場合、桃浦の場合は、最初に県の方がこういう提案でやれ、やらないというものに無理無理させたような話なんです。

 ですから、漁業者が何とかして立ち上がりたい、それに皆さんの協力を得たというのであれば、誰もが納得するわけですよ。そして、特定の人だけが得られれば、もともと漁民の人たちは等しからざるを憂えているわけです。ですから、皆さん、浜全体がレベルアップすることが目的なんです。それが特定の人だけが得られるような特区制度というのは、基本的に認められないんです。ですから、私はそういうことでやってほしい。

 私は、元大洋漁業で、トロール船、それからサケ・マスの独航船に五年、最終的には四十三隻の独航船を引き連れる船団長をやりました。また、アメリカには二年駐在、ロシアには三年駐在して、一応国際の漁業も知っているつもりでおります。

 皆さん、ノルウェーだとかニュージーランドを美化しますけれども、あの国は、国で魚は食べません。消費しないから、水産業は輸出産品としている輸出産業なんです。日本は、ほとんどのものは国内消費するための、加工業界を含めた産業なんです。そういうような風土の違いを無視して、輸出産業のものを日本に持ってこようとするような、竹と木を結びつけるような話をしているんです。

 ですから、もっとじっくり時間をかけて話をすれば、いい点は我々も何ぼでも採用するべきだと思っていますし、漁協も制度疲労を起こしていることは事実です。その点については大いに反省してもらうべきものもあります。その辺をなぜかやらずに、一方的な論理だけで淘汰しようとする、やはりこれは間違いではないかな、このように私は思います。

 以上です。

○綱島参考人 二つほどお話をしたいと思います。

 一番最初は、状況判断の点で、非常に、特区の導入という議論が漁民に大きな精神的な打撃を与えたということが大きいと思います。

 一つは、岩手県知事は、百十一の港全てを復興しますということを明言されました。そのときに、宮城県の場合には、水産復興特区によって民間を導入することによって復興するんだということと、拠点の漁業構想ということを言ってしまいました。宮城の場合には百四十二の浜があるわけです。ですから、それを統括している県漁協としてみれば、みんなの、その百四十二の港の浜の漁民全体の気持ちを考えたときに、これは反対せざるを得ないという状況で、ですから、その一言が混乱のもとになってきたということになっております。

 ですから、先ほど、平時のときに議論すべきだというのは、そういう意味で申し上げました。ですから、そういう点で大事だと。

 それからもう一つは、特に特区ということでいきますと、仙台水産という会社はもともと大手の卸でして、浜の漁民とは非常に大きくかかわっていて、いろいろな海産物を市場に出している大きな会社です。そしてまた、実際、被災時にも支援をしていたところなんですね。

 ですから、御本人は、お会いしたときには、ある面では漁業権には関係なく、漁業の振興のために我々は頑張っているんだということをおっしゃっていたということもありますので、そういう意味では、昨年の十一月の末に合同会社として漁協に入っていただきました。入っていただいたという言い方はおかしいですが、入った選択をしたわけですね。ですから、漁協の組合員として動いていたわけですから、その時点で、いわゆる特区を申請する理由はなくなったのではないかというふうに私自身は思っています。

 ところが、その中でやはり問題になってきましたのは、先ほど制度疲労を起こしているというふうに須能さんがおっしゃいましたように、確かに漁協の方にも問題があります。共販制度の問題が大きく仙台水産の仕事を妨げるというようなことにもなりますので、そこで話し合いをしていた最中なんですね。

 していた最中に特区を申請してしまったということで、その話し合いもできなくなってしまったということで、そういう意味ではかなり無理な状況に置かれているということで、今現在、私たちはそういう意味では大人の解決策という議論を非常に大事にして、ああ、僕もそう思っているなということで、先ほど申し上げた次第です。

 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 多分、みんなが浜を何とかしたいと思っているんだから、できることがもっとあるのではないかということを、お二人の御意見を伺って改めて思いました。

 須能参考人にもう一問伺いたいんですが、水産業とTPPの問題について。

 農産品に比べて、水産関係は関税率も低くて、既に十分に開放されている、だから余り影響がないんじゃないかという議論もあるんですよね。でも、本当はそうじゃない。単なる関税の問題だけではない、表示から、各種補助金から、さまざまな問題があってのやはり影響なんだということであると思うんですが、ぜひ御意見を伺いたい。

○須能参考人 私、先ほども述べましたけれども、それぞれの国には国の事情がある。そういう中で、少なくとも食料といいますか自然環境、こういうものを大事にしなくちゃいけないと思います。ですから、お金の勘定じゃなくて、心の感情を大事にする国になってもらいたい。そのためには、自然産業である水産業、農業、林業、畜産業を大事にしてもらいたい。

 現実に、木材の自由化をした結果、日本の山は死んでしまったわけです。その結果、大雨で山が崩れる、こういうことがもう各地で起きているわけです。こういうことがわかっていながら、なぜやるのか。私は、関税の問題とはそういうものじゃなくて、守らなきゃいけないものを存在する産業として置かなきゃいけないんだ、そういう認識でやるべきだということで、水産の問題も含めて自然産業を大事にする、そういう立場から、TPPについて基本的に懐疑的に考えております。

 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。

 もっともっと伺いたいことがあったんですが、時間ですので終わります。

 きょうは本当にありがとうございました。



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