2012.6.19(火) 東日本大震災復興特別委員会


180-衆-東日本大震災復興特別委…-7号 平成24年06月19日

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、法案をまとめていただきました関係議員の皆さんに心から感謝と敬意を申し上げたいと思います。本当に、立法者の意思が現実のものとなって生きるように、その気持ちで質問をしたいと思いますし、今後も取り組んでいきたい、このように思っております。

 最初の質問は、先ほど高木委員の質問の中でお答えになっていたのかと思うんですけれども、改めて確認をしたいと思います。

 といいますのは、本法案の主務大臣が誰かということです。明記をしていないわけですね。そして、中身が、いろいろなものが盛り込まれておりますので、関係省庁はいろいろあるだろう。しかし、責任のなすりつけ合いになっては困りますので、最終的には、先ほどの答弁からいうと、復興大臣ということでよろしいのかということを改めてまず提案者に確認いたします。

○金子(恵)参議院議員 高橋千鶴子委員には、私と同じ東北の出身ということでございますけれども、被災者の皆様に寄り添った形で活動していただいておりますことに感謝申し上げたいと思います。

 今の質問にお答えいたします。

 まず、基本方針の案の取りまとめにつきましては復興庁で行い、個別の施策につきましては当該施策を所掌する省庁が所管することを考えております。

 例えば、六条に定める放射性物質による汚染の状況についての調査等につきましては文部科学省が、そして七条に定める除染の継続的かつ迅速な実施につきましては環境省が、第九条そして十条に定める住居の確保に関する施策につきましては国土交通省が、同じく九条、十条に定める就業の支援に関する施策につきましては厚生労働省が、そして二条のいわれなき差別が生じないための配慮や第十八条に定める放射線と被災者生活支援施策に関する国民の理解を深める施策については文部科学省や法務省人権擁護局が所管するといったことを考えております。

 なお、提案者としましては、この法案が成立した暁には、各省庁において具体的な施策が適切に行われるよう国会がしっかりとチェックをしていくことにより、法律の実効性を高めていくことが重要であるというふうに考えているところでございます。

○高橋(千)委員 まず、基本方針は復興庁がまとめるということは確認をしたわけですけれども、諸施策を関係省庁が担当するのはいいんです。ただ、最終的な責任、つまり、基本方針がその後いろいろな省庁にまたがってどうなっていくのかということをチェックしたり進言したりしなければならない。復興庁をつくるときに、復興大臣というのはそういう位置づけで、大臣と横並びではないという位置づけでつくったはずであります。

 そういうことも含めまして、平野大臣に確認をしたいと思います。

○平野(達)国務大臣 法案が成立いたしましたら、今委員の言った方向で、ぜひ復興庁、役割を果たしたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 確認をさせていただきました。ただし、復興庁は十年の期限がついておりますので、終わった後も引き継がれていくのだということは確認をしたいなと思います。

 次に伺いたいのは、本法案で言う被災者とはどのような人をいうのかということであります。

 先ほど吉野委員から、福島という言葉をあえて入れなかったんだということがありました。私は、その心情はよく理解できます。そして、参議院の議論を聞いておりますと、避難の権利ですとか帰還をしたい人たちの支援ですとか、あるいはいわれなき差別の問題、まさに福島の皆さんに寄り添ってつくっているんだなというふうに思いました。

 ただ、この法案そのものは、やはり、出発点からいいますと、子供だけでなく大人もそうである、あるいは福島県だけではなく福島県の外の方も想定しているというふうに思いますけれども、確認をさせてください。

○金子(恵)参議院議員 被災者につきましては、法案の第一条において「一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者」をいうこととされております。

 この被災者の範囲ですが、これまで施策が講ぜられてきた避難を余儀なくされた者よりも大幅に拡大することとなります。福島県外に居住している者や大人であっても、一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住している、または居住していたことがあれば、被災者となっていくこととなります。

 また、移動や帰還に係る施策につきましては、福島県の被災者のみを想定しているのではなく、支援対象地域から移動する者または支援対象地域に帰還する者を対象とするため、福島県以外の地域であっても、支援対象地域に設定されていれば、移動や帰還に係る施策が講ぜられることとなります。

 差別につきましても、福島県の被災者だけではなく、福島県外の放射線量が高い地域に居住し、または居住していた被災者に対する差別の恐れがあります。そのため、福島県に限らず、広く支援対象地域に居住している方々、または居住していた方々に対する差別が生ずることのないような環境をつくっていく必要があるというふうに思っております。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。確認ができたと思います。

 今の一定の基準以上というのは、では、どこから基準になるのというのが非常にひっかかるところなんですけれども、これは既に参議院でも議論をしておりますので、きょうはあえて質問をしないということで、広く対象とするということで知恵を出し合っていきたいと思います。

 そこで、第三条の原子力政策を推進してきた国の責務、これが明記をされております。なぜ原子力事業者の責任については明記をされないのでしょうか。

○金子(恵)参議院議員 原子力事業者の責任につきましては、原子力損害の賠償に関する法律第三条第一項において「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。」とされているところであります。原子力事業者が第一義的に無過失責任を負うこととなっております。この法案ではこのような理解を前提としておりまして、原子力事業者が責任を負うことは当然のこととして規定しておりません。

 なお、今回の原子力事故につきましては、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられている方々の中には、東京電力による損害賠償の対象となるかどうか必ずしも明確でない方々もおいででございます。また、損害賠償の対象となる方であっても、すぐに支払い等が行われず、現に生活上の負担等を強いられている場合があります。この法案は、このような状況の中で、まずは国として国民の生命、身体及び財産を保護する必要があるとの考えに立って、必要な施策を講ずべきであることを定めております。

 なお、国の施策の対象となった被害が結果として東京電力に損害賠償を請求し得るものであった場合には、後に適切に求償が行われるべきであり、その旨は第十九条に規定しているところであります。

○高橋(千)委員 今の説明は、原賠法に書かれているから当然のことなんだという説明だったかと思います。

 福島法の最初の案が国の責任さえも入っておりませんでした、政府の案が。それに対して、幾ら何でもこれはひどいじゃないかということで意見を上げまして、最終的には同じような書きぶりで国の責任ということが明記をされたわけであります。ですから、私は、当然のことだというのをあえて書くことが大事なのではないかということをあえて言わせていただきます。

 最初に説明をされた二つ目の質問のところで、決して県内だけではなく、県外の人も含めて移動や帰還の問題がある、あるいはいわれなき差別というのはあるんだというお話がありました。

 本当にそうなんだけれども、現実はあらゆる線に線引きで、福島の皆さんや、あるいは福島のすぐお隣の皆さんが苦しい思いをしています。そのときに、なぜ自分は賠償されないのに川一つ挟んだ向こうはされるんだとか、そういう県民同士の思いがありますよね。でも、それを本当に乗り越えるためには、責任はその線引きをした人たちではなくて国であり東電なんだ、そこが本当に据わっているからこそ、福島県全員に対して謝罪をせよ、あるいは償いをせよということでこれまでオール福島の世論がつくられてきたのではなかったか。私は、そういう中での議員立法ですので、もう一声あってもよかったかなということを一つ意見として上げていきたいと思います。

 それで、第十三条に、健康影響調査あるいは医療の提供について明記をされております。また、先ほどの説明の中で、立証責任は国にあるんだという御説明もあったかと思います。ここで大人に対してはなかなか読み込めないところがあるんですけれども、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

○金子(恵)参議院議員 健康調査と医療の提供について、成人についてはどのように考えるか、大人についてはどのように考えるかというおただしでございますが、健康調査につきましては、低線量の放射線が人の健康に与える影響が科学的に十分に解明されていないということから、支援対象地域に居住し、または居住していた方、避難指示区域から避難している方々、そして、今後健康に影響が出てしまうのではないか、そういう不安を抱えていらっしゃる方々のためにしっかりと対策をしなくてはいけないというふうに思っております。

 そのため、定期的に健康状態を把握して健康管理を行うことでこのような不安を解消することが求められておりまして、また、万が一健康に影響が生じた場合にも、早期発見、早期治療ができるようにする必要があります。第十三条の第二項の前段は、このような観点から、大人か子供かを問わず、定期的な健康診断など健康への影響に関する調査について国が必要な施策を講ずることを規定しているところでございます。

 医療の提供につきましては、十三条第三項に定める医療費の減免措置を受け得る者は被災者たる子供及び妊婦としており、大人については明記しておりません。しかしながら、十三条第三項ではその他被災者への医療の提供に係る必要な施策を規定しておりまして、この規定に基づき具体的にどのような施策が講じられるべきかは、疾病の状況のほか、被災者の意見、また国民の理解が得られる形になっているかといった視点も踏まえて検討されることとなります。その検討の結果、大人についても医療費を減免する施策が講じられることもあり得るというふうに考えているところでございます。

 福島県の双葉地方、警戒区域等の自治体から、医療費負担減免の対象を大人も含めた被災者全てにすべきというような要望も出されているところではございますが、今後、しっかりとした検討をしていく必要があるというふうに考えています。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。その他のところで読んでいけるのだという御答弁だったかと思います。

 本当はこの医療の問題をもう少し質問したいと思ったんですけれども、今後、規制庁ができれば担当がそちらになるんだということで、何か今、端境期で、どうもまた責任がはっきりしなくなっちゃうなと思いまして、要望だけ平野大臣に受け取っていただきたいと思います。

 子供の場合は、今、福島県の放射線医学県民健康管理センターが警戒区域等の十八歳未満の子供の甲状腺検査をずっとやっているわけですが、五・一ミリ以上の結節や二十・一ミリ以上の嚢胞を認めたものが百八十六人、二次検査となりました。ただ、小さなしこりや嚢胞があるとされた子供が一万三千四百六十人、三五・三%にも上るんですね。だけれども、二次検査の必要はない、しこりはあるけれども検査の必要はないという言葉に、母親たちは本当に衝撃を受けております。これではどうしていいのかわからないと。

 このことは通販雑誌にも載ったわけですけれども、青森に避難されてきた福島県の親御さんが、自分の子供がどうなのかを知りたいということで、本当にこれでは不安に答えてもらえないということを言っておりましたので、説明も含めて、また継続的な検査をしていくことが必要なんだということをぜひお願いしたいと思います。

 そして、大人の場合は、今やられているのは本当に部分的な、そして外部被曝だけでありまして、九六・四%の方が五ミリシーベルト未満とあったわけですが、二十五ミリの方もいたわけで、自分たちの党の議員さんも、そういう通知をもらって衝撃を受けているということです。ただし、それは外部被曝だけですので、内部被曝自体も全くわかっていない。そういう中で、不安だけが広がっている。では、自分たちはなぜ診てくれないのか。大人は当然、行動範囲が広いですから、そこはちゃんとフォローしていかなければだめなんだということを要望しておきたいと思います。

 さて、きょうは北神政務官にも来ていただいておりますので、先ほどの関連なんですが、東電の関係で一言、簡潔にお願いいたします。

 今、宮城県などで要望が上がっているんですけれども、東電の賠償の当事者がどんなことを言っているか。原子力損害賠償支援機構を通して国民の税金による支援を今東電が受けているので、中間指針からはみ出す賠償はできない、こう言っているそうであります。これは何か逆さまじゃないか。

 今、支援機構には既に国民の税金五兆円の交付国債が入っています。それ自体、我々大問題だと思うんですが、入っているから賠償できない、それは逆じゃないですか。本当に、中間指針自体がここに書いている以外もきちんとと言っているわけですから、そのようなことは絶対言わせない、そして、しっかりと応えていくというふうな指導をしていただくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○北神大臣政務官 仮に、東電の担当者がそう言った事実があるのであれば、それは言語道断の話でありまして、厳しく指導しなければいけないというふうに思っています。

 というのは、中間指針というのは、御案内のとおり、賠償すべき損害の中で類型化が可能なものについて類型化しているだけであって、それをはみ出ているものであっても、個々の被害者の状況をちゃんと踏まえて相当因果関係範囲内で賠償するというのが我々の今までの運用でございますし、今年三月に中間指針の追補というものも公表しましたが、これにもはっきりと明記して、中間指針に載っていないものについても相当因果関係のものについてはちゃんと賠償すべきだということですので、我々は、そこは運用面でも中間指針の追補でもはっきりとそういうふうに考えておりますし、東京電力にもそのように指導をしていきたいというふうに思っています。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 中間指針を直すのが一番いいんです。それが私たちの要望です。宮城県をいわゆる風評被害の中になぜ入れないのかというのが一番の要望ですので、それは言っておきたいと思います。

 しかし、現場でこのようなことは絶対言わせない。お隣の丸森町は、本当に川を挟んですぐ隣が福島であるにもかかわらず、二十万円の見舞金を出すんだからそれで打ち切りだということを言って歩いているとか、そういうことがさまざま聞こえてくるんですね。それが皆さんの心を傷つけているということで、お願いしたいと思います。

 最後に、平野大臣に伺います。

 大臣、六月十五日の記者会見、記者さんから、今議論をしている、議員提案の子ども・被災者支援法案について質問をされたのに対して、大臣はこのように答えています。「条文を読む限り、現在行っている施策と大きな乖離があるとは考えていません。」つまり、違わないと。新しい法律をつくっても何も違わないというのであれば、これほど精力的な話し合いをして法案をつくったものを無視したことになっちゃうわけですね。

 さっき主務大臣は誰ですかという質問をいたしました。何か、第三者的な答弁をしていたようでありますが、そのような言い分はやはりちょっと適切ではないと思いますし、御自身の責任と決意を改めて約束していただきたいと思います。

○平野(達)国務大臣 福島の原発事故に関連しましては、健康管理を含め、あるいはこれから帰還者への支援を含め、それから賠償を含め、政府は今いろいろな観点から支援もしくはやらなければならないことを実施しているということです。

 先般申し上げたのは、項目を見る限り、大体、政府については各項目についての一応の施策はそろっている。しかし、きょうの議論にもございましたけれども、例えば医療費をどうするか等々の問題、これはまださまざまな議論がございます。こういった議論につきましては、今回の委員会での議論も踏まえまして、また、何といっても、引き続き福島県の状況を踏まえながら、そしてまた立法の趣旨を踏まえながら、是正すべきは是正する、追加すべきは追加する、こういう姿勢で臨んでいきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 しっかりとお願いいたします。

 またこのような機会を設けていただくよう委員長にお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。



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