2004.10.22(金) 総務委員会

公務員給与法改悪

寒冷地の生活追い打ち

高橋議員引き下げ中止を要求

日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は22日の衆院総務委員会で、寒冷地勤務の公務員に支給される寒冷地手当てを大幅に引き下げる一般職職員の給与法「改正」案について、「生計費を補てんするという趣旨に反して、生活に追い打ちをかけ、地域経済にも重大な影響を与える引き下げはすべきでない」と強調しました。

法案では、寒冷地手当て支給対象地域の四割を削減し、支給額も平均四割引き下げ。支給額は、北海道で最高九万八千三百円、青森で九万一千二百円の引き下げになります。全国三百四十四の地方議会で反対決議・意見書が上がっています。

高橋氏は、国家公務員労働組合東北ブロック協議会の調査で、七割以上が「今の手当てでは足りない」と回答していることを紹介。灯油高騰で青森で昨年と同じだけ消費すると一万円以上の負担増になるとして、生活に打撃を与える引き下げを止めるよう求めました。

政府が「民間に準拠する」としている引き下げの口実については、人事院の調査でも、寒冷地手当てを払っている事業所で、逆に公務員準拠の民間事業所が多数あることをあげ、「公務員の給与を引き下げることは逆に民間の動きに水を差すことになる」と批判しました。

麻生太郎総務相は「そうなることは否定しない」と認めながら、「範囲は限られている」と述べました。


(2004年10月23日(土)「しんぶん赤旗」より転載)


161-衆-総務委員会-2号 平成16年10月22日

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 寒冷地手当に絞って伺います。

 今回は大幅な改定で、これまで支給されてきた地域の四割強、職員数の約半数が対象外となること、対象地域でも平均四割の引き下げになるという改定であります。北海道でも最高で九万八千三百円の引き下げ、これまで北海道と同じ五級に位置づけられていた青森でいえば、最高額の比較で十八万二百円から八万九千円となり、実に九万一千二百円、五割もの削減になります。経過措置があるとはいえ、大変な打撃を受けるのは言うまでもありません。

 まず最初に伺いますが、寒冷地手当とはどういう性格の手当でありますか。確認をしたいと思います。

○佐藤政府特別補佐人 お答えいたします。

 御承知と思いますけれども、寒冷地手当は、昭和二十四年、議員立法で出された法律でございます。

 当時は経済状態が非常に悪うございまして、暖房用の燃料費、北海道でいうと石炭でございますけれども、その費用が給与に比べて大変高額である、あるいは、石炭以外にも、先ほど申し上げましたように、衣服費とか家屋に対する費用とか、そういういわゆる生計費の補てんが必要ということであったと思います。それから、当時、既に民間でも寒冷地手当を支給している実情があったものでございますから、それとの均衡を考慮して制定された手当であるというふうに認識しております。

 その後、賃金水準の上昇、それから暖房器具や住宅などの改善がございました。また、寒冷度合いの変化もあったわけでございまして、寒冷地手当をめぐる状況の変化が生じてきておるわけでございます。しかしながら、支給地域や区分など構造的な見直しにつきましては、今日に至るまで行われてこなかったわけでございます。

 そのため、先ほどもちょっとお答えいたしましたけれども、例えば東京と札幌を比較した場合、現在の生活実態あるいは実際の寒冷度と合わなくなってきたのではないか、あるいは、民間の支給状況と大きく食い違っているのではないかというような問題が生じてきたというふうに認識しております。

 したがいまして、人事院といたしましては、昨年の秋に民間におきます同種手当の支給状況を全国的に調査して正確に把握をした上で、その結果を踏まえて、民間準拠を基本にし、さらに近年の寒冷積雪の実情を考慮しながら、今回の勧告を行った次第でございます。

○高橋委員 聞いたことにだけ答えてくださいね。なぜ見直しをするのかと聞いたのではありません。性格を聞いたのであります。

 これまで言われてきたように、寒冷積雪による生計費の増嵩を補てんする制度、その趣旨は変わりないということで確認してよろしいですか。イエスかノーで答えてください。

○佐藤政府特別補佐人 生計費を補てんするという部分は、確かに現在でもあると思います。しかしながら、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたように、実際に、生計費の増嵩分を積み上げるという作業は、現在非常に困難になっているのではないかというふうに思います。

 したがいまして、職員に対しても、あるいは国民から見ても最も納得が得られるやり方として、今回は、民間準拠ということを中心に勧告させていただいた次第でございます。

○高橋委員 補てんする制度があるということは、お認めになったかと思います。その後の部分については、別に論じていきたいと思います。

 国家公務員労働組合東北ブロック協議会が、ことし二月から四月にかけて生活実態の調査を行いました。回答者千五百九十二名中、九割が世帯主、五四%が現在の五級地に勤務をしています。その中で、七割以上の方が、寒冷地手当、今の手当では足りないと答えています。だから、足りないからふやせという話ではありませんよ。それを四割も引き下げるのがどうかという問題なんです。そういう状況だということを指摘した上で、まず、今お配りした手元の資料をごらんになっていただきたいと思います。

 石油情報センターが、家庭用の灯油一世帯当たりの使用量ということで、こういう数字を出しております。北海道と青森はほとんど差がない状態だということがよくわかるのではないかと思うのです。

 その灯油が、ことしは値上がり傾向にあります。同じ石油情報センターの資料ですが、九月の灯油価格は、十八リットル当たり、北海道は税込みで九百八十一円、この価格は湾岸戦争開始直前以来の高値だと言われています。東北、関東いずれを見ても、昨年同月と比較をすると百円ほどの高値であります。仮に青森県が昨年と同じだけ灯油を消費すると計算すれば、一万円以上の負担増になります。ことしの改定は、増嵩費を補てんするどころか、さらに負担に追い打ちをかける格好になります。著しい引き下げをするべきではないと思いますが、伺います。

○山野政府参考人 灯油の値上がりの関係でございますけれども、先ほど総裁から御答弁申し上げましたように、民間準拠が基本でございますけれども、私どもでも、家計調査等に基づきまして、北海道と、寒冷地を含まない四国、九州等との燃料費等の比較をやっております。

 しかし、そういった燃料費等の生活費の比較をいたしましたところ、確かに、北海道、東北等では灯油の消費は例えば暖房費で多いわけでございますけれども、例えば本州では、灯油は少ないけれども電気代がそのかわりに大きい等々ございます。したがいまして、十月から五月の両者の全体の差額を見てみますと、二万円から四万円程度にしかならないということでございます。

 したがいまして、そうした灯油代あるいは電気代等の生計費のトータルで比較してみますと、その程度でございますので、今回の見直しにおいて準拠いたしました民間事業所の支給額は、今申し上げました二万円ないし四万円という額を上回っておりますので、民間準拠いたしましても、その部分は十分にカバーされるというふうに考えておるところでございます。

○高橋委員 今のお話は、二万円から四万円の差があって、それは民間準拠だ、その分はカバーしているということですが、今までのお話でも説明があったように、生計費の補てんというのは燃料代だけではないわけですよ。そこを随分極論しているんじゃないのかなと思うのです。でも、これは質問しません。

 大臣に伺いますが、昭和六十三年の改定は、灯油価格が下がったために加算額を三七%引き下げておりますね。そのときの附帯決議は、「寒冷地手当制度の趣旨にかんがみ、政府並びに人事院は、寒冷積雪地における公務員の生活実態に配慮し、今後における燃料価格の動向に対応して、必要に応じ寒冷地手当加算額の適切な改善を行うべきである。」としています。

 灯油価格が下がったために引き下げたときの教訓に学びますと、制度の趣旨にかんがみ、かつ燃料価格の動向を加味し、少なくとも今回は手をつけるべきではないというふうに考えるべきではないかと思いますが、大臣はどうでしょうか。

○麻生国務大臣 一缶十八リットルが、この六カ月間で見れば、大体八百円ぐらいだったものが約千円弱、二〇%ぐらい灯油価格が上がっておるという点は、もう御指摘のとおりなんだと思っております。

 ただ、寒冷地と言われる地域の生活費が、灯油の値上がりによって影響を受けるというところが問題だという点なんだと思います。それは、公務員に限らず民間も同じように影響を受けるわけであって、公務員だけが影響を受けるわけではないという点なんだと思います。

 そこで、今回の見直しは、今言われたような、北海道、青森といったような、特に寒冷地と言われる地域の職員にとっても厳しい内容であることはもう間違いないところでありますので、私どもも、給与の一つであるということを考えておりますが、傍ら、民間の支給実態からの乖離という点が御指摘のあるところでもありますので、ここのところを指示いたしまして、この法案を提出させていただくに当たっては、いわゆる経過措置、激変緩和とかいろいろな表現がありましょうが、そういったものをつけることになって、一定の配慮はされているものというように御理解をいただければと存じます。

○高橋委員 公務員だけが上がって大変なわけではないとおっしゃったわけですけれども、それは当然だと思うのですね。民間事業所だって大変だ。だったら、公務員が我慢をして民間も我慢しろ、そういう理論でいいのかということだと思うのですね。むしろ、逆ではないのかなと思うのです。

 例えば、今、最低賃金ですが、北海道は六百三十八円ですが、東北は押しなべて低いです。青森、秋田、岩手、六百六円、最悪です。一番高くても、宮城が六百十九円です。

 その宮城が、このほど最低賃金改正決定のあり方等に関する検討小委員会というのを開いて、その報告の中で、最低賃金額の推移、賃金水準、未満率、影響率等の実態と全国的な整合性を考慮して検討した結果、現状において乖離は、時間額で八円と確認するとまとめました。その乖離を一気に埋めることはできないけれども、今後八年間で解消したいということをまとめていることは大変注目すべきです。

 ことしの最低賃金が、全国四十四の審議会で引き上げ答申をした。一円か二円というわずかな額ではありますが、昨年五県だったことから見れば大変な進歩だと思います。民間において最低賃金はやはり引き上げなければいけない、そういうことが注目されているときでもあります。こういうときに、逆に公務員の給与を引き下げるということは、民間の動きに水を差すことにならないでしょうか。

○麻生国務大臣 今般の寒冷地手当の引き下げの話、見直しの話につきましては、民間の同じような手当の支給実態を踏まえて人事院から勧告がなされたものだと私どもは承知をしております。したがって、この見直しによって、民間の支給実態に合ったものになっていくんだというように理解をしておるのです。

 ただ、公務員の給与の改定が民間企業の賃金に影響するのではないかというお話が、先ほど同僚の議員の方からもあっておりまして、これは必ずしも否定するつもりはありませんけれども、員数割りからいいましても、五千四百万分の四百十万ということになりましょうし、そういった意味では、ある程度範囲は限られているというような感じはいたしますので、少なくとも、民間給与の実態に比べて公務員の給与が高いのではないかという批判にこたえて、いわゆる民間の給与実態、給与体系に合わせていこうとするものであって、今後とも国民の理解は得られるのではないかと思っております。

○高橋委員 民間の給与がそれによって一定引き下げられてもやむなしとするのか。やはり、民間の給与も一定頑張る方向に応援するべきではないのかと思うのですね。

 人事院がことしの勧告に当たって調査をした、民間における寒冷地手当等の支給状況関係という資料をいただきましたが、これを見ると、寒冷地手当を支給している事業所のうち、千百四十三のうち、公務員準拠というのが二百二十六あります。つまりは、人勧の動向が民間事業所にも影響を与える、これはありますよね。お認めになりますか。

○山野政府参考人 例えば病院とかあるいは学校等、公務員の給与を参考にして決める民間の企業等があるのは事実でございます。

○高橋委員 ちょっと今のお答えがよくわからなかったんですけれども、では、この話は平行線になるのでまたちょっと次においておいて、もう一つの話をしたいと思うのですね。

 今回、民間準拠というのが一つの物差しになって、北海道並みということになったわけですよね。そのこと自体に整合性があるのかどうかということなんです。北海道を三級までにして、本州を、対象とする市町村を四級と仕分けをしました。本州の条件が二つ。平均気温が〇・〇度C以下、かつ最深積雪十五センチ以上の市町村、または最深積雪八十センチ以上を条件としたわけですけれども、この条件にかなう市町村は、北海道の三級地の条件だけを見れば、北海道の三級地と同じことになると思いますが、これは確認です。

○山野政府参考人 そのとおりでございます。

○高橋委員 そのとおりだと言いました。意味は同じなのに、本州にいるというだけで二万三千七百円もの差になるということを指摘したいと思います。これは最大の場合ですけれども。

 私なりに数えましたけれども、中でも本州では、新潟県津南町の三百九センチを筆頭に、八県三十九市町村は百十センチ以上積もる。つまり、北海道の一級地の条件と同じところがあります。また、十八県二百二十一市町村は、二級地と同じ条件のところがあります。本州にもこれだけ北海道と同じ条件のところがありますが、こういう矛盾についてどう考えますか。

○山野政府参考人 まず、指定の考え方でございますけれども、今おっしゃられた点で、北海道につきましては八割以上の企業が行っているので、北海道については支給対象とした。本州については、民間の企業は二割以下ですので、今先生おっしゃられたような基準で指定したわけでございます。これは、横並びというか権衡ということで指定したわけでございます。

 ただ、そういうことで、基準がもともと違うわけでございますので、双方で入りくりがあるというのは、これは事実でございます。

○高橋委員 結局、理屈は民間準拠に戻るわけですよね。けれども、青森でも二四%の事業所が実際に手当を支給しているということがあるわけですよね。その差が大きいというだけで、北海道と本州というふうに差をつけるのが正しいのかどうか。だって、これまで寒冷地手当法を何度か改正も行ってきましたし、そういう歴史の中で、北海道から始まった手当だけれども、その改定の中で、本州にも同じように寒いところがある、だから、やはりこれはそこも手当てしなくちゃいけないということでやってきた歴史があるわけですね。

 ですから、その制度そのものの趣旨、これを全く否定するものになりませんか。もう一回伺います。

○山野政府参考人 地域指定の考え方と支給額の考え方をちょっと整理して申し上げますと、指定地域の考え方については、今も申し上げたような考え方でございますが、支給額につきましては、それぞれの地域の民間企業の平均額をとっているわけでございます。

 したがいまして、気象条件が本州と北海道、たとえ同じであっても、それぞれの地域における民間の支給額が異なれば支給額も異なってくるということでございます。

○高橋委員 ですから、額と地域の話じゃなくて、今私は地域の話をしたんですよ。違いが百とゼロではないわけですよね、北海道と本州が。それなのに、北海道並みということで、北海道並みに寒いところが対象外になる、分けられる、それはおかしいんじゃないかと言っているんです。

○山野政府参考人 本州の基準は北海道よりも緩いわけでございまして、例えば北海道の場合ですと、最低気温で見ますと全部零度以下でございます。ですけれども、本州の場合につきましては、気温は条件にいたしませんで、最深積雪が八十センチ以上の場合には指定地域にするというふうに、そういう意味では、本州の基準の方が北海道より緩いということでございます。

○高橋委員 それをだれが緩くしているのかということですよね。本州にも、福島県檜枝岐村、マイナス四・六度C、百八十二センチ降るところ、群馬県草津、マイナス四・四度、百二十一センチ降るところ、長野県開田村、マイナス五度を超える、そういうところがあるということをお認めになって、やはり整合性がないということをしっかり見ていただきたいと思うのです。

 最後に、大臣に伺いますが、二年連続の本俸引き下げがあり、平成十一年以来の連続した何らかの給与の引き下げがありました。寒冷地手当が、一括支給されていたものが、今回、額も減ったし、分割される。こういう冷え込んだ中での手当の目減りということでは、消費に対する一層の冷え込み、地域経済への影響も大きいと思います。地方団体からも意見書などがたくさん上がっております。三百四十四の地方議会から上がっておりますけれども、地域経済に与える影響について、大臣、どうお考えになりますか。

○麻生国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおりですが、民間給与との乖離をいかに埋めるかというそもそもの主題からこの問題には入ったと御理解をしていただかないかぬところなんだと思いますが、今、この公務員の寒冷地手当の引き下げが直ちに地方の消費に影響を与えるかと言われれば、私は、ゼロとは申しませんけれども、その与える率というのは限られていると思っておりますし、また、そういったことも配慮して段階的にこれを引き下げていくという激変緩和措置というのをとらせていただいた背景であります。

○高橋委員 時間が来ましたので、指摘をして終わりたいと思います。

 先ほどの答弁を聞いておりましたが、限られるということを限定しておっしゃる以上は、きちんと影響額をはかるべきだと思います。

 ことしの三月の参議院の同じ質疑の中で、政府の参考人が、寒冷地手当が出ていることによって福祉の措置費が影響してくるとか、地方交付税も関係してくるとか、選挙費用の算定基礎も変わってくるとか、そういう経費に関連する要素がございますので、市町村長さんも強い関心を持っている、そういうことを言っています。だから、公務員だけでなく、いろいろな面で関係があるということをお認めになっているんですね。そのことをしっかり見てやってくださることを要望して、終わります。




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