2013.4.19(金) 厚生労働委員会


183-衆-厚生労働委員会-9号 平成25年04月19日

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。よろしくお願いいたします。

 協会けんぽの質問でございますので、最初に、先ほどの午前の質疑でもいろいろな議論がされていたんですけれども、そもそも論で少し確認をしたいなと思うんです。

 全国健康保険協会が設立されたのは平成二十年、二〇〇八年の十月でした。それまでは政管健保だったわけであります。協会けんぽに移行するに当たっての政府側の説明は、被用者保険の最後の受け皿であることを踏まえ、準備金の積み立てや、保険料率に関する必要な国の関与、保険料率の上下限の見直しなど、必要な措置を講ずるとされていました。ですから、被用者保険の最後の受け皿ということを明記されていたのかと思うんですね。

 そのもともとの、政管健保そのものでいうと、大正十一年までさかのぼるわけでありますけれども、この出発点について、政府管掌健康保険の設立の経緯とその意義について、また、その意義が、協会けんぽにかわっても国が関与するという点では引き継がれていると思うんですけれども、見解を伺いたいと思います。

○秋葉副大臣 お答え申し上げます。

 政管健保は、今委員からも御紹介ございましたとおり、健康保険法が制定されました大正十一年当時に設立されたものでございます。

 そのときの背景や理由といたしましては、当時の我が国は自治組織の実績がほとんどなくて、保険制度の経験も乏しかったという事情がございまして、労使が合意をした上で健保組合が設立できない場合もあると考えられたために、健康保険制度の安定的な運営を図る観点から、その受け皿として、補完的に政府が保険者となり、政管健保を設立したといういきさつ、経緯がございます。

 また、協会けんぽは、平成二十年の十月に、国から切り離した全国単位の公法人として設立をされました。健康保険法上、健康保険組合に加入することができない者は、被用者保険の最後の受け皿としての機能を持っている協会けんぽに加入することとなるわけでございます。このため、協会けんぽは、健保組合とは異なりまして、解散が原則としては認められておらず、より適切な運営を確保する必要がございます。

 こうした観点から、国では、理事長や監事の任命、役員の解任ができること、あるいは毎年度の事業計画を認可することなど、健保組合と比較いたしまして、協会けんぽに対する監督や規制を強化しているところでございます。

 以上です。

○高橋(千)委員 今、経緯を説明いただいて、とても長い歴史を一言で言うのは大変なことだと思うんですが、補完的という表現を使われたかなと思っています。

 明治の十年代から医療保険の考え方が紹介されてきて、経済の急激な膨張や近代化の中で、一部の民間大企業から共済組合という形で保険の形ができていったと聞いております。大正十一年に健康保険法が制定されるに及んで、初めて社会保険の名に値する制度が発足したのである、これは、一九七五年版の厚生白書にこのような経緯が書いてありました。

 ですから、社会保険と社会保障ということがまだ整理されていないときに、企業同士が共済組合という形をして、ただ、それだけではなかなかということで、補完的なという表現をされたんだと思うんですけれども。ただ、当時の政府の提案理由は、労働者の生活上の不安を除去し、労働能率の増進を図るとともに、国家産業の健全な発展を期そうとするものであったと。ですから、やはり、国としてどういうふうに向かっていくのかという思想があったと思うんです。

 そのことをもう少し議論してみたいなと思うんですが、我が国で最初の厚生白書は、昭和三十一年でありました、一九五六年。このときに、戦後の社会保障制度の普及、医学や公衆衛生の進歩によって、平均寿命がすごく改善されてきた、驚異に値するという表現を使っているんですね。まさにそうだと思うんです。

 そのときの指摘が、国民の上位あるいは中位の階層に属する人々の生活が着実に向上しつつある反面において、一部の下位の所得階層に属する人々の生活が停滞し、次第に復興の背後に取り残され、それによって、国民生活の上下の開きが次第に拡大しつつあるという傾向にあると指摘をしているんですね。何かこれは、今読んでも余りおかしくないな、違和感がないなというふうに思える文章ではないでしょうか。

 実は、そこで指摘されているのは、製造業の規模別賃金格差、これは、大企業五百人以上を一〇〇とした場合に、百人以上五百人未満の企業は八四である、百人未満は六七である、こういうふうに比較をして、やはり規模格差が非常にあるので、そこを何とかしようという問題意識。それと、二千九百万人の未保険、未適用が解決していない、これが非常に重要だということが指摘をされて、その後、五年後に皆保険、皆年金の制度ができていくという契機になったのではないかなと思うんですね。

 ですから、きょうも午前から、健保組合と協会けんぽの力の差の話が随分されているわけですが、今もやはり企業の規模別における労働者の賃金格差という背景があって、皆保険、国民年金の必要性、国が関与する上でのその必要性というのが強調されてきたという背景があったと思うんですが、その認識について大臣に伺いたいと思います。

○田村国務大臣 今委員から御説明いただいて、大変勉強になりました。ありがとうございます。

 やはり政管健保というものは、中小零細中心の、そういうような保険でございます。大企業中心の健保組合等々と比べると、報酬の格差というのは当然あるわけでありまして、そのような中において、医療保険というものをしっかりと持続可能なものにしていこうというお話の中においては、やはり委員おっしゃられるとおり、政府が一定の関与をしていかなければならないということでございます。

 事実、今言われた昭和三十一年、このときに、国庫補助の基準、規定を置いておるわけですね。この規定を置いて、このときから国庫補助をしておるわけでありますけれども、正直、昭和四十八年度から、それまでは、そのときの財政状況で国庫補助が違ってきたわけでありますけれども、四十八年からは、〇・一%保険料が上がったら〇・八%国庫補助率を上げる、こういうような仕組みで国庫補助は上がってきた。

 ただ、一方で、昭和五十六年になりまして、一六・四%になったころに、ここで一六・四から二〇%の範囲内でというような形になって、それ以降、一六・四で来たわけでありますが、財政がだんだんよくなってきて、積み立てというような形でお金が大分余裕ができてきたものでありますから、平成四年に一三%へと引き下げた後に、今のような状況になってきておるということでございます。

 後段の部分は別にいたしまして、前段の部分は、まさに委員がおっしゃられますとおり、非常に報酬的な格差がある中において、国が一定の関与をしながら、最終的には国民皆保険制度の一翼を担っているという中において、この政管健保、今の協会けんぽでありますけれども、大きな役割を果たしておるというふうに認識をいたしております。

○高橋(千)委員 丁寧な御答弁をありがとうございました。

 確かに、創設当初は、政管といっても別に国庫負担があったわけではなくて、予算の範囲内で事務費を維持していただけだ、でも、やはり保険料が上がるに従って、それに合わせて国庫の負担をふやしていた、そういう位置づけでやってきたものが、また予算の都合によって抑制されてきた。

 そういう意味では、一六・四%に戻したんだからと、一言、先読みをして答弁をされたのかなという気がするけれども、現在、協会けんぽ加入の事業所の規模は、百人未満が九八%弱で、四分の三以上が九人以下という、まさに中小零細中心の保険となっております。

 それで、さっきおっしゃった報酬を比べてみると、百八十三万円、平均で差がついている。そうすると、健保一〇〇に対して六六・九なんですね。だから、さっき言った、百人未満は一〇〇に対して六七だった。それで、同じ数字になっちゃう。今、何十年もたって、また六七。だけれども、本当は、ずっとそうじゃないんですよね。差が縮まっていた時期もあって、差が、八割くらいまで持ち直していたんですけれども、また開いてきた。ボーナスも入れるとかなり格差が開いたということがあったわけですので、やはり、これでは、協会けんぽが主張しているように、収入が低い者ほど高率の負担を強いられるという逆進性が際立ってしまうという点でははっきりしているのではないか。

 それで、もう答えたつもりでいると思いますが、改めて伺いたいと思うんですが、国庫負担本則、上限二〇%にするべきだ、これは自民党さんも野党時代に修正案として出していらっしゃったわけですし、高齢者医療の支援金との相殺で、結局肩がわりという形もやめるべきではないか。お願いします。

○田村国務大臣 平成二十二年、リーマン・ショックの後、非常に厳しい状況になった中において、先ほども申し上げました、国庫補助負担率一三%から一六・四%に引き上げた、引き上げたというか、戻したですね、これは。本則の下限に戻したという話なんですけれども、同時に、健保組合等々、総報酬割を三分の一導入するという形で三年間やってまいりまして、今般、その期限が来ましたので、さらに、今国会におきまして、この法律の中において、二年間それを延長させていただきたいというお願いを今させていただいているわけであります。

 ちなみに、これで何とか二年間は、協会けんぽの保険料率一〇%、一〇%が高いというお声もあるわけでありますから、それは胸を張って言うわけでもないんですけれども、何とか一〇%は二年間は維持できるということでございまして、百六十万事業所、三千五百万人の方々が何とか今の状況を維持できるということを担保するための法律でございます。

 ただ、では、二年後どうなるんだというお話の中において、二〇%、上限までこの国庫負担率を引き上げればいいではないかというような今御提案であられたというふうに思います。

 午前中もお話ししましたけれども、やはり保険者は非常に厳しい。これは協会けんぽだけではなくて、実は健保組合の方も決して楽な状況ではないということはもう十分に委員御承知のとおりだと思いますけれども、これはやはり、高齢者医療に対する拠出金が非常に厳しくなってきておるという状況の中での話であります。

 そういう意味からいたしますと、高齢者医療制度、これは後期も前期も含めてでありますけれども、これをどう考えていくんだということも実は大きな課題でありまして、これと当然リンクをしてくるわけであります。公費をどこにどう入れていくか、これはなかなかここで一言で言えるような話ではございませんでして、これは今、国民会議の方でもいろいろな御議論を始めていただいておりますので、御議論の結果を見据えながら、どういう形がいいのか検討をさせていただきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 この問題はあと指摘にとどめたいと思うんですけれども、今おっしゃったように、健保組合も大変厳しい。四年間で七十五の組合が解散をしています。解散すると、結局、協会けんぽに入るわけで、協会けんぽは解散できないからとさっき副大臣がおっしゃったように、やはり最後の下支えになっているわけですよね。そこがもう大変だという話になっている。

 それで、その根っこにあるのは高齢者医療の負担金なんだから、そこがなかなか解決しないんだとおっしゃるんだろうけれども、ただ、これについては、結局、もともと老人医療の制度でも負担金という仕組みはあったわけですから、それをあえてはっきりと見えるようにして、ここは高齢者の分の現役世代からの持ち出しよというのを見えるようにするのが狙いだったんでしょう。それによって、何だか高齢者の皆さんに大変済まないというような思いをさせ、かつ、高齢者医療にお金がかかり過ぎるから、何とか医療の適正化ができないかという議論をしてきたのがこれまでの経緯だったということで、見えるようになっただけであって負担が激しくふえたわけではないということを一言指摘しておきたいと思います。

 そこで、これもまた答えが同じなのかなと思いますが、もう一言言っておきたいのは、協会けんぽに移行した際に、政管健保のときは当然統一だった保険料が、都道府県ごとの保険料率に変えられました。

 今回、平均一〇%を据え置きたいということでやるわけですから、この際ですから、全国の格差もなくしていくように検討するべきではないでしょうか。

○田村国務大臣 もう先ほども実は申し上げたんですけれども、確かに、前段の長寿医療保険制度、後期高齢者医療保険制度、これは確かに目測を誤ったところはあります。

 ただ、それは、制度設計自体ということよりも、やはり所得が伸びない、標準報酬月額が余りにも伸びない、それどころか下がっておるというような経済状況まで見越せなかった、もっと言いますと、そういう経済状況をつくり得なかった、そういう我々の反省があるということでございまして、制度としてこれからどうしていくか、もちろん、悪い部分は直していきますけれども、基本は、今の設計の中で持続可能性というものを何とか模索してまいりたいというふうに思っております。

 さて、後段の部分でございます。

 これも午前中申し上げたんですけれども、一定の幅の中ででありますけれども、それぞれの県単位の中で今料率を決めておるわけであります。やはりこれは、医療費の適正化、また、適正化するための予防でありますとか保健事業、こういうものに関して、それなりの御努力をいただくということは私は大事なんだと思います。

 それによって、健康で、本当に被保険者の方々が日々の生活、QOLを高めていくというような意味では大変意味がある話でありますし、結果、保険料を適正化できるわけでありますから、それによって料率が若干なりとも下がる、また上がらないというようなことになれば、それはインセンティブになるのではないかな。

 ただ、一方で、賃金でありますとか年齢でこれが影響が出てくるといけませんので、この部分を排除して、純粋に医療費というような側面にやはり光を当てながら、このような形での、保険者間での一定の、保険者間といいますか県単位での一定の差といいますか、結果に対する、結果といいますか、そういうものをつくって頑張っていただきたいという思いの中での制度であるということを御理解いただければありがたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 県単位で努力をする、いい意味での、予防ですとか健診をうんとやっていくというのは大事なことで、それはもちろん否定するものではありません。これはもう何度も私議論していますけれども。

 ただ、事業所というのは残念ながら県単位ではなかなかないので、同じ事業所でありながら県をまたいでいて差が出ている、そこにいろいろなどうこうがつきますから、やはりこれは余りいい考え方ではないであろう。しかも、そんなに大きな差でもないですので、むしろ、この際戻していく方がいいのではないか。医療費を努力で減らしていく、予防とか、そういう問題は切り離していくというのがやはり大事だ。

 つまり、努力とまた別の問題もありますから、例えば医療資源ですとか。そういう別の問題もありますので、やはりそこはちょっと一致ができないということを指摘していきたいと思います。

 そこで、きょうは国土交通省に来ていただいております。厚労省とも密接な関係がある課題ですので。

 建設産業、これは二〇一〇年の国勢調査で、十年前と比較して、十五歳から二十九歳の就業者は半分以下になっています。技術や技能の継承が次世代にできない、非常に深刻な事態だと思っています。

 そうした中で、全産業に比較しても、とりわけ社会保険未加入の事業所が多いということが問題となって、関係者で協議会を持って対策をとっておられると聞いています。

 その申し合わせ事項について、一枚目に資料としてつけておきました。昨年の五月二十九日に、社会保険未加入対策推進協議会の申し合わせというのがあったということです。

 それで、まず実態、建設業界の未加入の実態、元請、下請など別に示していただきたいのと、どのような未加入対策を行うのか、ポイントについて伺いたいと思います。

○日原政府参考人 お答えいたします。

 まず、未加入の状況でございます。

 まず、他産業における社会保険の加入状況につきましては、各種調査からの推計となりますけれども、例えば平成二十三年度時点の製造業における加入状況は、雇用保険が八八・二%、年金保険が八八・一%というふうに推計してございます。

 一方で、建設関係でございますけれども、これは、年金、医療、雇用という三保険について、いずれも加入しているという建設労働者の割合についてでございます。平成二十三年に国土交通省と農林水産省で公共工事を対象として調査を行ったものがございまして、それによりますと、元請、要するに公共事業発注を直接受けている事業者なんですけれども、これが七八%、それから一次の下請が五五%、二次の下請が四四%、三次以下が四四%となっておりまして、他産業と比較して低い加入状況となっているというふうに認識してございます。

 また、委員御指摘のとおり、建設業において現場の技能労働者の高齢化、若年労働者の不足が大きな課題となっております。若年労働者の入職が進まない原因の一つに社会保険未加入の問題があるというふうに考えてございまして、このために、元請団体、下請団体、労働者団体から成る社会保険未加入対策推進協議会というものを設立する、これは今委員から御指摘いただいたとおりでございます。

 この中で情報共有や意見交換を行いながら、特に、今まで、社会保険がどれだけの額というものが、お互いなかなか明示されていない状況がございましたので、標準見積書というものを今作成しておりまして、そういったものを活用して法定福利費の内訳明示というものを推進していくということで、そういったものを示しながら、きちんとお金が流れていく仕組みをつくろうとしているところでございます。

 また、国交省におきましても、昨年の十一月から、建設業の許可及び更新時、それから経営事項審査の際に社会保険等の加入状況を確認いたしまして、必要に応じ指導等を行っているところでございます。

 また、社会保険の未加入対策を進めるためには、そもそも法定福利費がきちんと支払われるということが重要であるというふうに考えまして、三月末に公共工事の設計労務単価というものを決定させていただいたところでございますけれども、その際には、必要な法定福利費相当額というものを反映させていただいたところでございます。

 こうした取り組みを推進しながら、今後とも社会保険未加入対策に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 やはり下請企業が未加入の実態が非常に深刻であるということが示されたと思うんですね。全産業の半分である。四四%というのが二次、三次の実態なわけで、その中で、やはり、自分たちが法定福利費を明示しても、これだけ必要なんだといっても、それが来るお金に入ってこなければ結局だめなんだということで、法定福利費をちゃんと確保できるようにと指導しているという今お話だったのかなと思います。

 もう一つは、下請指導ガイドラインというものを出されていますよね。これは検討会の中で出てきたわけなんですけれども、それを見ますと、未適用企業はいずれ排除する、現場には出さないというふうなことが書かれているわけです。そこがばあんと前に出ちゃうと、これは困ったな、いろいろな事情があるのに、排除が前に出ちゃうと困っちゃうなと思うんですが、そこら辺、事実関係をお願いいたします。

○日原政府参考人 お答えいたします。

 申し合わせの中におきましては、五年後を目途に現場から未加入というものをなくそうという目標で進めておりますけれども、慎重に進めているという状況でございます。

 先ほど、許可及び経審におきまして未加入企業につきましても指導等を進めているというふうに申し上げましたけれども、今までこういう状況になってきておりますので、一気に、急激なことで混乱を起こさないように、注意しながら進めているところでございます。

○高橋(千)委員 では、この問題について、厚労省としての取り組みをお願いします。

○秋葉副大臣 厚生労働省といたしましては、関係の情報を適切に頂戴いたしながら、昨年の十一月からでございますけれども、建設業者の厚生年金等の未加入問題への対策を進めるために、地方整備局等から日本年金機構に対しまして未加入業者の情報を通報する制度を構築したところでございます。

 通報のあった建設業者につきましては、速やかに、一つは、年金事務所への呼び出しや戸別訪問による重点的な加入指導を順次実施させていただいているところでございます。それでもなお適用届を提出しない業者に対しましては、立入検査を実施することといたしております。

 今後とも、国土交通省と十分連携を図りながら、建設業界における未加入対策を推進してまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 最後は職権適用ということができますので、大変厳しい措置になるかなと思うんですね。つまり、未加入の実態がある、そうすると、要するに適用の事業所になる、すると即未払いになっちゃいますからね、黙っていると。そういう権限を持っているので、本当に、排除ではなく、あるいは一方的な差し押さえとかそういう方に行くのではなく、やはりそこをどう救済するかという議論を進めていく必要があるのではないか。

 それで、社会保険の加入を進めることは、労働者を守ることであり、絶対必要だと思っています、もちろんです。ただ、現場では既に、大手ゼネコンなどが下請業者に対し、社会保険に加入していないと仕事はさせない、こういう対応をしているということも聞こえております。

 ですから、社会保険未加入となっている原因を見ないで、工事現場から排除ということが先に行きますと、反省して、未加入を是正します、加入しますというふうにいけばいいんだけれども、全然違う形の解決になっている。というのは、従業員を、雇用という形から、一人一人と請負契約を結ぶ労働者、一人親方が進んじゃう。だから、実態は労働者なのに労働者ではなくなる、これは幾ら何でもまずいのではないか。

 資料の二枚目に、労働の形態に応じて社会保険がどうなっているかというふうなことの表があるんですけれども、一番下です、一人親方は何にもありません。労災は特別加入もありますけれども、要するに全部自分がやらなければならないということ、労働者であって労働者の権利を得られない、こういう実態。

 みずから望んでなる場合ではなくて、そうではなくてこういう一人親方にさせられてしまうというのはやはり問題だと思うんですが、大臣、この点、認識していただけるでしょうか。

○田村国務大臣 労災保険は、事業主の責任において労働者のために保険を掛けるわけでありますから、そういう意味では、一人親方といえども事業主性があれば、それが労災保険の適用にはどうしたってならないわけであります。ただ、そうはいいながら、やはりその立場というのは非常に不安定であるということは委員がおっしゃられますとおりでありますので、特別加入というような形で労災保険に加入ができるという仕組みになっております。

 ただ、一方で、形上は一人親方のように見えて、実際はそこは労働者性があるというふうに現実として見られるものに関しては、これはよく取締役なんかも労災保険に入れないんですけれども、しかし一方で、これも労働者性があるというふうに認められた場合には、これは労災保険に加入が認められているわけでございますので、そこの現実的な部分というものをしっかりと見た上で最終的には判断をさせていただくということになろうというふうに思います。

○高橋(千)委員 しっかり見た上でという答弁をいただいたと思います。

 これは実は、さっき紹介した下請指導ガイドラインの中にも、「労働者であるにもかかわらず社会保険の適用除外者である個人事業主として作業員名簿に記載する」、こういう実態があると。ですから、国交省だって実態をわかっているわけですよね。ですから、それをそのままにして、ただ未適だからだめよということではやはり済まないんだということをぜひ指摘させていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと局長に事務的に伺いたいんですけれども、法人化した事業所が現に国保組合の被保険者である場合などは、二〇〇五年に国保課長通知が出ていて、健康保険適用除外ということがあると聞いています。

 例えば、協会けんぽに、法人だから協会けんぽの適用になるんだけれども、そこを移行しなくても国保組合に残ることは可能になっている、この趣旨を少しお話しいただきたい。

○木倉政府参考人 御指摘のように仕組みがなっておりますが、簡単に申し上げますと、法人、これは基本的に健康保険の方の適用であります。ですので、そこに勤めていらっしゃる方も健康保険の被保険者と。

 国保組合に入っていらっしゃった事業所が途中から法人になったということになりますと、本来であれば健康保険に加入すべきでありますけれども、国保組合の全体の、国保組合としての事業の継続性ということから考えますといかがなものかということで、例外的に、大臣の承認を受けて、引き続き国保組合の中にとどまれるという仕組みをとったものでございます。

 ですので、今もお声があるんですが、新しく事業を起こされた方が、法人として起こされた方が、国保組合の方に途中から参加しないというものとちょっと趣旨が違いまして、従来からいらっしゃった方がとどまれるという趣旨で、こういう仕組みをつくっているものでございます。

○高橋(千)委員 国保組合の継続性ということで、健康保険の適用除外という制度があるんだということでありました。ここを何とか少し広げられないのかなというのが、一つ、ちょっと課題としてあったんです。いきなりですのできょうはちょっと答弁が難しいだろうなということで、これは要望にとどめて、ぜひ、少し研究していただきたいということで申し述べさせていただきました。

 そこで、さっきから議論しているように、法人になると適用になっちゃう、協会けんぽに入るのが絶対ですよという話なんですが、資料の三枚目を見ていただくと、一人親方が、これは労災の特別加入で数字を拾っておりますので、二〇〇一年から二〇一〇年までに大きくふえているというのがおわかりだと思います。十四万人以上ふえていますよね。

 それで、真ん中なんです、問題は。従事者が一人の法人事業所、一人親方なんだけれども法人になっている。これが、二〇〇六年、一万三千四百五十六社から、二〇〇九年、二万八千六百三十一社ということで、倍以上になっております。これは何でそうなのかというのは、多分、見当がついていると思うんですけれども、〇六年、新会社法がありまして、一人でも法人というので、大幅に緩和になったわけですね。これは、一人親方に対して法人化ということでの、また、現場での大手のパワーが働いているということが指摘をされているわけなんです。

 そうすると、これはまたさっきの資料に戻ってみますと、一人親方で一人法人になっちゃうと、いよいよもって、事業主負担も全部自分で払うわけですから、本当に、実態は労働者でありながら全部自分で負担をしなければならないということで、権利を奪われてしまうわけですね。だから、これはちょっとどうなのかということになるわけです。

 ですから、みずから進んで法人化を目指すのは当然問題がないと思います。しかし、法人化じゃないと仕事がもらえないとか、仕事を干される、それしか道がないというのではなくて、やはり最初、さっき一人親方のときに大臣が答弁をされましたけれども、労働者性ということをきちんと見て指導していかなければ、そこは法人化を迫るようなことになっては違うのではないかと思いますが、もう一言いただきたいと思います。

○田村国務大臣 あくまでも労働者性というものをしっかりと確認をさせていただいた上で、労災加入になるのかどうなのかということを判断させていただくわけでありまして、外形上を見て、一人親方であるからといって、それで加入を一義的に全て断るという話ではない。

 ただ、形がそうなっておりますと、なかなかこれは見づらいのも確かでございますので、そういう意味では、やはりしっかり確認できるような、そういうような対応というものは必要になってこようというふうに思います。

○高橋(千)委員 これはやはり法人になっちゃいますと、経過がどうであれ、結局、法人なんだから適用でしょうということになっちゃって、さっき言ったように、いずれ五年後には現場に出られなくなっちゃうし、あるいは、職権での厳しい徴収もあるということになっていきますから、そうではなくて、やはり法人化ということの、されている実態というか、なぜそうなっているのかという、なぜ一人親方であり一人法人になっちゃったのかということもよく見ていただいて、それはちょっと関係省庁ともぜひ協力をしていただいて、検討していただきたいと思います。

 それで、こうした問題を解決する上で、やはり公共工事の労務単価が非常に下がってきたということが背景にあると思うんですけれども、二〇一〇年、千葉県野田市で最初につくられた公契約条例、これが、現在、東京、神奈川など七市に広がっています。低入札が広がり、労働者の賃金低下が問題となっている中で、適正な労働条件を確保しようと。

 野田市の公契約条例第六条には、適用労働者に対し、市長が別に定める一時間当たりの賃金等の最低額以上の賃金等を払わなくてはならないと明記をしています。これを担保するための、受注者による労働者への周知義務とか連帯責任、是正措置などを定めております。

 現在、公契約条例制定を求める意見書は二十四県七百五十四市町村、検討とか同趣旨を入れますと三十五都府県八百六十七市町村で採択ということで、大変広がっています。ぜひこれを国としてもやるべきだと思います。

 最後に大臣に伺いますけれども、先に国交省として、入札制度の改革などをさまざまやってこられたと思います。そういう中で、やはり建設労働者の労働条件の確保や雇用の安定のために公契約条例をつくるという自治体がふえていることについて、当然、公共工事が労働条件が確保されることによって、民間の契約にもやはり影響があるわけですよね。そういう意味でも非常に大きな意味があると思うんですが、その認識についてぜひ伺いたいと思います。

○日原政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体におきまして公契約条例がつくられているという実態については承知しております。ただ、具体的にそれについてコメントする立場にございませんが、基本的に、労働者に対しましてきちんと適正な賃金が支払われるということは大変重要であるというふうに認識しております。

 先ほども御答弁させていただきましたが、将来の担い手の確保、育成というものは大変喫緊な課題というふうに認識しております。

 そのため、先ほど労務単価のお話をいたしましたけれども、これがきちんと支払われるようにということで、単価の発表と同日付で、建設業者団体に対しまして、技能労働者への適切な水準の賃金の支払い、社会保険等への加入の徹底、若年労働者の積極的な確保、ダンピング受注の排除ということを要請させていただいたところでございます。

 また、昨日には、大臣から直接、団体の代表に対しまして、これらのことについて再度要請をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。かなり条件整備はできてきたのではないかと思うんですね。

 それで、最後に大臣に伺いたいんですが、公契約法は、一九四九年、ILO条約第九十四号、それと勧告八十四号がございます。ことし一月現在、六十二カ国が批准しているものの、まだ日本は批准をしていません。

 歴史的には、労働省だったときに、一九五〇年に法律案を一度つくっているんですよね、ILO条約に則して。そうしたら、経済界からの強い反発を受けて、提出まで至らなかったという経過がございます。

 しかし、もうかなりの条件整備が、今、国交省の答弁もそうだったと思うんですが、できております。また、地方の動きもあります。公契約をぜひやるべきだと思いますが、大臣にお願いします。

○田村国務大臣 ここ十数年来の設計労務単価の下がり方といったら、ひどいものがございまして、若干、今、大震災の後の復興需要等々で、地域的に引き上がってきているところがあるのは事実でありますけれども、そもそも、もう今から十数年前、二十年近く前になるでありましょうか、入札制度改革の中において、一般競争入札を中心にいろいろな制度改革が行われました。結果的にデフレスパイラルの片棒を担いだみたいなところがあると私は思っております。

 そういう意味からいたしますと、適正な価格でちゃんとした発注をする責任が私は発注者にはあるというふうに思っておりますが、ただ、一方で、その賃金というものは、これは労働契約でございますから、事業主と労働者との間で決まってくるわけでございまして、もちろん、一定の価格で発注ができれば、また受注ができれば、当然のごとく、それは労働者の賃金にも影響してくるわけでありますけれども、それが即比例してというわけではないというのも事実でございます。

 ですから、そういうようなところ、我々厚生労働省としてはどういうやり方で労働者の方々の賃金の水準というものを上げていくことができるのか、そんなことも考えながら、この公契約制度というものを見守ってまいりたいな、このように思っております。

○高橋(千)委員 だから、多分、公契約なんだと思うんですね。

 賃金は確かに契約だからなかなか決められない。だけれども、公共事業は公がやる契約でございますから、やはりそこで、労働者の適切な労働条件や、それから労働基準法、憲法に則した人間らしい労働生活を守ろうという立場での価格の設定というものがあって、そこから発してくるわけですから、そこに一定のルール、あるいは発注者の意思を込めていくことが全体の底上げに絶対つながるであろう、そういうことで、各自治体でも取り組みが広がっていますので、ぜひ前向きに検討されて、早く実現をしていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。



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